君と俺と私の名前 ~YOUR NAME is ULTRA〜 作:ドンフライ
「瀧くん、起きとる……?」
『起きてるぜ、三葉』
Xioの基地から帰宅したその夜、星が瞬き多くの人々に就寝を促す中でも、瀧や三葉はどうしても眠る事ができずにいた。何せあの建物の中で1日中ぐっすり寝てしまったせいで、興奮しきった体がまだ抑えられていないのである。そうなった時、2人がする事はただ1つ。こっそりスマホを片手に秘密の会話をする事であった。
『……本当、物凄い『デート』だったな……2日がかりの』
「4DXの映画館でも味わえんスリルやったな……」
普通に再会を喜び合いながら終わるはずが、超獣とか言う恐ろしい存在に追いかけ回され、そこを防衛隊やウルトラマンに助けてもらい、そこから1日中夢の中の世界に行き、そして起きた後も防衛隊やウルトラマンの秘密をこっそり教えてもらい、最終的にとんでもない理解者を得る事になる――これだけでも大スペクタクル過ぎて映画化間違いなしだ、と未だテンションが覚めやらぬ2人は語り合った。
とは言え、今回の一件で自分たちが別の宇宙からここに迷い込んできた存在である、というのは推測からはっきりとした確証へと移ったのは間違いなかった。
「私たち、ウルトラマンさんみたいに『宇宙人』になったんやね……」
『まさか俺たちがな……』
瀧くんはその事についてどう思うか、と尋ねた三葉の耳に入ったのは、少し意外な言葉であった。不安そうな気持ちが一切ないまま、非常にワクワクしていると言う返答が戻ってきたのである。その理由は、既に三葉側も把握していた。瀧くんは今、テレビの中でしか会えなかったヒーローと面と向かって同じ時間を過ごせるという嬉しさで満ち溢れているのだ、と。
そして、形は違えど三葉の方も似たような不思議な感覚を抱いていた。全く正体が掴めない未知のものに触れるというのは、ともすれば恐怖や不安に支配されかねない行為である。だが、その『未知』のものが自分自身である事に加えて、昔からずっと自分を守ってくれたヒーロー、そしてこの世界を守るヒーローたちが仲間になってくれる事を思えば、どんな事も怖くない、隕石だろうが彗星だろうが弾き飛ばしてしまえる、と言う思いに満ち溢れていたのだ。
何故だかは分からない、しかし三葉に恐れの心が無いのは確かであった。
『そうか……なんか三葉なら、そう言うと思ったぜ』
「瀧くんったらもう……でも今思ったんやけど、テッシーっていつもこういう気分だったんやね……」
『未知のもの、オカルト大好きだからな……やっぱりこう言うのは、自分の身にならないと分からないものだぜ』
「ふふ、瀧くんの言う通りかもね……」
そう笑いあっているうち、ふと三葉の脳裏にある言葉がよぎった。彼女の家族は勿論、テッシーもサヤちんも本当の故郷はこの大都会ではなく、ここから離れた山と緑に囲まれたど田舎の町である事を。だが『この宇宙』でも、その故郷に帰る事は許されていない現実を、両者は認識していた。
糸守町に、何が起きたのだろうか。
「怪獣のせいで戻れなくなった……それだけは確かやね……」
『三葉、やっぱりあの時聞くべきだったかな……』
「ううん、また機会があった時に聞けば良いよ」
真剣さと優しさを併せ持った神木隊長、優しいお母さんのような橘副隊長、どんな危機にも的確に動く頼もしいアスナ隊員、ウルトラマンエックスと共に戦う大地隊員、そしてこの面々を支える頼もしい人々――間違えても、彼らが糸守町を破壊したなんてことはあり得ない、必死に守り抜き最小限の被害に抑えてくれたはずだ、と三葉は語った。
その口調は、まるで2人が過去に体験した話をしているようでもあった。
『……三葉、優しいな』
「ありがとう、瀧くん……ふわぁ……」
『ふわぁ……あ、俺にも移ったぜ……』
いろいろ熱く語り合っているうち、ようやく2人の体は眠気を示してきた。忙しいが明日は平日、ぐっすりと寝て講義や授業、友人との交流、バイトに勤しまなければならないのだ。しかし明日以降、立花瀧と宮水三葉には1つだけ大きな変化がある。彼らは『別の宇宙』という立場から、日常を過ごすことになるのだ。
『……なんだか、ようやくプロローグが終わった、って感じだな』
「そうやな……明日から新しい瀧くんの声が聞ける、楽しみやわ……」
『こっちもだぜ、三葉』
そして、長い長い序章の幕が閉じるように、2人はそれぞれお休みの挨拶を告げてスマホの通話を終わらせ、ゆっくりと目をつむった。
その時に見た夢の内容は殆ど覚えていないが、まるで疲れが癒えるような良い内容だったのは確かだった――。
「お姉ちゃん、朝ご飯……あー!またおっぱい揉んどるー!」
「よ、四葉!」
「さては宇宙人やなー!このー、おっぱい星人覚悟ー!」
「え、お、おっぱい星人……ってうわあああ!!」
――次の日、三葉の身体の中に入った『侵略者』は大変な目に遭ったようだが。