モモンガさんとファーマー忍者(仮)   作:茶色い黒猫

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急ぎ書いてみました。
誤字脱字、推敲ミス等あればご指摘ください。


第4話

 最終日の夕刻。

 妹の見舞いを終え帰宅した男は、外出用マスクとゴーグルを外すと浴室に直行した後、スチームバスを浴びて身体にまとわりついた汚れと共に鬱々とした気持ちを洗い流す。

 

 浴室から出ると、いつもより少し早めの夕食を済ませた男は端末機の前に移動し、備え付けている棚から無痛注射器を取り出すと左腕に押し当てナノマシーンを注入する。

 今日ばかりはナノマシーン不足での中断や強制ログアウトをする訳にはいかない。

 

 準備万端でネットワークと脳を繋ぐコードの先に付くプラグを首の後ろにあるジャックへと射し込み、仮想空間での行動を自動録画する為に電脳法で定められたフルフェイスヘルメットを被り、いざユグドラシルに行こうとした男だった・・・が、ふと思い立って少々慌ててメールを打つ。

 

[今から向かいます。ユグドラシルのメッセージは飛ばせないので、拠点に着いたらまたメールします。間違えて迎撃しないでくださいね(笑)]

 

 恐らく既にログインして皆を迎えているだろう人へメールを送信すると、男はユグドラシルの世界へとダイブするのだった。

 

 

 

 

 

 ユグドラシルにINし、異形種の街に降り立った男は、ダイブした直後の軽い酩酊感から醒めやらぬうちに、転移魔法が込められたスクロールを取り出すと目標リストから、ヘルヘイムの大湿地に一番近い街を選び転移する。

 そうして着いた街を出て、大湿地を目指し飛行のペンダントを使い飛んで行く。

 

 本来なら昨夜の内に目標の場所まで移動し、転移マーキングをしておくつもりだった男なのだが、不意のPvPによりLvダウンを余儀なくされ、そのままログアウトし枕に怒りを吐き出していた為に目的を果たせなかったのである。

 

 昨夜の出来事を思い出し、

 ――ユグドラシルⅡがあったならガチビルドでPKK(プレイヤーキラーキラー)してやる。――

 そんな仄暗い決意をしながら飛行を続けた男は、大湿地に進入し更に進んだ先にある猛毒の沼が点在する"紫毒の沼地"を目前に確認すると、飛行を解除し着陸する。

 

「飛行はまだ少し怖いなぁ。さてと、ギルドメンバーになる前に一度しか通ってない場所だけど……」

 

 男は独り言ちると、毒々しい沼地が広がるフィールドを見渡しながら、かつてのギルドメンバー達が男に語ってくれた拠点占拠の為の攻略に挑んだ時の内容を思い出す。

 

「確かツヴェークがいて、プレイヤーを発見すると鳴き声で仲間を呼ぶ、だったか?」

 

 ツヴェークとは沼地を根城にする直立したカエルの様なモンスターで、Lv80〜85程の強さを持つ、いわゆる雑魚である。

 単体ならLvダウンをしてLv95になったとはいえ男の敵ではないが、発見され際限なく仲間を呼ばれたなら袋叩きにされるだろう。

 最終日で時間が限られているなかでの死に戻りを絶対に避けたい男は、自身の持つスキルの中でも最上の隠蔽忍術を使い、更に魔法スクロールを複数取り出して自身のステータスを高めていく。

 

 こんな事をせず、さっさと飛んで行ければ良いのだが、ギルドメンバー以外が飛行を使い上空から拠点に近付いても、その姿は発見出来ず中には入れないのだ。一度ギルドから抜けている上にゲームを辞めてしまった男は、地面を行くしかない。

 そんな事を確認する様に思い出していた男は、ギルドに加入する切っ掛けになった出来事も思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 男が昔、ソロプレイヤーだった頃。

 飛行では発見出来ない拠点とそこを根城にしている異形種ギルドの噂をネットで見つけ、その所業に心揺さぶられる想いを抱き、一目見てやろうと一人で向かったのである。

 

 そうして男が一人で沼地をそろそろと歩いていた所に、恐らくその拠点を攻略しようと同じく沼地を静かに進む他プレイヤーと鉢合わせた。

 相手プレイヤーは人間種で、鉢合わせたその場所は異形種だけが所属する悪名高きギルドの近くであり、そして男の姿も異形種で、戦闘という名の狩りを避ける事は出来なかった。

 

 

 男はひたすらに相手の攻撃を避けて逃げて必死に生き延びていた。

 時には雑魚モンスターを盾にした上で戦闘に巻き込み、敵プレイヤーに押し付ける。その行為が相手の神経を逆撫でし、更に攻撃が苛烈になるという悪循環だ。

 ゲームなので体力的に疲れる事はないが、精神はジリジリと疲労し、だんだんと諦めが男の心を占めようとしていた。

 

 そんな矢先、男に迫っていた敵プレイヤーに光の矢が飛来し突き刺さり、爆発する。

 更に他の敵プレイヤーにも、続々と多種多様なスキルや魔法を使った攻撃が叩きつけられ、瞬く間に数を減らしていく。

 状況に追い付けず呆然としていた男に、全ての敵プレイヤーを殲滅した謎の集団の中から、赤いマントを靡かせる虫の異形種であろう者が威風堂々と近付いてきて声を掛けた。

 

「間に合いましたね。大丈「生きてるかーー!?」たか……」

 

 最初に声を掛けてきた者の台詞と姿を遮りながら、空から降り立ったバードマンが、男の前に手を差し出してきた。

 

「お前さんの戦いぶり、おも「おい、弟」た……です」

 

 バードマンの台詞を遮ったのは、なぜこんな姿にしたのか?と問いたくなるような、スライムと思わしきピンク色の肉塊だ。しかも声からすると女性の様で、唐突な出来事と合わせて男の疲労した精神を混乱の渦へと誘う。

 

 ピンクの肉塊の触手に縛られ引き摺られていくバードマンに目を引かれている男へ、今度は漆黒のローブを纏う骸骨が姿に似合わぬ穏やかな声で話しかける。

 

「ごちゃごちゃしてすみません。我々は敵対するつもりはありません。たまたま遠隔視の鏡で遊んでいたら、貴方が拠点近くで襲われているのを発見したので、お節介だとは思われるでしょうが、助けにきました」

 

 骨だけのつるっとした頭を指でポリポリと掻きながら男に告げる骸骨の姿に合わせ、その背後でピンクスライムを宥める虫の異形種としょぼくれるバードマン。

 その異様な光景と、逼迫した戦闘による緊張からの解放感、そして急転する事態に混乱していた男は、変なツボに入ってしまったままに笑いの衝動を殺しきれず、声を上げた。

 

「ははは……!助けて頂いたのにフヒッ、笑ってすみませんフフフッ。緊張から解放されたのと唐突の事態ドゥフッ」

 

 抑えられない笑いを抑え、何とか伝えたい事を口にした男に、骸骨は不快感を示すことはなく、寧ろ同意してくる。

 

「あー、分かります。ワールドエネミーに勝った後やダンジョン攻略した後になりますよね」

「それはちょっと分かりません。ずっとソロなので」

 

 折角の骸骨による助け船だったが、例えの内容が男にはレベルが高過ぎた。勢い、余りの感覚の差を前に瞬間的に笑いさえ止まる。

 しまし、好意を無碍にしたようなその返答に、骸骨は少し慌てた様子で喋り出す。

 

「あ!すみません!じゃなくて!ソロな方は色々と拘りが有りますしね!」

 

 何故かこちらの何かをフォローするような慌て骸骨に、落ち着いてきていた男の感情は再び刺激され、また笑いが滲みでてくる。

 

「グフゥッ……ふぅ。いえ、単なるぼっちですよ。仕事の息抜きにプレイしているだけですし、何処かに所属する機会も無かったので」

 

 何とかツボに蓋をし答えた男に、骸骨も落ち着きを取り戻すと、男へ問い掛けてくる。

 

「ソロでここは厳しいですよ。余計なお世話かも知れませんが、何をしてらしたのですか?」

 

 探る様子でもなく、純粋に疑問に思っている声色に、男は正直に、少しからかいを込めて話す。

 

「この近くに異形種のヒーロー達が居を構えている、と知ってサインを貰いにきました」

 

 そう告げられた骸骨は、男が想定していた以上のテンションで声を弾ませて返してきた。

 

「ヒーローだなんてそんな!あ、でも確かにさっきのはヒーローっぽい登場でしたよね!あれは格好いいですよね〜。ピンチな場面で颯爽と現れて、敵を倒した後に……手を差し伸べるのは邪魔されてましたけど、あれこそ正に正義のヒーローって感じですよね!」

 

 男は助けに現れた集団全員をヒーローと言ったつもりだったのだが、骸骨は先程の虫の異形種の事を語りだす。

 その、子供が憧れの存在について語るかの様な姿に、男はそのヒーローより、憧れの存在を自慢する骸骨に好感を覚えていた。

 黙って話を聞いていた男に、骸骨は慌てて話を戻す。

 

「あ、すいません。勝手に熱くなってしまって。そのヒー……ギルドってもしかしなくても?」

「はい、貴方達の事だと思います」

 

 そう告げた男は、子供の様でいて大人の気遣いが出来る愉快な骸骨に、会話する中で急遽心に決めた事を達成するべく、感謝の言葉と共に要望を述べた。

 

「改めて、先程は危ない所を助けて頂き、ありがとうございました。それと唐突なお願いで驚かれるでしょうが、あなた方のギルドに加入させては頂けませんか?」

 

 男の言葉に、骸骨は一瞬だけ視線を逸らし逡巡した様子だったが、再び男と視線を合わせると真面目な声で告げた。

 

「私としては構わないと思います。我々のギルドは社会人で異形種なのが加入条件なのですが、先程の会話で社会人なのは分かりましたし、異形種である事もクリアされてますので問題はないかと。ただ、新規加入にはギルドメンバーでの多数決が必要なので、ここでの返事は出来ません」

「俺は加入賛成!さっきの連中を翻弄してた逃げっぷりは面白かったし!」

 

 男の唐突な要望に対し、真摯に対応していた骸骨の背後から、いきなりバードマンが飛び出し賛成の意を表してきた。

 突然の事に驚く男だったが、賛成の言葉を貰い感謝の言葉をバードマンに掛けようとした、のだが。

 

「おい、愚弟。さっきので反省したんじゃなかったのか?人が真面目に話してる最中に割り込むんじゃねぇよ」

 

 ドスの効いた低い女性の声がバードマンの更に後ろから響き、その場に居た三人の動きを止めた。

 男にとっては初対面な女性だが、逆らえぬ空気を感じ取り、骸骨に視線を投げ、心なしか弱々しく灯る赤い視線を逸らされる。

 そんな、初見・既知共に打つ手無しの肉塊に対し、当事者のバードマンは当然戦力外で、男が万事休すかと思った矢先、凛とした男性の声が強張った場の空気を霧散させる。

 

「まぁまぁ。ギルド加入の話をしている様ですし我々も無関係では無いでしょう。もし加入が認められたらギルドメンバーですし、余り鯱張って話すのは止めにしませんか。因みに私も加入には賛成しますよ」

 

 そう言って、桃肉魔王を宥めながら現れたのは、最初に男へ声を掛けた虫の異形種だった。その言葉に肩らしき部位を竦める様な動作をしたスライムは渋々といった声を出す。

 

「そう言うなら今回は大目に見ます。弟、くれぐれも調子に乗るなよ。それと加入の件ですが、私はまだ賛成でも反対でもないです。もう少し人となりを知ってからじゃないと」

 

 その姿とは違い、まともな意見を述べたピンクスライムに意外性を感じながらも、男は個性的な面々に感謝をする。

 その場の意見が出揃った所で、骸骨から提案が出された。

 

「取り合えずこの場から撤収しませんか?そろそろ雑魚がリポップしますし。それと今日は拠点に殆どのメンバーが揃ってるので、ギルド加入について話し合えますよ」

 

 骸骨の提案に賛同した異形種達は、各々の移動手段でこの場から去っていく。

 そうして後に残った男に、骸骨が声を掛ける。

 

「ホームへ招待しますので、今から出す転移門を潜って貰えますか?」

 

 男に断る理由は無いので、是非にと返す為に骸骨を見て、ある事を思い出す。

 

「是非ともお願いします。それと、自己紹介をまだしてませんでしたね、助けて頂いたのに申し訳ありません」

 

それに対し、骸骨も驚きの顔文字を出しながら言う。

 

「確かにそうですね。こちらもまだでした。ですが、取り合えず移動してからにしましょう。雑魚が来ます」

 

 そう言いながら黒い靄を呼び出し、男に対し「お先にどうぞ」と勧める骸骨の前を横切りながら、先程感じた思いを告げる。

 

「さっきの女性を宥めた虫の方は、確かにヒーローでした」

 

 その言葉に、骸骨は表情は変えられないが一瞬ポカンとしたようで、直後に笑いの顔文字を連打してきて言った。

 

「ええ、誰かが困っていたら助けるのが当たり前!それがヒーローですから」

 

 男はその嬉しそうな言葉を聞きながら、転移門を潜るのだった。




咳が止まりませぬ(´・ω・)y-~~←

皆様も寒暖差にはお気をつけください。
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