新西暦と呼ばれる時代―――



これは、とある世界では歌を歌い戦った少女たちが

もし、機動兵器を駆り戦っていたらという物語。

やがて。彼女たちも同じ物語を歩む―――




思い立って書いてみた暇つぶしという奴です。
アンチ・ヘイトは念のためですので。

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ちょっと書いてみたいなと思って書いた作品です。

まぁ…かなりグダグダなところがあるので、そこは暖かい目でお願いします…(汗

一応、時系列はバルトール事件の前。つまり「OG外伝」の前ですね。

質問等がありましたらお気軽にどうぞ。

それでは短編ですがお楽しみ下さい…


…例によって長いですが


シンフォギア×SRW

 

 

 

 

極東 地球連邦軍 仙台基地

 

極東に位置する日本にある基地。そこはかつて空軍基地として使用されていたが、現在はPTを少数ながら配備し、現代の基地として機能していた。

だが他の基地と違う点、それがあるとするならば、そこには少数精鋭のPT部隊が居ることと、その部隊員の大半が少女たちということか。

 

 

 

 

これは、その部隊が結成される少し前の話―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――で。響は何処に配属されたいのか、希望書出したの?」

 

両手で緑茶の入った湯呑を包み込み、真面目な顔で問いを投げたのは、士官学校で出会い友人となった『小日向未来』。目の前で食事をしている彼女(・・)とは違い看護士志望だ。

本人は前々から看護士になりたいと考えていたらしく、それなら病院でもいいのではないか、と両親や目の前の親友に言われたこともある。が、病院だとやれ院長やら何やらの権力争いの坩堝だということから嫌がっており、それならいっそ看護士として軍隊に配属されたほうがマシとのこと。実際はどうかは分からないにしても、そんな理由で病院のナースなどをしないのも珍しく、またそんな理由であることは聞いていた親友も驚いて、箸だけを止めてどんぶりを持ったまま中のものを噛んでいた。

 

「まだ。っていうか、私未来が行くところに一緒に行きたいからさ。未来が決めてからにするよ」

 

「それは無理だって言ったでしょ。パイロット候補生と看護士志望は違うんだから。第一、そんな理由で希望が通るわけなんてないでしょ?」

 

「むぅ…」

 

親友の正論にぐうの音もでない『立花響』は、自分の考えが易々と通じないとは思っていたが、まさかここまでキッチリと返されるとは思ってなかったようで、困り果てたというような顔で、両手でしっかりとどんぶりと箸を握りしめていた。

流石に食べている食器を離さないのは、彼女の性格かそれとも食い意地か。いずれにせよ、食べながらだが考える響は、口の中に入るご飯が妙にしょっぱく思えてならなかった。

 

 

 

 

 

新西暦と呼ばれる時代。

人類が宇宙へと進出し二世紀が経過しようとしていたが、人類の生活水準は二十一世紀と殆ど変化はなかった。

その理由は数年前に飛来した三つの隕石によるものが原因で、人類は一度はその科学技術が後退してしまったが、再び発展を遂げ、更なる進化へと歩みを進めていた。

飛来した隕石。それは後に「メテオ3」と呼ばれるものから未知の技術が発見され、それが人工物であることから異星人の地球侵略が予見された。

当時では鼻で笑われたその仮説も、今の時代では完全な真実となっている。

異星人エアロゲイターによる侵攻「L5戦役」。これを皮切りに半年後にはそれとは異なる異星人によって引き起こされた戦いの「インスペクター事件」と呼ばれる戦いが行われるなど既に何度も大きな戦いが地球圏で起こっていた。

 

 

 

 

 

「―――流石にダメですか」

 

「ダメです。っていうか、前にも言ったでしょ。私たち職業が違うんだから、絶対一緒にはなれないよって」

 

「うぐぐ…」

 

前々から話していたことで、彼女、響も分かっていたハズだ。彼女と自分との志望が天と地の差のように全く違ったものであるのだからと。

何を根拠にと呆れはしたが、彼女の気持ちも分からなくもない。だが、自分たちが目指しているものはそんな個人の感情でどうこう出来ることでもないと、まるで母親のように言う未来の言葉に、響も叱りを受けていい気持なわけがない。

 

 

「そりゃ、私も響と一緒の配属先なら嬉しいよ? けど、響の希望と私の希望。似てるようで結構違うんだよって……これ前に響が言ってなかった?」

 

「あれっ…そうだっけ?」

 

立花響はパイロット志望の候補生だ。パイロットといっても戦闘機のほうではない、人型の機動兵器パーソナルトルーパーの操縦者。つまり、ロボットを動かすほうのパイロットを志している。

というのも、彼女がそれを希望したのは、個人的理由からということであまり話せない話題らしいが、分かっていることから言うと、どうやら知り合いがPTのパイロットをしているということで憧れたからだと言う。

考えも理由も幼稚であると誰もが彼女の希望に反対し、その考えを潰そうとしていた。無論、悪意ではない、彼女を大切に思う者たちによる善意からのこと。しかし彼女の考えが変わることは決してなく粘り続けた結果、現在にまで至っている。

 

 

「自分で言ったことを忘れる…のはいつものことだよね」

 

「あははは………」

 

親や親類からの反対を押し切り、一人パイロットとしての道を選んだ響は軍の世界である士官学校へと飛び込んだ。

そこでは今まで以上の苦労や苦痛が多く彼女に襲い掛かったが、全ては夢のためと耐え抜き、ここまでやってきた。彼女もあとは卒業試験をパスするだけ。それをクリアすれば無事PTパイロットとして配属されることになる。そんな卒業まで間近に迫っていた時のこと。

かつてDC戦争を起こした軍事結社「ディバインクルセイダーズ」とその残党が再結成したノイエDC。この二つの組織が地上や宇宙での活動を弱めていき、戦力に余裕の出来て来た連邦は新兵を最前線以外に配置することが出来るようになり、重点配置ではない一応の新兵たちの希望を聞き入れるようになっていた。

実はこれは連邦の各基地に対しての新兵や一般からの評価を知ることが目的で、何故その基地が人気があるのか、逆にないのかを調べるなど、所謂抜き打ち調査のようなものだ。

 

 

「それで。響は何処にするのか決めたの?」

 

「特には決めてなかったなぁ…けど、日本に近いところがいいから中国、マレーシア、オーストラリア…あとはロシアの東部かな」

 

「日本本土は? 伊豆はいいところだって先輩たちが言ってたよ?」

 

「うーん…伊豆は考えたんだけど…よく襲撃受けるって聞くから、仮に希望通ったとしてもねー…」

 

「あー…」

 

極東支部、伊豆基地。設備等が整っており、そこではかつてイージス計画と呼ばれた軍備拡張計画で凍結が解除されたSRX計画が行われている。設備人員、どれをとっても申し分ない場所でそこには数少ないスペースノア級のドッグが備わっている。

また特殊戦技教導隊などのエリート部隊もそこを拠点としている。

が、響の言う通り、それが原因なのかよく攻撃を受けることも多い。

 

「で。どうせなら近くの国にしようって考えたのですよ」

 

「まぁ…よく襲撃にあうっていうことに否定は出来ないよね…」

 

「なんの因果なんだろうね。被害受けてるこっちには迷惑でしかないのに」

 

元一般人としては軍事拠点が狙われるにしても、その余波で自分たちが狙われるのはたまったものではない。そのお陰で自分たちまで被害をこうむっているのだ。

それが基地の近くなどであったら、まだ分からなくもないと割り切りはするが、異星人やなどの生物相手だと、それが自分たちにも被害が及び、更にテロリストだと余計に軍人は何をしているのかと思いたくなるものだ。

 

「…というわけで、赴任早々に殉職はやだから、できれば近い場所ということで、近くの国にしようってワケになったのですよ」

 

「なるほどね…けど、今の情勢やら異星人の侵攻の仕方とか考えると、どこでも同じなんじゃ…」

 

「いやいや。最低重要拠点なら生き残れる確率だってね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すると。そんな時だ。彼女たちの居る食堂に、まるで学校放送のようにスピーカーから音が鳴り出して

 

 

 

 

 

『パイロット候補生四年の立花響さん! 今すぐ学長室にいらっしゃいッ!!!』

 

 

と。ノイズ混じりの大声と共に、聞いたことのない女性の声が響き渡る。

これには最初は二人も驚きはしたが、響にいたっては名指しで呼ばれることはここではままあることだったので、大声に驚いた程度でさして気にはしていなかった。

 

 

「………聞いたことのない声だ」

 

「えっ、教官とかじゃないの?」

 

「うん。教官はみんな男の人だったし、女の先生もこんな声はしてなかったよ」

 

それでも呼ばれていることには変わりはなく、自分が呼ばれて直ぐに行かなくてはならないと、どんぶりに残ったご飯と僅かな具を一気にかき込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本の千葉に位置する連邦軍士官学校。アステロイドベルトにあるイカロス基地と同様に士官学校が存在するが、この学校はイカロスのものよりも年齢が若干ながら低く大体でも高校生ほどの軍人を目指す青少年が集まる。

陸戦、海兵、空挺。陸海空と三つのほかに技術者や軍に関係するカリキュラムも少なからず含まれている。

その中で今人気なのが、言うまでもなくPTやAMのパイロットコースだ。

現在も募集枠よりも応募者のほうが多いこともザラ。なので推薦などでもそのコースでの入学は難しいとされている。しかし、狭き門を潜れた者たちは死地へ赴くパイロットへの道に進むことができる。

ちなみに。士官学校で使用される練習機は全て量産型ヒュッケバインMk-Ⅱである。

 

 

「―――長いご高説ありがとうございます。で。何かほかに言うことは?」

 

「………ごめんなさい」

 

 

こんな話がある。士官学校の生徒の一人が練習機の関節をよく壊すことがあるという。なんでも格闘戦をメインとした戦い方をしているので負荷がかかりやすく、最終的に壊れて黒煙を上げることはしょっちゅうだという。

その実行犯は現在、十五回目の関節モーター破壊の報を聞いて目の前に居る学長と教頭、そしてもう一人顔の知らない女性に対し謝罪していた。

 

「一度や二度ならまだしも、十五回とはね…」

 

「流石に、パイロットとして失格だと私は思っています学長」

 

改めてその回数を聞き、よくそこまで壊せるなと怒りを通り越して関心してしまう学長だが、その隣にいたいかにもスパルタ教育が得意で頭の固い生徒が好きな熟年の女性教頭は、これまた典型的な眼鏡の位置を整えて厳しい一言を浴びせる。

彼女の言い方や性格に気に入らないところがあるのは響もうんざりしているが、その正論の言葉には何も言い返すことはできなかった。

 

「立花響の機体の運用方法は連邦軍が定めたものから大きく逸脱しています。こんなことでは戦場に出ても即撃墜は確実。何事も無駄に思えますがね」

 

「ッ………」

 

「まぁまぁ教頭。貴方の言い分が分からないわけではない。が、彼女には彼女の長所がある。直ぐに無駄と決めつけるのも私は流石に無理があると思うよ」

 

「いいえ。彼女が正規の軍人になれたのなら軍内部の規律と秩序に悪影響をですね―――」

 

また延々と教頭と学長の弁護と検事のような言い合い合戦を聞かなければならないのだろうか。

そろそろ十五回目ということでうんざりや呆れるどころか直ぐに眠りたいとまで思い始めた響は、嫌味を言い続ける教頭に向かい睨みつけようとしたが、学長が必死に弁護してくれていることと彼の慈悲のお陰でここまでこられたと、学長への思いから素直にそういった反撃をすることもできなかった。

学長はかなりおおらかな人物で元々軍艦の艦長をしていたらしいが、年齢を理由に一線を退いた人物だと聞いた。なので、現場からの経験談はエリート街道を歩いてずっと本部でぬくぬくしていた教頭よりも何十倍も分かっている筈だと、内心では彼女に向かい悪態を履き続けていた。

 

 

「―――――学長。いい加減、そこの無駄話の女性を止めてくれませんか? これでは本題に移れません」

 

「無駄ッ―――!?」

 

いつものように。そう思っていた響の前、ではなく前の視線を少し横にずらすと、今まで一度も見たことのない、あのスピーカーから聞こえて来た声の主である女性科学者の姿があった。どうやら、呼ばれた理由は彼女にあるらしい。

 

「ら、ラドム博士、私は連邦の、引いては地球のですね―――」

 

「貴方のご高説こそ結構ですわ教頭。私、貴方のような頭でっかちの制服組は好きではないので」

 

「なっ―――」

 

ズバリ。とまるで一本の鋭い剣のように言いたい事を堂々と言い放った科学者の女性。赤い髪に鋭い目はまるで獲物を狩る獣のようで、その目は今までさんざん止める人物が居なかったことから言いたい放題言っていた彼女に対し、忌み嫌っているとハッキリと言い切っていた。

 

「…あのー…学長。その人は…」

 

「ああ。すまないね。彼女は―――」

 

「地球連邦軍、強襲用機動兵器開発計画ATX計画、開発主任のマリオン・ラドムです。貴方が「デストロイヤー」…いえ、ヒビキ・タチバナ候補生で相違はないですわね?」

 

「あ…はい…」

 

 

また変わった人物から今の今まで自分のことで言い争っていたのだぞ、と言いたげに見る響に、視線を感じたのか彼女も目を合わせてくる。

始めて会う人物なのでまだ会話の仕方や距離の取り方を分からない響は少し気を引いてしまうが、彼女はさっきまでの教頭に対してとは違い、観察するようにいくつか質問を投げてくる。

 

「…では貴方に質問です。これまでの実機訓練で、貴方は模擬戦で相手の機体を全て格闘戦でダウンさせた。それに間違いは?」

 

「…覚えてる限りでは間違いないです」

 

「結構。次。格闘戦で貴方は全模擬後に関節モーターの破損を言われた」

 

「…ハイ」

 

「最後です。その模擬戦。全て使用した機体は量産型ヒュッケバインで?」

 

「間違いありません。学校にはそれしかないので」

 

他愛のない他の教師からも聞かれそうな質問だが、答えられないわけでもないので、響は一つ一つ記憶をたどって確かな情報と共に答えた。

そして、その質問全てを終えると、タブレットの画面を弄ったラドムは簡潔に言い返す。

 

「よろしい。問題ありませんわ」

 

「え……?」

 

「なっ…ラドム博士それは…ど、どういう…」

 

甲高い声で驚く教頭は汗のせいでズレ始めた眼鏡を持ち、平然とした顔で言うラドムに理由を聞こうとするが、当人はもはや教頭など眼中になく、ただ知り得た事から事実だけを学長に言い放った。

 

「学長。やはり原因は機体のほうにありましたわ」

 

「ラドム博士。貴方の見解は」

 

「練習機として使用されている量産型ヒュッケバインMk-ⅡはフレームことG2フレームですが、あくまで一般兵が使用するためのもので特筆したものを持っていません。汎用性を優先したフレームということで動かす分には問題ないのでしょうが、パイロットが格闘戦という関節部に負荷をかけやすいことをしているから、モーター破損が常時的に起こっている」

 

格闘戦は関節部を至るところへと動きまわし、臨機応変に戦うことをメインにしている。力加減が自身の体ということで調整しやすく、手持ち武器のように伝わる感触も実際に触れたほうが感じやすい。

そのため、動き事態はかなり激しく、人間として動ける範囲全てをフル活用して行う戦い方だ。その結果、関節部に負荷がかかるのは当然のことと言える。

 

「そ、それはつまり彼女がやたらめったらに、腕づくでしているからで―――」

 

「格闘戦で関節部に負荷がかかるのは当然のこと。彼女の場合、型は整っていると思いますし、単純に機体のモーターの方がその動きに耐えられなかったという訳でしょう」

 

量産型ヒュッケバインは汎用性の機体。格闘戦に重視したものではなく、あくまで戦闘は手持ち武器をメインとしたものだ。なので、機体そのものにも固定武装は頭部バルカンがあるだけ。あとは戦況や部隊運用に合わせて支給される規格共通の装備だけで、状況に合わせて換装していくのが基本的な運用だ。

 

「なるほど。で、他には?」

 

「彼女の戦い方はどちらかというと特機のような一点重視タイプです。射撃もそこそこ出来るようですが…正直無理をしているのが見て分かります」

 

「…確かにな」

 

格闘、接近戦では響の右に出る人物は居ない。だが、射撃戦は実際かなり下のランクで取りあえず使える、という程度しか扱えないのだ。つまり普通に前線に出て取りあえず弾幕になる程度で、いつの間にか死ぬ新兵と同じ度合の命中精度しかないのだ。

 

「まぁ。このままヒュッケバインなんか(・・・)に乗せていたら初出撃で撃破は確実でしょうね」

 

「………。」

 

「で、でしょう!? なら―――」

 

「まぁ私にとってそんなことはどうでもいいのですがね」

 

「はぁ?!」

 

そもそもこの時点でラドムの言葉には教頭にとって可笑しい事だらけだった。

ヒュッケバインを軽蔑するかのような言い方、モーター破壊が当たり前のような反応。別に格闘戦をしようが気にしない。

そして極め付けは射撃が下手なのは別にどうでもいいということ。

制服組としての道しかしらなかった教頭にとってはその全ては明らかに可笑しいことだらけだ。

 

「ら、ラドム博士ッ! いくら貴方が連邦軍のエース機開発主任だからと言って、そんな侮蔑は―――」

 

「ところでタチバナ候補生」

 

「あ。ハイ」

 

「聞けよ!?」

 

完全に眼中にないと言い切っているように教頭を無視するラドム。学長も次第に教頭のことに気を止めたりする気がなくなってきたようで、響たちの話に耳を傾けていた。

 

「訓練機のヒュッケバインシリーズ以外に他の機体に乗った事は?」

 

「…確か、二年の時にAMのリオンに乗りましたけど…あまり慣れませんでした。だからヒュッケやゲシュペンストのPTタイプをほぼ重視しています」

 

「………この上ないほど完璧ですわね。貴方」

 

「えっ…?」

 

「学長。彼女、借りていきますわよ」

 

刹那。ラドムはそういって響を借りると言い切ると話に置き去りにされている本人をよそに学長に許可を貰い、その学長も「ぐれぐれも無理はさせないように」と一応の釘を刺しただけで特に止めることはしなかった。彼もラドムの言葉にある程度察したのだろう。

止めようとしなかったのも、止めても無駄ということを知っていたからだ。

なので、念のために程度にしか忠告することしかできなかった。

 

「それと。あまり被害を出さないでくれたまえ」

 

「それは……約束しかねますが、善処はさせていただきますわ」

 

 

その言葉を最後に、ラドムは響を連れて学長室を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえばタチバナ候補生」

 

「はい…?」

 

「あなた、ゲシュペンストを動かしたことは?」

 

部屋を退室してから間もなく、ラドムの後をついて行く響は歩きながら問われた質問に一瞬動揺はしたが、直ぐに答えを返す。

 

「乗った事は…ないですね」

 

「なるほど。乗ったのは全てヒュッケバインと。それなら問題は無さそうですわね」

 

「……なにがですか?」

 

一体その質問にどういう意味があるのかと疑問に思っていた響に対し、ラドムは「何を聞いていたのだ」「何を聞いている」といった顔で後ろへと振り返った。

どうやら彼女的には学長室の時点で大体察してほしかったらしく、彼女の視線に響は若干歩く速度を落とした。

 

「模擬戦です。今から、貴方にはテストを受けてもらいます」

 

「も、模擬戦ですか?」

 

「ええ。機体はこちらで用意したもの。という条件付きですがね。それに、そろそろ彼女たちも着いてるころでしょうし」

 

ラドムに連れられ、廊下を歩く響はどんどん進んで行く話について行けないというより引きずられている感じがしていたが、辛うじてそれを理解している自分がいるということで深く考えることはしなかった。

 

 

 

 

 

そしてその時を同じくして、士官学校近くにある滑走路に一機の輸送機が着陸した。

 

 

 

 

 

 

「既に学長から演習場の使用許可は得ております。貴方はこの後、直ぐにパイロットスーツに着替えてきなさい」

 

「………あの。ひとつ、馬鹿な質問してもいいですか?」

 

恐る恐る手を挙げて別の話題を切り出す響にラドムはさらりといいですわよ、と答える。

今のうちに不安要素はなくしたいのだろう。

それは響も同じで、とりあえず彼女の言う馬鹿な質問をラドムへと投げかけた。

 

「さっきの話で大体のことは分かったんですけど…つまり私が呼ばれた理由ってなんなのですか?」

 

学長室での話題はまとめて言えば響のパイロットとしての適性にはやや難があり、そのスタイルは主に格闘戦がメインであるということ。そして、そのせいで関節モーターをよく破壊してしまうということ。この二つをとりあえずの結論だと彼女も認識していた。

それを聞いてラドムも否定はしなかったが、今のうちに応えるべきだろうと思ったのかここに来た目的を打ち明ける。

 

「…いいでしょう。私が来た理由。それは人探しです」

 

「えっ…?」

 

「よくいる全てをそつなくこなすエリートや、未知の力をもった、なんていう者でもない。まして今から才能を開花させるなどという輩はもってのほかです。

 私が…いえ、彼女(・・)たちが捜しているのは既に才能を開花させた異端者です」

 

「異端者…? 私がですか?」

 

「ええ。貴方のような格闘戦をメインとした人物は現役パイロットでも偶に居ますが、候補生では貴方ぐらいでしょう。私はそこに目を付けたのです」

 

目をつけられた理由は分かったが、それでもその理由で納得できるかと言われれば

 

「でも、それなら私じゃなくても…」

 

「言ったハズですよ。人探しと。正規軍では色々と面倒になるので、貴方のような候補生は都合がいいのです」

 

「都合…ですか」

 

「正規軍は基本、物などのように「予備」というものを持っていません。予備隊というのが存在しますが、それはあくまで正規部隊の予備隊であって補充兵の塊ではあまりせん。なので、一人でも抜けば―――」

 

そもそも小隊レベルでも基本数名と決められた隊員だけで、それが同時に上限になる。戦場で迷った味方兵と遭遇しない限りは基本決められた人数しか小隊長などは動かすことはできない。それが軍になれば、その上限で固定された部隊のみになり、そのための補填となるばらけた兵士は存在しない。あるのはラドムの言う通り「予備隊」と呼ばれたひとくくりで一隊の部隊などがあるだけだ。

もしそこから一人抜けば、兵員を補充する事になり、それだけで色々なところに糸が手繰られていくように連鎖反応をする。

 

「…本音を言えば、今の正規兵にはロクな兵士が居ないのですがね」

 

「博士の要望に応えられる…?」

 

「ええ。ですから、貴方には今から、ゲシュペンストに乗ってもらいます」

 

 

新西暦の世界で、人類初の人型機動兵器。それがゲシュペンストだ。

最初期に三機製造され、それぞれ火力と汎用性を追求。残り一機を予備として運用され、現在も使用されるOSの「TC-OS」製作の役立ちに活躍した。

しかし、現在は苦節と苦難、更に不幸が続き主力機の座からは降ろされており、そこにはリオンとヒュッケバインの二種類の機体が座っていた。そもそもヒュッケバインシリーズがあるのもある意味ゲシュペンストのお陰でもある。

当然、このままでは終われないとゲシュペンストに強い思い入れを持つ者たちによってエース機のための高級機としての近代化改修プラン「ハロウィン・プラン」が立ち上がった。

インスペクター事件が終わって間もない現在、ゲシュペンストは再び量産機として姿を現し「量産型ゲシュペンストMk-Ⅱ改」が試験的に数機ほどロールアウトしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――これが、ゲシュペンスト…」

 

いざコクピットに入ると、レイアウトは矢張り同じPTということで変わりはなかった。しいて上げるのであれば、コンソールに映る機体情報とレバーやペダルの遊びがかなり少ないということぐらいか。

実戦の機体というだけあって、訓練機のような動きが過敏か、マイルドかというようなものではない。しっかりとどんなパイロットでもフィットするように、初めて乗る彼女でも難なく動かすことができた。

 

『機体のOS設定等はそのままで結構。動かせたのであれば、演習場に入りなさい』

 

「はい」

 

校舎を後にし演習場近くに出て来た二人は、そこに留められていたトレーラーの中へと今度は入っていく。

すると、中には一機の旧型の量産型ゲシュペンストMk-Ⅱが格納されており、それを使ってテストするとラドムから言われた響は、流れる話について行けず、拒否することも出来ずに、持ってきたいつも使っているパイロットスーツに着替えてコクピットへと乗り込んだ。

大体の話を理解してはいたが、どうにもラドムに主導権を握られており流れも彼女が起こしているようで止めることも出来ず、言うタイミングを逃しっぱなしの彼女はもはや拒否することを諦めた。

 

 

「とほほ……なんでこうなったんだっけ……」

 

のんびりと昼食を食べて、午後の講義と訓練のためにと思っていたが、それが唐突に彼女に呼び出されたことで、何やら人材集めのために自分がテストされることとなった。ざっと思い返した響だが、今思い返せば拒否したり質問したりする機会はいくらでもあったハズだ。

だがそれでも自分から言うに言えず、流れを奪われてしまった彼女は、最後にはここまで来てしまったと言えよう。

 

 

「ま……取り合えず頑張るか……」

 

自分が他人の起こした流れに逆らったりすることができないのは自分が良く知っている。

変に人の流れに従う流されやすい性格。そしてそれを拒絶することができない。

それは自然と「それはもう仕方ない」と諦めているからだ。

 

 

「………さて」

 

始めて動かす機体だが、操作系に変わりはなく問題もないので、響はこれまでのヒュッケバインと同じく慣れた動きで機体を動かし、トレーラーの近くにある大型の機動兵器専用の演習場のある沿岸方面へと向かった。

 

 

 

 

 

 

「PT01。移動を開始。機体コンディションに問題ありません」

 

「01は真っ直ぐ人口演習場03へと移動。マーキングポイント到着まで一分」

 

司令用のトレーラーの中では、既に演習場に近い場所でこれから始められる模擬戦の準備が淡々と進められている。

ドライバーと博士を含め、四人のスタッフが狭くもそこまで居心地の悪くない内部で大画面のモニターに映る映像と計測器を確認しており、機体の状態を確認する画面には響の乗る機体のほかにもう一機のゲシュペンストの情報が映されていた。

 

「結構。PT00、中尉。準備はいいですわね?」

 

『こちら00。いつでも行けます。…ですがよろしいのですか?』

 

「構いません。学長からも許可は得てますし、これでやられるようなら、貴方たちの部隊には不必要な人材というだけです」

 

『……了解。重症程度にしてみせます』

 

 

止めても無駄だということを声から察した00と呼ばれるゲシュペンストのパイロットは、通信を切ると間を置かずに小さくため息をついた。

 

「…不必要、か」

 

中々割り切れない言い方に表情を曇らせる。そもそもその言い方の理由を知っている自分にとって納得は出来るが受け入れられないことで、それが事実であっても決して明るい表情などできない。

しかし。同時にそれは避けられないことであるから、やらなければならないことだから。従わなければならないことと、苦痛に耐えるように瞳を閉じると唇を強く締めた。

 

 

「辛いものだな…」

 

 

―――訓練生相手に本気で相手をするのは。

押し殺せない思いを胸に幻覚痛の痛みに苦しまれながらも、グリップを握りペダルを踏み切る。

今まで静まり返っていたブースターは勢いよく燃焼を始め、亡霊を青空へと飛び出させた。

狙いは一つ。恐らく、コクピット内で驚いているだろう候補生が乗るもう一機のゲシュペンストだ。

 

 

「ッ!?」

 

 

「悪いが…無事は保障しない…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間は少し戻り、予想通り驚きを隠せなくなる響はゲシュペンストを動かし演習場へと入って行く。人工島として増設されたその演習場は実はごく単純に海面の上に支柱を建てて乗せただけという不安要素のある場所だった。が、この支柱が恐ろしく強固且つ絶対的で、演習場を完璧に支えている。

しかも雨や風などでも錆も出来ることは少なく、それらは日々支柱が点検させ整備されているからだ。お陰で完成当時と同じ、とまではいないが、支柱は殆ど弱ってもいない。

 

 

「演習場03だから…ここだよね」

 

 

その中にある演習場の三番。市街地での戦闘を想定したこの演習場は現代の街並みを完璧に再現している。ただ流石に内装まではいかず風景のみではある。

しかし高層ビルが立ち並ぶ首都圏的な人口密集地があれば、一般家庭が多く並ぶ場所などもあり一口に市街地といってもかなり多様だ。

その中で響が入ったのは比較的一般家庭や雑居ビルの並ぶ市街地Aのエリア。ちなみに構想ビルのエリアをB、一般家庭が多く並ぶ場所はCと呼称されている。

 

 

「博士。マーキングされた場所に着き―――」

 

『よろしい。では用意はいいですわね?』

 

「―――え?」

 

 

刹那。彼女の眼前、というより前方方面から一機のゲシュペンストがブースターを吹かし飛び出してきた。

あとはもう一人のパイロットが予想していた通り。飛び出してきたゲシュペンストと何も説明のないまま戦いのコングが鳴り響いたことに口を開けて、文字通り開いた口が塞がらない。固定された状態のまま、銃口を向けるゲシュペンストを瞳に捉えていた。

 

 

『では。状況開始です』

 

 

まるで通信のスピーカーからの声に気付いていたかのように、かき消すような発砲音が数回鳴り響く。

それが目の前に現れたゲシュペンストの手に持つ規格共通武器のGリボルヴァーを発砲し、先制攻撃として撃って来たのだ。

 

「う、ウソぉ!?」

 

突然の模擬戦開始と先制攻撃。更に状況やらがほとんどつかめていないという中、もはや逃げることも出来ない響は唯々驚くしかなく、彼女の周りでは着弾した弾丸がコンクリートの分厚い地面を抉っていく。

 

『互いに実弾を装備しています。死にたくなければ戦って勝ちなさい』

 

「それ模擬戦っていうよりプチ実戦ですよね!?」

 

『そうとも言いますわね。ほら。急がないと…』

 

リボルヴァーを腰に戻し、地面へと着地した相手のゲシュペンストはカメラアイを響の方へ向けると、まるで捉えたぞと言わんばかりに怪しく緑の発光をする。

 

「げっ…」

 

そして。続いて出て来たのはマシンガンのM950。ゲシュペンストだけでなくヒュッケバインシリーズでも採用されている傑作銃だ。

それを後ろから抜き取ると、狙いをやや適当にしてトリガーを引いた。

元々精密に狙って撃つものではないので、殆ど弾幕と送り込んだ弾の数頼りだ。

それに気づいた響は、今度は突っ立っていたら確実に当たると脳内からの警告音にペダルを踏み、グリップを動かした。

 

 

「ひえええ…」

 

目の前の弾幕に怯えた響はゲシュペンストを地面に滑らせて後ろへと後退する。そこからマシンガンの攻撃が当たらないように移動しつつ相手との間合いを取り、その間に自分はコクピット内で機体の情報と武器を確認する。

ゲシュペンストは量産型Mk-Ⅱ改からテスラ・ドライブが装備されているが、それ以前の量産型Mk-Ⅱにはそれらが搭載されず、あくまでジャンプや宇宙空間で移動するのに困らない程度しかなかった。

 

(だから多分この子は飛べない。跳べる(・・・)けど飛べない(・・・・)んだ。だからジャンプはタイミングを選んで…)

 

パネルをスライドし機体の装備する武装を確認する。ゲシュペンストはヒュッケバインと違いバルカンを持たず、変わりに左腕にプラズマステークを装備している。これが改になるとプラズマ・バックラーという新しいものになりジェット・マグナムというモーションが可能になる。

 

(武器はビームソードとM950。それとスプリットミサイル)

 

スプリットミサイルは一発のミサイルに複数の小型ミサイルを内蔵した分裂式のミサイルで弾幕や牽制などにも使えるようになっている。ビームソードは読んで字のごとく、エネルギー体の剣だ。

そこに固定武装であるステークを加えた計四つ。これが響のゲシュペンストに搭載された武器の全てだ。

 

 

「―――――よし」

 

 

次の瞬間。響の目は鋭く、そしてゲシュペンストのカメラアイは怪しく光った。

 

 

「―――――!」

 

 

ペダルを踏みしめ、最大スピードで前進を始める響のゲシュペンスト。

縦に並ぶ弾幕を回避していた機体が急停止し、コンクリートの地面に足をこすりつけると、その勢いを殺すことなく今度は踏みしめて、勢いに加算し蹴り出したのだ。一瞬だが加速力は高く蹴り出したことによって機体は物凄いGが掛かってコクピットの響に見えない重さをかけていく。

しかしそんなことで一々弱音を吐くような神経と体ではない。一瞬だが歯を噛みしめた響はそのまま突撃。相手のゲシュペンストも向かってくると分かったのかマシンガンでは止まらないと判断して近くに投げ捨てた。

 

 

「いいな。肝が据わっている……!」

 

接近戦は自分も得意だ。そう言わんばかりにゲシュペンストの左腕のステークから一本を抜き取る。そこが実はビームソードなどが格納されている場所なのだ。

柄が抜き取られ、光の刃が姿を現すと伸びた刀身の輝きに気分が高揚する。

無意識の内につり上がった口は不適なものに変化していた。

 

 

「正面から―――」

 

「潰す……!」

 

 

両者の機体はブースターを吹かし突進する。片やはビームソードを手に持ち、リーチでは有利に立っているが、相手が向かってきていると分かった時点でそれに応じたので若干出遅れてしまっている。その間、その僅かな時間が響とゲシュペンストに十分な構えの時間を与え、ゲシュペンストは左手を腰辺りまで落とした。

こうなってしまえば、あとは双方の出方は一つ。

 

「プラズマステーク!」

 

「斬らせてもらう…!」

 

腰だめに構えていたステークを振り上げる響と、それに対しビームソードを下から振り上げる相手のゲシュペンスト。二人の行動は似てはいるが、持っている武器からその後の結果と優劣が違ってくる。

ビームソード相手にステークでは確実に負ける。無論、それはステークを構えた当人でさえも分かっていたことだ。腕の一本は切られてしまうと、誰もが思う瞬間。

 

「ビームソードには…ビームソード…!」

 

「ッ…!」

 

刹那。ステークから発光が消え、ビームソードがステークのある左腕と交わろうとした瞬間、そこに現れたのはステークから抜かれたビームソードだった。

目には目を。ビームソードにはビームソードだ。

 

「狙われたか!?」

 

「貰いッ…!」

 

虚を突かれたことで一瞬だが動きが止まってしまい、反応が鈍ってしまう。その隙を見逃さなかった響はそのまま空いた左手を相手の腹部へと打ち込む。

 

「チッ…!」

 

だが警告音よりも前に左腕か何かが飛んでくると直感で読んだ相手も、左足を出して飛び出てくる左手と交えて、それを足場代わりに蹴り出す。

 

「読まれた!?」

 

「ッ…やるな…!」

 

足を蹴り出して距離を取る相手のゲシュペンストに自分の攻撃が読まれていたと見た響だが、彼女の目にはどうにもあの行動はアドリブのように思えてならない。実際ビームソードに驚いた相手は直ぐに第二撃が来ると思ったので、それを回避するために足で左腕に応戦したのだ。彼女の予想は前半部分が間違ってはいるが後半は正解と言える。

 

「ビームソード相手にステークは馬鹿と分かっている。戦闘の直感力はあるか…」

 

それとも自分が馬鹿正直にビームソードで出たのが間違いだったか? と笑い話のように考えるがそれは間違いではないと言い切れる自信はある。現にその直感で彼女に色々な憶測や仮説といった可能性という心理効果を与えているのだ。

 

「こちらが馬鹿みたいに最初からビームソードを抜いたことに関して考えることは二つ。ビームソードという武器があるからこそ、正面からの相手なら勝てるという単純な認識力だけという考え。もう一つは―――」

 

ビームソードを最初から相手に見せるだけ、それだけ自分にはそれを扱える。戦えるだけの自信と技量があるという自信のあらわれ。

つまり自分の得物は剣であるということを示しているということだ。

前者であれば当然、応戦としてM950マシンガンのような銃火器で対応すれば次も接近戦をしてくるという単純思考相手には有効だろう。

しかし逆に後者ならどうなるだろうか。

前者と同じくマシンガンで応戦すれば確実に勝てるだろうか?

 

 

(…多分無理)

 

それが響の直感と相手の動きから出た結論だ。つまり接近戦相手に遠距離戦なら絶対に勝てる、などという甘い考えでは絶対に負ける。今の動きだけでそう結論づける理由と根拠が見つかった。

相手はその場合に対しての応じ方を知っているのだから当然それに合わせて遠距離相手に対応してくる。

動きと反応。そして何より今もビームソードを持っていることからそれは見て分かることだ。

 

(向こうはビームソードとか剣に対して得意さを持っている。だから剣を抜かれた瞬間。私の選択肢はかなり狭められたって考えてもいい)

 

別にマシンガンが無力なわけではない。ただそれだけで事足りるわけではないのだ。

マシンガンだけではない。他の武器を使い、工夫と応用をしなければ単純な攻撃だけで勝てるわけもない。

 

「……なら」

 

考えをまとめた響は再びスロットルを上げてゲシュペンストを前進させる。今度はビームソードを収めてM950マシンガンを取り出した。

 

「接近しつつの弾幕…間合いを詰める気か」

 

射撃の腕は世辞にもうまいと言えたものではない。なので、銃撃もこうして接近して撃ったりと牽制や迎撃などにしか使いえないのだ。

単純極まりない行動だが、それだけに重装甲以外の相手なら無闇に動くことは出来ない。

 

「―――動けないとでも思ったか?」

 

しかし、響の予想通り相手は接近戦、剣での戦いに関してはかなりの手練だ。つまり、それだけに銃撃しつつ接近されるという場合にどうすればいいのかも熟知している。

だからこそ。その腕を信じて先ほどのように接近する事が出来る。

 

「来るッ…!!」

 

だが予想通り。響は乾いた唇を舐めると、今まで取っておいたスプリットミサイルを全て撃ちだす。内蔵された幾つもの小型ミサイルは威力だけでなく弾幕や牽制にも有効だ。

そこにスプリットが早々に破壊されないようにマシンガンを撃ち続ける。

 

「矢張りな…」

 

放たれたスプリットを見てそう呟く。マシンガンだけでは到底止められるわけもないと相手も分かっているだろうという考えから、スプリットのためにマシンガンを撃ち続けることは予想出来ていた。

なので、弾幕をかわしつつミサイルを狙い、そして接近することも

 

 

「悪いが。読ませてもらった」

 

腰のラッチに着けていたリボルヴァーを抜き、OS頼りのロックオンと共にスプリット二発を撃ち抜いた。

 

 

「――――――けどね」

 

「なっ―――」

 

そんなこと最初から分かり切っていた。

何故なら、ミサイル自体も囮なのだから。

本命は自分。つまり。

 

 

(スプリットの爆発を利用して間合いを……!!)

 

「これだけ低い位置なら…!」

 

爆煙が広がり、接近してくるのは分かっていた、それを利用して攻めてくるのもだ。

だが響は最初からスプリットミサイルに期待すらしていなかった。絶対に回避される。もしくは迎撃されると見ていたからだ。接近戦を得意とするのなら、それだけ遠距離相手にも応戦や回避方法を体で覚えているのも不思議ではないし当然ともいえる。

加えて銃火器を使えるのであれば迎撃だって容易な話だ。だからこそ、最初から邪魔でしかないスプリットと弾幕を一つの手段として利用せず、ただの囮として利用した。

その分軽くなった機体を使い、相手と同じ自分の得意レンジである接近戦へと持ち込むために。

 

「ミサイルはブラフ。本命は…!」

 

重心を極力低くし、左腕を構える。狙いは定まり標的は得物を持つ右腕にした。左腕にはリボルヴァーがあるが、ビームソードよりも脅威にならないと判断してそちらを先にたたきに行く。

 

「プラズマステーク、アクティブッ!!」

 

(しまっ…!)

 

発光した左腕が勢いと共に音を立てる。一瞬の反射で直撃を避けられた左腕だが、回避を優先した為に持っていたビームソードは手放してしまった。僅かに掠られて飛んでいく得物に舌打ちをするが、機体と腕が五体満足ならと諦めることにした。

例えビームソードが使えなくてもまだ戦える手段は残っているのだ。

 

「ちいっ!!」

 

「ッ…!!」

 

同じく左手を使い、反撃に転じる。互いに肉弾戦の距離なので回避することは難しく、しかも響の場合は左腕を伸ばしきっているので戻すまでに若干の応戦までのタイムラグがある。

体勢を崩すぐらいは出来る筈だ。

 

「ッ―――――!」

 

「うおっ!」

 

だが響は格闘戦を得意としている。機体の警告音よりも肌から伝わってくる危機感が先に走り、自分の直感と共に脳を刺激する。

飛んできた相手の左腕をまだ戻り切ってない自分の左腕ではなく右手で止める。しかもじゃんけんようにグーにはパーでだ。

 

「しまっ…」

 

「次ッ!」

 

戻って来た左腕を間髪入れずにもう一度打ち込む。ステークの発光は止まっていないので威力はそのまま。当たればダメージは必須だ。

 

「くっ…!」

 

しかしそれを黙って受けるわけなく、伸びて来たステークの一撃を関節部で受け止めて流し、更にそこから死角を突く様に左足を突き出す。

 

「けど……!」

 

左足と交わった鉄の音が擦れ合う。一瞬だが目を落とすと、そこには足の外側から防いでいた響のゲシュペンストの右手が伸びてきていた。ダメージを覚悟しての攻撃。それには虚を突かれてしまい、応じることはできない。

 

「ッ……!!」

 

「もらっ―――」

 

これで決まりだ。響はコクピット近くまで伸びて来た足ではなく、間もなくたどり着くだろう自分の機体の右手にそう確信した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「模擬戦終了。全戦闘システムを停止させます」

 

「機体コンディションは問題なし。関節部に負荷がかかっていますが許容範囲内です」

 

指令用のトレーラーの中で男女のオペレーターが状況を報告しほぼ実戦の模擬戦がようやく終わった事を告げる。実弾を使ったりしたことで演習場の周りには弾痕や爆発した跡が残っていたが、演習場であることを思い出して別に問題はないだろうと誰も気にもしなかった。

 

「テストは終了です。二人とも降りてきてください」

 

了解。とインカムの向こう側から聞こえてくる二人の声にラドムは通信を切ると、隣に座っていた一人のゲストに対し、他人事のように言う。

 

「来ますか? あなたも彼女の様子をみたいのでは?」

 

「あ。はい…ぜひ…」

 

隣で模擬戦を見ていた未来は未だに速く鳴り続ける心臓に手を抑えながら、落ち着けるように自分に言い聞かせつつラドムの後ろへと付いて行く。車両の中で映像を見るという慣れないことに多少目が疲れていたが、それでも外で実際に彼女の安否も確かめたいことから拒否をされても付いて行くことに変わりはない。

彼女がここに居るのは、響が呼ばれた時に彼女も同行したが学長室での話を聞けず、後で模擬戦をすると言われたことから頼み込んで、観戦の許可をもらった。

 

「貴方の物好きですね。友人というだけで見ておきたいなどと。別に貴方は保護者というわけではないのでしょう?」

 

「…まぁ。保護者っていうより…観察者というか…」

 

「観察者…?」

 

「…言い方が変ですけど、多分保護者にはなってないと思います。私は響を見てないといけないんです」

 

言葉で説明できるものではない、説明しにくいということにまるで彼女の姿を見透かしているかのように言う。どうやら彼女はただ心配だからという理由で見に来たわけではないらしい。

そして。響と未来。二人の関係が、言葉で言い表せないような難解なものだと。

 

 

「私は響を見てないといけない。響は私を見てないといけない。互いに互いを見てないと…何かが外れるかもしれないから」

 

「…何か」

 

「ええ。外れたらこの先、一生元に戻せないような何かです」

 

 

その言葉が冗談や馬鹿げたものではないこと。それは未来の表情だけでなくその瞬間の言葉と声色にも乗っている気がした。

彼女たちが一体どうしてそういった関係になったのか。ラドムにはそれは自分が関知することでも、そもそも興味のあるところでもないと直ぐに切り捨てた。

 

 

 

 

 

 

「ぷっはあ!?」

 

二機のゲシュペンストが戦いを終えた場所では、コクピットから抜け出すかのように響が腹部のハッチから顔を出し、外の空気を吸って深呼吸をする。コクピット内では空気が密閉されて息苦しかったようで、潮の匂いが混じった空気を肺にめいっぱい吸い込んで空気を入れ替える。潮の匂いが鼻にも来て少ししょっぱくなっているが、蒸れた湿気だけしかないコクピットよりはマシだと響は大きく腕を広げた。

 

「あー…疲れたぁ…肩痛いなぁ…」

 

流石に集中しすぎて疲れたのか、ハッチの辺りで腰を下ろした彼女の体は右へ左へと機体が動いたことでかかった衝撃、Gのお陰で悲鳴を上げており、疲労感からの痛みと負担は彼女にだるさを与えていた。

気だるい状態で溜息をつく響。すると、向かい側に立つゲシュペンスとのハッチが開放される音が聞こえ、視線も思わずその方角へと動いた。

 

「お―――?」

 

コクピットから出て来たパイロット。その姿が自分と近い歳の女性であることに、響は思わず口を「お」の字にして固まってしまう。

普通なら歴戦の軍人という雰囲気の塊であるシワと三角目のゴテゴテの女軍人だと思いたくなるが、最近では伊豆のほうにも自分と同い年ぐらいのパイロットも居ると聞く。

ハッチを開き、出て来たパイロットはその類だ。深い青色の髪を長く伸ばしているが、コクピットでは邪魔ということで更にそれを髪留めで無理やり纏めていた。歳は自分よりも二つ三つ上という感じで、しかも自分と同じ日本人系だ。

 

(綺麗な女の人だなぁ…)

 

大和なでしこ、とでも言えばいいのだろうか。それほどに綺麗だと思えてしまう顔立ちをした女性パイロットは出てくると直ぐに下へと降りていく。何も言わず、目も合わせずに降りていく彼女に、自分が何かしたかと思ってしまうが、それは直ぐに自分の思い違いであることが分かる。

下にはいつの間にかラドムと未来二人が軍用のジープを使って、足元に来ており彼女たちのもとへと先に向かっていたのだ。

それに後から気付いた響も遅れてハッチに取り付けられているワイヤーを使い、下へ降りていく。

 

「おっとと…」

 

 

「―――ご苦労様です。中尉、貴方からの感想は?」

 

「問題はありません。まだ荒削りな部分が多いですが資質としては申し分ないかと」

 

「こちらも必要なデータを収集することができました。取りあえず、お望みの機体は出来るでしょう」

 

先に地面に降りた中尉階級の女性にラドムは共犯者のように嬉しそうな笑みを浮かべて結果を言う。模擬戦での十分なデータに満足しているのか、データの入ったタブレット端末を持つ顔はえらく上機嫌だ。

 

「では、約束通りデータは私のほうでいただきますが、よろしいですわね?」

 

「ええ。こっちは逸材が見つかったので、あとは彼女に掛け合うだけです」

 

(逸材…?)

 

中尉も満足なのかは分からないが、どうやらいい結果であることには違いないようで「申し分ない」の一言でそれが纏められていた。

そして遅れて降りて来た響に、ラドムはようやく降りて来たかと思いつつ声をかける。

 

「来ましたね。タチバナ候補生」

 

「ハイ。で…模擬戦の結果は…?」

 

「それは彼女から聞くべきでしょうね」

 

「彼女…?」

 

目線を少し横にずらすと自分よりも先に降りていた中尉が立っており、そこから話の意図を読み取る。つまり彼女をテストしていたのはラドムだけではないということだ。

 

「パイロットとしての適性はまずまず。射撃戦はとりあえず実戦で慣れていけば差ほど問題でもないだろう。私たちが欲していたのは君の、その格闘スキルだからな」

 

「えっ…そうなんですか?」

 

「ああ。テストは合格。私たちは君をスカウトに来たんだ」

 

「……………えっ!?」

 

「す、スカウトですか?!」

 

響だけでなく未来でさえもその言葉には驚くしかない。まさか候補生でしかも問題ありのパイロットを選んで指名したのだ。しかも彼女を今すぐに仲間にしたいということには嬉しくもあったが、当然納得はできなかった。何故自分が、どうしてスカウトされるのかと。

 

「ち、ちょっと待ってください!? イマイチ話の意図とかが読めないんですけど!?」

 

「そ、そうですよ! 第一、なんで響をスカウトなんですか!?」

 

「ん…そうだな。まずはそこから説明するべきだな」

 

単刀直入に言われたことで戸惑うのも無理はない。自分がずんずんと話を進め過ぎたと思い反省したのか、まずは自分の自己紹介から話を仕切り直す。

 

「連邦軍、極東支部仙台基地。第03防衛小隊隊長の風鳴翼だ。といっても、もう小隊はないのだがな」

 

「えっ、あ…よろしくです…」

 

「さて。取り合えず…立花。君に話すべきことは二つ。ひとつはどうして私たちが君を求めているのか。そしてどうして君がスカウトされるのか。まずはこれでいいか?」

 

「ハイ…お願いします」

 

響が名指しで指名される理由。それを話してくれるということで、ぜひともと言わんばかりに即答する。

あまり理由も事情も話さずに今回の模擬戦を行ったので色々と疑問と不満があるのは確かだ。だからこそ、翼にはそれを解決させる義務があると見て指を一本立てて話を始めた。

 

 

「―――端的に言えば、私たちは今、仙台の基地で新部隊を創設しようと考えている。

拡大する戦火に対し、各地へと赴き、迅速に解決をする少数精鋭のPT部隊。それを作るために私たちは今こうして準備を進めている」

 

「PT部隊…防衛小隊やハガネ、ヒリュウ改の部隊のような?」

 

後に鋼龍戦隊と呼ばれる部隊。しかしそれがまだ正式に決まってないので、この時はまだ母艦二隻の名前を通称として使われていた。

独立遊撃艦隊として知られ、数々の実績を上げて来たその部隊は一般的な連邦軍と違い、老若男女様々な事情から集い、一つの部隊となったと言う。連邦軍からの出身者も居れば元DCことディバインクルセイダーズ出身のパイロットも居る。更に、異世界の機体も居ると言われるといよいよ何でもありの寄り合い所帯となっている。

 

「そうだ。が、防衛小隊とは理念が違う。私たちが目指しているのはいわば遊撃隊。確かに

ハガネ・ヒリュウ改の部隊と同じようなものだが、正直私たちの目標はアレではない」

 

「…と言いますと?」

 

「ごく少数のPTで各地の救援を行う部隊。確かに言われとしてはアレに近いが、実際彼らが地球圏全体を活動範囲にしているのに対して、私たちは活動範囲を日本に限定している。頭数が少ない分、動ける範囲も限定しないと、活動に支障をきたすからな」

 

世界各地、地球各所を移動し戦うハガネとヒリュウ改。それは彼らの母艦がそれだけの機動性を持つ艦だからこそそれだけの範囲を転戦し戦うことができるのだ。

スペースノア級とその前身となった艦は地球内外でも活動が可能で戦う場を選ばない。

彼女たちのようにそんな贅沢や母艦などがある筈がなく、精々使えるとしてもストーク級という地球の内側で使える母艦ぐらいだ。

であれば、仮に母艦があるにしても機動性がないのであれば必然として活動範囲を限定するしかない。

 

「つまり、日本限定の独立遊撃部隊…」

 

「そうだ。日本も一応各地に基地と防衛部隊があるが、これまでの事件…特にアインストのような物量が圧倒的な奴らに対して対応しきれるものではない。だからこそ、そう言った場合に備えて救援に向かえる、戦う場所を選ばない部隊が私たちの目指しているものだ」

 

「…それに私が必要となる理由は?」

 

自分がPTのパイロットとして必要されていることは話の内容から分かる。が、候補生で欠点付きの自分をどうして名指しで選んだのかはまだ明確に分かってはいない。それを知りたい響は、目を細くして食い掛かるように翼に訊ねる。

 

「さっきも言ったが、私たちの部隊は少数精鋭。つまり少人数のPT部隊の運用が前提だ。

が、今ウチにはPTパイロット…というかパイロットは二人しかいない。補充するにしてもどこかから引き抜く必要がある」

 

「なら、別に響じゃなくてもいいのでは?」

 

「尤もな意見ですわね。ですが、さっきも言ったように彼女でなければならない理由があるんです」

 

今度はラドムのほうへと首を曲げる二人。響が選ばれる理由は、模擬戦での結果。つまり彼女の戦い方にあったのだと言う。

 

「一般の連邦兵は遠近どちらにも対応できます。が、それが逆に足かせとなって器用貧乏になってしまっているのです」

 

「いくらどちらにも応戦できたにしても、それだけで生き残れるほど戦いは甘くはない。どちらにも対応できる、それが絶対になるのは他でもないパイロットの熟練さだ。パイロットが経験し、学習してあらゆる事態に対して対応できるようになる。そんなものは十年そこらで出来る話ではない」

 

「であれば、正直なところ片方に力を注いだ方が良いのではないか。たとえ射撃ができず、接近戦が得意であるのなら接近戦で射撃などに対応できるようにしたほうが早いのではないか。これがたどり着いた結論です」

 

「あらゆるレンジに対してスタンドアローンに戦えるには時間が必要だ。が、私たちにはそのための時間は無い。部隊は早急に必要になっているからな」

 

どうやら事情としては切迫しているらしく、そう悠長に待ってられる余裕もないらしい。だがそれで納得しろと言われて直ぐに納得できるわけがない。無論、それで分かってくれと言う程、彼女も馬鹿ではないし考えなしでもない。

そこから更に続けて翼は理由を言っていく。

 

「普通にオールラウンダーならそこらの基地にでもゴロゴロいる。だが、そんな奴を私たちの部隊は求めてはない。即戦力となる遠近、どちらかに重視した能力をもつパイロット…」

 

「それって…つまり…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前のそのPTの格闘戦スキル。それが、私たちにとって必要となっている大きな理由だ」

 

刹那。突如、新たに聞こえてくる声に気付いた響と未来は、何処から声が聞こえているのかと辺りを見回すと、彼女たちもとへと歩み寄る二人の姿を見つけた。声から若い女性だとは思っていたが予想通り自分より、翼よりも年上の女性がこちらへと歩み寄っていた。しかも彼女の後ろには今度は翼と差ほど年が変わらないような少女が居ており、気だるい様子で後ろを付いて来ていた。

 

「ま。話から分かると思うが、アタシらが欲しいのは器用貧乏なパイロットじゃない。前線で直ぐに戦える。確かな実力がある。そして何か一つ。ずば抜けたものを持っているヤツ。だから、普通の軍隊なら馬鹿扱いされるのを逆にアタシらは欲しいんだよ」

 

前を歩くのはオレンジの髪を伸ばし、羽のように散らばった髪型をしている。歳は二十代半ばだろうか。そこに連邦軍とは別の白いジャケットを肩に乗せるように着ている。シャツなどは一般的な軍用のものだが、そこに左腕にあるものに目が行く。

銀色の松葉づえをついているのは反対側の右足のせいだろう。

その視線に気づいたのか、オレンジ髪の女性は「ああ、これか?」と軽く数回、地面に杖を打ち付けた。

 

「これなぁ…実はねー…」

 

「気にするな。二か月前に輸送機の階段から投げ落とされた馬鹿の証だ」

 

「…本当、お前時々容赦ないこというな翼」

 

「だからってあの時あそこに居た奏も悪いと思うがな」

 

「…耳が痛い話だな」

 

と、二人の会話で直ぐに彼女たちの関係を理解する。どうやら相当仲がいいようで翼のように軽い罵倒も笑って済ませられるらしい。加えて、後ろにいた少女もそのようでクスクスと笑いをこらえていた。

 

「ま。そういう訳で…」

 

(どういう訳なんだろ…)

 

 

「アタシは仙台基地所属、天羽奏だ。あと階級は少佐な」

 

「え、少佐!?」

 

「わはは。こうみえてな」

 

「そう。そう見えてだ」

 

「だな。姉御は時折中尉じゃねぇかって言われる始末だし」

 

「お前らホント、容赦ねぇな!?」

 

冗談のように笑い話で済むのだが、根に持っているのか翼の言葉が妙に鋭く、そして当人も妬んだような眼をしていた。ちなみに後ろでも似たような顔をしていたので、どうやら彼女が少佐であることに別の意味で不満を持っているらしい。

が、彼女が少佐であることは事実なので否定することもできないのだが。

二人の容赦ない言葉に若干怒りを覚えた奏は頭を掻きつつ、話題を元に戻していく。

 

「…ったく…で。どこまで話したっけかな」

 

「えっと…私のPTでの格闘スキルがどうたら」

 

「あ。そうそう、それだ。んじゃ話を戻すかね」

 

現時点までの話を纏めると、彼女たちは新しい部隊を創設する。そのためのパイロットを探しているのだが、普通の連邦軍パイロットのような抜け出た才のない者では意味がないらしく、士官学校の中で格闘戦に抜きんでた実力を持つ響に白羽の矢が立った。というわけだ。

が、それでもどうして自分が選ばれるのか。その理由にはならないわけで、彼女にとってもう少し納得のいく理由が欲しかった。

 

「さっきも言ったが、アタシらが欲しいのは響、お前のように抜きんでた実力。何かひとつでも抜き出た才能と実力を持つヤツが欲しいってワケだ。あと協調性な。

 けど、他のエリート様だったり連邦兵士じゃ絶対に無理。無理な理由があるんだ」

 

「その理由とは…?」

 

「実に簡単。アタシたちがこれから作ろうとしている部隊にはポジションがあるんだ」

 

「ポジション…あ。もしかして…」

 

 

部隊にポジションがあることはよくある話だ。機体の性能や実力、経験差などもあるが、響のように何が得意で何が不得意というパイロットも居る。だからこそ、その得手不得手の補いをするためにポジションを決めることもある。射撃戦が得意だが接近戦が苦手な物は後方から攻撃させ、逆に接近戦が得意だが遠距離相手は苦手だと前線に立たせる。そして後ろから援護したり遠距離相手に牽制などをすればいい。誰でも長所と短所があるので、それを補い戦いやすくする方法としてはありだ。

 

「人材のリサイクル…なんてワケじゃない。一点特化の面子のみを集めた部隊。それがアタシらの作ろうとしている部隊さ」

 

「だから格闘戦にだけ長けた響に目を付けた…けど、それだけで…」

 

「実際。ウチは今、近距離一人、遠距離一人の計二人。アタシ的には前衛に厚みを持たせたいから、前線担当にもう一人欲しいって思ってたんだ。そこで、偶然お前の事を知ったっつーことで…」

 

「私を選んだ…?」

 

「というよりこれから選んだって言った方がいいかもしれないな。引き抜くにしてもこれから手続きしなきゃならんし」

 

「………。」

 

まだ不満、というより納得しきっていない響に対し、奏はトドメの一言を放つ。

それは彼女が納得せざるえない、最大の理由であり決め手だった。

 

 

「―――確かに、お前のような候補生を引き抜くっていうのは相当な理由や実力じゃない限りある筈のない話だ。けどな。アタシらだってなんの事前情報なしでここに来たわけではないんだぜ?」

 

「ッ………」

 

「インスペクター事件。冬の襲撃事件。連邦軍部隊壊滅。

 

―――パイロット候補生部隊

 

 さて。覚えてるワードだよな?」

 

 

 

 

 

 

インスペクター事件当時。地球圏には未知の異星人、謎の生命体が姿を現していた。

アインストと呼ばれるその生物たちは人類を破滅させ、一個体による新たな世界「静寂なる世界」を創造しようとしていた。

地球連邦軍と当時地下で活動していたが再び表部隊に姿を現したDC残党。彼らはノイエDCを名乗り、一時的にだが異星人に対して敵対しているということから連邦軍と協力。

「オペレーション・プランタジネット」と呼ばれる作戦で共同戦線を張った。しかしノイエDC内部での離反や異星人インスペクターによる反撃によって作戦は失敗。更にアインストが横槍として乱入し、これを機に本格的な活動を始める。世界各地の軍事基地に出現したアインストは同時多発的に攻撃を開始した。

その標的には、例外なくなのか士官学校も入っており、少数ながらアインストが攻撃をしてきたのだ。

 

 

「―――はい」

 

「…よく…覚えてます」

 

「…居合わせたんだからな。お前ら二人」

 

士官学校にも事件当時小隊ながら現役部隊が置かれていた。彼らはアインストやインスペクターから学校を守るだけでなく、訓練講師としても参加していたのだ。

が、アインスト襲撃時、予想以上の物量などに押されて部隊は全滅した。

つまり。残されたのはまだ若いパイロット候補生などの生徒たちと戦えない教師のみだった。

 

「訓練用で良く戦えましたわね」

 

「訓練用っていっても実弾もあったんで…それに設備とかも軍事基地ほどではないですけどありましたからね」

 

 

響たち学生は自分たちの身は自分たちで守るしかないということで、卒業間近の学生たちが彼らを先導した。これには危機的状況で逃げる事しかできない筈がないと、多くの学生たちがそれに感化され、アインストに対して反撃に転じた。

訓練用として置かれていたPTとAMの部隊、パイロットは全員候補生というその部隊は一週間にわたり、連邦の正規軍が到着するまで戦い抜いたという。

そして。その戦いで生き残った学生は僅か十二名で、そこには響も居た。

 

 

「―――これでわかったよな? アタシらが求めていたのは接近戦を得意とするパイロット。加えてゲシュペンストであの動きが出来て、極め付けに実戦経験があると来た。

 人材としてはかなりいい方だと思ってるんだけどな」

 

「………。」

 

「立花。君はどの道、卒業すれば配属はされるだろう。だが今の君の能力では過小評価されて辺境に飛ばされるのが精々だ。それにあの教頭のことだ。絶対にロクな待遇を与える気はないだろう」

 

「だったら、少佐たちの部隊のほうがマシ…と?」

 

「そう思うかはお前次第だ。嫌なら嫌で言えばいいさ。アタシはそれなら仕方ないってすっぱりと諦めるからな。行くか行かないか。答えは二つに一つだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少女は一度、地獄を見た。燃え上がる炎。臭うのは鉄の硝煙と死臭。そしてオイル臭だ。

燃え盛る世界の中で瓦礫となった街を見て、彼女は言葉を失う。それが、そこがかつて自分が歩いたことのあるあの街なのかと。

あそこに倒れているのは自分が知っている人物なんじゃないか、と。

壊れた世界と倒れた人々。そして無残に広がっていく世界と散る命。

果たして、こんな世界を自分は望んでいたのだろうか。

そう思ってしまっただけに、彼女は今でも思い出すと吐き気がした。

 

 

 

 

 

 

「で。結局よかったのかよ姉御は」

 

「あん?」

 

「あの馬鹿のことだよ。あんなの呼んで本当に大丈夫か?」

 

滑走路の上にある輸送機、レイディバードに乗り込もうとしていた奏に対し、今まで口を殆ど開かなかった少女は睨むような眼で問いを投げる。

今さらな話ではあるが、矢張り聞かずにはいられないと思ったようで、その欲に彼女は従った。

 

「なんだよ、クリス。お前今更アイツ入れるのを反対するのか」

 

「…まぁな。正直言って、好きにはなれねぇぜ」

 

クリスと呼ばれた少女は白く澄んだ髪を後ろでまとめ、口には白い棒状のチョコを加えている。への字に曲がった口でチョコを上下に動かしつつ、そっぽを向いて答えるがその表情は心底嫌いというものではない。理由あって好きになれないというような感覚は奏も薄々とだが察し、その心情を分からないわけではなかった。

だが、もう終わった話だと一笑する。

 

「お前も事情は似たようなもんだろ? 案外気が合うかもしれねぇぜ?」

 

「……どうだか」

 

(…同属嫌悪かね。こりゃ)

 

「それに。経験あるつったって一週間かそこらだろ。卒業生だかなんだか知らねぇが、多分潰れるぜ、ありゃ」

 

「…さて。それはどうかな?」

 

あん? と疑問の顔を奏に向けるクリス。その表情はへの字だった口が変につり上がっている。まさか彼女がそう返すとは思っても無かったようで、口も笑いだか驚きだか呆れだかと分からないものになっていた。

 

「あれが簡単に潰れるのなら…世の中、いや。地球はないぜ」

 

「………まさか」

 

答えはこれからさ。と短く言った奏は松葉づえと手すりを上手く使いつつレイディバードの奥へと消えていった。ただ一人、機内に通じる階段に残っていたクリスは後ろを振り返り校舎を眺めると、小さくふんと息を吐いて後を追うように中へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

「―――――突然の話だったね」

 

「うん。びっくりしたよ、私も」

 

ふと、互いに背を合わせて風に当たっていた響と未来はしばらく沈黙していた中でぽつりと言葉を並べていく。話題は当然、今回の模擬戦とそれによるスカウトの話。普通に士官学校に通っていれば絶対にある筈のない話だ。

 

「…女の人ばっかりで驚いたけど…なんかこう…現実感が一気に壊れったっていうか…」

 

「それは私も思った。翼さんの階級は兎も角、奏さんのはびっくりしたなぁ…」

 

「特務でも一応少佐だからね。あの年では早々居ない筈だよ」

 

言葉を交わす。本音を言う。ただのいつもの会話だが、今回は何かが違っていた。まるで、二人とも話題の本題、核心とも言うべき場所を避けているかのような言い方で。絶妙ともいう具合に円の周りを滑るように話の根本へと至ろうとしなかった。というのも、互いに思う所があり、心配や不満、不安があったことから下手に触れようという気にはなれなかった。

あれでよかったのか。ああすればよかったのではないか。ああ言っておけば、などとそんな今更なものが後から湧き出てくる。

言うに言えない二人は、そうしてグルグルと外延部だけを回ることしかできなかったのだ。

 

「―――。」

 

「………。」

 

だが。やがてその静寂は破られることになる。

 

 

「響。訊いていい?」

 

「何…?」

 

本当は聞きたいが聞きたくない。だが、聞いて知りたいという自分が居る。

それでも聞きたくないと言えばウソになる。二つの感情が複雑に入り乱れた感情は未来の心臓に直の痛みとなって現れる。それでも、その痛みに耐えるように重く閉ざされかけていた口を開き、喉の奥からしまいかけていた言葉を発した。

 

「…響はさ。後悔してない?」

 

「…後悔って…何に?」

 

「何にって……そりゃあ…あの時の決断とか………。」

 

「………未来?」

 

もどかしくなったというよりどういえばいいのかとイマイチ頭の中で纏まらない未来は、響の背の向こう側で小さく唸り声を出す。合った言葉、うまい言葉が見つからない。

こういう場合、自分はどういえばいいのだろうかと考えてしまう。

しかしそれでは延々とこの話は終わらず、自分の勇気は無駄になってしまう。だから未来は、あえてごく単純に思ったことを素直に口にした。

 

 

「―――響はさ。ココに…この士官学校に来て、卒業間近になって…今でも後悔ってしてる?」

 

「士官学校に…軍に入ったってこと?」

 

「うん。というか…パイロットになりたいっていう考えでここに来た時まで全部」

 

「うーん…」

 

後悔しなかったことなんてほとんどないと、響は言える自信はあった。当然のことだ。何事にももしこうしていれば、と内心で後悔することもある筈。それが人生であって、それが自分の命を懸けることであるのなら猶更だ。

しかし。響にとってはそれとは別に後悔するところはあった。

 

「そりゃあ…何度もあるよ。二年と三年の時は一番多かったし」

 

「あまり機嫌良さそうな時ってなさそうだったもんね」

 

「うん。後悔してた。あの時はずっと。なんで自分はこんなところに居るんだろって。疲れた体と頭の中でずっと思ってた」

 

「………。」

 

「別に入るのなら整備員だったりでもいいんじゃないかって思ったし。そりゃ、前には進路だって変えようとも思ってもいたよ。けどね」

 

それでやめられるほど自分の決断は甘いものだったのかと、誰かが言う。誰でもないが、誰かに言われたかのように思え、自分に対して言い聞かせていた。

だから。その度に彼女は自分に言っていた。

 

「それじゃあ、あの時決断した自分や、みんなに申し訳ないって。今まで頑張って来た自分が無駄になるって…そう思うとさ。こんなところで後悔してる場合じゃないって思えるんだ」

 

「………みんなの…響のお父さんやお母さんとか?」

 

「うん。みんな必死に反対してくれた。けど、それでも私の諦めの悪さのためにみんなに迷惑をかけたんだ。だから、そこで、途中でやめたら、あの時のが全部無駄になっちゃうから。だから、止められない。後悔しても、それで立ち止まったりすることはできない」

 

今でも鮮明に思い出せるあの時の記憶。必死に反対した親とそれでも抗った自分。

最後には泣きながらも彼女の思いを受け取り、尊重し、そして受け入れた。

だから。もし中途半端に止めれば、あの時の涙も、言葉も全て無駄になってしまうから。

そのお陰で、だからこそ響は後ろへと振り返ることなくその場に踏みとどまり、もう一歩前に踏み出すことができた。

 

 

「―――――怖くないの?」

 

「……え?」

 

「………ううん」

 

そうだ。だからこそ、彼女はこうして前に進んでいられるのだ。

 

「…怖く、ないんだね」

 

「………なにが?」

 

「……やっぱ、なんでもない」

 

「…??」

 

 

気付いた時には全てが遅かったと思えることが、未来か彼女と友人になってから何度も思ったことがある。

気付けない自分も居るが、気づけなかった時、それを今更と気付いてしまった時にはもう彼女の友人は歩き出していた。前に進み始めていたのだ。

立ち止まることも、気に留めることもない彼女の姿はどこか眩しく、そして危うく思えてしまう。

だが、もう全ては決まった後だ。今更彼女の決断を止めたり曲げたりすることは自分には出来ない。

 

「――――響」

 

「うん…何?」

 

「…必ず追いつくからね」

 

「………ッ

 

 

 

 

 

 

 

―――――――うん。待ってる、絶対に」

 

 

この日。立花響は正式な配属先が決められた。

日本の東北地方に位置する連邦軍基地、そこはかつて空軍基地として使われていた場所だ。

連邦軍仙台基地。

そこで彼女は、創設される特殊PT部隊に入ることとなる。

少数精鋭の遊撃部隊、ゲシュペンストのカスタム機をメインとしたその部隊の名は

 

 

「ARMチーム…かぁ…」

 

 

 

これは、いつか来るだろう運命に迎う少女たちの物語

 

 

 

 

 

 







・オマケ

模擬戦使用機体
量産型ゲシュペンストMk-Ⅱ
改ではない方。一応、近代化改修はされているが訓練機としての運用が前提。
響の使用した機体はステーク・ビームソード・M950マシンガン・スプリットミサイル
翼のは、スプリットをオミットしてリボルヴァーを装備したもの。



キャラクター相似点
一応共通して言えることは全員の年齢が一律上がっていること。
響も士官学校の学生のため年齢は高校三年から大学一年ほど。
あと。当然ながら歌はうまいですが、歌手など専門のトレーニングをしてないので原作よりもレベルは低い。
説明文はかなりはしょってます。


・響 : 性格は変わらないが、命顧みない無茶をすることが多い。
原作では翼や未来を追ってリディアンに入ったが、こちらでは二人に会うのが大分後なので(未来も士官学校で出会った)、親と半ば喧嘩状態になったが最後には向こうが折れてくれた形で入学。パイロット技能は作中通りでゲーム的には格闘が高く、かつ伸びやすい。
また白兵戦も拳を使った戦いが出来るといよいよそっちでもいいんじゃないかって思いたくなる。
年齢は十八。当然彼氏いない歴と同じ。
また特徴として正規のパイロットとなってからは首から祖父が使っていたゴーグルを下げている。


・翼 : こちらでは奏が死亡していないので気弱なところがある…と思われたが流石に軍人ということで成長している。大人びているが天然だったりも相変わらず。
違いとしては融通が利かない…というより独断でホイホイ決めることがある。むしろそれは奏の性分なんじゃないかと言われるが、どうしてか彼女がそうなってしまっている。
響のスカウトだって言い出しっぺは彼女。
パイロットとしての技能は高く、特に剣戟戦を得意とする。特機向きだがPTもどんと来い。
あと白兵戦も得意。刀使って大立ち回りします。
響の二つ年上ということで二十歳。男性については言わずもがな。
常に腰に包帯まきをしているが刀を持ち歩いてる。


・クリス : 原作以上にかなりドライな性格で現実主義。しかし根っこは同じだったりするので弄っていると時折本心を見せる。
こちらではテロで両親を失った後、フィーネが居ないことから一人裏社会を生きて来たので性格はそこで出来上がってしまう。またこの時に銃の扱いなども知り、ヒットマンをしていたこともある。社会を恨んだりと、かなり荒れた性格をしており次第に軟化はしているが現在のような状態。その後にAMの操縦技術を独学で学び、傭兵として転戦していた。
しかしインスペクター事件時に翼たちに助けてもらったことから彼女たちの仲間に。
年齢は十九。腰には四丁のハンドガンを常に持ち歩いている。


・未来 : 出会いの場が違い、こちらは士官学校で。また進路も看護士になっている。
理由は親とのいざこざや人間関係が原因ではあるが、本人もその中で見つけた「逃げ道」として。またエアロゲイターの襲撃を受けたことなどからも遠因となっている。
それでも原作と同じく走ることへの熱は冷めていないらしく士官学校では看護士志望だというに短距離で勝てる人間が居なかったらしい(響も例外ではなく)
ちなみに響との関係、また彼女に対しての世話や心配性から「母親」「オカン」と言われている。当人もそれを薄々と受け入れてる模様。また響が大けがをして戻ると謎のオーラで従わせる。
年は響と同じく十八。こっちでもタワー建設は健在…というか…


・奏 : こちらではノイズで特攻しなかったことなどから死なずに生きている。
しかしだからといって恨み沙汰がないわけではなく、過去にテロで肉親を失っていることからテロリストに対しては非常に冷酷。ちなみにテロの主犯はアーチボルド。
それ以外では普段から姉御肌で相談相手にもなったりしており、現在は作中で語られた通り足を怪我しているので部隊を指揮する。
ちなみに頼れる人物ではあるが女海賊のような振る舞いなどもあることからクリスから「姉御」と呼ばれている。
今は指揮官に徹しているがパイロットとしても白兵戦も得意。どちらも槍を使った戦いをメインとしている。
年齢は翼より三つ年上の二十三。しかしもう直ぐ誕生日で二十四になる。


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