君と俺と私の名前 ~YOUR NAME is ULTRA〜   作:ドンフライ

25 / 36
25.大いなる帰路

 この場所で、2名のウルトラマンと向かい合う立花瀧と宮水三葉の『意識』がやって来たであろう元の世界に戻れる可能性がある――その言葉に、2人が強く反応しない訳は無かった。本当に戻れるのか、その時に元いた自分はどうなるのか、様々な疑問が矢継ぎ早に出かけたが、返ってきたのは今の所全てが未知数だ、と言う大空大地隊員からの現実的な言葉であった。

 

「ごめん、期待させておいて申し訳ないけど、宇宙の数は無限大にある。君たちがどこから来たのか、今の所見当もつかないんだ……」

「……いえ、俺たちも何をすれば分からなかったですし……」

「そもそも抜け出せるなんて、考えた事も無かったです……」

 

 でも必ず2人が戻る世界はきっとある、と助言をしたのは、大地の隣に座るヒビノ先生=ウルトラマンメビウスであった。その言葉が不思議と確信に満ちていた理由は、彼自身がまさにその証拠に等しいものだったからである。

 あの時――メビウスとエックスが力を合わせて恐ろしい脅威に立ち向かった際、真っ先にメビウスの名前を思い出して興奮した瀧に対し、Xioのアスナ隊員は怪訝そうな顔をしながら何故その名前を知っているのか問いただそうとした。その時はむしろ瀧の方にどうしてウルトラマンメビウスを知らないのかと言う感情が湧きかけてしまったのだが、それには明確な理由があった。

 

「え……じゃあヒビノ先生も……!?」

「別の宇宙から来たんですか?」

『ああ、ウルトラマンメビウスが住む宇宙は、我々とは違う、遥か遠い場所なんだ』

 

 本人に代わってエクスデバイザーの中から解説したウルトラマンエックスによると、彼は『宇宙警備隊』や『ウルトラ兄弟』というウルトラマンたちによる組織がある宇宙からずっと前にこのXioが地球を守り続けるこの場所へと来訪し、地球人の教育実習生として人々の中に溶け込んでいたと言う。それこそ、Xioの面々でもなかなか正体が掴めなかったほどに。

 別の宇宙、と言う概念的な要素が、自分たち以外の存在によって現実のものへと還元されていく――その過程の中で、次第に瀧も三葉も、ヒビノ先生たちが何を伝えようとしているのかを理解し始めた。ずっと瀧がテレビの中の架空の世界だと考えていた、怪獣たちが大暴れするこの宇宙も、子供の頃に憧れ続けていたヒーローが実在する宇宙も、全て現実に存在している。そのような荒唐無稽な宇宙があるのだから、2人が飛ばされてしまったであろう『世界』も間違いなく存在し、帰りを待っているのだ、と。

 

「私たちの故郷があるのは確かなんですね!」

「立花君と宮水さんが僕たちと語り合っている。それが、2人の宇宙がある何よりの証拠だよ」

「ありがとうございます……!」

 

 しかし、安心しきった2人の気持ちを一瞬で不安に変えてしまうきっかけを、三葉自身が作り出してしまった。自分たちのようにヒビノ先生もこの世界に迷い込んでしまったのか、と言う疑問に対し、彼は真剣な目つきでそれを否定しながら、これはエックスたちXioの面々にもまだ詳細を伝えていなかった非常に大事なことだ、と前置きを入れた。

 

「……この宇宙に、大きな『歪み』が生まれようとしているんだ」

「……!」

『歪み……』

 

 空間の捻れやほつれ、時間の乱れ、重力の異常、そして常識の崩壊――様々な異常事態の根源となるであろう何かの歪みが、ここで生まれようとしている、とヒビノ先生はメビウスとして警告した。自分自身が光の国から指令を受け、この宇宙にやって来るほどの危険な事態である、と。

 

『し、しかし私たちは何も今まで感じませんでしたが……』

「当然さ、エックス。この歪みは、外部の者でないと認識する事が出来ないからね。例えて言うなら、目の届かない死角に落書きをされた、と言う感じかな」

『な、なるほど……』

「流石先生……分かりやすい……」

 

 そして、今後この謎の歪みが、瀧や三葉にも影響を及ぼす可能性がある、と彼はそのまま続けた。これこそが、ごく普通の暮らしをしていた男子高校生と女子大学生が突然2人のウルトラマンの正体を知ることとなった最大の理由であった。人知及ばぬ存在が次々に現れるこの世界、例え2人の力があってもその危機を乗り越えられない可能性がある。その時こそ、自分たちを頼りにして欲しい――敢えて自らの名を名乗る事で、ウルトラマンたちは瀧と三葉の味方であると宣言してくれたのである。

 そして、ウルトラマンだけではない。彼らと共に戦う大空大地隊員もまた、瀧や三葉が元の宇宙に帰れるよう最大限の努力をする、と告げた。

 

「俺はこのXioのラボチームに所属している。俺たちの科学で、必ず2人を元の宇宙に帰してみせるよ」

『流石だ、大地。2人とも、彼をぜひ頼りにしてくれ』

 

 エックスの鼓舞する声に笑顔を見える彼の姿に、瀧も三葉も一切の噓偽りを感じる事が無かった。何しろ、この宇宙は2人にとってはSF特撮番組の如く、自分たちの想像を超えた様々な技術が闊歩し未知の事が何でも起きると言う、まさにアンバランスゾーンの世界。その中ではっきりと味方になってくれる、と告げてくれる存在がいる事が、非常に嬉しかったのである。

 

 2人の脳裏に、あの日……彼らが2度目の再会、そして2度目の別れを経験した日に、できる限りのことを精一杯こなし、破滅から自分たちや皆を救うために立ち向かってくれた大事な親友がよぎった。

勿論、この宇宙にも三葉の頼もしい友人であるテッシーもサヤちんも存在している。しかし、この部屋にもう1組の『テッシーとサヤちん』が、光を身に纏いながら降臨したのだ……。

 

 

「ところで……ヒビノ先生……?」

「その服は、結局何ですか……?」

 

「これ?これは……僕の大事な思い出さ」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。