ブォンッッ
そんな擬音が聞こえそうな程の勢いで三頭六腕の喰種が腕を振るう。
オレは即座にアタッシュケースから二本の【ツナギ(尾赫)】を取り出し、一本目のツナギで腕をいなし、もう一方のツナギをその腕に振り下ろす。
ギャィインッッ
が、硬い骨のような物で阻まれツナギは腕を三分の一程切ったところで止まる。
「このゴツゴツ、鱗赫か!
相性が良くて切り落とせないとは……」
赫子には4つ種類があり、肩から生えるのが羽赫、背中から生えるのが甲赫、腰から生えるのが鱗赫、尻から生えるのが尾赫とそれぞれ性質が違い、赫子を飛び道具に出来る羽赫はその硬さから盾に向いている甲赫に弱く、甲赫は攻撃力の高い鱗赫に弱く、高い攻撃力と引き換えに防御力の低い鱗赫は堅実な尾赫に弱く、決定力の無い尾赫は遠距離から攻撃出来る羽赫に弱いという風になっている。
説明から分かると思うが、鱗赫の腕が尾赫のツナギ防いでいるのはおかしい。
「まぁ、だから何だという話だがなッ!」
ギャィインッッッブチッ
いなすのに使ったツナギを逆側から振り上げて同じく三分の一まで切り、二本のツナギで全力で捻じ切る。
「ギィヤァアアアア」
三頭六腕の喰種が痛みに叫びながら肩から赫子を生やして散弾のようなものを放つ。
オレはツナギを全力で振り回すことでそれらを叩き落としながら有馬特等や什造、ハイルのいる所まで下がる。
「まさか腕を切り落とすとは思わなかったよ、茶屋三等」
「大活躍ですサブロー」
「……チッ」
有馬特等と什造からは賞賛を、そしてハイルからは露骨な舌打ちをされた。
ヤバいよオレ、背中刺されるんじゃねえの?
というか、
「有馬特等、他の方々は?」
「この喰種……仮に[アシュラ]とするが、[アシュラ]は半赫者、羽赫と鱗赫の二種持ち、さらにこの異形はおそらく"赫子の化け物"だ。Sレートはくだらない、SSレートどころかSSSレートもあり得る。そんなの相手に並みの新人では足手まといになると思ってね。君たちも危険だと思ったら撤退するように」
SS確実!
昇進はもちろん
什造もハイルも目がギラッギラである。
什造はクインケの制限を無くす為でハイルは有馬特等みたいになる為だろう、有馬信者らしいし。
それに比べて有馬特等はものすごく冷静だ。
梟(SSSレート)を圧倒したらしいし当然か。しかもそれで二等から上等になったらしい。
ちなみに赫者と言うのは喰種同士で共食いした際に赫子、赫胞を作るRc細胞を大量に摂取したことで赫胞が変質し、赫子の形状が変わって全身に纏えるようになった喰種の総称である。
その中でも肉体の一部にしか纏えてない者は半赫者と呼ばれる。
改めて[アシュラ]を見る。
硬い骨のようなもので覆われた六本の腕、三つある頭部にそれぞれある仮面、背骨のような形状の赫子、その赫子から生えた身体を守るように覆っている肋骨のようなもの。
……半分どころか八割くらい完成している風に感じるのは気のせいだろうか?
まあ、下半身には何も無いから半分、なのか?
ブワァッ
いつの間にかアシュラが羽赫を大きく開いていた。
「茶屋、鈴屋、ハイル。俺の後ろに来い」
有馬特等がそう言って前に出ると同時にアシュラが散弾の雨を放つ。
しかしそれらは有馬特等が取り出した【IXA(甲赫)】の防壁によって防がれる。
散弾の雨が終わると同時に什造が【サソリ1/56(尾赫)】というナイフ型のクインケを左右に4本ずつ持って飛び出していた。
オレとハイルも一瞬遅れて飛び出す。
「び、び、尾〜か〜くッッ!!!」
そう歌いながら次々とサソリを取り出して[アシュラ]に突き刺していく。
あれ?三等捜査官って支給クインケ一本だよな。
……なるほど、あいつもパクったのか。
「はよ死にゃせ!はよ!」
ハイルが笑いながら[アシュラ]を切り裂きまくり、有馬特等が変形したIXAの遠隔操作で[アシュラ]に穴を開けまくる。
あれ?「SS確実」とか「もしかしたらSSS」とかってどうなったの?
ここに至ってオレは悟った。
(普通にやってたら功績全部掠めとられる……!)
普通にやったらダメ。
なら普通にやらなければいい。
例えば、立体起動で背中から不意打ちとか。
だが、立体起動装置は無い。
ならどうすればいいか。
簡単だ。
「ーー俺自身が、立体起動装置になることだぁああああッッ!!!」
助走をつけて壁を蹴り、勢いそのままに天井を蹴り、飛んでくる散弾を身体をひねったりツナギで弾いたりで凌ぎ、そしてーー
「縦1m幅10cm。
獲ったぁあああああッッッ!!!!」
ザシュッッ
二本のツナギが背骨のようなものを切り裂き、
ーーー[アシュラ]の腰の赫胞を抉り取った。
頑張った。