いくぞ~!
「なんとなく予感はしてた。やっぱり一人部屋なのね」
当たり前なんだよなぁ。オカ研メンバーが六人。女四人に男二人。それぞれ二人部屋でちょうどね。で、七人目のオレがはみ出して一人部屋。……寂しいわオレ。
「しかも一人部屋にしては広い。余計に寂しさを感じるなぁ」
やっぱグレモリー家は金持ってんな。別荘だよ別荘。めっちゃ綺麗しデカい。しかも池まであるし、それだけじゃない。ここら辺の土地はグレモリー家の物らしい。はえーすっごい。
「ふぅ。着替えるか」
荷物をソファに置いて開く。特訓の準備だ。オレがガチギレして不貞腐りながら焼き鳥食ってる間に、婚約案件は一つの方向へと向かった。
レーティングゲーム。そのゲームで婚約するか否かを決める。どうやら悪魔御用達の遊びで、やれチェスの駒~やら、やれ様々なルールが~とか。もう訳わかんないから途中で右から左に受け流していた。
今回のゲームの勝敗は、……要はぶっ飛ばせばいいんだよ。あのライザーも、その眷属とやらも。ホームランバット持って、思いっきりカッ飛ばせばいいんだよ。
「っよし。やっぱジャージだな。動きやすい」
レーティングゲームをやるのはいいけど、向こうのライザー達は経験豊富で戦力差もこっちより上だ。だったらオレがリアスチームに入って参加するって言ったら、リアスちゃんが__
「気持ちだけ受け取っておくわエイジ。ありがとう。残念だけど、貴方が加わると結果が確定してしまう。その様な結果では向こうも、私も、納得いかない」
まあ縁談を持ち掛けたゼックン達とフェニックス家の目もあるけど、流石に強情だなぁ。っま。そういうオレを参戦させない、芯のある意思は、リアスンの魅力の一つだな。
「特訓かぁ」
そう特訓。別にオカ研メンバーが弱い訳じゃないけど、流石に向こうが上。まあ十日間だけの猶予、もう九日か。その限られた時間で戦力アップを計る。
そう言う事ならオレも手伝う。いや。手伝わせてもらおう。プレイヤーとして出れないなら、こういった特訓なり何なりで貢献していきたい。リアスちゃんの未来を決める事だ、思う存分オレを使ってくれ。
「よし。行くか」
レッスン1 ユートンとがんばる
「どしたどした。もっと速く動け~」
「ッシ! ッフ!」
「向こうでダウンしてるイッセーには悪いけど、消化不良なんだろ? 新顔のイッセーやアーシンだけの特訓じゃないんだ。ユートンにも強くなってもらわないとさ。ぉっと。今のいいねぇ。だけど届かないんじゃないのかなぁライザーたちに。ほらほらほら、息つく暇あんのか? ん? どしたどした__」
わざと長く喋ってる。煽ってる。つらつら言ってる間にも、ユートンが揮う木刀がオレを襲う。もちろんオレには届かない。当たってはやれない。体をいなしたり半歩ずれたり、余裕思って避けてる。こうして煽ってるのも、ユートンの反発心を刺激するためね。
「すげぇ……」
「驚いてるけどイッセー。イッセーの目からはどう見えるか知らないけど、こんなのまだ序の口だぞ。っと。ユートンはまだまだ強くなる。速くなる。__そうだろ? ユートン__」
「ッキィ!」
後ろからそっと耳元に口を近づかせて、囁くように問う。意識外なオレの行動に驚きはしたものの、振り向きざまに木刀を揮う。眼前を横切る先端を、視界の端に置き、ユートンの顔を見ると__
「後ろを取られたのがそんなに悔しいかい? そんな睨んじゃってさ」
「__っ! クソッ! ッタレ!」
「おっと。どこ狙ってんのさっ。そんな何もないとこ突いても意味ないじゃんっ。狙いはオ~レ。わかるっ?」
「ペラペラとっ! ッシ! っうるさい!」
どうやら煽りが効いた様で、途中から肘や脚、体全体を使って襲ってきた。木刀との合わせ技も中々キレる。……こりゃ先が楽しみだ。ユートン。君イイよ。
おっと。勢いよく膝を付いてダウンか。……体力を使い果たした感じだな。
「__っだは! っはあ! はあ! クソ!」
「こんな所かな。……どう、全力で体力使った感想は」
「はあ! っ最っ高! はあ!」
「いいねぇ。そこで少し休んでなよ。……明日も今みたいな特訓するから」
中々に感がいい。少しづつ、ほんの少しづつだけど、速くなっていく。木刀を揮う速度も、ユートン自身の速さも。__思ったのがさ、ユートンに剣を教えてくれた人、師匠? か何かはわからないけど、ちゃんと基本を教えてるね。体重も乗ってるようだし。……まぁ剣の事なんてさっぱどだけどなオレ。
さて、水でも取りに行くか。ユートンも飲むだろうし__
「っはあ! エイジ! っは」
「うん?」
「いつかっ! そのすかした顔にっブチ当ててやるっ! はあ!」
「っはは! その意気だよ。楽しみにしてる」
レッスン2 コネコンとがんばる
「そうだなぁ。……覚えてる? ゼックンとこでオレと対峙した時の事」
「はい……」
「最初に足場を蹴って瓦礫やら何やらを飛ばしてきたよね」
「そうですね。……無意味でしたが」
次はコネコン。スピードを駆使するユートンとは違い、力こそパワーなコネコン。小柄な見た目に反して圧倒的な力で、敵をねじ伏せるだろう。その戦い方は、肉弾戦。至近距離での攻防を得意としている。
そう。オレの戦い方と非常に合致している。親近感ある。
「コネコンさぁ、勘違いしてない? 言っておくけど、あの飛ばされた瓦礫は、実際有効なんだよ。まぁあんまりオレには通用しなかったけどね」
「……」
「迫りくる瓦礫や砂、塵。相手の視界を狭めるし、対処しなきゃならなくなる。避けるなり払うなり」
「……はい」
「コネコン。離れた所に相手がいたら、辛いでしょ。キチィでしょ。近づこうにも、ユートン染みたスピードが有るわけでもない」
そう言って少し離れる。砂地の地面を足で軽く払う。
「そこでコレ。無邪気な子供でもできる。っふ!」
地面を抉る様に蹴る。つま先から徐々に伝わる地面の抵抗。その抵抗をモノともせずに蹴り上げた。
「……」
けたたましく重い轟音が響き渡り、蹴りぬいた方角に砂埃が漂う。ほんの一息の間、砂埃が晴れると、数十メートルの歪な地面が扇状に深く抉れていた。
まぁ軽くやったし、こんなもんかな。牽制にはなるよ。うん。
「ね、簡単でしょ?」
「ボブ・〇スみたいに言わないでください。……言うだけなら簡単です」
「そう言わずにさ、騙されたと思ってやってみ?」
「……はい。やってみます」
オレとは逆方向を向いて足を上げる。横目で様子をうかがっていると、コネコンが勢い任せに蹴り上げた。同時に重い音が響く。そして先を見るとオレほどでは無いにしろ、確かに瓦礫や塵が舞い、抉れていた。
「うん……」
手ごたえを感じた。そんな風に顔を微笑ませている。……やっぱカワイイんだよなぁコネコン。この可愛さにオレ、ファンになっちゃうもん。
「そうやって飛ばしながら、距離を縮めて懐に入る。相手が見ていない又は、払っている時に重い一撃を当てる。__一つの戦法かな。っま、試してみたら」
「……えい」
「__ヌワアア! __」
……なに今の。コネコンが再度蹴って抉ったら、悲鳴が聞こえたんだけど。__こうやってお互いに顔を見合うあたり、コネコンも悲鳴に気付いたんだろう。……行ってみるか。
「……なにやってんだイッセー尻もちなんかついて」
「イッテテ。小猫ちゃんと特訓しようと来てみたら、突然前から何かが襲ってきて……って! エイジお前か!」
「こっちも特訓してたからなぁ」
「はい。……イッセー先輩。アレくらいは避けてもらわないと……」
「っぐ。反論できない」
うーん。まだまだイッセーは弱いな。内に秘めたポテンシャルは、目を見張るモノがあると思う。それをこの数日の特訓でどこまで引き出せるか……。オレの課題であり、リアスンの課題でもある。もちろんイッセー本人も。
「じゃあ任せたよコネコン」
「どこいくんだよエイジ」
「そうだな。……レッスン3かな。っはは。イッセーの事、ビシバシしごいてね」
「無論です……」
「あはは……お手柔らかに頼むよ」
レッスン3 アケノンとがんばる
「それ!」
「__」
気持ちええんじゃ~。__いや真面目だよオレ。アケノンの為にサンドバッグになって、魔力が底つくまで、ひたすらオレ目掛けて雷撃ってもらってる。魔力の底上げと、熟練度向上のためだ。
「まだまだいきますわ!」
「__」
気持ちええんじゃ~。__真面目だって。それにしても、流石リアスンの懐刀。雷の威力は申し分ないんじゃないかな。こうやってバカスカ撃たれて、更地だった場所がクレーターに早変わりだよ。
「ふふ。それ!」
「__」
気持ちええんじゃ~。__真面目ねうん。ただ難点を指摘するなら、再度発動するまでに多少のクールタイムがある事。ほんの数秒。それと雷が単調。魔法陣から高威力の雷が一つ、目標に向かって落ちるだけ。
「あらあら。あらあら!」
「__」
気持ちええんじゃ~。__マジメねマジメ。……それにしても嬉しそうに雷撃つなぁ。最初は遠慮がちだったのに、今見てよほら__
「うっふふ!」
何で恍惚とした表情……。自分の指まで舐めちゃってさ。明らかにテンションが違う。ちょっとヤバいだ__
気持ちええんじゃ~。__……。こうして考査してる間にも、アケノンの雷撃が降ってくる。……いよいよ魔力が減ってきているね。威力が確実に弱くなってる。
「っ!」
「__」
気持ちええんじゃ~。__……やっぱ気持ちいいんだよなぁ! もう最高! こう全身にビリッと痺れるんだよ。丁度いい刺激がオレを気持ちよくさせる。これが電気風呂、朱乃・雷撃バージョンかぁ。……完全に仕事終わりのおっさんなんだよなぁオレ。
「……ぅ、ぁ」
「あっ……っと」
倒れる前に間に合ったな。肩を貸しても立ってられない程……魔力が底をつくまで消費ってのは、中々キツいのかな。魔力が無いとはいえ、そこら辺の配慮は怠っていた。反省しないと。
「大丈夫?」
「は、はい」
項垂れてるアケノンを見ると、少し心が痛い。……このまま立っていても仕方ない。座れる場所に行って水でも飲もう。
「よっと」
「ぇ、あ」
「ごめん。ちょっと休憩だ。水でも飲もうか」
疲弊して歩くのもキツイだろうから、胸まで抱き上げた。少し早歩きで休憩場所に向かう。
「……ん?どうしたの」
「いえ……」
アケノンがオレの顔を見ていた。何か言いたい事があると思って訪ねると、なんとも曖昧な返事をされた。……やっぱりしんどいんだよ。
「__魔力の消費ってのはキツイんだね。失念してた。ごめん」
「確かに疲弊します。場合によっては、意識を失いますわ」
「……スゥーっ。マジか」
情けないな。今は鍛えてる側なんだ。命に関わるような知識を、薄く認識しちゃだめだ。知らなかったじゃ許せないんだ。……。
「うふふ。そんなに思いつめなくても大丈夫ですわ」
「え……」
「魔力を過剰に消費したところで、どうにかなりませんわ。先ほど申し上げた通り、魔力量を上げる方法の一つ。……安心してください」
「今の朱乃を見て、軽く縦には降れないよ……」
「少し休めば、魔力は回復します。いつもの様に、エイジさんに紅茶を淹れて差し上げますわ」
「はは。……ありがと」
気を使ってくれてる。いつもの様に笑顔で接してくれてる。__まったく。何んでオレはいつもこうかな__
はあ。自分を反省するのはいつでもできる。話題を変えよう。
「ん"ん。朱乃ちゃんさぁ。雷撃ってる時、嬉しそうだったけど……なんで?」
「……私、Sなんです。さっきのエイジさんを、ついイジメちゃいましたわ」
「あっ。__ふーん。そうなんだ、Sなんだね。なるほどねぇ」
言葉を弾ませて宣言したアケノン。……いやさ、聞いたのはオレだけど、S宣言にどう反応すればいいんだよ……。なにオレも宣言すればいいの? どっちかっつても、どっちでもないゾ。
「__イジメられるのも好きです」
……勘弁してくれよ。どっちかにしてくれ。引っ越しセンターじゃないんだからさぁ。
レッスン4 アーシンとイッセーとがんばる
魔力のコントロールを扱う。今日という日に魔力をしっかり見定め、認識し、探り、意識下で動かす事は、アーシンもイッセーも初めて。特訓の一環で、今晩の食材の皮むきを魔力で成す事が、リアスンのお達しだ。
うん。オレの出番無いよね。魔力ないし。
「お湯さん、沸いてください!……わあ!」
「うお! ……っぐぬぅ」
「スゲーじゃんアーシン。お湯沸いちゃったよ……」
「はい!」
「男を魅せる時じゃないの? イッセー」
「ああ。見とけよぉ俺だって__」
はい。ここでオレは何をし、どう手助けするのか。……そう。ここはキッチン。オレは朱乃ちゃんとの共同生活で、ある程度の料理スキルを身に着けたのだ! って言っても、まだまだ朱乃ちゃんには及ばない。やっぱり朱乃ちゃんの肉じゃがに勝てなかったよぉ__
「なにビクンビクしてんだ。正直キモいぞエイジ」
「__ッハ! 悪かったなキモくて。__ちょっと外すわ。すぐ戻る。ちゃんと皮剥いとけよ」
「もちろん!」
イッセーのやる気ある返事を聞いて、キッチンから出る。広く薄暗い通路を右へ左へと散策していると__いた。
「っよ」
「あらエイジ。もう剥き終わったのかしら」
「いいや。まだだけど、オレが戻る頃には剥き終わると思う」
「そう」
探していた。ユートン達の一日目を報告をしに来たしだいだ。傍から見たり、遠目で見ていても、どうしても本人たちの成長の感触が分かりずらいと思う。なら実際に手を合わせたオレの意見が、リアスンにとっては良い情報だろうさ。
「__って感じかな。とりあえず明日明後日はユートンは引き続きスピードと鋭さを、コネコンは小技を効率よく出せるように、伸びにくいかもしれないけど、パワーもアップっさせる。アケノンに関しては、無理がない様に訓練かな。雷撃が単調すぎる。バリエーション増やさないと」
「ありがとうエイジ。報告、ご苦労様。」
普段あまり見ない眼鏡をかけたリアスン。どうやら本を読んでいる。__なんとも勉強熱心だな。
「気になる? 戦術を模索してるのよ」
「だろうな。こんな状況なんだ。ゲームも絡んでるし、流石にオレでも察するよ」
「……付け焼き刃なんでしょうけど、知っておいて損はないわ」
……自分の未来が掛かってると言うのに、なんとも落ち着いている。勝負事なのに、負けるかもしれないのに。__なに考えてんだオレ。負ける事なんて考えなくていい。オレたちは勝ちに行くんだ。
そんな考えを巡らせていたら、不意にリアスンが口を開いた。
「そういえば礼を言ってなかったわね。ありがとうエイジ」
「ん? 何の事?」
「とぼけるつもり? ……ライザーの事よ。私の為に本気で怒ってくれた」
「……」
「もちろん嬉しかった。私__いえ。友達を思っての行動ね」
「……そうだったかもしれない。オレも気づいたら手が出てたし」
なんだ。ライザーの事か。まったく律儀なモンだな。オレはマジギレして状況を悪くしたかもしれないのに。でも感謝されるのは実際こそばゆい。
「でもエイジ。嬉しい反面、__怖かった」
「……ぇ」
眼鏡を外しながら、声を暗くして言った。
「只々怒りに駆られるエイジは、……はぁ。とても直視できないわ」
__そっか。怖がらせたんだ。オレ。……たぶんリアスだけじゃない。みんな怖がったかもしれない。グレイフィアも動揺したかもしれない。ライザーも、当然怖かったはず。__っ。友達にまで迷惑かけてどうすんだよオレ。
「ふふ。暗い顔しないの。エイジにそんな顔は似合わないわ」
「でも__っ!」
「大丈夫よ」
オレの鼻先に指を当てながら、笑顔でリアスンが言ってきた。
「怖かったのは確かだけど、何よりあなたへの信頼が勝った。みんなもそう思ってるはず。頼もしいわ」
「っな、なんだそれ__」
「あらあら~? なに照れてるのぉ? うりうり」
「ちょちょっ! 鼻先押すなよ。ったくよぉ」
いたずらで鼻を押され、びっくりして身を引いてしまった。確かに少し、ほんの少しは照れた。だって面と向かって美人が褒めるんだもんな。誰だって照れるって。
「ふふふ。もう部屋に戻るわ。夕食が出来上がったら呼んでちょうだい」
「わかった。朱乃ちゃん程とは言わないけど、そこそこには自信がある。楽しみにしておいてよ」
「そ。じゃあそこそこには楽しみにしてあげるわ」
「ぇぇ。そこは普通に楽しみにしてくれよ」
「なら私の舌を満足させてね。ふふ。じゃあね__それと、やっぱり笑顔が似合ってるわよエイジ。また後で」
そう言って笑顔を見せて部屋に戻るリアスン。……何度も思うよ。よくできた妹を持ったなゼックン。ハハッ、元気づけるどころか、逆に元気づけられた。__……さっ。うだうだ考えても仕方ない。そろそろ皮が剥けてる頃だろう。戻るか。
「__どうだー。剥けたかって! なんだこれ!」
「すまんエイジ! 調子乗ってほとんどの玉ねぎとジャガイモ! 剥いちまったあ!」
「すみませんエイジさん!」
キッチン中に皮が散乱している。おいおい勘弁してくれよ。調理で出てくる三角コーナー行ならまだしも、こんなに散らかった魔力の三角コーナーは予想外すぎる。
「あ~あ、こんなに散らかしてさぁ」
「すぐに掃除する!」
「当たり前だ。こんな状態じゃ料理もできんわ」
「私も手伝います!」
そそくさと掃除に取り掛かる二人。見てるだけって事はさすがにしない。ちゃんと掃除に参加する。……こんなに散らかすって事は、どうやらコントロールはうまくいったんだろうな。確かイメージが大事なんだっけ。
「__ンヘェ」
剥けた皮を見ながら鼻を伸ばしてるイッセーのイメージは、確実にやらしいイメージだろう。おめでたい奴だよなまったく。でもまっ__
「成功したんだ。腹減ってるだろ」
「ああ!」
「はい!」
さて、まだまだ勉強の身だけど、腹いっぱいに食わせてやるか。素材は大いにあるしな。
「はあ。はあ。んぐ。はあ」
「イッセーくん。そんな事して何の意味が__」
「うっせぇだまってろ! これも修行のうちだ!」
「透視能力でも身に着けたいのかな」
「あほくさ。……おいイッセー。大人しく風呂に入れねーのかよ」
「部長の裸見れて羨ましいとか言ったクセに! この壁の向こうには! 部長の! 女子たちの一糸まとわぬ裸があるんだぞ!」
腹ごしらえも済んで、別荘の大浴場に浸かっている。男女別の大浴場があるとは、金持ちの考える事はわからん。でも、そのおかげでオレたちは気持ちのいい思いをしている訳だ。感謝しないとな。
「エッチなところ。そう。それが俺の力だあ! うおおおお!__」
バカなのかイッセーは。どんだけ女子の裸みたいんだよ。さすが性欲の権化。壁に必死に目を見開き食らいつくさまは、オレにはマネできない。
「ふぅ。……まったく懲りないねぇ」
それに比べて、ユートンは大人しい。ゆっくりと、体の疲れを癒している。今日は特に疲れたんじゃないかな。以外と負けず嫌いなのか、休憩場所で朱乃ちゃんと居ると、ランニングに誘われた。なんて事ない。一つ返事でご一緒すると、急にヤル気出して走ってきた。オレも並走したけど、どうやらドッと疲れたようだな。
「なぜだ! なぜ見えないんだああ!」
「……アホの子なの? それともバカなの?」
「イッセーくんには悪いけど、どっちも正解かもね」
冷静な意見をありがとうユートン。確かにイッセーはアホでバカかもしれない。でもね。彼はただの性欲の権化なんだよ。イッセーは悪くないんだよ。
「まったく。もう諦めてこっちに来いよ。気持ちいいゾー」
「いいや! 俺は諦めない! 俺は無限にある可能性を信じたい!」
「信じるのはかってだけど、実際に見えないだろ。……ふう。イッセーみたいに壁睨んでも__」
__……。……ん?
「……ぁ」
「どうしたの? 急に立ち上がって」
う、嘘だろ……イッセーと同じ壁を、同じ気持ちで見たら__桃源郷……
「ぐぬぬぬ!」
「あー……。とりあえずさ。みんなピンク色だよね。うん」
「部長がピンク色なんだ! そうに決まってるじゃないか!」
「うんだから、ピンクなんだよ」
すっごい。見える見える。はっきりわかんだね。……みんな透明感あるツヤ肌だなぁ。いやーそれにしても__
「やっぱデケェなぁアケノンとリアスンは。何食ったらああなんの? わかる? ユートン」
「え? ……も、もしかして……見えて__る」
「さっきからそう言ってるじゃん」
そんな壁とオレを交互に見てさ、言ってるじゃんピンクって。まあ確かに、信じられないかもしれないけど、オレは見えてる。
「コネコンには頑張って欲しいけど、いやはや。アーシ__」
「てんめええエイジィ! アーシアの裸は見るんじゃねええ!」
イッセーの奴、オレを水中へ抑えてきた。正直に言おう。特訓の時より明らかに動きがいい。なんで普段こういう動きができないのか、火事場のバカぢからか? まあいい。とりあえず__
「っぷは! 風呂場で暴れんブ__」
「お前が言うと現実味があるんだよエイジ! だから! アーシアの裸はオレが守ブ__」
「__暴れんなよ! 悪かったって。確かに見えたら良いなって思っブ__」
「__羨ましいんだよこの野郎! クッソオオ! オレだって見たいんだよ! __」
「本性表したなイッセー! 何だかんだ言って! エロい事しか頭にねぇのか!」
「エッチなとことエロい事は! オレの原動力なんだ! それの何が悪いんだああ!」
離せコラ離せ!
接近戦でお前に分があるわけねえだろ!
馬鹿野郎お前オレは勝つぞオラ!
おとなしくしろっ!
ウワーヤメロー!
おいヤメルルォ!
「ああもうメチャクチャだよぉ」
「ブーステッド・ギアを使いなさい。イッセー」
「え? でもこの合宿中は、使っちゃダメだって部長が」
「私の許可無しでわね」
数日後。特訓が始まる前に、リアスンによって集合がかけられた。この内容を察するに、今のイッセーの実力を見るためだろう。っま。建て前は必要だろうな。ほんとの所、イッセーに自信を付けさせたいんだろう。リアスンも、イッセーに自信が~って前に言ってたし。
「相手はユートで__」
「オレがするよ、リアスン」
「エイジ……」
「イッセーの力を直に感じたい。いいだろ?」
「ええ。任せるわ」
ごめんユートン。これは譲れない。ドライグの力を授かったんだ。オレが感じないで誰が感じるの。今のイッセーの力を試す。
「来いよイッセー」
そう言って少し離れた所で腕組をする。イッセーも真剣な表情。やる気に満ちている。
「ブーステッド! ギア!」
Boost!
……いや。っえ。かっこよくね、それ。……初めて見るけど、そんな感じなの? 渋かっこいいドライグの声だろ今の。ブーストってさ。
「もう一度」
「ブースト」
Boost!
いやいや。その籠手っつか腕。カッコよ過ぎ。シェルブリ〇トかな? ちょっと我がまま過ぎないか?
「もう一度!」
「ブースト!」
Boost!
「ふ~ん」
手の甲に力溜めてさ。シェルブ〇ット・バーストでもする気かよ。__っま。シ〇ルブリットでもブーステッド・ギアでも何であれ、オレは受けて立つぞイッセー。
「まだまだよ」
「ブースト!」
Boost!
「もう一回!」
「ブースト!」
Boost!
「もっと!」
「ブースト!」
Boost!__Boost!__
「これで十二回パワーアップしましたわ」
「ストップ。イッセーわかる? 今までの貴方だったら、ここまでの強化に耐えらなかったはずよ」
「っ!」
「貴方だってちゃんと修行の成果が表れているの」
「そうか……」
確かに成果はある。初日と比べてもイッセーは目に見えて成長した。オレとリアスンが提示した内容もこなしてきた。でもそれはイッセーだけじゃない。ユートンが、コネコンが、アケノンが、アーシンが、みんな応えてくれた。__だからオレも応えよう。
「おいイッセー。……そんなもんじゃないだろ」
「……え」
「駄目よエイジ」
「黙って見てなって」
リアスンが止めに入ってきた。真剣な眼差しでオレに忠告している。お返しに一言添えてリアスンの瞳を見る。物言わぬ疎通が一瞬交差し、リアスンが首を縦に振ってくれた。__よかった。信じてくれた。
「イッセーよぉ。オレに張り倒されて、悔しくないか」
「っ!」
「叩きのめしたいって、思ったろ」
「__っああ」
Boost!
「泥まみれになって、立ち上がってもすぐに倒されて、……自分は弱いって、実感したろ」
「ああっ__」
Boost!
「息が切れる度に、立てなくなる度に、思ったんじゃないか。好きな人に、こんなの見せれないって」
「っく! ああ!」
Boost!
「好きな人が目に映る度に、……大切な人が傍にいる度に! 守りたいって! 思っただろ!」
「当然だ! 俺が守るんだあ!」
Boost! Explosion!!
「あれは!」
「あの音声によって、イッセーは一定時間、強化された力を保ったままで戦う事ができるのよ」
なるほどね。溜めてたパワーがイッセーを包んだのはそう言う事ね。ハイパ〇モードにでも成るんじゃないかと思ったのは内緒。
じゃあ、イッセーを堪能しようか。
「よし。__」
「っ!」
何の合図もなく蹴りを打ち込むオレ。修行中に幾度も見せた蹴りを、イッセーは見切り、腕でガードした。
「っこの!」
「__」
蹴りの衝撃が落ちていくと、間髪を入れずに打ち込んできた。それを大雑把に大きく躱し、距離をとる。
ブーステッド・ギアってのは凄いな。瞬時にガードし、あまつさえ攻撃に転じた。昨日までのイッセーにはできない芸当だな。その恩恵を余すところなく使うイッセーも凄い。っはは。先が楽しみだ。
「ほら。来いよ」
「イッセー。魔力の塊を撃つのよ」
「はあああ! っぐ!」
魔力の塊。イッセーが作り出した塊は、大きいとは言えない。でも感じる。アレは凝縮されてる。
「撃ちなさい」
「うおおおお!」
握りしめた拳を前に突き出すと、凝縮された魔力が大きく膨れ上がり、オレ目掛けて迫りくる。
「__っへ!」
避ける事はしない。視界が赤に染まる。魔力が容赦なくオレを包み込んだ。__やるじゃん。衝撃がすごい。後ろの方で轟音と、乱吹く爆風を感じる。……まあなんだ。例えるなら、ディゾルブが放つ勢いが衰えたビームってところだな。__比べる相手が違うな。あいつはバケモンだ。
「や、山が!」
「これがオレの__っぁ」
「イッセーさん!」
「ふふ。倒れるほど、力を使い果たしたみたいね」
うん。今はこれがイッセーの限界か。初日とは雲泥の差だな。いやー思わず二ヤけちゃったよ。成長を感じるのって嬉しいもんだね。
「エイジ。彼は__」
「あらあら。まぁまあ」
「いい成長ぶりだよ。驚いた。まだ数日ある。引き続き、基礎体力を向上させよう」
そう言ってみんなの許に歩く。成長を感じたと言う、つぼみが咲く解放感を感じる。__今のオレは、無敵だ。
「イッセーさん、立てま__キャアア!__」
「どうしたアーシア__」
「__最低」
え? なんでみんな驚いてんの? __ああなんだ。このにじみ出る無敵感に驚いてるのか。まったく。しょうがないなぁ。
「ちょちょっと! エイジ!」
「うん? どしたユートン。布なんか持って__」
あれ? オレ裸じゃん。……あー、今のでジャージが吹き飛んだか。でも大丈夫! 久しぶりの登場。光先輩が付いて来てくれる!
「大丈夫だよみんな。水着と同じだって」
「なに意味不明な事言ってんだよ! 早く隠せ!」
「わわ! っわわわ!」
「あらあら。うふ」
「なんで堂々としてるの! 早くこれで!」
「……エグイです」
「エイジ……。あなたって人は……」
今日は赤飯だな。今回の出来事は、みんなにとっていい刺激になっただろう。
某聖杯戦争アプリゲームのイベを回るので更新が遅れます。はい。
ガチャは回した。__諭吉が数枚溶けて、ッハハ。ナキタイ……ツライ。
感想まってま~す。
追記 一緒に戦ってくれるアニキ。募集。
ID 958,299,078
アディオス!