君と俺と私の名前 ~YOUR NAME is ULTRA〜   作:ドンフライ

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13.遥かなる縁ムスビ

 瀧が本格的にこの世界を包むアンバランスゾーンへと足を踏み入れた翌日、何度目になるだろうか、またもや彼の体には別の存在が入り、立花瀧の生活を再び楽しんでいた。ずっと昔、予想だにしない形で叶った『東京のイケメン男子』と言う存在にもう一度なれてしまうと言う前向きな気持ちで過ごした方が、この奇妙な世界で過ごすのには最適だ、と考えたのである。

 

 

「あちゃー、今日は無理かー」

「ごめん、色んな用事が入ってて……」

「まあ仕方ないか、次に会った時はすげえ美味い新メニュー教えてやるからな♪」

「え、ほんと!?」

 

 こうやって、『瀧くん』の良き友達からスイーツを食べまくる自身の姿を楽しまれるのも久しぶりであった。とは言え、その本人は昨日とんでもない経験をしたばかりと言う事もあり、今回は我慢しておこう、と一応年齢は彼より上のお姉さんである宮水三葉は考えた。

 

 そして、この日も『瀧くん』は例のレストランでのバイトのシフトを組んでいた事もあり、三葉もまた懐かしい同僚や後輩、そして――。

 

「今日はなんか可愛くなってる、不思議ねー」

「え、いや、あはは……」

 

 ――昔から勘の鋭さやどんな事にも動じない頼もしさを持つ奥寺ミキ先輩との、忙しくも懐かしい時間を楽しむ事ができた。

 そんな中、同僚に冷やかされつつも彼女は『瀧くん』の体を借り、昨日の事を奥寺先輩にも告げる決意をしていた。勿論宇宙人に出会った、と全てを暴露するつもりはない。あくまで昨日先輩が口に出した言葉に対しての意見だ。

 

「そう言えば……先輩、昨日確か三面怪人ダダが何とか……」

「あ、そう言えば……やっぱりごめん、凄い気にしてた?」

「あ、いえ違うんです。わた……俺たちって、なんだかんだ言って結局はみんな宇宙人なんだなって、思っただけです」

「へ?」

 

 昨日、瀧が語ってくれた、三面怪人ダダとのファーストコンタクト。あの時瀧はただ怯え、何も出来ずにビルの隙間に隠れていたダダと見つめ合う事しかできなかった。しかし、それがダダにとって不思議な安心を呼び、迷い込んだ地球の中での恐怖や絶望を一瞬でも忘れさせてくれる時間を作る事になったのである。

それはまるで『ムスビ』――人と人、時間と時間、様々なものを繋ぐ言葉通りの出来事だ、と三葉は感じていた。

 

「奥寺先輩が言うような悪い存在が空からやってくる事だってありますけど、そればかりじゃない、って思うんです。例えば……」

「例えば?」

「うーん……奥寺先輩みたいな、優しくて頼もしい感じの性格の宇宙人とか……」

 

 私はれっきとした地球生まれ地球育ちの地球人だ、と慌てるように言いながらも、奥寺先輩は三葉の心が宿った後輩に、自分をそう評価してくれた事を感謝した。そして、ふとある事を思い出したかのように告げた。あの日、先輩が三面怪人ダダを強烈に覚えてしまった番組内で、もう1つ印象に残った言葉だという。

 

「敵を、理解する……」

 

 我々はただ単に闇雲に空から迫る存在を敵と見做す事はしない、勿論被害が起きれば立ち向かわなければならないが、その裏にはもしかしたら彼らを突き動かす何かがあるかもしれない、我々はその何かに立ち向かう必要がある、と。

 

「一言で言うと、愛……ですかね……なーんて♪」

 

その後に見せたドヤ顔の印象が強くて、そっちと関連して覚えてしまった、と奥寺先輩は照れ笑いを見せたが、瀧の顔を借りて笑顔を見せた三葉には、間違いなく先輩はあの言葉に強い感銘を受けていると言う事が分かっていた。

 

「あーあ、私の側にもイケメン宇宙人が現れないかなー。瀧くん地球人だしー」

「え、あ、ま、まあきっと会えますよ、いつかは……ね?」

「冗談よ冗談♪」

 

 本当はすぐ側に、宇宙人ではないがこの世界とは違う場所から来たイケメン男子高校生がいる事は、これからも先輩には内緒にしておこう、と考える中、三葉にはある考えが浮かんでいた。

 明日は自身の大学も瀧のバイトもなく、双方とも特に予定は入れていない。今日に至るまで、自身と瀧は何度も声をかけ続けていたものの、奥寺先輩のように本当に目と目を合わせて会話をした事がない事に、彼女は気づいたのである。だから――。

 

~~~~~~~~~~

 

『ふぇ、で、デート!?』

「何驚いとるん瀧くん、元の体じゃ何度も何度もやったし……」

『いや、確かにそうだけどさ……』

 

 ――電話口で慌てるような自分の声に呑気な返答をする三葉であったが、次に出た言葉でその理由、そしてこちらにとっても大変な事態であった事に気がついた。

高校生の頃の瀧と高校生の頃の三葉は、たった1度だけだが実際に会った事がある。新社会人の瀧と先輩格の三葉は言わずもがな。だが、高校生の瀧と大学生の三葉……しっかりとした時間軸の中で目と目を合わせて話す機会は、これが初めてなのだ。

 

「え、ど、どうしよう……」

『どうしようって、三葉が先に……ああ、何を着ていくべきか全然分かんねえ……』

「だ、大丈夫よ瀧くん、明日になれば身体が元に戻っとるのは間違いないし、準備はその後に……」

『そ……そうだな!分かった、じゃあなるべく余裕ができるように集合時間も明日決めようか』

 

ある意味ぶっつけ本番のデートになってしまったが、それもまた『ムスビ』だ、と三葉は納得した。それよりも、明日久々に瀧と面と向かって再会できる、そちらの方が彼女にとっては嬉しかったのだ。

 

「あはは……瀧くんや……久しぶりに高校生の瀧くんと会えるんや……!!」

 

幸い瀧の父親はぐっすり眠っていたようで、ベッドの中でだらしない笑顔のまま何度も寝返りを打つ息子の奇妙な行動がばれる事は無かった。

 

 

 

 

 だが2人の知らぬ所で、この行動がある異変をもたらそうとしていた。

 彼らがデートを約束したまさにその時、都心の2箇所で時空エネルギーが少しづつ上昇を始め、地球防衛のエキスパートであるXioのメンバーが本格的に調査を始めたのである。

 

 そして――。

 

「……分かった。いつでも動けるように構えているよ」

 

 ――雲一つない夜空に、地球人の目には観測できないであろうエネルギー体が瞬き、地上にいる者にメッセージを伝えたのだ……。

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