「終点…グンマァー…グンマァー…」
訛りの強いグンマー語のアナウンスは乗客に絶望を与えるに十分な内容だった。
グンマーに着いて嬉しいと思う人はふつうはいない。
「いよいよグンマーね!」
そんな中一人だけルンルンな少女がいた。
両手をギュッとして、目をキラキラさせて、窓の外の情景の一つ一つを追っている。
両足をバタバタさせて、おでことほっぺがを窓にべっとりつけて、あぁ唾液もべっとりつけて…汚ぇ。
単線のレールの上を東方鉄道8000系二両編成がガタンゴトンとやってきて停まった。
乗客の一人がエイコラしょとドアを手で開く。
最果ての無人駅に先程の少女が、虹色の羽をパタパタさせてシュタッと降り立った。
輝く金髪。白のナイトキャップには深紅のリボンが効いている。
少女はスタスタとホームを進み、突如90度の華麗なターン!
トタン屋根の下の防犯カメラに目線をがっちりとあわせて、
両手を指先までピーンと斜め右上45度の大胆なポージング!
綺麗な歯並びと鋭い犬歯を見せびらかしスマイル!
悪魔のどや顔!
少女の名はもちろん、フランドール・スカーレット。我らがフランちゃんである。
「紅い月に変わってお仕置きだべぇ」「…にゃーんてにゃ」
通りすがりのおっさんと猫が合いの手を入れて賑やかす。
「コホンっ。えーっと、そうじゃないのよ。私はグンマーのおいしいケーキ屋さんに買い物に来たのよ。私が一人で買い物になんて行ける訳がないってみんな馬鹿にしてたけど、見てらっしゃい。私だって一人で買い物くらいできるんだからっ」
頬を膨らませたフランちゃんは、無人の改札口をテテテッと駆け抜けて行った。
それから間もなくして…
「フランは行ったようね‥」
車内から外を伺う怪しい人物。
カリスマ感溢れる降車を披露する青髪の少女。
まさかのレミリア嬢である。
嬢もまた防犯カメラにクイッと顎を向ける。
カメラ目線でポーズも完璧に決めててのドヤ顔!
姉妹揃ってまったく同じポーズ!
「紅い月が自らお仕置きだべぇ」「‥にゃーんてにゃ」
おっさんと猫が相変わらず美少女戦史ロケット弾な茶々をいれてくる。
「コホンっ。えーっと、そうじゃないのよ。一人でグンマーに買い物に出かけるフランが心配でこっそりついてきたのよ」
レミリア嬢は逡巡する。
「電車の中では私自身が寝てたから大丈夫だったけど、いざ尾行するとなると、この溢れ出るカリスマオーラを消さないとフランにバレてしまうわね。どうしたものかしら」
周囲を見渡すレミリア嬢の目にとまったのは、ようこそグンマーへ!という行政のポスターである。
中央にドン!と構えるのは、グンマーのゆるキャラ「グンマーちゃん」だ。
「これだ!」
レミリア嬢は犬歯を浮かせたニヤニヤ顔をポスターに近づける。
「グンマーちゃんに変装すれば、完璧にカリスマオーラを消せるわね!こうしちゃいられないわ。フランのオーラが消える前に急がなくっちゃ」
駅の近くのグンマー役場に入っていくレミリア嬢。
しばらくして、グンマーちゃんがでてきた。
グンマーちゃんの中の人などいないので、レミリアが中に入っているなんて有りえない訳だが、
それにしても恐ろしくカリスマ感のあるグンマーちゃんである。
「さて。フランを追うわよ」
カリスマグンマーちゃんは、でかすぎる頭の重さで多少フラフラしながら、フランちゃんを追っていった。
それから間もなくして…
「お嬢様も行かれたようですね」
車内から無駄にクルクルクルっと前宙を決めてシュタッ!と着地。
銀髪のメイドがカメラ目線で華麗にポージング!
まな板メイド長である。
心配性な咲夜が、世間知らずの妹様と、それをこっそり見守る世間知らずの当主様を見守るため、
こっそりとついてきたのだった。
「時空の星、冥王星を守護に持つ、お掃除メイドパッド長ここに参上!」「まさにまな板!」
一瞬の後におっさんと猫の全身という全身に数多のナイフがぶっ刺さったのは言うまでもない。
「さて、お嬢様も妹様もお一人でそれぞれの目的を果たそうとされている以上、
私が表立ってお助けすることはできない。何かしらの変装をして、こっそりとお助けさしあげましょうか」
ほどなくして線路の向うに獣道を挟んだ向う側にコンビニがあるのを発見する。
「これだ!」
咲夜はグンマーを拠点に全国を伺うコンビニ「セーブワン」の暖簾をウキウキダッシュでくぐった。
カウンターの歯抜けの原住民の店員に注文する。
「あんまんを2つ。あと…Fカップのブラジャーを…」
しばらくして、コンビニからでてくる謎の女性。
咲夜に似ているような気がするが、胸の大きさがあきらかに違うのでたぶん別人である。
「さて、お嬢様たちを追いかけますか」
はちきれんばかりの胸から、あんまんの甘い香りを漂わす謎のFカップ美女は、
フランちゃんとレミリア嬢を追っていった。
さて、おっさんと猫である。
咲夜からナイフを全身に浴びて出血多量でピクピクしていたが、
ドタバタトリオがグンマーの荒野に消えて行くのを見届けると、どよよーんとメタモルフォーゼを解除する。
現れたのは、黒白の盗人魔法使いと、六曜の貧血魔法使いである。
ナイフによるダメージはまったく残っていない。
2人は背中合わせのカメラ目線で悩ましげなポーズ!
魔理沙とパチェリーの漫才コンビがまさかの登場!
誰が漫才コンビやねんとダブルグーパンツッコミが防犯カメラを吹っ飛ばす。
カメラは隣の国のトチギスへと、キラーンと飛んでいった。
「さて、ドタバタ―ズはすでに行っちまったがどうするよ?」
腕組みをしながら魔理沙は、パチュリーを見やる。
「とりあえず駅前の喫茶店でお茶にしましょう。彼女たちが派手にやらかしたところで直行写メツイ拡散よ!」
「いいなそれ。あいつらそろって頭足りてないからな。炎上間違いなしだぜ!」
「フェイブ、インスタと追撃も徹底的よ!」
二人はフヒヒっといじわるーな笑み全開で喫茶店にカランコロンと消えていった。