君と俺と私の名前 ~YOUR NAME is ULTRA〜   作:ドンフライ

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2.新たなる出会い

 立花瀧と、宮水三葉。

 年の差関係なく互いに想いを寄せ合うこの2人には、僅かな人々にしか明かしていないある秘密があった。ずっと昔、彼らは「入れ替わっていた」のだ。比喩でもなんでもない、2人の精神が2人の肉体を飛び越え、互いの体に入り込んでいたのである。

 

 当然最初は互いに困惑し、訳のわからない事態に混乱するしかなかった。だが、その状況を変えたのは、たった1つの単純な行為だった。

 互いの名前を尋ねあう。互いの名を、心と目で記憶する。

 これを境に、彼らはやがて途轍もない程の繋がりを持つ存在に変わっていたのである。

 

 そんな日々はもう終わったと思っていた。

 だがどういう訳か、再び瀧の身体に三葉が、三葉の身体に瀧の心が宿ってしまったのである。しかも今回は、それまで体験した事のない事態が待っていた。

 

「えーと、つまり瀧くんが今いる私は……」

『そう、大学生の身体だ……三葉の体が高校生ならな……』

 

 瀧と三葉が、『過去の同じ時間』の自分自身と入れ替わるという、非常に複雑な事態に見舞われていたのである。

 

 今回の場合、圧倒的に不利だったのは瀧の方だった。今彼が宿っているのは、大学ライフをすっかり満喫している頃の三葉。彼が知らない彼女の肉体なのである。ただ幸いな事にスケジュールを確認するように言った後に戻ってきたのは、今日は講義もバイトもなくのんびり休める日だったと言う返事だった。大学生の頃の三葉は妹やおばあちゃんと一緒に自宅に住んでいたため、ボロが出るとすぐにばれてしまうと考えた彼女は瀧に取り敢えず近くにある服を着て外でブラブラするように告げた。この大都会は人が多い、そこに紛れ込んでしまえば大丈夫だ、と。

 

『わ、分かった……三葉、そっちも頼んだ!』

「心配ないよ。こっちは何度も体験しとるから」

『そ、そうだよな…全く……』

「あ、あと瀧くん、念のために言っとくけど……」

 

 大学生のおっぱいの感触は味わうな、以前の禁則事項を思い出してしっかり守れと忠告した三葉は、やけにはきはきした返事をした瀧の様子から、もう遅いという事を察した。

 とはいえ、こうなった以上待ち受ける『今日』という時間を何とか乗り越えるしかない。互いに通話を切った三葉と瀧は、この時間の『瀧』や『三葉』を守り通す事にした。

 

~~~~~~~~~~

 

「おはよー、司に真太」

「お、瀧!今日は早かったな」

 

 男子高校生の制服を身につけ、瀧の通う高校へと向かった三葉(身体は瀧だが)を待っていたのは、彼の親友である司や真太だった。大人になった彼らとも何度か会っている三葉だが、こうやって高校時代の2人に会うのは久々だ、とつい興味津々の目線を向けてしまった彼女は、不思議がる2人を見て慌ててその視線を隠した。

 

「ま、仕方ないよなー。今日から教育実習生がこの高校に来るって言うし」

「実習……ああ、そういえばそうだよな!」

「もうしっかりしろよ瀧ー、美人だったら良いななんて言ったのお前だろー?」

「え……あははは……」

 

 やっぱり瀧くんはこんな状況でもこの調子だったのか、バイトが終わったらお叱りの伝言をしておかないと、とつい心の中で怒ってしまった三葉であったが、彼女を待っていたのは予想外の事態だった。

その教育実習生は確かに美人であった。ただし女性ではなく――。

 

日々野未来(ひびの みらい)です。皆さん、よろしくお願いします!」

 

 ――男性の方の美人、つまりイケメンだった。

 

 男女それぞれの生徒たちがそれぞれ素直な反応を示す中、三葉はついそのイケメン実習生の顔を眺めてしまっていた。勿論彼女の心の人は瀧くんたった1人なのは変わらないが、それでも乙女心としてはどうしても気になってしまうものである。ただ、そのような視線をあまりそのイケメンに浴びせる訳にはいかなかった。何せ今ここにいるのは三葉ではなく、男子高校生・立花瀧なのだ。彼の身体で滅茶苦茶な事をしている訳にはいかない、と考えた彼女であったが、そのような結論に至るのもまた少々遅かった。

 

「なーんか挙動不振だったよなー、瀧」

「美人じゃなかったからってそんなに落ち込むなよ、な」

「う、うん……」

 

また司や真太を怪しませてしまったからである。

 

~~~~~~~~~~

 

『瀧くん、なかなか凄い人に教えてもらってたんやな~』

「あ、あんまり昔のことだしはっきりとは覚えてねーよ……」

 

 夜、三葉と瀧の声のテンションは見事なまでに真反対だった。どこか機嫌がよさそうな三葉の一方、瀧はあちこちを放浪しまくっていたせいかどこか疲れたような声だった。高校時代の瀧の生活を味わいまくっていた三葉にとって楽な状況なのだから仕方ないかもしれないが。

 嫉妬しなくても大丈夫、どんな時代でも宮水三葉は立花瀧一直線だ、としっかり念を入れていた時、スマホの向こうから三葉の声である質問が飛び出してきた。暇つぶしのために(大学生の三葉の体に入った)瀧が立ち寄った場所にあったテレビに、こんな単語が流れていたのだ。

 

 

「なあ三葉……『ウルトラフレア』って何だ……?」

「え……?」

 

 知らないのも無理はない。

 彼らは既に、アンバランスゾーンに飛び込んでいたのだから……。

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