ファントムクォーツ 仮面ライダーゴースト外伝 仮面ライダーpq   作:鉄槻緋色/竜胆藍

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「……くっ」

 朦朧とする頭をおさえて、遊馬はどうにか起きあがった。

「いったい何が……?」

 本来ならとっくに異形の餌食になっていてもおかしくないところである。

 見れば、何者かが蜘蛛型の異形の前に立ちはだかり、道路の真ん中で戦っている。

「……アクィラ?」

 霞む視界に見覚えを感じてその名を呟くが、すぐに頭を振ってその発想を打ち消す。

 目をこすって見直せば、剣と盾を構えたそのミントグリーンの人影は妹とは似ても似つかない。

 それに気付いた遊馬は慌てて周囲を見回した。そうだ。先刻まさに妹の姿を見たではないか。

 だが、見渡せる範囲には妹の姿はなかった。

「見間違いか……いや」

 意識が鮮明になるにつれ、懸案事項を次々と思い出す。

 何者かは知らないが、あのグリーンの人影は蜘蛛型の異形と渡り合っている。

 今のうちに戦えない者──妹と優を安全圏に逃がさなければ。

 改めて周囲を見回すが、妹の姿はやはり見当たらない。

(まずは、動くことのできぬ優の身体からだ)

 誰かがいたのだとしても、早急に逃げてくれたと思いたい。

 遊馬は、道路を挟んだ向かいの歩道、張り出した屋根の下に横たえた優の元へと駆け出した。

 蜘蛛型の異形に目を付けられぬよう、戦いの現場を大きく迂回して雨に煙る道路を渡ってゆく。

 ──しかし──

 走りながら遊馬は、蜘蛛型の異形の爪を円形の盾で打ち払うグリーンのパーカーの後ろ姿を横目に見ながら思案する。

(私は、なぜあれを妹だと見間違えたのか──?)

 

 

 怒濤の勢いで次々と繰り出される爪の刺突を、あきらは盾で受け止め、逸らし、捌き続ける。

 自らの特性を変更した今のあきらは、アラクネの攻撃を盾越しに受け止めてもびくともしない。

 ただ、攻撃に転じずに受け止め続けているのには理由があった。

(あれ邪魔だなー)

 フードの両側頭部に刻まれた瞳の文様は、ただの模様ではなくあらゆる波長を高精細に捉えるセンサーアイである。

 両サイドに広範囲に渡って見通すことができ、今も正面からの攻撃を見切りながら、後方を通り過ぎてゆく男の姿も捉えていた。

 ──もしかしたら、あの男が背後からこちらを攻撃してくるかもしれない──

 そう警戒して気にしていたのだが、どうもその様子はなさそうだ。

 恐らく、歩道に倒れている少女の元へ行くのだろう、男がその歩道に到達したところであきらは反撃に出ることにした。

『えいっ』

 振り下ろしてきた歩脚を、斜めに構えた盾に滑らせて一歩踏み込む。

 つんのめったアラクネの腹の下に潜り込む勢いで上体を伸ばし、剣先で体重を支えていた後脚の一本を打ち払う。

『ーーーーッ!?』

 アラクネの怪訝な苦鳴と同時にその体勢が大きく傾いた。それも、横に倒れかねない勢いで。

『そんで、そこっ』

 転倒しかけたアラクネが咄嗟に地面に突き立てた前脚に向かって、手首の返しで閃いた刀身が突き刺さる。

『ーーーーーーーーッッ!?』

 全体重をかけたその脚は、衝撃を逃がすことができない。

 結果打ち砕かれた歩脚の爪が、雨粒を弾きながらきりきりと宙を舞った。

 即座に身を翻したあきらはアラクネの側面へと回り込み、さらに歩脚を二本斬り飛ばした。

『ーーーーッッ!?』

『よしっ』

 混乱したアラクネが身体を支えきれず完全に転倒したところで、あきらは大きく跳び退いた。

 剣と盾を組み合わせ、パラソルスパイクをたたんでどこへともなく収納すると、パーカーを脱ぎ捨て再び裏返して羽織り直す。

 白面を表にした最初の姿になったところで大きく跳躍し、そこの電柱の上に飛び乗った。

『「ホワイトファントム」! 抱き締めてよダーリン!』

 叫び、あきらはベルトバックルの瞳の部分に片手を乗せて、その目を覆い隠すようにした。

 そうしてふた呼吸ほど。

 ベルトを覆う掌の隙間から白い輝きが溢れ出した。

『アーイ、スクリーム!』

 元気良くそう叫ぶと同時、ベルトから手を離して大きく飛び上がった。

 ベルトバックルの瞳の部分からは膨大な輝きが吹き出し、宙を舞うあきらの身体を包んでゆく。

 やがて片足を突き出した跳び蹴りの姿勢に移行したあきらの身体は、まるで砲弾のように加速した。

 それは、地上で身悶えしているアラクネの、包帯の簀巻きのような胴体部分を貫いていった。

『ーーーーーーーーッッ!』

 苦悶の断末魔が響き、胴体部分に大穴をあけ仰け反ったアラクネが爆発、四散した。

 その頭部から、包帯の隙間から覗いていた赤い瞳の眼球が飛び出す。

 反対側のアスファルトを擦り焦がして着地したあきらは素早く身を翻すと、取り出したパラソルスパイクを一閃させてその眼球を打ち砕いた。

『よーしイイ仕事したよダーリン!』

 勢いのまま一回転したあきらが、パラソルスパイクを肩に担いで気勢をあげた。

 

 

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