とあるカルデアに茨木童子が召喚されたようです   作:九蛇

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一応、時間軸は人理修復済みの設定です。
終始茶番のような気がしますが気にしてはいけません。


子供と大人・承

 

「『どうしたら子供は大人になる』ですか……、先輩」

 

「そうなんだけど、マシュは何か答えはある?」

 

 

 翌朝、オレはマシュと朝御飯を食べながら夢でみた話をしていた。

 

 

「そうですね……まず考えられるのは、身体的成長ではないでしょうか。大半の国や宗教でも、ある一定の年齢を越えることによって成人となります。一種の大人の資格としてはアルコールが飲めることとなりまね。ですがこれは……」

 

「やっぱりその答えじゃ駄目だよね」

 

「恐らくは。先輩が夢の中でお会いしたお方は、哲学的な回答を要求している可能性が極めて高いかと。しかし、この問いかけをする前にお酒を出したので身体的成長という回答も捨てきれませんね」

 

「はぁ、本当にどうしよう」

 

 

 本音を言うのであれば一応、自分の中に答えはある。しかし、その答えで本当にいいのかどうか迷っている。期限は今夜迄なのに本当に大丈夫かな。

 そんな感じに悶々としていると、ダヴィンチちゃんから腕時計型の魔術礼装に連絡が入る。

 

 

「やっほー、2人とも。唐突なんだけどダヴィンチ工房に集合できるかい?」

 

「はい、今すぐ向かいます」

 

「別にゆっくりでもいいよー、ん?ほいほいっと。万能の人(ウォモ・ウニヴェルサーレ)!」

 

 

 プツン、と連絡は無情にも切れてしまった。絶対に何かあったと思わせる最後の声、というか真名解放。いやなんで宝具を使っているんだあの人は!

 

 

「マシュ!」

 

「はい、至急ダヴィンチ工房に向かいましょう!」

 

 

 

 

 

 

 ダヴィンチちゃん工房の入口、その閉められた扉の前で()を武装したマシュとオレは突入前の確認をする。

 

 

「ところでマシュ、その盾は?」

 

「これですか?これは私が魔術を使えない間、もしもの時の為にダヴィンチちゃんが用意した盾です。凄いですよね、宝具を解放はできませんがいつも私が使っていた本物そっくりです。しかも、軽い、硬い、強い、の三拍子らしいので今の私でも扱うことが出来るんですよ。他にも色々作ってみたらしいですよ」

 

「そ、そう」

 

 

 いつの間にそんなもの作っていたんだか……。まぁ、この際使えるものは何でも使うつもりだ。

 

 

「先輩、敵対勢力の侵入の可能性があります。まず私が突入しますので後ろから指示を」

 

「分かった。でもマシュ、本当に大丈夫?」

 

 

 人理を修復した今、マシュは戦うことは出来ない。けれども、こちらを見るマシュの目には一切の迷いがない。

 

 

「はい、問題ありません。私の戦闘能力が低下していようと、私の中ではいつでも先輩はマスターです!」

 

 

 マシュはいつもオレに力強い言葉をくれる。本当に頼もしい後輩だ。そんな期待にまた応えようと、後方支援できるようガンドを準備する。

 

 

「では、行きます!」

 

 

 マシュが盾を前面に置き、扉を開けるスイッチを押す。

 

 

「ダヴィンチちゃん!大丈夫ですか!」

 

「ん?マシュ、どうしてそんなに慌てているんだい?それに盾まで出して」

 

 

 盾の隙間から見える部屋は荒らされた形跡はなく、ダヴィンチちゃんも椅子に座って(くつろ)いでる。何とも平和だ。

 

 

「ええと、ダヴィンチちゃん?敵襲ではないのですか?宝具を展開していたような……。状況の説明を要求します。」

 

 

 マシュは困惑した様子で盾を構えたまま、ダヴィンチちゃんに尋ねる。

 

 

「ああ、そういう事か。敵襲じゃないんだけどさ、泥棒に入られちゃったんだよね」

 

 

 ほれ、指で指した方向は、丁度マシュの盾によって視界が隠れていた。マシュと顔を合わせ頷き、盾を退かすとそこには―――

 

 

「くははははは!!まだまだ足りんぞ!その程度のお菓子(宝具)を連発した所で吾はまだまだ倒せぬわ!さぁ、もっと打つが良い!緑の人はこれの倍を打ってきたぞ!」

 

 

 漫画みたいにロープで全身をぐるぐる巻にされ、蓑虫(みのむし)のように天井からぶら下げられている茨木童子がいた。

 

 

「「………………」」

 

 

 いや、どういう状況だよ!

 

 

 

  ◆

 

 

 

「つまり、茨木さんがダヴィンチちゃん工房に侵入し、盗みを働こうとしたところ、ダヴィンチ特製のトラップによって捕まり、色々あってこうなったと」

 

 

「大体それであってるぜ」

 

 

 そう言いながらダヴィンチちゃんは掌の上に2個のマシュマロを乗せ、「万能の人(ウォモ・ウニヴェルサーレ)二連発!」と言いながらデコピンで茨木童子に向けてマシュマロを放つ。そして、放たれたマシュマロは茨木童子が拘束された状態から器用に動き、しっかりと口の中に納められていた。

 

 

「おぉ、今度はバナナ味とイチゴ味か!これもまたなかなか。さぁ、もっと寄越すがよい!」

 

 

 勘違いで入ってきたのはオレ達だけど、何というか、先程までの緊迫とした雰囲気を返して欲しい。いやもちろん、平和なのはいいことだけどね。マシュもいつの間にか盾を壁に立て掛けていた。

 

 

「警報もなっていないのに慌てて来てしまった私達にも非があります。ところでダヴィンチちゃんは泥棒、つまり茨木さんに何か盗まれたのですか?」

 

「いんや、別に何も盗られてないぜ。けど盗られてもどうってことはないものだったけどね」

 

 

 そう言いながら、ダヴィンチちゃんは机の上に小山のように置かれたお菓子から今度はグミを取り出す。お煎餅に金平糖、マカロンもある。有名な駄菓子、チョロルチョコもあった。

 

 

「あの、差し支えなければなのですが、何を盗まれかけたのでしょうか?」

 

「聖杯だけど?」

 

「そうですか、良かったです。聖杯が盗まれなくて」

 

「そうだねマシュ、良かった良かった」

 

 

………………………、って聖杯!?ダヴィンチちゃんが余りにも淡々と告げた為、反応が遅れてしまう。マシュもオレと同様に理解するのに数秒かかっていた。

 

 

「ダヴィンチちゃん!聖杯って、あ、あの聖杯ですか!?」

 

「聖杯っていえばあれですよね!?特異点でオレ達が回収してくるあれですよね!!」

 

「まぁ、正確に言えば聖杯のレプリカなんだけどさ。けど我ながらよく出来たとおもうんだよねぇー、流石はダヴィンチちゃん。全くもって機能はしないし、そっくりなだけだからただの置物としか利用できないけど。保管庫に入れといたらそれっぽいかなって入れといたらこの通りというわけさ」

 

 

 ほれ、これがそのレプリカと証拠映像、そう言われマシュにレプリカ、オレにはタブレット端末を。そこには茨木童子が金庫の様なものを開け、聖杯を取り出す一部始終が撮影された映像があった。

 

 

「先輩、この聖杯はレプリカです。魔力的なものを一切感知しませんし、私の盾と同様に『贋作』と裏に彫られていました」

 

 

なるほど、つまり完璧にオレ達の空回りという訳か。そんなオレ達を脇目に、お菓子投げゲームに興じる二人。駄目だ、頭が痛くなってきた。

 

 

「一先ず、現状は理解出来ました。ところで、何故ダヴィンチちゃんは先輩を呼んだのでしょうか?」

 

「あぁ、その事ね。この盗人(ぬすっと)は偽物ではあったけど仮にも聖杯を盗ろうとしただろう。流石に不味いかなってダヴィンチちゃん的にも思う訳よ。だからこの采配はマスターである君に任せようと呼んだ次第さ」

 

 

 確かに結果的に見れば何の被害もないが、聖杯を盗もうとした行為は問題があるな。

 

 

「茨木童子、なんで聖杯を盗もうとしたんだ?」

 

呵呵(かか)、何を言うかと思えば。そんなこと決まっておろう!盃を盗む理由など酒を飲む以外に何があるというか!!」

 

 

 むふ、とそう言い切ると茨木童子はドヤ顔でこちらを見下す。蓑虫状態じゃ何を言っても威厳など皆無であると伝えるべきだろうか……。話が長くなるのでスルーしよう。

 

 

「それが盗んだ理由なら、別に悪用しようとした訳ではないのですね」

 

「まぁ、飲んだあとは酒呑に譲るぐらいしか予定はなかったしそうなるのか?」

 

 

 それはそれで色々と問題が起きそうな気もしなくないが……。けど、酒呑童子の近くには基本的に金時がいるし最悪の事態にはならなかったとも思える。金時ならばきっとすぐ返しに来るだろうし。

 

 

「それはそうと、私はこのダヴィンチちゃん工房に忍び込み、他にも色々ある中で一直線に金庫に向かったのかが問題だと思う訳よ」

 

「……っ!確かにそうです。贋作でただの物置といえど、聖杯。誰かが聖杯の隠し場所をリークしたかも知れません!」

 

「どういうことだ、茨木童子!教えてくれないか!盗むまでに至った経緯を!」

 

「くく、普段なら否と答える所だが……。くはは!いいだろう特別だ!今回だけ特別に話してやろうではないか!」

 

 

 ごくり、と唾が喉を通る感覚が緊張によって増幅される。今まで戦ってきた仲間達を疑いたくはない。だけど、告げられることによっては疑わざるを得なくなってしまう。そんなことは絶対に嫌だ。

 

 

「そうだな、事の発端は赤毛の筋肉の塊の様な男の言葉だ。『黄金の盃はより酒を美味くする!さぁ、小僧飲みに行くぞ!』そんな事を言いながらもやしみたいな男を引き摺って行くのを見てな。その時、そこの女がどくたー?に自分で作った聖杯モドキについて永遠と自慢話を聞かせていたのを思い出してな。どこに隠そうだの、何色の金庫がそれっぽいだの、それはもうぺらぺらと言っておってな。ならそれで良いかと、まぁそういう訳だな」

 

 

 ということはつまり……

 

 

「あの、ダヴィンチちゃん。情報をリークしたと思わしき人物のことなのですが……」

 

「え、何!?何のことかな!聞いてなかったよ!困ったなー!ダヴィンチちゃんは天才だからね、様々な事を考えなきゃならないからね!そう、天才だから仕方ないネ!おや、もうこんな時間だ!これはいけない!私はここでおさらばさせてもらうよ!いやー、天才って忙しいなぁー!」

 

「あぁ、ダヴィンチちゃんが物凄い勢い何処かへ行ってしまいました。どうしましょう先輩……って先輩!?」

 

「どうかした?マシュ?」

 

 

 特に犯人は居なかった、別に誰も困っていない。何処に問題があるのだろうか。

 

 

「あの、先輩。その手のマシュマロは?」

 

 

 ああ、これか。ダヴィンチちゃんがやっていたから面白いかと思ってやってみたら案外楽しいんだよね。近くに投げれば絶対に食べてくれる安心感と、雛鳥に餌付けをするみたいな何とも言えない感覚がまた。

 

 

「マシュもやって見る?」

 

「いえ、遠慮しておきます」

 

 

 どうしてやりたがらないんだろう、こんなに楽しいのに。ほら、茨木童子も満更でもない顔だ。本当に甘いお菓子が好きなんだなって分かる。

 

 

「そうです、先輩!丁度いい機会ですので今日は茨木童子という鬼について勉強しましょう!」

 

 




おまけ

マスター「ところで、なんでずっとその状態なの?」

茨木童子「先刻から引きちぎってやろうとしているのだが、なかなか出来んのだ」

マシュ「なんでも魔性属性持ちの対象を縛り上げる為のロープらしいです。ここに都合よく説明書がありました」

マスター「…………」(ダヴィンチちゃんってほんといつも何してんだよ!)
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