君と俺と私の名前 ~YOUR NAME is ULTRA〜   作:ドンフライ

18 / 36
18.無限大の未来

 今、瀧と三葉の目の前で繰り広げられている光景が『夢』である、と言われたら、恐らく2人はギリギリのところまで信じてしまうだろう。夢というのは、大概のところハチャメチャなシナリオに何が起きてもおかしくない乱雑さを極めた記憶なのだから。しかし、2人は『現実』の中にしっかりと引き留められていた。彼らの頬に当たる、遠くから流れる風や音は、確実に感触として伝わるものだからである。

 だが、もしこれが夢でも現実でも、ずっと続いて欲しいと、2人はその光景を見ながら思い続けた。その雄姿が、無限に続くであろう2人の未来を守り続けているようにも見えた。

 

「……」

「す……凄い……」

 

 彼らが住む街を蹂躙していた、あの彗星のような抗えない恐怖が、人間の姿に似た2つの大いなる存在の手により少しづつ追い詰められていたのである。

 

 方や、赤や黒、銀色に彩られた、どことなくサイバー感がある巨人。名前を『ウルトラマンエックス』と呼ぶらしい。そして方や、友情を深めるキャンプファイアのように優しく、だが強く輝く炎を思わせる赤色の体に、温和そうだが悪は決して許さないという強い信念を現したかのような瞳を持つ、もう1人の巨人である。

 

「こちらアスナ、K-33地点!逃げ遅れた一般市民は無事、エックスともう1人の巨人の戦い、こちらからも確認できます!」

 

 車を運転していたアスナと名乗る女性がそれを途中で止め、坂の向こうで繰り広げられている戦いの様子を報告する中、瀧と三葉はずっと2人の巨人……ウルトラマンが恐るべき超獣相手に奮闘する様子をじっと眺めていた。あの時、彼らの前で実習生の日比野先生にしか見えない男性が変身した新たなウルトラマンのお陰で、超獣に撃墜された戦闘機のようなメカは無事助けられた。そこから、2人のウルトラマンによる反撃が始まったのだ。

 

 華麗なキック、的確に相手の体力を奪うパンチなど、まるで教本に乗りそうな鮮やかな身のこなしで動く赤い巨人の一方、エックスの方もその巨人からエネルギーを分け与えられた事がきっかけとなったのか、次第に勝負を有利に進め始めた。怒りを具現化したかの如く次々に飛んでくるベロクロンのミサイル攻撃も巨大なシールドの力で無力化してしまうほどだった。

 そんな戦いをじっと見ていた時、瀧が何かを思い出す仕草をしたのを三葉は見逃さなかった。一体どうしたのか、と尋ねられる直前、彼は大声である名前を叫んだ。

 

「……メビウス!!そうだ!!ウルトラマンメビウスだ!!」

「た、瀧くん……?」

「三葉!思い出したよ!あのウルトラマン、俺が子供の頃にテレビで見たウルトラマンだ!」

「ほ、本当!?」

 

 それならば、自分たちはやはりその瀧くんが言うテレビの世界にやってきたのか、と考えを述べようとした三葉だったが、彼女より先に瀧に問いただす声があった。

 

「ちょっと待って……君、何であのウルトラマンの名前知ってるの!?」

 

 運転席にいたアスナと言う女性が体を捻りながら後ろを向き、2人に驚きの表情を見せたのである。グルマン博士に聞かなければわからない内容なのに、どうして初めて見るあのウルトラマンの名前を知っているのか……今度は逆に、滝や三葉が相手を混乱させる番になってしまった。

 

「な、何でって、テレビでその……」

「どういう事?エックス以外にウルトラマンがテレビでやってた?そんなの全然知らないんだけど……?」

「い、いやその……」

 

「あ、見てくださいあれ!」

 

 困り果てる瀧に助け舟を出してくれたのは、隣に座る三葉だった。彼らが困惑している間に、メビウスとエックスは二大超獣を反撃できないほどに追い詰める事に成功していたのである。そして、両者のカラータイマーが赤く光り、間も無く活動限界である事を示していた。これが意味する事は、つまり――。

 

「あっ……!」

 

 ――3人の目の前で、2人のウルトラマンが世界を脅かす脅威に向けて必殺光線を浴びせる、と言う事である。

 

 いつの間にか赤や黒から虹が体から覗くような複雑かつ神秘的な体に変わったエックスは、上に伸びた額をまるで磨くように擦り、そこから虹を思わせる光線を繰り出した。一方、メビウスと呼ばれたウルトラマンの方は少し前屈みになりながら両手を『十』の字に構え、内側にある右手から、どこか懐かしいような感じの光線を発射した。

 

「あれは……メビウスなんとか……?」

「瀧くん、覚えてないんやね……」

「光線技の名前まで知ってるなんて……」

 

 そして、2大ウルトラマンが発射した光線は、ほぼ同時にベロクロンとバキシムを直撃した。その途端、当たった場所からまるでガスが抜けるかのようにどす黒く濃い煙状の何かが噴出して消滅し、そして残された体は大爆発を起こし、跡形もなく消え去ったのだった。

 

 もう、あの決死のドライブを繰り広げる必要はない。運転席にいるアスナ以上に、瀧と三葉は安心しきったかのように車のシートに身を委ねた。

 青いボディを持つXioの特殊車両のシートの心地は、意外と悪いものではなかった……。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。