とあるカルデアに茨木童子が召喚されたようです   作:九蛇

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Fate/GrandOrderに実装されている茨木童子の二次創作です。
誰かが似たような話を投稿していようと特に後悔はしていません。
あと、ばらきーはかわいいなあ!


茨木童子がカルデアに召喚されました

 

(われ)の名は茨木童子。大江山の鬼の首魁よ」

 

 

 人類史の観測・保持を使命とする『人理継続保障機関』、カルデア。

 とある人物による歴史介入で人類史が焼却されてしまい、カルデア外の世界は消滅したとされ、カルデア内は一種の異世界、または特異点のような存在となった。そして、カルデアの中で唯一無事なマスター候補の1人が、最後のマスターとなり人類史を取り戻す為、日々、戦っている。

 

 そんな中、カルデアにまた1騎のサーヴァントが召喚された。着崩した黄色い着物を身に纏い、2本の(いか)めしい角を額から生やした鬼の娘――茨木童子

 

 

「……や、やっと来てくれた……」

 

「やりました、先輩!茨木童子さんが来てくれましたよ――

先輩っ!?」

 

 

 黒髪の彼――最後のマスター――は召喚された者が茨木童子であるということを知ると同時に、糸の切れた人形のようにパタリと前に倒れてしまった。

 

 

「先輩!大丈夫ですか?――良かった、気を失っているだけのようですね。」

 

 

 マシュ――眼鏡をかけた薄紫色のボブカットの少女――はうつ伏せに気絶した彼の容態を念入りに調べ、特にこれといった外傷はなく、彼の口から漏れたうわごとが聞こえてきたので精神的に疲れただけなのだと分かった。彼女は安堵の表情を浮かべ、冷静に対処していく。

 

 

「茨木童子さん、すいません。本来であれば、召喚されたサーヴァントは先輩と少し話し合ってもらい、カルデアの中の案内をしたりと色々なことをする予定なのですが……」

 

「クハハハハ、吾ほどの鬼となればただ()るだけで人を畏怖させる!栓無きことよ!」

 

 

 鬼である彼女は嬉しそう少し顔を綻ばせ、それでも威厳ある態度を崩さないでいた。

 

 

「しかし、どうしましょうか?」

 

「ほな、うちが案内しよか?」

 

「しゅ、酒呑!?」

 

「よろしいのですか、酒呑さん?」

 

 

 そんな中、同じ部屋にいた酒呑童子――煽情的な見た目の鬼のサーヴァント――は愉しそうに口元を綻ばせながらある提案をする。

 

 

「うちがしてもろたみたいに、茨木を道案内するだけやろ?せやたら、うち一回やってみとぉ思ててん」

 

「それなら、いいのですが。とりあえず私は先輩をベッドで休ませてきます。念のため、ドクターも先輩の部屋に来て下さい」

 

 

 マシュは申し訳なさそうにそういいながら、顔を青ざめながら石が…、お金が…と(うな)されている彼を抱き上げる。先輩の状態が安定したらすぐそちらに向かいます、とそう言い残して早足で去って行った。

 

 

  ◆  

 

 

「クハハ! ここでもまた、酒呑と共に居られるとは……なんたる僥倖(ぎょうこう)!これで平安の都にて悪逆の限りを尽くさんなど(くわだ)てようものなら……鬼の血が(たぎ)るというものよ!」

 

「ふふっ、そないに角尖らせて、ヤンチャしぃとき?雇い主を困らせたらあかんよ?茨木」

 

「う、く……酒呑がそう申すのであれば、吾はそう(みだ)りに暴れぬとしよう」

 

 

 カルデアの廊下を歩く鬼が二人。片方は再会、そして再び大江の山と同じように面白可笑しく時を過ごすことができることへの喜びを噛み締め、相好を崩す茨木童子。

 一方もう一人の鬼はというと、これからおこる様々なことを(さかな)とし、薄笑いを浮かべながら赤漆の杯に並々と注がれた酒を呑む、酒呑童子である。

 

 

「だが、酒呑。吾らは今、何処に向かっているのだ?」

 

「んふふ、今から行くんはただの挨拶回りや」

 

「――――ほう。吾は理解したぞ。この挨拶回り、一見ただのサーヴァント同士の親交を深める為のもの……しかし!これは英霊としての格の違いを見せつける、いわば、儀式のようなものであるとみた!

然らば!如何なる者であろうともこの茨木童子の威光の前に平伏させてやろう!!」

 

「うふふ、さすがは茨木、ようできた鬼やなぁ」

 

「そう褒めるな、酒呑。このようなこと、鬼として当然のことよ」

 

「ほな、その鬼の首魁の威光見せてもらおか」

 

 ほれ、ここや。と、二人の鬼はいつの間にか、『狂』と書かれているシンプルな扉の前にたどり着いていた。

 

 

「せやせや、確かここが茨木が寝泊まりする部屋やった気ぃするわ」

 

「ふむ、まぁ見ておれ」

 

 

 召喚される以前から鬼としての威光を示す為、仲間と共に様々な啖呵(たんか)勘案(かんあん)してきた。ただ数回、言葉を交わすだけで吾の前にひれ伏すようにするなど、赤子の手を捻るよりも他愛のないことよ!!

 意気揚々と茨木童子は目の前の扉を開け―――

 

 

「吾の名は茨木童子!魑魅魍魎(ちみもうりょう)跋扈(ばっこ)せし大江の山の鬼が首魁であり、大江の四天―――」

 

「ジャンヌゥゥゥゥッ! ジャンヌ、ジャンヌ、ジャンヌジャンヌ、ジャアアアアアアアアンヌ!麗しの聖処女よ!何故、貴方は召喚されない!こんなにも長い時を過ごしても貴方に会うことは許されない!アアァァァ、ジャンヌゥゥゥゥ!贄が足りぬというのですか!傲岸なる『神』よ!冷酷なる『神』よ!私は、私はァァァァ―――」

 

「クリスティーヌ、あぁ、クリスティーヌクリスティーヌ。我が愛しの天使。こんなにも遠く会えていないというのに、クリスティーヌ、あぁ!名を呼ぶ度に近くに感じる!アアァぁ、クリスティーヌ!クリスティーヌ!クリスティィィィィーヌゥゥゥゥ―――」

 

 

 ―――閉めた。

 

 

「………………」

 

「………………」

 

(……なんかおった) 

 

 茨木童子は一度開かれた閉じられた扉の前に、ただ立ち尽くしていた。何が居たのか、何が起こったのか、果たしてあれらは何なのか、一つ一つ現実を吟味していく。一方、酒呑童子はそのような彼女の振る舞いを見て、ふふふと含み笑いをしていた。

 現状をようやく確め終えた茨木童子は、目線を扉から外さないまま、なんとか声を絞り出した。

 

「……酒呑、あの人間に部屋を変更を申し付けるということは――」

 

「出来ひんやろなぁ」

 

 

 出した意見も空しく散ってしまう。こうなれば、と考えたが『雇い主を困らせてはならない』。先程、そのような命をを貰ったため、実力行使で強引に部屋の変更は無理なのだ。もしも部屋が間違っているならば、そんなことを願わずにはいられない。

 

 

「……く、クハハ!吾も舐められたものよな。あの様な者共と同格に見られておったとは。吾は鬼!狂人など鬼の足元にも及ばぬただの言語を解する畜生よ!なに、少し調教するだけだ。見事な忠犬の如く、鳴かせてやろうではないか!」

 

「ん?なんや、おかしぃなぁ思てたら、部屋間違(まちごう)とったわ」

 

 

 願ってもいない事を言われ、思わず固まってしまう。

 

 

「……それは(まこと)か、酒呑?」

 

「茨木……そんな腑の抜けた顔して。うちが言うこと信じられへんゆうの?うち、悲しいわぁ」

 

「そ、そんなことはないぞ!いやなに、吾もおかしいと思っていたところだ。そもそも、あの様な連中と共に過ごすということ事態、間違っているというもの。いくら鬼が悪なるものであろうと、狂人などと一緒くたにされてはたまったものではないよな!あは、あはははは!」

 

 

 茨木童子は部屋が違うということに安堵し、それを悟られ無いように誤魔化し、話題を変える。

 

 

「して酒呑、何ゆえに血だらけであるのだ?」

 

 

 上擦った声が出ているが、それを気にするものはいない。また、そう問われた酒呑童子の着物は確かに、至る所が赤い血の跡が付いていた。

 

 

「あぁ、これな。別に茨木が気にすることあらへんよ」

 

「そうか、ならいいのだが」

 

「でもそうやなぁ、血ぃべたべたやし、()()()()。せや、うちが洗い流してくる間、同じ部屋の人と仲良うしとくれへん?」

 

「ふっ、酒呑の頼み事と言うのであれば、『仲良く』なってやろうではないか!ただし、鬼流ではあるがな!ククッ、クァーハッハッハ!」

 

 

 なんとか誤魔化せたことにほっとする。何やら、聞き逃した気もするが特に気にしないことにした。

  ◆

 

 

「ここか」

 

 

 茨木童子は一人で扉の前に立っていた。しかし、それは先程のものとは微妙に違い、『バーサーカー』と書かれているこれもまたシンプルな扉であった。

 酒呑童子に本当の部屋の場所を教えてもらい、ようやくたどり着いた場所である。

 

 

「まさか、頭のおかしい連中に出会うとはな」

 

 

 また、話の聞かない狂人が居るのではないか。いや、そうそうあの様な連中はおるまい。未だに収まらない動揺を隠しながら、何者がいるか分からない目の前の扉を警戒する。

 

 

「このままでは、埒が明かんな」

 

 

 よし!例え何人(なんびと)が居ろうとも、吾は絶対に引かぬ!!

 気合いを入れ直し、堂々とした様子で茨木童子は扉を開け放ち―――

 

 

「心して聞けい!吾こそは、人を喰らい、侵し、財を奪う!悪逆の限りを尽くさんとした鬼の首魁!名を茨木童―――」

 

「■■■■■■■■■ーー!!■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ーーー!!■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ーーー!!!―――」

 

「Uaaaaaaaaaaaaaaa!Arrrrrrrthurrrrrrrrrrrrrr!!Shrrrrrrr……!Arrrrrrrrrrrrrrrrrr!Arrrrrrrrrrrrrth―――」

 

 

 ―――即座に閉めきった。

 

 

(大江山(おうち)、帰りたい!)

 

 

 まさか、言葉すらまともに話せない人の形をした獣の巣窟だったとは。その上、黒いし!でかいし!訳が分からないし!おまけに黒いし!

 そもそも、『あーさー』とは何なのか、人の名なのか、物なのか、はたまた新たな酒の銘柄なのか!

 

 閉じられた扉からは先程の叫び声が聞こえず、逆にそれが恐怖感を募らせていく。既に涙目になりかけていた。

 

 

(このまま何処かへ行くか?だが酒呑が――)

 

 その時、酒呑童子との別れ際の会話を思い出す。

 

 

 

『茨木の隣の部屋、小僧の部屋になっとるよ』 

 

『なんだ、金時もおるのか』

 

『ふふっ、おるよ。もう部屋に戻っとるさかい、顔出しときや』

 

『まぁ、酒呑がそう言うのであれば……』

 

『ほな、うちいくわ。あんじょうがんばりや』

 

 

 

 ―――確かに隣の扉には『金時』と書いてあった。

 

 坂田金時、少しばかり因縁はあるが彼奴(あやつ)であるならば、無闇矢鱈と叫ばない。更に、人の言葉を操り、意志疎通も可能である!

 

 どの扉を開けても頭のおかしな者しか現れない現状、その扉はまさしく地獄に仏であった。

 やっとまともな奴に会える、口では悪態を吐きながらもその表情は、少し緩んでいた。

 

 

「金時め……全くもって憎いやつよ!」

 

 

 少しばかり驚かしてやろうと、威勢よく扉を開け―――

 

 

「やい、金時!吾が!茨木童子が来てやったぞ!どうせ退屈しておるのであろう!相撲でもするか?吾が相手になってやっても―――」

 

「まあ金時、どうしてそう逃げようとするのですか……?母は貴方のことを思ってこうして膝枕をしているのに。よよよ……そんなに邪険にされると、泣いてしまいますぅぅ……」

 

「ら、頼光の大将に会えたのは勿論嬉しいぜ……嬉しいんだが、こう……あるじゃん?アプローチっつーかスキンシップっつーか、現にこうしてやってることつーか、そういうのが気恥ずかしいっつかなんつーか……あるじゃん!ん?茨木童子じゃねえか!」

 

 

―――目の前の光景に呆然としてしまった。

 

 

「おや、蟲の気配がしますね……貧相な鬼の娘の次はそのお付きとは、本当に目障りなこと。」

 

 膝枕をしている、所々血で濡れている胸の大きなサーヴァントは、茨木童子を一瞥するとその唇に冷笑を浮かべる。

 

 これは一体どういうことなのだろうか。一つ目の扉には意味の分からない狂人、二つ目の扉にはひたすら叫んでいる狂人、最後の扉には牛のような乳のついた子離れのできていない狂人。

 こんな事が起こり得るのだろうか。一周回って冷静になった頭は、何故こんなことになっているのか、その原因に思考を働かせる。そして、一つの結論に至った。

 

 

「しゅーーーーてーーーーーーーーん!!!!」

 

 

 カルデアは今日もきっと平和です。

 

 

 

 

 




ばらきーはかわいいなあ!
これもう、挨拶代わりにできるんじゃないですかね?
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