プロジェクト To Be   作:黒猫のくー

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何となく匿名デビュー。



1つめのネタ。

「では戸部くん改造計画についての話し合いを始めます。参加者は司会の雪ノ下と……」

「あたし!」

「その絶妙なネーミングセンスを怖れてあだ名を付けて貰えない由比ヶ浜さんと……」

「ガハマさんでいいんじゃね?」

「お馴染み奉仕部の部品たる比企谷くんでお送りします」

「ちょ、ゆきのんもヒッキーも酷い!」

「そのセンスが原因よ」

「そのセンスが原因だ」

 

 って綺麗にハモっちまって何だか恥ずかしいんだが。

 

 俺達は今、奉仕部の部室で戸部の依頼に付き合っている。といっても戸部の依頼は失敗が確定しているので、とっさのアイコンタクトで俺達三人は今後の方針を確認した。要は努力をしたけどダメでした的な結論に持って行くつもりだ。最初から可能性がなかったと戸部に悟らせる事なく、海老名さんに告白する前に諦めさせるのだ。

 

 その為に俺達は仕方なく戸部を全力でネタにする。あくまでも仕方なくだ。決して俺達が楽しむ為ではない。依頼がなくて暇なところに鴨ネギが来たとかいうわけじゃない。たまには雪ノ下の毒舌を俺以外の奴に向けて欲しい、ってのはちょっとあるか。そんな感じだ。

 

「比企谷くん。カメラに向かって独りで何を喋っているのかしら?」

「ああ。もう済んだからいいぞ。で、どうする?」

「ではまず私の案からね。思うのだけれど、老若男女から等しく愛される存在があるのだとすれば、それを真似れば良いのではないかしら?」

「回りくどいなおい。要するに……」

 

 少し間を置いて、俺は得意げに雪ノ下の真意を語る。

 

「猫だろ」

「猫だよね」

「な……なぜ分かったのかしら? あれだけしかヒントが無かったというのに」

「だってゆきのん分かりやすいもん」

「てかぶっちゃけパンさんと猫の二択だしな」

「でもさ、とべっちに猫耳とか着けても正直ビミョーなんだけど」

「猫語で喋られても絶対似合わね〜しな」

「とべっちが『にゃ』って言いながら手首を曲げるとか……」

「逆にホラーだな。夢に出てくるレベルだろ」

 

 由比ヶ浜と好き勝手な事を言っていたが、気付いたら雪ノ下がぷるぷる震えている。ってやべ〜ぞこれ。死人が出るレベル。

 

「いや待て雪ノ下! これはあれだ。お猫様が戸部なんかを相手にするわけが無いってか、なあ由比ヶ浜?」

「そ、そうだよゆきのん! 猫を真似るのはとべっちには無理だから! す〜こ〜でしんしな精神の持ち主にしか無理って聞いたよ!」

「そ、そう……。確かに憬れの存在に誰しもが成れるわけではないのだから仕方のない事かもしれないわね」

「そうそう! だってあの肉球とか絶対真似できないじゃん」

「あの触り心地は反則だわな」

「あたしんちは犬を飼ってるからダメだけど、肉球の為に猫も飼いたいなって思うもんね」

「あなたたちが猫をここまで理解しているとは思わなかったわ」

 

 何とか雪ノ下の機嫌が直って助かったぜ……。てか今度は上機嫌すぎて怖いってか、雪ノ下のぽにょっとした表情はレアだな。猫ノ下のぽにょ。大ヒット確定っぽいが武士の情けだ。あんま見ないでおこう。てか話し合いはどうなった?

 

「んで、戸部の事はどうする?」

「あ〜、うん。どうしよっか?」

「猫化プロジェクトで完璧だと思っていたのだけれど」

「ちょっと戸部には合わね〜って事で却下だな」

「なら代案を出して欲しいのだけれど」

「ふっ。俺の秘策を披露する時が来たようだ」

「ヒッキー、なんかキモい」

「諦めなさい由比ヶ浜さん。今日のはまだマシな方よ」

「ちょっと待てお前。俺のキモさレベルを判定できるって比企谷検定何級だよ?」

「先日の小町さん出題のペーパーテストなら全問正解だったわね」

「負けず嫌いすぎるだろお前……」

「あ、あたしも96点だったよ! ヒッキーの転生元ってのだけ間違えちゃったけど……」

「永久欠神『名も無き神』よ。記憶から永久に抹殺したい知識なのに、インパクトが強すぎて忘れられないのだから困ったものね」

「頼むからそれ以上は勘弁して下さい」

 

 マジで記憶力が良すぎる奴ってのは厄介だわ。さっさと話を逸らすか。

 

「んじゃ、俺の案を説明するぞ。戸部のテーマソングを作ろうと思う」

「え? とべっちの?」

「もう少し詳しく説明してくれないかしら?」

「戸部が登場するたびにバックでテーマソングを流すんだよ。格好いい曲だと万が一もあるが、普通は引かれるから問題ない」

「ヒッキー、すこぶる最低だ……」

「貴方に作曲能力があるようには見えないのだけれど?」

「ばっかお前、俺のアニソン知識が火を噴くぜ!」

「そこまで言うのであれば、ここで披露して貰おうかしら?」

「うん、ヒッキー頑張って!」

「よし……! じゃあ歌うぞ!」

 

 なんかそう改まられると恥ずかしいってかやりにくいんですけど……。しゃ〜ね〜な。できが良すぎて海老名さんが戸部に惚れかねないのが少し心配だが、この名曲をしかと耳に焼き付けるがいい!

 

♪戸部! 速く強く高く〜

♪戸部! 速く強く高く〜

♪雲をさき 嵐を呼んで ……夢を勝ち取ろう!

 

「ぶふぉっ!」

「げふんっ!」

 

 あれ? 思わず熱唱しちまったし、古いアニメの曲だから雪ノ下と由比ヶ浜が唖然としてるのは分かるんだが。なんで平塚先生と材木座が入って来るんだよ。てか廊下で聞き耳を立ててたのか? 材木座はともかく先生は仕事とか大丈夫かよ。

 

「比企谷……。戸部にテーマソングを作るという話は聞いた。次は私のターンだ!」

 

♪戸部! 戸部! 戸部! ガッチャ……

 

「いや、それだと歌詞が意味不明でしょ」

「さすがの我も古すぎて反応に困るのであるが」

「え、えと。よく分かんなかったけど、先生が歌が上手くてびっくりしたっていうか……」

「由比ヶ浜さん、中途半端な同情は逆に良くないわ。平塚先生、男らしい見事な歌いっぷりでした」

「……ぐすっ。もうおうち帰る……」

 

 おいおい。バックにドナドナを流しながら去って行くんだけど、ほんと誰か貰ってやれよ。まあ先生の事だからすぐに復活するとは思うけどな。

 

「さて。話は聞いたぞ八幡よ。この我が力を貸そうではないか」

「いや、間に合ってるから帰っていいぞ」

「え、もしかして中二も歌うの?」

「先に喉を潰してから追放した方が良いのかしら?」

「けぷこんけぷこん。戸部氏の恋路を応援するには、テーマソングよりも必殺技を修得すべきであろう」

「は? なに言ってんのお前?」

「必殺技……。つまり一撃で意中の相手を打ち倒すという事ね?」

「いやお前、打ち倒しちまったらダメだろ。はあ……却下するのも面倒だし、その必殺技ってのを見せてくんね? まあ、あればの話だが」

「ふっ。では八幡よ。我が秘剣をとくと見よ!」

 

『奥義! 戸部翔龍閃(とべかけるりゅうのひらめき)!!』

 

「……おい。その構えは牙突だ」

「げふうっ!」

 

 

 続く。

 




次回、材木座死す。デュエルスタンバイ!
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