君と俺と私の名前 ~YOUR NAME is ULTRA〜   作:ドンフライ

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3.未知なる巨人

 今日、宮水三葉と入れ替わっていた立花瀧が覗いた、東京の彼女の自室の窓から広がっていたのは、間違いなく少し懐かしい大都会の風景だった。たくさんの人々が行き交い、たくさんの生活を乗せた乗り物が走り回る、世界でも屈指の忙しい街並みだった。

 だが、その光景がどこかおかしい事に、瀧は少しづつ気づき始めていた。

 

「やっぱり三葉も知らないか…『ウルトラフレア』って言う単語」

『瀧くんが知らないって事は、私も一度も聞いた事ないな……』

 

 スマホの向こうから聞こえてくるのは、高校時代の立花瀧を乙女っぽくしたような声だった。それも当然、現在立花瀧の精神は、女子大学生の宮水三葉の体に宿っているからである。だが、その状況以上に気になる事が彼にはたくさんあった。見慣れた街並み、見慣れたニュースの中に、聞き慣れない単語が溢れ返っていたのだ。それはあのウルトラフレアだけでは無かった。

 

「X、I、O……その三文字だ」

『それで『ジオ』って呼ぶんやね……何なんやろ……』

 

 まるで戦争の跡のような場所に存在する、ずっと昔瀧が持っていた玩具のような姿をしたような車や飛行機。それをニュース映像は「Xio(ジオ)」と呼んでいたのである。今まで見た事がないその光景、その名前に抱いた違和感のせいで、瀧はその後に続いたニュースの内容を覚える事が出来なかった。

 

『そりゃ仕方ないか……幸い、スマホっていうありがたいものがあるやね』

「そうだよな……悪い、今から通話打ち切って調べてみるよ」

 

 こちらもすぐに調べて、何かあったら文字と言う手段を使って詳細な情報を送る……スマホの向こうから聞こえた自分の声に従い、一旦通話を切ろうとした時だった。少し待って、と言う声がしたのち、しばらく三葉からの連絡が途絶えたのだ。あちらで何かあったのか、と気になった瀧だが、その直後強い言葉で自分の声が響いてきた。

 

 

『通信制限気にせずに、そのスマホにあるテレビのアプリを今すぐ開いて!早く!』

「お、おう……!」

 

 

 そして慌てて通話を切り、三葉のスマホに内蔵されていたテレビのアプリを開いた瞬間、瀧はそこに映った光景を理解できなかった。いや、正確には信じられなかったと言った方が良いだろう。

 

 

「……は?」

 

 

 もしこれが、映画か何かだと言えば瀧も三葉もすぐに納得しただろう。だが、そこに映っていたのは紛れもなく実際の映像であり、特別番組でもやらせでもなく、真実であった。しかしそれでもなお、2人の脳はスマホの画面の中に映る光景を理解できなかった。

 どうして各地に放送されているその画面の中で、都市が巨大な生命体……『怪獣』に踏みつけられているのだろうか。そして何故、その存在に対して果敢に挑む巨人――『ウルトラマン』がいるのだろうか。

 

「……」

 

 瀧はただ、小さい画面に映るウルトラマンと怪獣の戦いをじっと見守る事しか出来なかった。サーチライトに照らされた怪獣が持つ花のような鬣をそのウルトラマンは再び閉じないように抑えつけ、暴れる怪獣を鎮めるかのように立ち振る舞っていたのである。やがて怪獣側は次第に体力を失ったかのように動きが鈍くなり、最終的に街の中にへたり込んでしまった。

 それを見たかのように、ウルトラマンは腕をまるで「X」のような形に組んだ。その途端、腕から闇夜を照らすかのような美しい光が放たれた。それを受けた怪獣は、まるで体が縮んでいくかのように小さくなり、やがて小さな光の玉となって姿を消したのである。残ったのは、ウルトラマンと「Xio」とかいう何かの存在を讃える、テレビ局のアナウンサーの言葉だけであった。

 

 

「……やっぱこれ、夢だ」

 

 

 あまりにも荒唐無稽な展開を見た瀧の結論はこれだった。多分昨晩、寝る前にたっぷり三葉と昔のことを語り合ったせいで心がそれを懐かしみ、自分が昔見た怪獣やウルトラマンの番組とごっちゃになった結果、こんなハチャメチャな展開になってしまったのだ、と。

 

「……って言うか、もう寝よう……」

 

 もう一度寝れば、元通り自分の精神は立花瀧の元へと戻り、平凡だがとても幸せな日常に戻れるはずだ。彼はそう信じて、三葉のベッドに潜り込み、ゆっくり目を瞑った。

 

 

 

 

 

 だが、運命は彼を裏切った。

 

「……はぁ?」

 

 確かに、瀧の精神は無事に瀧の元へと戻った。だが、その「体」は、ようやく仕事に慣れ始めた新入社員ではなく、あの夢の中で三葉が宿っていたであろう高校時代の自分の体だったのである。

 

 そして、近くにあったスマホに映された記事を見た時、彼の顔は困惑や混乱に包まれた。恐らく、この大都会のどこかにいる三葉も同じ感情だろう。

 どうしてどのネットニュースも、あの夜の出来事が現実に起きたように取り上げているのだろうか……。

 

 

『ウルトラマンX、大勝利!ウラン怪獣ガボラを撃破』

『Xioの働きで人的被害ゼロ!復興への動き早くも始まる』

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