君と俺と私の名前 ~YOUR NAME is ULTRA〜   作:ドンフライ

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19.交わり始めたムスビ

「良かった……ウルトラマンが勝ったよ、瀧くん……」

「おう、本当だぜ三葉……」

 

 地球防衛のエキスパート、Xioの大型ワゴンタイプの特殊車両『ジオアラミス』。つい先程まで緊張と困惑に包まれていたはずのその座席は、互いを思いやる安心感に包まれていた。深く腰掛ければ意外と乗り心地がよいと言うのもあるだろう、瀧と三葉は疲れたような顔を見せながらも、あともう少しだけこの座席、そして運転手のお世話になる事にした。

 

「大丈夫?だいぶ落ち着いた?」

 

 そんな2人に声をかけたのは、瓦礫が散らばりながらも何とか最低限の被害で済まされた町の中でジオアラミスを駆る山瀬アスナと言う女性だった。戦いが無事勝利に終わった事を受けてか、次第にその表情は三葉の肉体と同じぐらいの年代の自然さを取り戻しているようだった。

 

「ありがとうございます……」

「えーと……あ、名前は……」

「山瀬アスナ。アスナでも大丈夫よ」

「あ、ありがとうございます。アスナさんに助けて貰わなかったら……私たち……」

 

 そんなに恐縮しなくても大丈夫、皆の大事な宝物を助けるのはXioの隊員にとって当然の事だから、と彼女は『一般市民』の2人に優しく、しかし凛々しさも交えた声で告げた。そして、お礼を言うならもう1人、避難誘導を行ってくれたあの隊員にもしっかりと思いを伝えた方が良い、とアドバイスめいた言葉を言った。

 

 そして、車が止まったタイミングと同じぐらいの時間に、誰かがあの超獣をウルトラマンが倒したところから走ってくのが見えた。高校生の体を持つ瀧よりも背が高く、アスナと似たようなデザインの服を纏っている1人の男性だ。

 

「おーい!」

「大地!」

 

 その名で呼ばれた男性――いや、三葉と同じぐらいの大学生のような雰囲気もある青年は、装着していたヘルメットを外しながら運転席に座るアスナの元へ向かい、復旧作業やらその後の展開やら、何やら複雑な言葉を交わし始めていた。あの人も防衛隊員の1人なんだろうか、とぼんやりしながら瀧や三葉が眺めていると、その青年隊員が偶然向けた瞳と目が偶然あった。

 

「あ、あの……!」

「俺たちを助けてくれて……」

「良かった、2人とも無事で」

 

 2人に見せた男性隊員のその笑顔もまた、人々の平和を日々守るエキスパートそのものであった。疲れの中でも、瀧と三葉にはこの2人に守ってもらえるという安心感が生まれていた。

 

『良かったな、大地。あの2人も無事で』

「しっ、静かに!」

『おっと、すまない……』

 

 腰に装着していたどこか派手なスマホのような何かから聞こえた声に男性隊員が応対している一方、アスナは瀧や三葉からそれぞれの家の場所を聞いた。2体の超獣が無事倒された後の復旧作業は、そのプロに任せるのが一番。こちらに託された任務は、瀧や三葉を無事な形で平穏な生活へと戻してあげる事なのである。

 

 だが、2人がその答えを言うまでに、少しだけ互いの顔を見合う沈黙時間が訪れてしまった。確かにこのまま家に帰るのもアリかもしれないが、出来ればもう少しだけ2人で一緒にいたい。迷惑承知でそのわがままを言ってしまうか、それとも正直に伝えてこのデートの成れの果てを終わらせてしまうか、悩んでいた時だった。突然アスナの前にあるたくさんの機材から何かを受信したような音が聞こえ、それに合わせるかのように大きなスマホ状の物体を耳に合わせたのである。彼女の声が明らかに驚きを見せている状況に、瀧も三葉も気になるような表情を見せた。

 

 そして、再び体を後ろに向けたアスナは告げた。申し訳ないが、少々事情が変わってしまった、と。

 

「申し訳ないんだけど、どうしても貴方達に詳しく聞きたい事があるの」

「く、詳しく……?」

「な、何ですか……?」

 

 あの『ウルトラマンメビウス』というのは、一体どんなウルトラマンなのか。それを尋ねたい、と告げた瞬間だった。

 

「だったら、僕からも詳しい事を教えます」

「「「……え?」」」

 

 アスナ、瀧、三葉、その三者全員が、何の前触れもなく突然現れた1人の青年……あの大地という名の青年とまた同じぐらいの年齢の外見を持つ私服の男性に驚きの表情を向けた。特に瀧も三葉が一番驚いたのは、その青年に見覚えがありすぎる事であった。

 

「「え……ひ、日比野先生……」」

 

 あの『入れ替わり』の秘密を忘れ、つい声をユニゾンさせてしまった2人の事を全く気にしていないかの如く、ジオアラミス内部に聞き応えの良い中年男性の声が響いた。『あの方』もぜひご一緒にさせて欲しい、ここにいるゲストは地球の言葉で言えばVIP級の存在だ、と。

 

 そして、日比野先生は全く違和感を纏わないまま、大地と呼ばれた青年に従うかのようにこの車に乗った。男性3人女性2人と言う大所帯になりながらも、瀧や三葉は意外と狭さを感じなかった。

 中央の座席に座った先生は、後部座席に座っている『生徒』に気付き笑顔を向けた。だが、その向けられた方は、ただ頷きを返し、お互いの顔を見合うしか無かった。一体何がどうなっているのか、どうして日比野先生がこの瓦礫の町にいるのか、そもそもどうして突然自分たちはウルトラマンについて語る事になってしまったのか。

 

 様々な疑問を乗せながら、ジオアラミスは一路2人の家とは全く別の方向……緑が生い茂る郊外へ向けて発進した。その車内の中で、疲れが限界に達したかのように瀧と三葉は次第に意識を別の世界へと移し、互いの体を寄り添いながら眠りに就いた。

 

 

 

 この時点で、ある事実に気づいていたのは『ウルトラマンメビウス』と『ウルトラマンエックス』だけであった。

 この車の中にいる人々のうち、はっきりと地球人と呼べる存在は大空大地と山瀬アスナしかいない、と言う面白い状況になっている事を……。

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