存在が強すぎて、世界がヤバイ   作:ホイホイ

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話が長い。読みにくいかも。分けて投稿も考えましたが、やめました。
気づいたら一番長くなりました。

では、どうぞ。


エイジ。泣かす。

「おとうさま……」

「おや。ライザー、もしかして眠れないのかい」

「はぃ。こわいゆめをみそうで、ねむれません……」

「ならこちらに来なさい。……そうだ。いい子だ」

「ょぃしょ」

「そうだな。怖い夢もやっつけてくれる話をしようか」

「うん……」

「昔々、赤いドラゴンと白いドラゴンが、ケンカをしていました。そこに__」

 

___

__

_

 

「__ん」

 

 懐かしい。随分と懐かしい夢を見たな。いったいどういった夢だったか、目覚めた今では思い出せない。

 

「……」

「__ん」

 

 こちらに寝返りをする。ユーベルーナ。俺の眷属であり、クイーン。掛け布団越しでもわかる彼女のライン。一糸まとわぬ姿から察するだろう。俺と彼女は、そういった関係だ。

 

「……」

「……早いですね」

 

 起こさぬようにそっとベッドから降りたつもりだが、まだ眠そうな目でこちらを見ている。

 

「まだ寝ていても構わない。起こすつもりはなかった」

「では__お言葉に甘えて」

 

 そう言うと彼女は瞼を閉じた。……こうやって瞼を閉じると思い起こせる。昨日の彼女は、随分と積極的だった。まるで何かに駆られる様に、何にかを求めるように。

 

「……ふぅ」

 

 浴室に入り、取っ手を捻る。徐々に熱を持つ水が、シャワーがなんとも気持ちいい。ぼんやりとした目覚めを洗い流してくれる。

 

「……__っ!」

 

 顔を手で覆わずにはいられない__そう。時々フラッシュバックする。あの時の痛みが。あの時の光景が。

 

『__! __!』

 

 掴まれる指の隙間から垣間見る。青い炎。揺らぎ。無表情ではあったが、確かに宿る怒り。脳裏に焼き付いて離れない。……刷り込まれている。

 

「クソ……」

 

 思わず額をタイルに押し付けた

 

 

 

 

 

 

「おはようございます。お兄様」

「ああ。おはようレイヴェル」

 

 いつもなら部屋まで持って来させ、マナーなぞ気にする事無く食べる。なんとなく。ほんの気まぐれ。妹と、家族との朝食を取りに来た。

 

「珍しいですね。いつも眷属と朝食を食べてるのに」

「たまには家族と一緒に食べるのも、一興かと思ってな」

 

 口から出まかせ。自分でもわからないんだ。ここに居る事が。ただ従った。思うがままに。心の赴くままに。

 

「ん~。食欲をそそる。いい匂いだ」

「そうですね」

 

 メイド達によって並べられる品々。どれも朝食としては一品だろう。__ん?

 

「お父様とお母様は、まだ来ないのか」

「……お父様は昨日、急遽入った商談へ。お母様は悪魔夫人の集いに今朝から向かいました。今頃朝食を取っているところです」

「そうか。……俺には何の報告も__」

「両方の件は、私の隣で聞いていました」

「っそうだったな。っ今の今まで忘れていた」

 

 そうだったのか。確かにお父様とお母様の件は、耳にしたと思う。……きっとそうだ。

 

「はむ……。いい風味だ。そう思わないか、レイヴェル」

「……そうですね。まあ、なれ親しんだモノですが」

「やはり朝はこういった軽い朝食で済ませないとなぁ。脂ぎった物は好きだが、如何せん朝には合わん」

 

 本当にそう思う。朝から欲望のままに。脂ののった肉を貪る悪魔は少なからずいる。否定はしない。俺もたまには朝から食らう。だがこういった朝食を取ると、体が喜んでいる気がする。

 

「はむ__」

「……何か思う所があるのですか」

「ん? 急にどうした」

 

 食べている口を止めて、唐突に質問してきた。レイヴェルにしては珍しい。普段は言葉を返すだけで、俺に質問なんてしてこない。

 

「どこか変です。いつもなら、レーティングゲーム前は対戦相手の皮肉でも言っているハズです」

「……」

「私の知らぬところで、口にしているかもしれないですが、そう言った事はまだ耳にしていません」

「……何が言いたい」

「……相手がリアス・グレモリーだからですか? まあ。婚約者の皮肉など言葉にしたくない。と、そう勝手に解釈しています」

 

 どこか変、か。確かに皮肉の一つも言っていなかったな。まあ俺としては皮肉など些細な事だ。例え相手がリアスでも__

 

『仮にも婚約者なんだ』

 

「っ!」

 

 顔を手で覆う。まただ。またチラつく。どうしようもなくイラだつ。

 

「はむ。……今に限った事じゃないです。前から様子がおかしかった。心ここにあらずといった風に顔を暗くし、今見たく突然顔を覆い、目に見えて苛立っている」

「……っ」

「どうしてですかお兄様。このレイヴェルに教えてください」

「些細な事だ……。お前に教える程じゃない」

 

 図星だ。何もかも図星だ。っはは、流石に家族はわかるか。レイヴェルだけじゃない。ここに居ないお父様もお母様も、俺の変化に気付いているハズだ。__ただ。……ただ無性に腹が立つ。

 

「ならお母様達にご相談なさっては?」

「相談事なぞなにもない」

「ならなぜ暗い顔をするのですか」

「……そんな顔は誰でもするものだろう」

「__お兄様。私の目を見て話してください」

 

 __後ろめたさから、レイヴェルと顔を合わせられない。目を合わせられない。妹の純粋な目を見て話すと、この感情が剥き出てしまうからだ。

 だがそれは許されない。しっかりと目を合わせなければ。俺は何ともないと、伝えなければ、

 

「__っ」

「よろしいです」

 

 __無理だ、純粋すぎる__

 

「いったいいつから様子がおかしいか、私なりに考えました」

 

 __よせ。

 

「そう。リアス・グレモリーに会いに行った日からおかしかった」

 

 __だめだ。

 

「私たちが転移した瞬間に察しました。様子が変だと」

 

 __いけない。

 

「さっき見たく、顔を覆い、力なく立ち尽くすお兄様は、誰が見ても異常と思えたでしょう」

 

 __それ以上は。

 

「もしかして……、瞬く間に広まった帰還ですか」

「っ!」

「クリムゾン・サタンの賢妹、リアス・グレモリーの許にご執心との噂」

「……だまれ」

「グレイフィア様はあの場に居ましたが、リアス・グレモリーの傍には誰もいませんでした」

「__だまれ」

「そこに居ないハズはないです。いったい彼と何かあったのですか。お兄様が家族の中で一番英雄を__」

「黙れと言った!」

 

 スプーンが落ちる高い音が響く。怒号を向けられて瞳が揺れる。__俺は、なんて事を……。

 

「……すまない。怒鳴ってしまった……。許してくれレイヴェル」

「……」

 

 表情をうかがう事はできない。瞳に映す事すらできない。__自分が情けない。レイヴェルは悪くない。

 

「下げてくれ」

 

 一言そう言って席を立つ。まだ食べきれていない朝食を、メイド達が慣れた手つきで回収する。

 

「……部屋に戻る。……わかっていると思うが、明日のレーティングゲーム、戦わなくてもいい__」

「……っ」

 

 去り際に目に映る。レイヴェルの悲しむ顔が。今にも泣きだしそうな顔が。ただ俺に問いているだけなのに、俺は容赦なく、剥きだす怒りに任せて怒鳴ってしまった。__最低だ。兄として本当に情けない。

 

「俺は__っく」

 

 意識せず口に出てしまう。何を言いたいのか自分でもわからない。そう思考しながら、今場を後にした。

 

 

「お兄様……可哀そうに……」

 

 

 

 

 

 

「仕上げてきている」

 

 そう思わせる程、リアスの眷属たちは強くなっている。僅か数日でここまでの成長は、やはり英雄エイジの施しだろう。

 

{ライザー様のナイト二名、リタイア}

 

「ッチ」

 

 眷属たちがリタイアしていく度に、……胸が少し、痛む。思わず舌打ちをしてしまった。

 

「芳しくないな」

「はい。苦戦を強いるであろうプランAが、予想以上の快進撃でプランBに移行したと思われます」

 

 そうだ。初めは俺たちの予想通り事が運んでいた。指示通りに展開し、眷属たちの意向もあって各々に相手取った。だが強くなったリアス達に苦戦し、敗北を期している。

 

「……もういい。お父様達の目があるが、勝てばいいのだ。行くぞユーベルーナ」

「はい」

 

 健闘した眷属には悪いが、酷い勝ち方をしよう。魅せる様な駆け引きなぞもうしない。ただ勝ちに行く。ユーベルーナの爆発力と、俺の、フェニックスの不死で。

 

「……」

 

 グラウンドに向かう。もはや勝ちに行くだけなら障害物はいらない。邪魔なだけだ。リアス達もこれ見よがしにに攻めて来るだろうが、フェニックスの涙と俺がいる限り、負けはない。

 

「……中々熾烈を極めている」

 

 抉られた地面、破壊された体育館、悉く剥きだす剣山、どれも戦いの痕。どれも眷属がリタイアした痕。……やはり見ていて心苦しいな。

 

「いいのかしら。ノコノコと姿を現して」

「リアス……」

「あなたの眷属は残り二人。でも一人は戦わないから、実質あなたと隣のユーベルーナだけよ」

「それがどうした」

「私たちも無傷とは言わないけど、これだけの戦力差。わかるでしょ」

「わからんな。確かに数日で強くなったが、たかが六人。フェニックスの俺には届かない」

「本当にそうかしら。試してみましょうか」

 

 お互いに火花を散らし合っている間に、リアスの眷属が、次々と集まってくる。

 

「っははは。褒めてやる。お前達一人一人。いいじゃないか。よくここまで仕上げた」

 

 そう言って演技がましく見渡す。

 

「俺の眷属よりも速いとは、感服するよ、ナイト」

「……」

「よくもまぁ原始的で合理的な戦法を、そのパワーでよく出すぅ、ルーク」

「……」

「どうだビショップ。君の能力は素晴らしい。フェニックスである俺と組めば、高みを目指せるがぁ」

「……」

「ポーン。ポーン! っはっは! 笑わせてもらったよ。眷属の服を消し飛ばすとは。いやはや、どうもバカみたいな技だ。俺には真似できない」

「……っく」

「あっはっはっは!__」

 

 一人一人、皮肉も交えて挑発する。こんな悠長な事をしているのは、余裕の表れと取ってもらおう。

 

「__ッフ」

 

 リアスの不敵な笑いが目に付く。__なんだ。なぜ笑う。そちらは数で有利なのは確かだ。……なんだ。この違和感。……__ッハ!

 

「クイーン!」

「ライザー様っ!」

 

 ユーベルーナの声と共に強い衝撃で押された。瞬間。その場にいたユーベルーナに魔法が落ちた。目に焼き付いてしまった。雷撃に苦しむ、その顔を。

 

「__あぁぁ」

{ライザー様のクイーン一名、リタイア}

 

 ……ユーベルーナ。俺を庇って__……何をしているんだ俺は。

 

「覚悟なさいライザー! 今のあなたに勝ち目はない! リザインしなさい!」

 

 __俺のせいだ。こうしてリアスの眷属に囲まれるのも、レイヴェル以外の眷属がリタイアになったのも、俺が不甲斐ないばかりに。俺が余裕をかましているばかりに。

 

「__っ」

 

 染まる。感じてしまう。怒りを感じてしまう。リアスへの怒り、囲んでいる眷属への怒り、そして、情けない自分への怒り。

 

「ゆるさん……」

 

 心の奥底から沸々と込み上がる。今まで押さえつけ、押し付けていた感情が膨れ上がる。

 

「よくも俺の眷属を……」

 

 意図せずに呟いてしまう。

 

「許さんぞおお! 貴様らあああ!」

 

  憤慨、 激昂。今の俺を表す怒りが、猛火の魔力として爆発し、周囲を焼き尽くしながら広がった。

 

「キャアア__」

「__くあっ!」

 

{リアス様のビショップ一名、ルーク一名、リタイア}

 

「__あ"あ"ああ!」

「アーシアああ!」

「コネコっ!」

 

 どうやら今の衝撃で二人はリタイヤしたようだな。だがな。俺のこの感情は! 収まらない!

 

「はあああ!」

「っチイ! 速い!」

 

 猛火の勢いが収まりが付くと、リアスのナイトが襲ってきた。四肢を切り刻まれるが、切られたそばから再生していく。__この速さは確かに手を焼く。

 

「っぐ!」

「ッシィイ!__」

「このっ。ックソがあああ!」

 

 捉えられない。炎を纏わせた蹴りも、火球を放っても、ことごとく空を切る。思う様にいかない。だからこうも怒りが積もるのか。__ならばなりふり構わない。フェニックスの戦い方を、思い知らせてやろうかあ!

 

「っく! どれだけ切っても決定打に!」

「ああそうさ! フェニックスを! 舐めるなあああ!」

 

 自分を鼓舞するかのように大いに叫ぶ。そして自らの体を刃に突き刺しに行く。今の俺には痛みなぞ他愛ない!

 

「っな!」

 

 驚き、反応が遅れる今、腕を強引に掴み、引き剥がせないように炎を纏わす。

 

「__っ」

「うせろ!」

 

 そして凝縮させた炎の魔力をナイトの胸に当て、起爆する。

 

「__」

 

 爆音と灼熱とともに吹き飛ぶナイト。声にならない声を悲鳴に、回収される。

 

{リアス様のナイト一名、リタイア}

 

「木場あああ!」

「そんなっ!」

 

 これでナイトは退場した。だがまだだ。俺の怒りはこんな物じゃない。

 

「っ!」

 

 そうだお前だ。……お前がユーベルーナを倒した。俺を庇ったユーベルーナをリタイアさせた。

 

「これで!」

「っぐううう!__」

 

 魔法陣が展開すると、雷撃が落ちてきた。ユーベルーナと同じようにまともに受けた俺は、苦痛を抑えられなかった。だが開いた口をすぐに閉じ、歯をすり減らす様に耐えた。

 

 英雄の施しで威力が上がっただろう雷撃。いつもの俺なら耐えられない。意識を無くしただろう。……だが今の俺は、今の俺は! こんなモノは__

 

「__あ"あ"ああ!」

「っ! そんなっ!」

 

 魔力を膨脹させて、雷撃をかき消す。怒りと共に溢れ出る魔力のせいか、目じりに炎が細くとめどなく噴き出し、噛み締める歯の隙間から吐息すらも炎を発する。

 

「フーっフーっ!」

 

 炎の翼をあおがせ、空に浮いているクイーンに向かう。倒すために、焼くために、焦がすために。

 

「行かせない! っは!」

「ドラゴン・ショット!」

「それ!」

 

 リアスの魔力が顎を消す。ポーンの一撃が腹を貫く。クイーンの雷撃が俺を飲み込む。どれも瀕死に陥る攻撃。だがどの攻撃も、俺を止める事はできない。__フェニックスには届かない。

 

「お"お"おお!」

「っぐ!」

 

 クイーンの抵抗が激しくなる。近づかせないと言う強い意思が雷撃として現れる。

 凄まじい速度で展開する雷撃の魔法陣。上から下から、左右から斜めから、四方八方、一撃の合間に次の一撃が襲う。

 

「ッチィイ! クソがああ! 貴様は焼く! 燃やしてやる! 焼き尽くしてやる! そこにいろおおお!」

 

 必死に避けるが間に合わない。絶え間なく雷撃が襲う中、体のどこかが必ず消える。

 だが意識せずに再生した部分が炎と化している。それに気づいても何も思わなかった。ただ思っていたのは一つ。クイーンを燃やす。

 

「ハッア"アア!__」

 

 既に体と言われる部分はない。この顔さえも炎と化している。そして燃ゆる炎と化してなのか、襲い来る雷撃がなんの抵抗もなくすり抜ける。__ならばこれで。

 

「__」

 

 一直線にクイーンの許に襲い掛かる。鳴りやまぬ雷の音。四方に展開し続ける魔法陣が、クイーンを守る様に、俺に向けて正面に展開された。

 発動。高威力の雷撃が俺を飲み込む。だが炎と化した俺は止まらない。すり抜ける雷を感じながら、魔法陣を抜ける。

 

 PKYHOOO__

「っな! フェニックス!?」

「だめだ! 朱乃さん!」

「っく!」

 

 膨れ上がった炎と化した。勢い付いた速度で、通り過ぎるようにクイーンを呑み込む。炎から伝わるクイーンの悲鳴。それを感じ取るとアナウンスが鳴った。

 

{リアス様のクイーン一名、リタイア}

 

「っそ、そんな……」

「っく! 朱乃さん!」

 

 クイーンを倒したからなのか、膨れ上がった魔力が徐々に収まる。それを感じながら確かに再生した脚で地に足をつける。

 

「……残るはお前たちだけだ」

 

 少し冷静になって指摘した。ポーンに指差し、リアスに指差し、他にはいないと認識させる。

 

「……ここまでとはね、ライザー」

「……」

「私の知る限り、今までの貴方はこうではなかった。どの記録を見ても今の様に怒りに駆られてはいない」

 

 そうだ。間違っていない。冷静な今ならわかる。どのゲームでもここまでの怒りは感じた事はない。いつもなら皮肉の一つでも言っているだろう。

 

「それがどうした。まさかなんで自分の時だけ……なんて思ってないよな」

「そんな幼稚な事、思いもしなかったわ」

 

 ……なんとも気が強いことだ。次々とリタイアしていく眷属を見ていても尚、俺を煽るか。

 

「ふん。威勢がいいなリアス。……賢いお前の事だ、不死鳥である俺相手に勝てると思っていまい」

「……」

「それに相まって思っただろう。今の俺には、__どうしても勝てない」

「……」

 

 睨みを利かせるリアス。まだ諦めていない。真っすぐ射貫く瞳がそう思わせる。

 

「どれだけ俺を睨もうが、お前たちに勝ち目は__」

「__だまれよ……」

 

 勝てないとわかって顔を伏せていると思っていた。拳を握りしめ、籠手と化している腕を振るわせている。リアスのポーンが口を開く。

 

「勝ち目が無いって……」

「……」

「不死鳥だからって……、不死身だから負けないって……、そんなの知るかよ!」

≪Boost!≫

 

 勢いよく上がる顔。俺を睨むその目じりに涙が浮かんでいる。

 

「怒っているお前に勝てない! そんなの知るか! 俺もなあ! お前以上に! キレてんだ!」

≪Boost!≫

「部長のためにみんな強くなった! 部長への愛を証明した!」

≪Boost!≫

「だけどみんなやられた! お前に!」

≪Boost!≫≪Explosion!!≫

「うおおお!」

 

 音声が告げ終わると、俺を襲ってきた。ブーステッド・ギア。その一撃を受けたら一溜りもない。必死に拳を揮うが、ナイトに比べるとスピードは雲泥の差だ。問題なく避けれる。

 

「ッフン!」

「っぐは!」

 

 ポーンを吹き飛ばす。転がり倒れ、起き上がるその表情は苦悶だ。

 

「イッセー!」

「だ、大丈夫ですよ。これくらいっ!」

 

 リアスが駆け寄り、立ち上がるのを支えている。……なんとも苛立つ。

 

「こんなものか、リアスのポーン」

「まだだ。っまだだ! こんのおおお!」

「イッセー!」

 

 静止させるリアスの手を振り払い、再度俺に立ち向かってくる。それを見た俺は、手に炎を纏わせる。

 

「っく!__」

「遅い!」

「っぐおっ」

 

 振り切った腕を躱し、纏わせた拳で腹を深く突き刺す。唾液が漏れくぐもった声で苦悶し、その場で蹲ろうとしている。

 

「ふん。おしま__」

「っドラゴン__ショットォ__」

「っ__」

 

 瞬間、撃たれる。意識が薄れるのを耐える。それを目にした時には視界が赤に染まっていた。この衝撃。凄まじい!

 

「っだはっか!」

 

 容赦なく吹き飛ばされた俺は、コンクリートの抵抗を背中に感じ、反発する反動で止まった。唾液を噴き出すのを止められない。

 

「っぐ、はあ……はあ!」

 

 正直舐めていた。あのポーンだから舐めていた。大した事はないと。だが、なんだこの有様は。たった一撃で優位だった状況が一変した。__ふざけるなよ。腹立たしい。それと同時に関心する。やはり赤龍帝、ブーステッド・ギア。

 

「はあ、はあっ何! __チイ! 再生が」

 

 魔力の消費を考慮せず戦った。今みたく再生の勢いが追い付かず、体が重くなるのは時間の問題だった。

 

「うおおおお!」

 

 魔力の塊が目に映る。また打つ気かっ。__だめだ、今それを貰うわけにはいかない!

 

「ドラゴン・ショットおお!」

「っふ!」

 

 撃たれると同時に、翼を広げて上に飛び回避する。コンクリートを容易く呑み込み、破壊する魔力を見ていると、当たっていればやられていたと、つくづく思う。そして俺はそのままポーンに迫る。

 

「避けられた!」

「__このおお!」

「っぐが!」

 

 ポーンの首根っこを掴み、フィールドの端に生い茂る木に押し付ける。強く締め、強く木に押し付けられるポーンの苦痛が響く。

 

「はあ、はあっ調子に乗るなよ! 一撃当てたからと言って、はあ、俺は倒せない!」

「っぐ、ぐううう!」

「諦めろ。っはあ」

「ごの"! ま"だま"だ!」

「__っごは!」

 

 ほざけ。そう思っていると、米粒程の魔力を作りだし、瞬時に俺に放った。胸に当たる衝撃は、ポーンを放すには十分な威力。

 

「っはあ、ふざ、けるな!」

「お、俺は! 諦めない! あ"あ"!」

 

 かけ声と共にポーンが拳を揮う。それを見て避けようとしたが、体が、重い!

 

「ッブハ! っぐ!」

 

 視界がブレる。重く俺を断つ一撃で意識が飛ばされそうになる。だが、倒れるわけにはいかない! 重い足をしっかり踏みしめろ!

 

「オラ"ア"ア!」

「っだは! ぐうう!__」

 

 殴られ、脚に力を入れて、振り向く勢いを拳に乗せて殴る。だが倒れない。こいつは、倒れない!

 

「はあっ、はあっ、まだまだあああ!」

「__このっッブ」

 

 殴られ口の中を切ったのか、血が口から噴き出る。__もう魔力が尽きる。再生も追い付かない。だが、それでも。倒れるわけには、いかない!

 

「っあ"あ"ああ!」

 

 殴る。

 

「っごは! ぐぅうああ!」

 

 殴られる。

 

「ッか! っはあ、はっあ"ああ!」

 

 殴る。殴られる。

 

「っっぅ! はあ、はあ……あ"あ"ああ!」

 

 殴る。殴られる。

 

「あ"あああ!」

「あ"あ"あああ!」

 

 意識が薄れていく度に、負けられないと奮い立つ。今こうして、満身創痍なポーンも同じ事を思っている。もうお互いに分かっている。

 

「はあっはあっオラアア!」

「__ブハっ! はあっんぐ、はあ! クソがああ!」

「__っぐぅうう! はあっ、はあああ!」

 

 幾度も殴り合った。倒れろ。倒れろ。幾度も思った。だがこいつは、拳を交わす度に力強い意志を乗せてくる。

 

「イッセー!」

「っ!」

 

 まずい! 今リアスの魔法で攻撃されたら__

 

「ぶ、部長!」

「イッセー今援護を__」

「やめてください! はあっ」

「!?」

 

 何を、言っているんだ。何故止める! 確実に有利になるんだぞ!

 

「こいつは、俺の手で、倒さないと、ダメなんです!」

「イッセー……」

「俺もみんなみたいに、部長への愛を__証明したいんです!」

「……」

「もう張り合いなんですよ。……男と男の、意地の張り合い! だから手出しは無用です!」

 

 意地の張り合い……。そうか。いつの間にか、俺もどこかでそう思っていた。っはは。そうか。

 ……だが、今は隙だらけだぞ!

 

「__っぐ!」

「イッセー!」

 

 リアスに向けて、ポーンを蹴り飛ばす。転がり倒れ、起き上がろうとする。リアスが手を貸そうとするが、否定し、己の力で起き上がった。

 

「まっだだ! 俺たちのっ、俺の愛はっ、折れはしない!」

 

 __まだ立つのか。脚が震えて立つのもやっとなのに。

 

「力を出せよっ、ブーステッド・ギア。こんなもんじゃないだろっ! 勝たなきゃいけないんだ! くれてやるよ!」

「お、お前!」

 

 わかる。わかってしまう。ポーンは力と引き換えに、自分を犠牲にしようとしている。

 __ああ。愛なんだ。ボロボロになって、何度でも立ち上がる。愛を証明しようとしている。そのためには犠牲を惜しまない。__なるほど。ならば!

 

「来いポーン! 何度でも挑んで来い! お前の覚悟が本物なら! 膝を付かせに来い! 俺を倒して見せろ! お前のリアスへの愛が本物なら! 俺からリアスを引き離せええ!」

「当然だあああ!」

≪Dragon Booster Second Liberation Twin!!≫

 

「なに!? 右腕にもだと! だがそれでいい! そうでなくては!」

 

 仮にも英雄に施しを受けたんだ。こうでなくては! 

 

「行くぞライザー! 俺の愛を! お前に見せてやる!」

≪Boost! Explosion!!≫

≪Boost! Explosion!!≫

 

 両方の籠手から音声が響く。俺を倒すために高らかに響く。

 

「いいだろう! 俺を倒しに来い! ポーン! イッセエエエ!」

「はあ"ああああ!!」

 

 お互いに距離を詰め、叩きのめすために腕を揮う。炎を纏わせた俺の拳が、奴の突きだす左拳と衝突する。

 

「っぐ!」

 

 衝撃波が広がる。押し勝つ炎。左籠手が瞬時にヒビが入り、粉々に砕ける。それを確と見届けた。__だから遅れた。

 

「ぬぉおりゃあああ!!」

「__」

 

 奴はわかっていた、左が砕ける事を。瞬きをする間もなく瞬時に左を引き、もう一つの籠手で止めを刺しに来た。

 

 迫りくる拳は、不思議と怖くわなかった。なぜなら拳に乗っている。リアスへの愛が。

 

「__それでいい」

 

 そして俺は、感じたかもわからない強い衝撃に、意識を刈られた。

 

 

 

 

 

 

 

「__っ」

 

 こ、ここは……。……ああそうか。体がだるい。魔力を使い過ぎた。ああ__負けたのか、俺は。

 

「ライザー様。お気づきになられたのですね」

「ユーベルーナ……」

 

 優しく、そしてハッキリとした言葉で語りかけてきた。俺の肩を支え起こす様子を見るに、俺よりかは体力が戻っている様だ。

 

「ライザー様」

「みんな__」

 

 ユーベルーナだけじゃなく、眷属全員がここにいた。安心した様に、みな口々に俺の回復を喜んでいる。……俺もみなの元気ある姿を見て、思わず顔が緩む。__だが俺はレーティングゲームに__

 

「すまないみんな。負けてしまったよ……」

「……」

「よくやってくれた。……よく奮闘してくれた。俺は誇らしい」

「……」

 

 そうだ。みな俺の為に戦ってくれた。俺の将来を思って奮闘してくれた。それぞれ予想以上に成長を遂げたリアスの眷属相手に、頑張ってくれた。

 __時間の猶予はこちらにもあった。大して強くはなるまいと、リアス達を括っていた。そう心のどこかで思っていた。

 

「慢心した結果だな……」

 

 自分に言い聞かせるように、そっと呟いた。__こんな主じゃ眷属達はよく思っていないだろうな。まったく、情けない。

 

「ふふ」

「っくす」

「……無様に負けた俺を笑うのは構わないが、俺の居ない所でやってくれ。自分でも無様だと思っている」

「違いますよ、お兄様」

「レイヴェル……」

 

 何が違うんだ。笑うだけならマシ。俺がそっちの立場なら皮肉の一つでも言っている。

 

「嬉しいんです」

「__な、なにが」

 

 嬉しいだと……? なぜそう思う。起きたばかりで理解できない。本当に何を言っているんだ。

 

「そうやって一人一人に目を配らせ、よくやったと褒めて下さいました」

「当たり前だ。本当によくやってくれた。本心だ。俺が労わなくて誰が労う」

「ふふ。どうやら、本当に気付いていないのですね」

 

 ……わからない。レイヴェルは何を言っている。……リアスのポーンにやられて、頭がどうにかなったのか俺は。

 

「わからない。そんな顔をしていますね」

「あ、ああ。教えてくれないか、レイヴェル」

 

 レイヴェルが俺の許に歩いてきた。ユーベルーナに支えられている俺。その力なく布団の上に置いている手を優しく握ると、こう口にした。

 

「お兄様は心から褒めて下さいました。今までのお兄様ならこうは言いません。__変わられましたね、お兄様」

「__ぁ」

 

 噛み合わなかった歯車が、噛み合った。心に空いた小さな穴が、レイヴェルの言葉で優しく埋まる。__そうか。……俺は__

 

「俺は、変わった……」

「眷属の方たちは、いい方へ変わったと喜んでいると思います。まあ私は、昔の素直なお兄様に戻っただけと思っていますが」

「ぁはは。っはは」

 

 自分がバカらしくて首を左右に降って笑ってしまう。まったく、妹によって思い出させるなんて。

 今にして思えば、悪魔の仕来りを認知し、それを準ずるあまりに、心がすさんでいったのかもしれない。広かった視野が狭まり、選択肢を自分から捨てていた。気付いてすらなかった。

 でもそれは俺だからだ。俺が弱いあまりに、それに陥った。他の悪魔も、俺と似たようなモノに陥っているだろう。しかし、中には強い芯を持ち、ぶれない心を持った悪魔も確かにいる。

 

「ふぅ。まったく。世話の焼ける兄ですね」

「よくできた妹を持ったもんだな」

 

 妹だけじゃない。ユーベルーナも眷属のみなも、本当に頼もしい。

 

「気づいたか」

「お父様、お母様」

「っぅ」

 

 開いている扉から、険しい顔つきで入ってきた。……当然だ。家の看板に泥を塗った。叱りや怒りを受けるのは、決まっていた事だ。

 険しい顔の両親を見るのは、なかなか億劫だ。だが、これも次に繋ぐための一つ。前向きに取ろう。

 

「負けてしまったな」

「はい」

「私たちがどういう思いでここに居るか、わかりますか?」

「……はい」

 

 息苦しい。お叱りを受けるのは、随分と久しぶりだ。両親の言葉、突き刺さる視線が、余計に息苦しく感じさせる。

 

「婚約は破談になった」

「っ」

「当然の処置です。ゲームに負けてしまったのだから」

 

 何も言えない。弁明すらできない。思わず顔を伏せてしまう。……只々黙って叱られるしかない。

 

「……」

「……」

 

 っ二人の無言が、俺をより追い詰める。……中々きついものだな。さて、俺は何を言えば__

 

「顔を上げなさい。ライザー」

「っ」

 

 不意に聞こえてきた。__優しくつづられる言葉。……違うはずだ。今のお母様が言うはずない。俺の、聞き間違いだ。

 

「……どうしたライザー。顔を上げなさい」

 

 まただ。また優しい。次はお父様だ。__どうやら今の俺は、自分が思っている以上に現実を逃避したいらしいな。っはは。情けない。

 

「お兄様。お顔を」

 

 __はあ。覚悟を決めよう。往生際が悪いぞ俺。もういい大人なんだ。そう思って意を決し顔を上げた。

 

「__。……ぇ」

「っふむ」

「ふふ」

 

 な、なんだ。なぜだ。なぜお父様もお母様も、レイヴェルも笑顔なんだ。さっきまでの険しい顔はどこに__

 

「よくやったな。ライザー」

「ぇ」

「よく、頑張りましたね」

「な__」

 

 何を言っている。違う。違う! そうじゃない! 俺は!__

 

「何を言っているのです! 誉る事は何もしていない! むしろ泥を塗った! ゲームにも負けた! 家に汚点を残した! それなのに__」

「ならお前は私たちに怒鳴られたいのか」

「そ、それは!」

「起きたばかりです。落ち着いてちょうだい」

 

 お母様の言う通りに落ち着いてみる。……解らない事だらけだ。なんなんだ……

 

「ライザー。私たちは本当に怒っていないのだよ」

「な、なら__」

「そうよライザー。怒る事なんてないの」

「それは、なぜですか」

「また一つ、皮が剥けたのよ」

「そうだ。……成長したな。我が息子よ」

 

 そう言って手を握ってきた。レイヴェルと握られている手を重ねる様に。

 

「……っ」

 

 こみ上げてくる。三人が握ってくれている手を見てると、温かみを感じてると、余計に。……だがそれは堪えた。それは俺のプライドが許さない。

 

「いいかライザー。フェニックス家の名を重みにするなとは言わん。っふふ。もう少し力を抜け」

 

 そう言って、空いた手で俺の髪をくしゃくしゃに撫でた。

 

「戦っていたあなたは、どこか子供の頃を彷彿とさせました。よく言えば、無邪気でした」

 

 そう言って、空いた手で俺の頬を撫でた。

 

「__っく」

 

 俺はなんて言えばいいんだ。責める事もなく、怒る事もなく、ただ俺を褒める。

 

「なぜです。なぜそこまで__」

「我が子の成長を喜ばない親がどこにいる」

「そうです。結果は負けたとしても、誰もあなたを責めません」

「むしろ讃えてくるさ。よくやったと」

「そうですねあなた」

 

 お互いの顔を見合う二人。その笑顔は紛れもなく喜んでいた。__はは。

 

「ようやく笑ったなライザー」

「っそ、そんなんじゃ」

 

 こそばゆい。悪い気分ではないが、眷属の目もある。だが横目で様子を見たあたり、みな笑顔だ。

 

「良いのですよ。喜びなさい。例え先の戦いを無様と言う輩が現れたら、私たちは許しません」

 

 そうですよね。エイジさん。

 

「もちろんです」

「っ!」

 

 胸が締め付けられる。開けられた扉から出てきた。凛としている佇まいの、英雄エイジ__

 

「……」

 

 こちらに歩いてくるエイジ様。俺はどうしても、目を合わせれなかった。自然に目をそらしてしまった。いったい俺は、どんな顔をして合わせればいいだ。

 

「ライザーさん」

「っ」

 

 ……最後に聴いた棘のある口調ではなく、そっと優しく呼ばれた。それを聞いた俺は、顔を向けた。__目を合わせた。

 

「……」

「……」

 

 真っ直ぐな瞳。曇り一つない眼。俺が心の奥底で恐れていた瞳はそこにはなかった。……今なら言える。真っ直ぐ目を見て、言える。謝罪を。

 

「エイジさ__」

「ごめんなさい。ライザーさん」

「っ!」

 

 な。な、何をしているんだ、この人は。俺の目線に合わせてから、頭を下げた。

 

「あんな事があったとはいえ、ライザーさんを傷つけてしまった! ライザーさんの心に、傷をつけてしまった! オレは__」

「何をしているんだ! 何をしているんですか! あなたが俺に頭を下げる事は何も無い! 悪いのは俺なんだ! し、示しが付かないでしょう!」

 

 思わず声を大にして言ってしまう。あなたは悪くないんだ。悪いのは__俺なんだ。

 

「その示しと言うのは、オレにとっては何の意味もない! みんなが捲し上げる英雄としての示しなんて、オレにはどうでもいい!」

「っな!」

 

 頭を下げたまま、そう言い切った。

 

「オレに必要な示しは他でもない。ライザーさん。あなたへの誠意と謝罪だ。ごめんなさい」

 

 なんで。なんで俺みたいな奴に頭を下げる……。……そうか。この人は俺とは違う。示しに固執しているのは俺だけか。__っはは。

 

「エイジ様。……顔を上げてください」

「……」

 

 俺の言葉を聞いて、重くゆっくりと顔を上げた。揺らぎない瞳は俺の目を射抜く。その目は真剣そのものだった。__わかった。次は俺だ。

 

「エイジ様。俺はあなたを許します」

「ライザーさん……」

「俺にはハッキリとはわからないけど。俺が悪いのに、どうしても謝るその姿勢に、心打たれました」

「__ありがとう」

 

 見当はずれなのは承知だ。自分でもどう言っていいかわからない。__そして記憶が過る。

 

「……俺はリアスを傷つけてしまった。……元々、そんなつもりはありませんでした」

「うん……」

「でも、見せつけたかった。子供みたいに見栄を張って。俺はここだぞと、どうだ凄いだろう、と。だから見っとも無く豪語してしまった……」

「……うん」

 

 静まり返る。ただ俺と英雄のやり取りを、行く末を見守っている。そのせいか、エイジ様の声がよく響いた。

 

「__当然なんですよ。あなたは大切にする。仲間を大切にする。悪魔の大多数は分かりきっている事なんです」

「……」

「でも俺は調子にのった。……だから、ああなった」

 

 思わず空いている手で顔を覆う。__こうしていると思い出す。無惨に砕かれた。俺の期待が、俺の気持ちが。

 手で覆い、少し隠しているからだろうか。思わず口にしてしまう。

 

「俺は。……ぉ俺は、あなたにっぁ憧れていたっ」

 

 声が震えてしまう。止める事はできない。出来やしない。

 

「み、認めてっほしかったっ。ぉ俺をっ見てほしかったっ!」

 

 ユーベルーナの温かみを感じる肩を、揺らさずにはいられない。今まで堪えていた感情が、嗚咽が、噴水の様に流れ出る。

 

「っぐ。っ子供のころから思っていた、っあなたの様になりたいとっ! ぁあなたの様に! 優しぐっなりたいとっ!」

 

 だめだ。もう自分が何を言っているのか分からない。

 

「でも"っ! 叶わなかった! っぐっハっ、憧れたあなたとは、かけ離れてしまった!」

「……」

「俺は! ぉ俺はああ!__」

 

 溢れ出る感情を、コントロールできない。もう、しなくていい。

 

「__っグス!」

「ライザーさん……」

 

 不意に覆い隠していた手を、抵抗する間もなく引き剥がされた。エイジ様がそうした。__ああ。見られてしまった。俺の泣き顔。涙と鼻水だらけの顔を。

 

「ライザーさん。オレはね、あなたや他の悪魔が思う様な英雄じゃないんだ」

「__っ」

「笑ったりもするし、泣いたりもする。そして一番分かっているよね、怒ったりもする」

「__っくぅ!」

 

 エイジ様が発する度に、首が縦に動いた。なんの抵抗もなく受け入れていた。

 

「だから。友達になってほしい」

「__ぇ」

「友達に、なってほしいんだ」

 

 そう言って、握手をしてきた。しっかりと握られた。涙と鼻水で濡れた手を。

 

「ぅうっおにいさま__」

「__っぅ」

 

 レイヴェルとユーベルーナの声が震えている。二人には特に心配をかけた。

 

「以前のあなたなら、こんな事にはならない」

「__」

「でも今のあなたは、あなたが思い抱き、憧れた英雄に、ここに居る誰よりも、一番近い」

「っ!」

「そんなあなただからこそ言える。友達になってくれ。ライザー」

 

 そして強く握られた。俺の手を包む様に、両手で。__そして、俺は__

 

「__ぁあ。っぐ! __くうぅぅあ"あ"ぁああ__」

 

 誰の目も憚らず、声を抑えきれず、表情がくしゃくしゃになり、ただひたすらに、心に従った__

 

 

 

 

 




今回で不死鳥編は終わりです。
次もね、ボチボチやります。

FG〇のフレンド申請、マジで数人来て草。
アニキ達、アリガト那須。頼りにしてるぜ!

感想待ってます!

アディオス!
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