機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ PD321Teufels Speicher Ⅰ   作:YASU79FP

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3章です


鴉の羽休め

「ごめん、無理なんだ…戦えない…ごめん…」

ただただ漏れる共の悲痛の叫び。

何がライアンをそうさせているのか。

どうすればいいのかアレックスは何も知らない。

 

「どうしたんだ、ライアン!俺でよければ話してはくれないだろうか」

 

震える口で喋る。

 

「俺は…戦場が怖い…命の奪い合いをするあの場所が…怖いんだ…もう嫌なんだ…」

 

彼の言葉だけでは何が起きたのかわからない。

だが命のやり取りを実際にし恐怖していることはわかる。

 

「いやいいんだ…もう戦わなくていい、ライアン…お前が持ってきてくれたNGFのデータが無かったらどうなっていたか…」

 

「アレックス…」

 

「だからさちょっと息抜きにあの場所行くか?ちょうど起きたみたいだし」

 

 

「起きた?」

 

ライアンはゆっくり後ろを振り返る。

 

するとそこには目を擦りまだ寝ぼけて顔が腑抜けているアイリーンの姿があった。

 

「うーん」

 

思いっきり両手を伸ばし体の節々を伸ばす。

 

そしてはっきりとした時、ようやくライアンの姿が目に入ったのだ。

 

「ライアン…よかった…起きたのね…」

 

彼女の声は若干涙声だ。

 

「大袈裟だなぁ、俺はピンピンしてるから安心しろ」

 

ライアンが彼女に優しく微笑む。だが彼女の頬からは一滴の涙が流れた。

 

「だって今度は、殺しちゃったんじゃないかって…心配で…」

 

今度…というのは間違いなく基地から脱走する時、シュバルツを串刺しにした時のことだ。だが正直あの時の方が命に関わっていた。

というのも今回ライアンが眠っていた理由はショックによる軽い脳震盪だったのである。

 

だがそうは言っても彼女は彼の事が心配だった。もしかしたらこのまま目醒めないかもしれないと。

 

だから現在、こうしてライアンと話せている事は彼女にとってこれ以上の事はない。

 

その感情のせいか、ライアンの右手を強く両手で包んでいた。

 

この行動にライアンも少し頬を染め、左手で頭を掻き平然を装うとする。

 

「あ…ごめん…つい…」

 

自分のとった行動に気がついたアイリーンは咄嗟に両手を引っ込める。だがその顔に恥じらいは見られない。何かに申し訳なく、沈んだ顔をしていた。

 

ライアンはそんな彼女の顔をしっかりと捉えていた。

 

「えーっと…俺の手…嫌な感じがしたのか?」

 

これでYESと答えたときライアンはどういう対応をしたのだろうか。だが幸いそんなことは考えなくてもいい。

 

「あ…いえ…違うの…そういう意味じゃないの」

 

そう言ってすっかり2人は黙り込んでしまった。

 

アレックスがやれやれと言いながら2人の間に入る。

 

「せっかく3人が奇跡的に再開したのに…ナンダコレハ…」

 

「ナンダコレハっていわれてもなぁ…」

 

「ライアン少し成長したがお前まだ中学生レベルだな」

 

「はぁ?俺は立派な軍人…」

軍人だった。

組織から見れば決して立派ではない。

 

仲間を裏切り機体とデータを盗んだ重罪人。

 

つい思いつめてしまう。

 

その横顔をアイリーンはじっと見つめる。

 

「あーもう、取り敢えずだ!行きたい場所があるんだ」

 

「どこ?」

 

2人の声が重なる。

 

ついて来ればわかるとしか話さなかった。

そうしてライアンに状態なども聞いた後屋敷を出て井戸の横にある地下への階段を歩く。

 

長い階段を降りた先、待っていたのは意外な光景だった。

 

「モビルワーカー!?」

 

すべて銀色にペイントされている。

 

そして周りで働いている整備員に豪苦労、と言いながら奥の部屋の車を取り出す。

 

「さて出発だ」

3人を乗せた車はアレックスの運転によって街に入る。

久しぶりに見た街の景色にアイリーンは夢中だ。

それも当然、アイリーンは10年間宇宙海賊にヒューマンデブリとして扱われてきたのだ。街はおろか、コロニーにすら行くことを禁じられていた。

そんな彼女の楽しげな横顔をライアンはじっと見つめ、彼自身もまたそれに微笑むのだった。

だが彼らの目的地は街ではなく、アレックスは車を街の郊外へと走らせる。

 

数十分すると外の景色は一転、緑で覆われた森のような道を走っている。

もちろん道路はきちんと舗装されている。

 

ライアンにはこの景色に見覚えがあった。それはライアンだけでなく、ここにいる全員が知っている景色だ。

 

「ここは…!」

ライアンが窓に手を当て言葉を漏らす。

 

「気づいたかライアン、ここに来るのは何年振りだ?」

 

「あの墓参りした時以来だな…」

 

そう言い再び車内は沈黙に帰る。

 

アイリーンには墓参りとはなんのことか到底想像もつかなかった。

 

車は奥へ奥へ進んでいく。

 

そうしてようやく開けた場所に着いたのだ。

 

「二人共、到着だ」

 

そこには緑の丘。

 

かつて3人が休んだ木も

 

視界を覆い尽くさんばかりの緑。

 

間違いなくここは10年前、約束をした場所だった。

 

殆ど当時と変わらない姿のまま残されていた。

殆どというのは嘗てと違う景色が見えたからだ。

 

「アレックス…あんな屋敷あったか」

 

ライアンは大きく佇む屋敷を指差す。

アレックスの家と比べれば小さい方だが、十分に大きい。

MS一機分くらいなら隠せそうな位だ。

 

アレックスがそのことについて言及する。

「あれは俺の別荘みたいなもんだ、そもそもここは俺の私有地だ」

 

「は〜、金持ちのすることはすげぇな」

 

「本来ならお前をここに監禁するつもりだった」

 

「え?」

アレックスの予想外の発言に動揺を隠せない。

 

「どういう事?」

 

アイリーンも景色を眺めるのをやめ会話に参入してくる。

 

「前さ、お前と集まろうって話しただろ」

 

「あぁ、その前にネビロスの騒動が起きて大怪我しちまったけどな」

 

「その時俺さ、お前から色々情報を聞き出すつもりだったんだよ」

 

「俺…から…?」

 

「あぁ…、ギャラルホルンの不正、NGF計画、そして何よりお前の親父…アルグレー・クロウについて」

 

「なんでそこで父さんの話が出てくるんだ!?」

 

「お前は何も知らないんだな…」

 

「何をだよ…」

 

ライアンの手は震え、顔も青ざめていく。

 

「お前の親父が俺の親父を殺したのさ、親父だけじゃない、母さんもみんな…みんな…」

 

アレックスの右手も強く握り締められた。

 

「どういう事だよ…!?」

 

「簡単さ、真実に気づいた父さんはこの事を報道しようとした、だがその時確証を持ってなかったアルグレーに頼んだんだ"ギャラルホルンの裏取引について何か知っていないか"ってな、そしたら父さんを呼び出して、そのまま奴に殺された!!この事を公に知られたくないギャラルホルンは念のために家を焼き、母さんを殺し、俺は命からがら生き延びたのさ!!」

 

「…!?」

 

アレックスの一人語りに2人はただただ耳を傾ける事しか出来なかった。

 

「おかしいと思わないか…統制局の人間がいきなり監査局に移ったんだ、それなりの手柄を立てたんだよ、親父を殺したのも、家を焼いたのも、それ以前に宇宙海賊にあの船を襲撃させたのも!!」

 

「あの船…?」

アイリーンが呟く。

この時なんとなく察していたのだろう。

この話、アイリーンも無関係ではない事に…。

 

「そうさ、アイリーン…、君のお父さんは監査局の不正をそのまま火星に持って行って来るべき時が来たらそれを公開する予定だった、だがそれを許さなかった一部の奴らがアルグレーに命令したのさ"なんとかしろ"ってな、そして宇宙海賊に船を襲わせた」

 

「ちょっと待ってくれ、なんでお前がそんな事知ってるんだよ!?」

 

「ライアン…お前が親しくしていた技術曹長が何であんなところに居たか知っているかい?」

 

「まさか…スパイ!?」

 

「そうさ、NGF計画が5年前始動した時からずっと…ずっと情報を横流ししていた」

 

「…そんな……って事は…」

 

「これは事実だ、全て君の親父がやった事…」

 

「ぁ…ぁ………」

 

衝撃に声すら出ない。

 

「ついでにあいつらが必死こいてガンダムを作っていたのは宇宙海賊から裏取引のデータを貰ってドゥッペル基地の奴らが監査局の弱みを握るためなんだよ」

 

「嘘だ!!!」

 

「こんなの嘘だ…」

 

ライアンは涙を流し地面に跪く。

 

「父さんが…そんな…そんな…ぁ……ぁ」

 

「ライアン…別に俺はお前を攻めている訳じゃないんだ…」

 

「ただ真実を知って欲しかった」

 

瞬間ー。

 

アレックスの頬を叩く音が鳴り響く。

 

「アイ…リーン……」

 

ライアンは疑問に思った。

何故彼女が叩いたのは自分ではなく、彼なのか。

何故自分の仇の息子に殺意を向けないのか。

 

「もう…やめてよ…」

 

何故、彼女までもが涙を流したのか

 

「ライアンが可哀想だよ…」

 

何故自分の事を思ってくれるのか。

 

「すまないライアン…俺はついカッとなって…」

 

「……」

 

「だが俺はお前が悪いとは考えていない、本当だ、信じてほしい」

 

「…いや…真実を教えてくれたお前に感謝するべきだろうな…俺は…」

 

ライアンは涙をぬぐった。

 

「ライアン…俺はギャラルホルンと戦うよ」

 

アレックスは屋敷に背を向けた

 

「ヒューマンデブリの差別をなくす為、理不尽な世界を解放するためなんて言ってるけどさ、実際それは建前なのかも知れない」

 

彼の前でこの事を話すべきか、迷い、少し間が空く。

しかし、彼の前でその言葉を言った。

 

「俺の目的は…お前の父、アルグレー・クロウを殺す事、不正を世間に暴く事、それだけだ」

 

「私も…戦うよ…ライアン…」

 

「アイリーン…本当に?」

 

「えぇ…、許せないものは許せない…」

 

「でももうお前は戦わなくても…」

 

「確かにその道もある、それこそこの屋敷で3人一緒に暮らすっていう約束を叶える事だってできる…でもね…私の気持ちは憎しみに勝てなかった、悩んだ結果よ、この決意は揺るがないわ」

 

「だがライアン…お前は戦わない…いや…戦えないんだったな…だからせめて、お前だけは平和な暮らしをして欲しい…」

 

「アレックス…アイリーン…」

 

「この屋敷をお前にくれてやる」

 

彼はアレックスの屋敷に住む事に決めた。

 

あそこにいたら戦う気のない自分は邪魔になるだろうからという理由もあった。

 

ただ気にかかるのはこの屋敷に住んでいるの自分1人ではない事だった、毎日違う人達が屋敷前の護衛、身の回りの世話、家事までしてくれる。

 

まさに金持ちの気分だ。

 

だが、先日のアレックスの発言。

 

自分の父が全ての黒幕。

 

その事を明かされ正気ではいられなかった。

 

もし、自分がアレックスと仲良くなっていなければ、彼の家族は助かったかも知れない。

 

平和な毎日がどれほどの幸せか、今になってようやく実感する。

 

と言ってもライアンは少し戦っただけでこの状態なのだ。

 

自分がアレックスの立場だと自殺を考えていたかも知れないと。

 

自殺…。

 

その言葉が脳裏を過る。

 

この世界…苦しい…。

 

彼を埋め尽くす感情。

 

自室の引き出しを漁り、ペーパーナイフを取り出す。

 

ペーパーナイフが陽の光に反射して彼の顔を映す。

 

その疲れ切った自分の顔をしばらく見つめ、恐る恐る刃先を手首に持っていく。

 

カタカタと腕が震える。息使いも荒くなっていた。

 

「ダメだ!!」

 

ペーパーナイフを投げ捨てた。

 

「死ぬのは怖い…」

 

ならどうすればいい?

 

このままここに閉じこもっていればきっと平和だ。ここには見張りがいる。戦う覚悟を持っている兵がいる。

 

彼らにしがみついて生きればきっと死ぬ事はない。

 

そう確信していた。

 

今頃アイリーンやアレックスはギャラルホルンと戦う為の準備でもしているのだろうか、2人は大丈夫だろうか、自分を置いて死なないだろうか。

 

孤独というのは辛い。

 

改めて感じる。

 

ただただ1週間2週間と時間が過ぎていくだけの日々。

 

ライアンの精神もだんだんやつれていく。

 

何故自分はここまで生きてきたのだろう。

 

何故軍に入ったのだろう。

 

何故MSのパイロットを担ったのだろう。

 

何故あの日約束なんてしたのだろう。

 

彼はいままで人生を走馬灯のように振り返っては否定し続ける。そんな日々を送っていた。

 

だがこれだけは言えた。彼はもう自分の周りで誰にも死んで欲しくはないと。

 

人が死ぬ所を過去に2回ほど見てきた。その両方とも彼は何も出来なかった。

 

自分は弱い。

 

ならばせめて何もしないで、誰とも関わりを持つべきではないのだ。

 

そう思い始めたその日から食事すらまともに取らなくなり、部屋にこもりがちになった。

 

やがて警備兵達も部屋の窓を見てカーテンが閉まってるのを確認したら、またか。とため息を漏らすようになった。

 

が、ある日の事。

 

とある警備兵がついにしびれを切らしライアンの部屋に突入した。もちろん彼が生存してるかの確認も兼ねて。

 

思いっきりドアをぶち壊し、彼は突入した。

 

「ライアン・クロウか?」

 

「そうだ…」

 

髪はボサボサに伸びやつれた顔は健在だ。今の彼は本来の年齢の2倍くらい年老いて見えるのだ。

また異様な体臭も部屋を満たす。

 

突入した警備兵、ヴォルフ・ガレットは指を鼻で摘んで、通信機を片手に連絡を取る。

 

「ボス、取り敢えず生きてました、すんげー臭いっっすけど」

 

通信機の奥からはご苦労というアレックスの言葉が聞こえる。

 

「あんたは…?」

ライアンはなんとなく彼の名前を聞いた。

 

「俺はヴォルフ・ガレット、ヒューマンデブリとして働かされてた俺をアレックスさんが買ってくだださって人間にさせて貰った男だ」

 

「で、俺に何の用?もしかして殺しに来た?」

 

「あぁ…本当なら殺してやりてぇ位うぜぇけどボスのダチじゃぁ手ェ出せねぇよ」

 

「友達か…、もう僕をそんな風に思ってないよ、彼は」

 

「なんでだ?」

 

「俺の父が彼の仇だからね」

そしてそのままアレックスに聞かされた話を話した。

彼は割と人の話をよく聞いてくれた。

 

「話聞いた限りじゃ、お前に悪い所はないと思うが?」

 

「いや、もしかしたら止める機会だってあったはずだ、もしかしたらなんとかなったかもしれないんだ」

 

突然ヴォルフはライアンの右頬に強烈なストレートをねじ込んだ。

 

その威力に壁まで叩きつけられる。

 

「あー、うるっせぇな、もしもの話なんて合うんじゃねぇよ、もしもの世界じゃねぇから今のこの現実があるんじゃねぇか!!そんなもんに囚われてんじゃねぇぞ!サルゥ!!」

 

そのまま熱く語り続ける。

 

「いいか?オメェのやってる事は逃げだ、現実から目を背け、ありもしない、変えられない事実にこだわってんじゃねえ!!今するのは生きている限り現実と戦う事だ」

 

「たた…かう…?」

 

「あぁそうだ!周りはお前を甘やかしてるが俺はそれが最善とは思えねえ、今の俺たちの置かれた状況はいつ戦いが起こるかわかんんねぇんだ!、そしてその戦いにお前はとっくに巻き込まれてるんだよ!」

 

「俺が、巻き込まれてる…?」

 

「そんでお前は戦わない事で周りをさらに巻き込んでるんだ」

 

「そんな…」

 

「だからよ、これからお前がどうするべきか、お前が決めるんだよ」

 

そう言って彼の部屋を後にした男の後ろ姿は大きく見えた。

 

今のライアンが何をするべきか。

 

まだわからない、だが彼は再び立ち上がり、後を追うように部屋を後にする。

 

 

 

ドゥッペル基地の地下には牢屋が設置されている。

それは当然、軍規違反を犯した者が入れられる。

そこに1人の女が捕らえられていた。

 

本来ならもう1人、入るはずの男が居たのだ。しかし彼は奥歯に仕込んだ毒により自殺し、彼女1人、薄暗い牢屋の中座っているのだった。

 

あの時、ライアンの行動に邪魔をしようとしたミハエルのグレイズのスラスターのみを丁寧に撃ち抜いた、その行動が彼らとグルと見られ、そしてリリィはいつ訪れるのか分からない、裁判を待っているのだ。

 

あれからライアンがどうなったのか知る由もなく、ただ俯いて足を抱えて地べたに座るのだった。

 

はぁ…とため息をつく。

何故あんな事をしたのか。

だがあの時だってそう悩んだ、その末に撃って、ここにいるのだ。

 

後悔をしているような、だからと言って銃殺刑になっても悔いはないと言えるだろう。

 

そしてある一人の男とその両側に銃を構えた兵が警備していた。

 

リリィには見覚えのない顔だった。

それも当然だ。

彼は彼女が檻に入っている間に訪れた監査局の人間なのだから。

 

「初めまして、私はアルグレー・クロウ、君はリリィ・ブラウンで良いんだよね?」

 

「そうですけど…」

 

「さぁお待ちかねの軍法会議の時間だ」

 

手錠を掛けられ自由を奪われた身体に銃を突き立て上の階えと上がらせる。

そして軍法会議の会場に着くとアルグレーが重い扉をゆっくり開ける。

 

そこには基地司令、などその他のたくさんの上官達が座っていた。

 

「さぁ、入って」

 

そう言われるとリリィは会議室へと足を踏み入れた。

そして証言台に立ち後ろの兵が銃をようやく下ろした。

 

「待たせて悪かったなリリィ三尉」

 

司令が彼女と会話するのはヒューマンデブリの中からネビロスのパイロットを選んだ、あの日以来である。

だが恐らくそんなことは覚えていないだろう。

 

「では始めようか」

 

様々な質問が投げ飛ばされたのちアルグレーの一声で後ろのモニターに無残な姿になったグレイズと地上用ブースターの姿が写し出された。

 

「君は突然シュバルツを強奪したライアンを追うことを命令されてグレイズに乗った、そして君はグレイズに乗り出撃した、と聞いている、ここまでに異論は?」

 

「ありません」

リリィの声少し強張っている。

実際、想定していても緊張はするものだ。

 

「よし、それで君はミハエルと共にシュバルツを追うはずだった、だがしかし、シュバルツとライアン二尉は取り逃がしてしまったと…」

 

リリィがついに来る質問に待ち構える。

 

「聞くぞ三尉、これを取り逃がしたのはミハエル准尉のグレイズが攻撃を受けたことが大きい、そしてその攻撃は君のライフルによるもので良いかな?」

 

「はい…」

 

「そしてこの破壊された部分は見事に地上用ブースターの推進剤の所に当てている、二発とも…、これは狙ってやったのか?それとも…偶然かね?」

 

リリィは震える拳を握り覚悟を決めた。

 

「私の故意による者です」

 

周りがざわめく。当然だ、自分が不利になるような事を言ったのだ。

 

「つまり、それは彼ら達と繋がっていたのか?ライアンと曹長と」

 

「いいえ」

 

「じゃあ何故撃ったのだ?」

 

「私が、彼を助けたかったからです」

 

会場はさらにざわめく。

ほう…と声を漏らしたアルグレーは顎の髭を伸ばすように触りながら、もう一度問う。

 

「本当に彼らとは関係が無いんだね」

 

「はい」

即答した。

 

「うーん今日の所はこのくらいにしよう」

 

「え!?」

 

意外にも早い幕引きに一同が驚く。

 

「君の処分は後で連絡するよ、と言っても3ヶ月後位後になるだろうけどね」

 

「しかし一佐殿、3ヶ月後は」

 

「まぁ待て、その話は彼女が去ってからだ」

 

リリィが背を向け会議室から出て行くのを見計らって再び会話が再開する。

 

「3ヶ月後にはサルガタナスが完成すると伺っております、それと同時期にして良いのですか?」

 

「大丈夫ですよ司令、彼女の罰もそれによって払ってもらいます」

 

「まさか…」

 

「そのまさかですよ…」

 

屋敷の外ではライアンが手荷物を持って振り返り屋敷を見る。

まじまじと屋敷を見たのは始めてだ。

かなり大きいものだったと今更思う。

 

二人のメイドが外まで、送りに来てくれた。

 

「ライアン様、行ってらっしゃいませ」

 

そう言い二人はライアンへお辞儀もする。

 

「悪いな、2、3日したら帰ってくる」

 

そう言い手を振った。

 

この頃家に篭りがちだったライアンが気分転換という理由で外へ連れ出し、ついでに街を楽しんでこいという事だった。

 

少しずつやつれた身体も元に戻ってきたライアンもそういう事ならと外へ出る勇気が出た。

 

とはいえ街まで少し距離がある。歩いて15分と言ったところだろうか。

それまではただ景色の変わらない森の木を横目に歩いた。

風に泳ぐ木の葉の音がとても気持ちいい。

風に当たるとすっきりする。

その感覚を全身で味わいたかったライアンが目を瞑りながら歩き、全身で森を感じるのだった。

 

そうして楽しんでいる間に街に着く。

都市ほどでは無いが活気がある方だと思う。

 

色んな店が立ち並び、色んな人が行き来し色んな人が楽しそうにしている。

 

「良いところだな、ここは」

嫁い言葉が漏れた次の瞬間、彼に腹が轟音を鳴らす。

そういえば朝から何も口にしていない事に気づき、取り敢えず近くの店へ足を伸ばす。

 

店だけでも彼の歩いている通りだけでもかなりある。ビール、ウインナー、ポテト…その他色々だ。

 

取り敢えず入りやすそうな店へと立ち寄る。

昼の11時頃という事もあり、席はかなり空いている。

 

何にしようか、彼はあまり流行には乗らない、というか知らない。

だから今回もなんとなくという理由でこの店に入ったのだ。

 

そして席に座りメニューをみて、メニューと睨めっこをしていた時、また新しい客が入るドアの音がする。

 

この時間に来るのは普通に考えて珍しい、少しメニューから目をそらし客の方へと目を向ける。

 

少ししか見えないが足から見て女性のようだった。

 

「ここでこの通りのグルメは制覇ね」

そう呟き、ガッツポーズを取る。

その声に聞き覚えがあった。

メニューをどかし彼女の顔を見る。

 

アイリーンだ。

 

向こうもこちらに気づいたらしく、取り敢えず手で呼び寄せる。

 

向こうも驚いた顔でこちらに来る。

 

「どうしてライアンがここに?」

 

「あ…少し…外の空気吸おうと思ってな…」

 

「へぇ…」

彼女は少し笑みを浮かべる。

 

「で、アイリーンは何してたんだ?」

 

「え、私は…その…」

そしてそのまま口籠った。何か理由を探すように。

その恥じる様子を見てライアンが察した。

 

「あ…もしかして、地球の食い物が久しぶりすぎて毎日色んな所回ってるとか?」

 

アイリーンは図星を突かれ咄嗟にメニューに顔を隠す。

 

「もしかして今週はこの通りの店をコンプリートしようとしてた…とか…?」

 

さらにピンポイントに狙った解答に完全に顔を突っ伏した。

 

「あれ?もしかして大正解?」

 

「そうよ!」

 

顔を真っ赤にし突然顔を上げる。

 

「まぁまぁ、そんなに怒るなって、そりゃ今までこんなもん食う機会なんてなかったんだろ?誰だってそうなると思うぜ」

 

「そう…?」

 

取り敢えずライアンに説得されアイリーンは落ち着いて席に座る。

そこからは料理を注文した後アイリーンと昔話をした。

 

かつての思い出を語り合う時間、とても楽しい日々、時間を過ごした。

 

この時間がこの食事だけで終わるのは勿体無い。

そう感じたライアンが自然な流れでこの後時間空いているか?と自然に切り出す。

 

彼女は首を縦に振る。

 

「ならこの後一緒に街をぶらつかないか?俺もこの街あんまり来たこと無いからさ」

 

「いいわよ!」

快諾してくれた。

 

そうと決まると即座に席を立ち、街へと赴く。

 

だが、この街に関して何も知らない二人はここからどうすればいいのか、北へ向かうべきか南へ向かうべきか。

 

そもそもこれは勢いで言い出してしまったがデートでは無いのか。

 

急に焦りが出てきた。

 

しかし落ち着きを失ったのはライアンだけでは無い。

彼女も状況を理解していた。

 

しばらく沈黙した。

 

「取り敢えず、歩かないか」

必死で切り出した答えだった。

 

そしてそのまま街の中心部へと向かう。

 

だがその間二人は言葉を発しなかった。

何か話そうとしても、こういう場合何を言えばいいのか。

そんなことは知る由も無い。

 

前もグレイズのコックピットの中でリリィと二人になった時も長い沈黙が襲った事を思い出す。

 

そういえば彼女は、リリィは今何しているだろうか。

おそらく自分の事を怨んでいる事だろう。

 

だがそれでいい。

 

こうして完全に敵にしてくれれば気持ちも楽だろう。

仲間の意識を残したまま向こうに居てはいけないと判断した。

 

「ライアン…?」

 

アイリーンが暗い顔をしたライアンの顔を覗き込む。

 

ライアンへ現実に意識を向ける。

 

「あ…えっと…なんだ?」

 

「いや…なんか思いつめてたみたいだから…」

 

「あ…悪いな…別につまらないわけじゃ無いんだ」

 

 

「あのねライアン、私謝らなきゃいけない事があるの…」

 

この状況だからこそアイリーンはこの話を話す事を決意した。

 

「え…?」

 

「私…あの時あなたの事を殺そうとしてた…それに他の人だって…

悪私あの時ライアンの仲間を、ライアン自身も殺そうとしてた…私自身の為に…あの時…私が…私が…」

 

彼女の頬に雫が流れ落ちる。

 

「やめろよ」

 

俯き泣き噦るアイリーン肩に手を置く。

 

「確かにあの時、グレイソン一尉は死んじゃったよ、俺だって大怪我を負った、だけどよ、あの時俺だってお前を殺そうとしてたんだ…俺も本当はお前に謝らなきゃならない」

 

「でも…」

 

「MSに乗って、戦場に立って銃を突きつけられて、それで何もせずに…逃げたく無い奴がどこにいる?そんな事一々考えてたらこの先生きていけないぞ、もしかしたらグレイソン一尉はお前の事を許さないかもしれない、ミハエルだってリリィだって恨むかもしれない、だけど…俺は…俺だけは…どんな事があっても恨むつもりは無い!」

「だからさ涙拭けよ、もう中心街だぜ」

 

人で賑わう街の中心部は彼らを祝福するように盛況だった。

 

「んな暗い顔してないでさ、今日は思いっきり楽しもうや」

 

満面の笑みで不安を残さないように。

ライアンは微笑んだ。

 

彼女は無言で縦に首を振ると、ライアンが彼女の手を引いて導いてくれた。

そこからまた、楽しい時間を過ごした。

 

たくさんの店に寄って、色んな物を見る彼女の姿は新鮮だった。

10年もすれば色々変わる。

だが彼女は昔から変わってない。

ずっとライアンが好きだったアイリーンだ。

 

街には人が集まるため、度々人とぶつかりそうになる。

変にぶつかって喧嘩を売られるのも面倒なので出来るだけ交わそうとするも

やはり避けられないものは避けられない。

 

しかもその男の片手にはソフトクリームのコーンが握られており、その本体はライアンのコートに付着していた。

 

男が「すみません」と必死に謝りながらポケットに入っていたハンカチを取り出し必死にゴシゴシ拭こうとしているので、もう良いから気にしないでください、とその男に優しく声をかける。

 

このお礼はいつか必ずしますからと言いながらその男は去っていく。

 

1日の終わりがこれほど早く終わろうとしている。

この1日とても充実した日だったと実感する。

またアイリーンとの別れに寂しさも感じる。

「じゃあアレックスの家に戻るね」

そう言い振り返ろうとする。

 

「待ったアイリーン、俺もその…」

 

「ライアン…」

 

「なんだ」

 

「ライアンも戦うっていうんでしょ、でも多分決められてない…迷ってるね」

 

「…」

 

「急ぐ事ないと思うよ」

 

そう言って去っていく。

 

今のライアンに戦う理由などない。足手まといになる可能性だってある。だけど…出来るだけ近くにいたい。

 

そう思いながら彼女の後ろ姿を黙って見つめたのだった。

 

 

彼がアレックスの屋敷に住んでからすでに1ヶ月が経とうとしていた。

やつれていた体も徐々に回復し、今ではすっかり今まで通りのライアンに戻っていた。

 

これもアイリーンに会ってからだろう。

たまに連絡は取るもののやはり、なかなか会えないのが酷である。

 

それも仕方のない事、アレックス達がギャラルホルンの不正、NGF計画について本格的に作戦を練り始めたのだ。

電話ですら連絡は控えるようにも言われているのだ。

 

そのせいか屋敷の警備の人数も少なくなってきている。

それだけ人数が必要なのだ。

彼のグループは基本ヒューマンデブリを買う、または傭兵を雇う事で人数を日に日に増やしている。

だがそれでもヒューマンデブリだって戦いたくない者もいる。

そういう人たちはきちんと解放している。もちろん人間として。

そのせいか人数が不足している。

本来なら貴重なMSパイロットのライアンだって貴重な戦力になったはずだ。

しかし、アレックスのお人好しのおかげで警備までつけてもらって、守られている。

 

彼には感謝しかないのだ。

 

ある日の事だ。

 

あれだけ人数がいた屋敷もだいぶ静かになった。

だがそれでも15人程度は残っている。

これでも結構人員を割いてくれている方だと思う。

正直基地を脱出して、1ヶ月も何もしてこないギャラルホルンに対しライアンも油断していた。

あれだけ警戒していた警備も一人。

 

この日の警備はヴォルフだ。

 

彼は聞いた話ヒューマンデブリでも腕利きと聞く。それ故に今日は一人なのだろう。

 

窓から覗いていると後ろを振り返ったヴォルフと目があう。

 

しかし彼は何事もなかったかのようにまた警備へと戻る。

 

そんな彼に悪いと思ったのかライアンは台所に行き、紅茶を探し彼に差し入れをしようとする。

 

茶葉を無事調達し玄関前の彼にティーセットを持っていく。

 

やぁ、と手を振ってもなお無視し続ける彼の態度に少し怒りが込み上がる。

その怒りを外のマイナスイオンで冷やしながら、近づく。

 

「何の用だ」

 

「いや…少し休憩に誘おうかと思ってな」

 

「はぁ?」

ヴォルフの疑問は増すばかり。

 

「ほらティーセットも持ってきてやったんだ、素直に受けとれよ」

 

「テメェがそこまで言うのならそうさせて貰うわ」

 

相変わらずイラッとする。

 

ティーカップの入れられた紅茶をなんの色かと思い、ヴォルフは困惑しながらティーカップを手に取る。

 

「安心しろ、ただの茶だ、うまいぞ」

 

そう言いライアンがズズズっと啜りながら暑い紅茶を流す。

 

その様子を見てヴォルフもまた彼と同じように流し込む。

 

「ニッゲェ!!」

つい吐き出してしまう。

 

「おいおい…お前甘党かなんかよ?」

 

「うるせえな、こんな身なりに似合わねぇもん飲んだ事ねぇからしかたねえだろうがよ!!」

 

「やっぱ蜂蜜持ってきといて正解だったな」

そう言い、蜂蜜の入った瓶を渡す。

 

「なんだこれ?」

 

「それは蜂蜜って言って…虫が取った花の蜜だ」

 

「はぁ!?虫のもんなんて食ってんのかよ、地球の奴らってのはあれか、頭いかれてんのか?」

 

「お前はもう少し世界を知る努力をしろ、アイリーンなんか地球に来て1ヶ月くらいしか経たないのにもう適応してるんだぞ!」

 

「あのお嬢さんはもともと地球生まれだろうが!」

 

そう言って蜂蜜を奪い取り蓋を開け、匂いを確認する。

その甘い匂いに誘われるかのようにスプーンで蜜を取り舐め、小声でこれはいけるとつぶやきながら、ティーカップの中へと溶かしていく。

 

ヴォルフは紅茶をかき回しながらライアンに聞いた。

「そういやお前は、このまま何もしないのか?」

 

「どういう事だ?」

 

「お前、まだ逃げの道を進むのか?」

 

「…」

ずっと考えた。

だが今のこの行動が一番最善としか思えない。

迷いのある兵士が戦場にいたって屍にしかなれないのだから。

 

「オメェがどうなろうとしらねぇ、だがな、お前は既に巻き込んでいるんだ周りを」

 

そうして紅茶を口に運んで飲み干した後ティーカップを茂みに投げつけた。

 

「あ、お前何して…」

 

「走れ!!ライアンクロウ!!」

 

その瞬間、ティーカップを投げつけられた茂みから数人の銃を持った兵士が現れた。

大分離れていたがその銃にはサイレンサーとスコープ完全に狙っていた。

 

「ギャラルホルン!?」

 

「屋敷に走れライアンクロウ!!、早く逃げロォ!!」

 

ヴォルフは手に持ったマシンガンで応戦する。

 

「なんで今更来るんだよ!!!」

 

流れ弾の追撃の中屋敷へと走る。

そのとき空に轟音が鳴り響く。

 

「輸送機!?」

 

しかしその輸送機から放たれたのは大量の爆弾。

 

その爆弾が屋敷を襲う。

 

大量の爆弾がアレックスの屋敷を業火で包む。

 

「ーッチ!ついて来い!!」

 

ライアンの手を引っ張り爆発の煙に紛れ二人は屋敷のあった場所の裏へ逃げ込む。

 

そして茂みに入り犬のように土を掘り起こし、マンホールみたいな扉が現れた。

 

「なんだこれ…」

 

「こんな事もあろうかとアレックスさんがお前のようの脱出ルートを隠してあったのさ」

 

「よし、お前も早く!」

 

「それはお前しか脱出できねぇようになってるお前はいけ!!」

 

「見捨てろっていうのか!?」

 

「ごちゃごちゃいってんじゃぁねえ!!早く逃げろよ!!すぐそこまでギャラルホルンの奴ら迫ってきてるんだ!!」

 

煙の奥から数人の武装した男達が現れた。見た事のない奴らおそらくドゥッペル基地の連中ではない。

さらに上の輸送機からも兵士が降下しているのだ。

 

「早くしろ!!見つかっちまうのも時間の問題だ!!」

 

「俺は…俺は…」

 

そうしているうちにも兵士は探索している、見つかるのも本当に時間の問題だ。

 

「俺が囮になってるうちに早く!!」

 

「出来ねえっ!!」

 

「わがままいってんじゃぁねえ!」

 

騒がしい炎の音に負けないくらいの勢いだ。

 

「いいか、ライアンクロウ!お前は戦え、こうなっているのも恐らくお前が原因なんだろうよ、こうなっちまったのもきっとお前のせいだ、だからお前は罪滅ぼしをしろ、戦って戦って戦って戦って戦って、そして生き残ってみせろ!!誰かに守られる人生はもうおしまいだ!!、そんで勝って…ヒューマンデブリなんていない優しい世界をお前達が作ってみせろぉ!!!!それがお前の罪滅ぼしだ!!」

 

「そんな…滅茶苦茶だな…」

つい笑いが出る。

 

「そんなもんお互い様だろうが…」

ヴォルフを笑みを作る。

 

「じゃあ俺からも一つ、命ある限り諦めるなよ」

 

「わかったよ、バーカ」

 

「じゃあな…」

 

そうしてマンホールの中にライアンは姿を消す。

 

「はぁ…あの蜂蜜っての…もっと舐めまわしとくんだったぜ!」

 

そう言いヴォルフは業火の中自分の身を銃一つ持ち突入した。

 

ライアンは階段を下る。上の状況など気にせずに前だけを向いて。

 

地下へと降りたその先に見覚えのある黒い影。

 

「シュバルツ…こんなところに…」

彼の愛機シュバルツクロウが横たわっていた。

 

立ち止まりそうになった足を止めず一目散にコックピットへ乗り込んだ。

 

「ヴォルフ…俺は…お前達の為に…」

 

地上では屋敷から出てくる焼けた死体を積み上げる。貝塚のように積み上がった死体はゴミ同然だ。

 

「それで…お義兄さん…いた?」

ライエンが頭を掻きながら聞く。

 

「いえ…それらしき人物は見つかっておりません」

 

「…つっかえねぇなぁ」

 

彼もこんな事で彼との決着はつけたくないのだ。

あの時本当なら街でソフトクリームではなくナイフを彼の腹に突き刺すべきだったのだ。だが、そこで彼は発信機をつけた。そうすれば基地ごと見つけることができるためだ。

そしてこの日、一番警備の薄い日を狙った。

 

「ライエン三佐これで最後です」

 

それは血に濡れ皮膚は焼け焦げた銃を持った死体。

ヴォルフだった。

 

「そいつもそこに捨てろ」

ライエンの指示により貝塚に積み上げられる。

 

「どーこ、行ったんだぁ?」

 

ライエンは徐々に気持ちが高揚していく。

 

その時、地面が揺れ始めた。

地上のギャラルホルンの兵士がうろたえる。

 

地面が割れ、そこからシュバルツクロウの姿が現れた。

 

「お義兄さん!!そこにいたのかぁ!!」

 

コックピットから無残に捨てられた死体を見つめる。だが今のライアンに立ち止まる理由なんかない。

 

ただ、涙をこらえ、背を向けシュバルツは森の中へと消えていく。

 

「ちくしょう!!ちくしょう!!!ちくしょう!!!!」

 

怒りと悲しみの感情に支配された彼の体はただただ、固くセッティングしたペダルを踏み倒し続けたのだった。

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