君と俺と私の名前 ~YOUR NAME is ULTRA〜   作:ドンフライ

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6.パラレルワールドの記憶

(確かもう少しの駅だったな……うん、間違いない)

 

 三葉と話し合った翌日、その三葉の体をまたもや借りる羽目になってしまった瀧は、そのまま彼女が予定していた通り、彼女の親友であり瀧にとっての良き先輩であるテッシーの元へと向かっていた。スマホに刻まれた道のりに沿って辿っていけば彼が住むマンションに辿り着くというありがたい仕様だ。

 ところが、そこへ向かう道のりの中で、彼は何度か目を疑うような光景を目にした。少し混んでいる電車の中から、何か強い力によって破壊されたとしか考えられない建物の跡や、それを復旧しようと動き続けるたくさんの人や乗り物、そして彼らに混ざって動く、どこか自衛隊に似たような雰囲気の服装を着た人々を目にしてしまったのだ。彼の記憶には、そこにあるのはたくさんの建物がごく普通に並ぶ都会の光景だった。

 

 

(もしや……これ、マジの怪獣被害なのか……?)

 

 

 しかも、これだけの被害が出たにもかかわらず、人々は僅かだけ注目するだけで、後はスマホをいじったり興味なさそうに座ったり立ったりしているばかりであった。つまり、このような大惨事が起きてもそれは最早人々の日常そのもの、巨体で人々の日常を破壊する存在がごく当たり前にいると言う事になるのである。

 いよいよこの大都会が、瀧や三葉の知らない世界のように思えてしまった時、電車はテッシーが住むマンションの最寄り駅に到着した。三葉の姿を持つ瀧は、周りの光景から目を背けるかのように急いでテッシーの元へと進んだ。早く理解者に会わなければ心がおかしくなってしまう、そう感じてしまったのだ。

 

 その結果――。

 

「うお、ちょ、三葉!ど、どしたん……や、柔らかいって!!」

「良かった……テッシーさん……じゃない、テッシーだ!」

 

 つい彼は、三葉の体を借りてテッシーの元に少々乱暴な形でやって来てしまったのである。彼の幼馴染兼恋人がこの場にいない事は本当に幸いだったかもしれない。

 ともかく落ち着け、と聞き慣れたテッシーの声を聞いた瀧は自分がやってしまった行為に顔を真っ赤にしながら、何とか三葉から託された相談を始めた。全く別の世界の別の誰かが偶然入れ替わる何ていう事は、本当にあるのか、と。

 

「……三葉にしちゃ珍しい質問やな……あ、もしや三葉もついに俺の良き趣味の同僚に……」

「い、いや友達!わ、私の友達から託された質問だって!」

 

 ギリギリのラインで何とか誤魔化せた瀧は、少し残念そうな顔をしたテッシー先輩に心の中で謝った。そして、そのまま彼が語る話をじっくり頭の中とメモ帳に記す事にした。

 

「パラレルワールド……?」

「この世界とは全く別の世界っちゅー……まあオカルトというか科学の世界やけどな」

 

 様々なジャンルの超常現象に明るいテッシーは、それに付随する情報として、その体育系な見た目に似合わず科学にもかなり明るかった。現在の科学の世界では、宇宙は自分たちが住む場所以外にも沢山存在する、と教えてくれたのだ。ただ、そこから続いた話には瀧も驚きを隠せなかった。

 

「え、う、ウルトラマン……?」

「あー三葉はあんま興味なかったか……ゼットンっつう怪獣とクワイとか何とかいう宇宙人が暴れた時に、エックスと一緒に戦ったウルトラマン、あれもパラレルワールドから来たってXioの人が……」

 

 マックスと言う名前の赤いウルトラマンはもともとこの世界にはおらず、別の宇宙からわざわざ駆けつけてくれた頼もしい仲間だとXioが後にテレビで報告していた、とテッシーは嬉しそうに語っていたのである。あまりに自然なその態度に、瀧は愕然とする気持ちを抑え続けた。やはり自分たちが今いるのは、そのパラソルなんたらではないのか、と。

 

「なあ、そのパラソル……」

「パラ『レ』ル」

「ごめん、そのパラレルワールドを行き来するのって、そのマックス以外で……例えばただの人間であり得る?」

 

 その問いを受け、しばらく頭を悩ませていたテッシーであったが、しばらく経った後に何かを思い出したかのように山積みの資料を漁り、そこからややこしい文章が書かれた1枚の用紙を持ってきた。

 さっぱり分からずこんがらがる瀧の様子を見たテッシーは、笑顔でわかりやすく解説してくれた。パラレルワールド内での行き来とは異なるかもしれないが、別の宇宙の「記憶」が蘇ったと言う話ならある、と。

 

「ほ、本当!?」

「だいたい7、8年前の横浜で何人かの男性が2つの記憶を持ったなんて話がある。その記憶にあったのは、そっくりだけどどこか違う光景や人々だったらしい」

 

 その後、この記憶は薄れてしまったのだが彼らはそれをきっかけに夢に向かって歩み出すようになった――テッシーが語ってくれた話は、まさに瀧と三葉が経験し続けている不思議な出来事に良く似た内容だった。それも、今回起きている不可思議な入れ替わりに近づきそうな重要な情報である。

 

「ありがとう、テッシー!」

「どうも……そんなに手を握らんでも……」

 

 三葉の前では恥ずかしがっているテッシーでも、将来は酒を飲む勢いで自分たちに積極的に絡むようになっているのだから面白い、と瀧は心の中で微笑んだ。

今の彼には、それほどの余裕が生まれていた。あの日――ティアマト彗星の日に最悪の事態を脱するきっかけをつかんだ時のように、再び彼の助けが活路を切り開いてくれたのだから……。

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