怪人バッタ男 THE FIRST   作:トライアルドーパント

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これは、二次小説のネタを探してTUTAYAをブラブラした作者が、とあるDVDを見た瞬間に閃いたインスピレーションによって、色々とアリになった精神状態で綴る『怪人バッタ男』の番外編です。

本編からちょっとだけズレたこの世界の物語を、かる~い気持ちでお楽しみ下さい。


番外編 怪人バッタ男 アブノーマル・ヒーローズ
第2.5話 B組のぶりぶりアカデミア 雷鳴編


A組がオールマイトの教鞭によって屋内戦闘訓練を行なった翌日。B組の面々もまた、オールマイトの元で屋内戦闘訓練を行なっていた。

B組もA組と同じく総勢21人。今回は別に怪人バッタ男の“個性”を何とかしようと言う思惑はオールマイトには無いので、オールマイトは普通に二人組と三人組の変則マッチを前提としたチーム分けを行なっている。

 

「それでは最初の対戦は……コイツ等だっ!」

 

屋内対人戦闘訓練の一回戦は、ヒーロー組にBチームが、ヴィラン組にIチームが選ばれた。Bチームに振り分けられた拳藤一佳は、自分の隣に立っている一人の男に視線を落とし、思わずため息をついた。

Bチームは彼女を入れて三人一組。残り二人の内の一人である鉄哲徹鐡は少々暑苦しそうだが、それなりに頼りがいがありそうで特に文句は無い。問題はもう一人の方だ。

 

そいつは威風堂々とした佇まいで腕組みをしているのだが、見た目はハッキリ言って「ヒーロー」と言うより「何かのマスコットキャラ」と言った方がいい感じの、二頭身体型のブタだ。しかも上半身が裸で、下半身に紫色のタイツを履いている他には、腰に刀らしきものを差しているだけと言う、極めてシンプルなものだった。これでも学校の『被服控除』を利用した特別性らしいのだが、ぶっちゃけ『被服控除』を使う必要性を全く感じないし、そこら辺のホームセンターで購入したモノで完成された様なルックスは、お世辞にも強そうには見えない。

 

そんな一佳の視線の意図を感じ取ったのか、二頭身のブタ男こと『神谷兼人【かみや けんと】』は鋭い眼光を一佳に向けた。

 

「女、この私を甘く見ると後悔するぞ」

 

一佳はその視線に思わず怯んだ。そして神谷をデキる奴だと思った。

 

そうだ、こんなナリでも超難関と言われる雄英高校の入学試験を乗り越えたからこそ、今この場にいるのだ。それにも関らず人を見た目で判断してしまった一佳は、自分の認識を改め反省した。

 

「こんな事もあろうかと、私は爆弾処理の免許を持っている。しかも2級!」

 

一方の神谷はと言うと、何処からとも無く爆弾処理の免許を持ち出してきた。自らの優秀さを見せ付けたつもりなのだろうが、そのスキルは今回に限っていえば、全く役に立たないだろう。何故なら核爆弾はハリボテの偽物だからだ。

 

「……どこでそんな免許が取れるのよ」

 

「ふむ。チューンドマスダンパを採用した最新式だな」

 

一佳の素朴な疑問を無視し、神谷は戦闘訓練を行なうビルを物色していた。

 

 

○○○

 

 

Bチームの屋内戦闘は、ヴィランチームの一人である塩崎茨が、単身でヒーロー組の迎撃にやって来た事から始まった。彼女の“個性”は「茨の様になっている髪の毛を自在に操る」と言うものだったが、全身を強固な鋼鉄にする“個性”を持つ鉄哲の敵ではなかった。

 

「正に私の計算通りだ」

 

「アンタは何もして無いでしょうが!」

 

見ているだけだった神谷に一佳がツッコミを入れる一幕があったが、ヒーロー組は順調にターゲットへと進んでいた。

 

しかし、彼等はゴール目前にして、核爆弾のデコイを守るIチームの片割れである物間寧人の「触った相手の“個性”をコピーする」と言う、反則染みた“個性”に苦戦していた。

 

「くそっ! 手強いな!」

 

「ええ、その上デコイがあの有様じゃあ、簡単にいかないわ……」

 

一佳の視線の先にあるデコイの周りには、茨状のツタが結界の様に張り巡らされており、デコイ自体も茨状のツタによって雁字搦めになっている為、触れるどころか容易に近づく事も出来ない。どう考えても、先程倒した塩崎の仕業である。鉄哲ならば問題は無いのだが、物間はそれが分かっているようで、ずっと鉄哲に張り付いてデコイに近づかせないようにしている。

 

「手も足も出ないとは正にこの事だね。それじゃあ、僕はこのまま時間一杯まで粘らせて貰っちゃおうかなぁ?」

 

自身の“個性”によって相手の長所と攻め手を相殺し続けていた物間は、正に余裕綽々と言った感じのノリで笑いながら此方を煽っているが、実は彼の“個性”には幾つか弱点が存在している。

 

まず、物間の“個性”はあくまで「相手の“個性”をコピーして使える」と言うだけで、触れてコピーすると同時に「相手の“個性”が分かる」訳でも、「その“個性”の使い方が分かる」訳でも無い。つまり相手の“個性”をコピーする前に、「どんな“個性”なのか」、「どんな使い方をするのか」、「どんなリスクがあるのか」と言った事を、物間は知っておく必要がある訳で、それが分からないと有効活用が出来ないのだ。

 

今回は尖兵として出向いた塩崎が、相手チームの“個性”を把握し、それを無線で物間に伝える事でカバーしていた為、全体的に見ればこの状況に至る為の土台を作った塩崎の手柄であると言えるのだが、そんな事をヒーロー組は知る由も無い。

 

刻一刻とタイムリミットが迫る中、苦戦する一佳と鉄鉄の二人を押しのけて、静観していた神谷が遂に動き出した。

 

「私の出番のようだな」

 

「おお……頼むぜ、神谷!」

 

何とも渋く頼もしい神谷の声色に、鉄哲は多大な期待を込めてこの勝負の命運を神谷に預けた。一佳は黙っていたが、このままではジリ貧になる事は明白。ヴィラン組がタイムリミットによる勝利を迎える前に、自分達ヒーロー組は制限時間内にデコイを確保する必要がある以上、これまで自分の“個性”を見せていない神谷に頼るしかなかった。

 

おもむろに腰に差していた刀を抜き、自然体で悠然と歩を進める神谷に対し、物間は警戒心を持って相対していた。こうして見る限りでは、神谷の“個性”は常時発動している異形系で、生物型の「ブタ」の“個性”だと思われるが、油断は出来ない。

 

そんな二人の間合いは徐々に詰まっていき、いよいよ決戦かと思われたその時、突如神谷は回れ右をして、刀の切っ先を一佳と鉄哲の二人の方へと向けた。

 

「さあ! 何処からでも掛かって来いッ!」

 

それは正に雄英高校ヒーロー科始まって以来の、前代未聞の行動パターン。

 

不利と見るやあっさりとヒーロー組からヴィラン組へと寝返ると言う、A組の爆殺王とは全く別ベクトルな「ヒーローにあるまじき所業」は、モニタールームで観戦していたB組の面々は元より、オールマイトでさえも唖然としていた。

 

一方、神谷の裏切りを目の当たりにした一佳と鉄哲は、神谷の行為に怒りを爆発させた。

 

「てめぇええええええ! 実はそーゆー奴だったのかぁあああああああああああ!?」

 

「見損なったぞ神谷! 戻って来い!」

 

「断る。私は常に強い者の味方なのだ」

 

「お前だってヒーロー志望なんだろ! ならその腰の刀で戦え!!」

 

「ヴァ~カ。コレは刀じゃなくて千歳飴だもんね~。ぺろぺろ♪」

 

「「こんのブタぁああああああああああああああああああああああああああッッ!!!」」

 

「私に向かってブタだと!? 私にそんな口を聞いた事を今に後悔するぞ! さあ、物間様。早速コイツ等に身の程と言うものを知らせて――」

 

「ふんっ!」

 

「ブヒィッ!?」

 

三人のやり取りを黙って見ていた物間は、神谷の後頭部に思いっきり前蹴りを入れた。それによって神谷はヒーロー組の方へと戻り、二人による容赦無い蹴りのラッシュによる制裁を受けた。

 

「「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!」」

 

「わ、分かった。あの卑怯な裏切り者を倒す為に、私も戦ってやる。だからお前達はこの念書を書け!」

 

「「裏切り者はお前だろうがッ!!」」

 

「君みたいな役立たずのブタなんて、仲間にする価値があるとは思えないけどねぇ」

 

「何……だと……! 誰が役立たずだ! 誰がブタだッ! そんな偉そうな事は私に勝ってから言えッ!」

 

「「ならちゃんと相手を見て言えッ!!」」

 

その時、ふとパキッと何かが折れる音が聞こえた。音の発生源に目を向けると、物間が筆の柄を踏んづけていた。

 

「……はっ!? 貴様、よくも爺のオマタのヒゲで作った高級品の筆を折ってくれたな! もう許さんッ!!」

 

「ははは! 許さなかったらどうだって言うんだい?」

 

この時、物間は完全に神谷を舐めていた。だからこそ、筆に纏わるトンでもない事をカミングアウトした後の神谷の行動にも驚かなかった。神谷は何処からともなくマシンガンを取り出したのだが、物間はソレをおもちゃの偽物だと思っていたからだ。

 

しかし、マシンガンの銃口が火を吹き銃弾が飛び出した瞬間、物間の……いや、一佳と鉄哲の表情も一変した。

 

意外ッ! それは本物ッ!!

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッッ!!」

 

「うおおおおおおおおおおおおおおお! 危ねぇえええええええええええええええ!!」

 

ドラム式マガジンのマシンガンから放たれる大量の銃弾は、狭い室内を縦横無尽に跳ね回った。仮にも核爆弾が置いてある設定の部屋で、迷わずに銃火器を使うなど正気の沙汰とは思えないが、銃弾は何故か神谷にも物間にも自分達にも銃弾が一発も当たらなかった。

その代わりに銃弾は茨状のツタだけを切断し、デコイとその周りに張り巡らされていた茨の結界は完全に崩壊した。その上、核爆弾のデコイには傷一つ着いていない。

 

「う、ウソでしょ……」

 

床に伏せていた一佳は、その光景に目を疑った。

 

神谷はコレを狙ってやったのか? それともコレは神谷の“個性”によるものなのか?

 

一佳の頭の中をそんな疑問が渦巻く中、鉄哲は一佳と同じ様に床に伏せていた物間に接近し、上から覆いかぶさった。

 

「二人とも今だ!」

 

「!! ええ! 分かったわ!」

 

「うむッ!!」

 

「し、しまった!」

 

この時の物間は鉄哲の“個性”をコピーした事で、全身を鋼鉄の様に変える事が出来る。しかし、単純なパワーでは鉄哲に負けている為、組み伏せられてはどうしようもなかった。

 

こうして一佳はデコイに向かって駆け出したのだが、神谷は何を思ったのか、突然履いていた紫のタイツを下ろし、妙に張りのある尻を物間に向けて晒した。

 

「い、一体なんのつもり――」

 

「拭いてないお尻攻撃ッ!!」

 

ぶりぶりと効果音が出そうなほどに勢い良く尻を振りながら、神谷は物間の顔面目掛けて後ろ向きに突進する。物間の顔の直ぐ傍に鉄哲の顔があるにも関らずだ。

 

ここで「神谷の尻」と言う名の迫り来る脅威を、何とか回避しようとする鉄哲と物間の運命を分けたのは、鉄哲と物間がそれぞれ抱える“個性”の弱点だった。

 

鉄哲の“個性”は肉体を鋼の様にする事が出来るのだが、全身に“個性”を発動させると機動力が大幅に低下してしまう弱点があった。その為、実戦において鉄哲は、必要に応じて肘や膝などの間接部分に“個性”をかけないと言った細かい調整や、限られた稼動部分を最大限に活用した体裁きを習得していた。

 

一方の物間だが、物間の“個性”は相手の“個性”を「使える」と言うだけで「使いこなせる」と言う訳では無い。更に先程の戦闘では腕や脚と言った、限定的な部分だけに鉄哲の“個性”を発動させて使っていた為、全身に“個性”を発動させた場合に起こる「機動力の低下」と言う弱点も、その対処方法も知らなかった。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!」

 

「う゛ッ!? 動け……うわああああああああああああああああああああああッ!?」

 

この時二人は全身が金属質に変化していたのだが、鉄哲が“個性”を発動させたままで危険地帯からスムーズに離脱出来たのに対して、物間は動く事もままならなかった。これから自身に降りかかる災厄を想像した物間の顔は恐怖と絶望に歪み、先ほど迄の余裕は完全に消え失せた。そして死に際の集中力によって人生初の走馬灯を体験しようとしていたのだが――。

 

(――いや、まだだ! “個性”を解除すれば或いはっ!!)

 

物間は生存本能によって発揮された集中力を使い、“個性”を解除した生身で尻を回避すると言う、最後の賭けに出た。

それは物間にとって、正に生死を賭けた大勝負だったが、その決意と集中力は瞬時に、そして呆気なく切れた。一佳が核爆弾のデコイをタッチした事で、ヒーロー組が勝利したからだ。

 

『ヒーロー組! WI―――――――――――――――N!!』

 

「何ッ!?」

 

オールマイトのアナウンスを聴いた神谷は、その場で急ブレーキをかけた。物間は「拭いてないお尻攻撃」が目と鼻の先で中止された事に心底安堵したが、この後に起こった事を考えれば、物間はこの時気を抜くべきでは無かった。

 

「や、やった! 助かっ――」

 

「あっ!?」

 

神谷は物間が折った高級品の筆を踏んづけた事で足を滑らせてしまい、ケツを丸出しにしたままで尻餅をついた。

 

物間の顔面を下敷きにして―ー。

 

「ぶぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!」

 

拭いていない生尻がぐにゅうっと密着した物間の、断末魔の悲鳴がビルの中に木霊した。

 

 

●●●

 

 

「何? アレは『デコイを確保してくれ』と言う意味だったのか? 私はてっきり『この男に止めを刺せ』という意味だと思ったのだが……」

 

「んな訳ねーだろッッ!!」

 

「……本当、酷い事件だったわね……」

 

「ええ。物間さんの魂に救いが有らん事を願います……」

 

物間は神谷の「拭いてないお尻攻撃(不可抗力)」による、再起不能レベルの甚大な精神的ダメージによって気絶し、リカバリーガールの元へと搬送された。しかし、幾らリカバリーガールでも精神的なダメージを癒す事は出来ないだろう。物間の精神が崩壊し、破綻していない事を願うばかりである。

 

一佳と鉄哲、そして塩崎の三人が物間の無事を祈る中、神谷は元気よくこう言った。

 

「まあ、『正義は必ず勝つ』と言う事だ。しかし今回は正にチームワークの勝利だったな。さあ、引き上げるぞ」

 

ふざけた態度でふざけた事を抜かす神谷に対し、三人は容赦無い蹴りのラッシュを叩き込んだ。

 

「何がチームワークだ! 現場を滅茶苦茶にしただけじゃねぇか!」

 

「何とか言って見なさいよ! このブタッ!」

 

「あぁん! ブタブタ呼ばないで~~~ッ!!」

 

これは、異端の“個性”を持った少年が「救いのヒーロー」を目指す物語……なのかも知れない。




キャラクタァ~紹介&解説

神谷兼人【かみや けんと】
 B組の21人目にして、『B組のぶりぶりアカデミア』における準主人公。作者が「書いていて楽しいキャラクター」を考え続けた結果、動物園の園長であるウサギ男ではなく、超ヒーローらしくないブタ男に白羽の矢が立った。
 元ネタは“救いのヒーロー”こと『ぶりぶりざえもん』……って言うかまんまソレ。ヒーロー名も「救いのヒーロー ぶりぶりざえもん」で決定している。名前は『ぶりぶりざえもん』の声優さんである塩沢兼人と神谷浩史のお二人からだが、声は塩沢兼人ボイスに設定している。
 ちなみにシンさんがこの男と(金銭的な意味で)契約をすると、最強のヒーローたる「仮面ライダーシン王」へと進化する……かも知れない。本編主人公も「くれシン」だから、あながち間違ってはいないと思う。

拳藤一佳
 可愛いと評判のB組のツッコミポジ一人目。原作と違ってクラスに問題児を二人抱えている為、原作よりも気苦労が耐えない。そして『B組のぶりぶりアカデミア』における主人公は実は彼女であり、作中で彼女だけが他の登場人物と違い「一佳」と名前で表記されているのも、番外編が彼女の視点で物語を進めるつもりだからである。

鉄哲徹鐡
 全身が鋼鉄みたいになると言う、最近見た映画『デッドプール』に出てくるXメンみたいな、B組のツッコミポジ二人目。第二期のアニメで登場する筈だが、全身がフルCGになったりはしないだろう。

塩崎茨
 髪型がどこぞの『聖☆おにいさん』に似ている信心深い少女。この後のオールマイトの講評で、今回のMVPを貰った。作中でも語られているが、今回のヴィラン組の功績は彼女による所が大きい。
 彼女を見て『クウガ』の「バラのタトゥの女」を想像する作者は、何とかしてシンさんと絡ませたいと思っていたのだが、そうなると雄英体育祭が「ザギバス・ゲゲル」になる気がしたので止めたと言う経緯がある。

塩崎「新たな力は手に入れましたか?」
シンさん「GUUUU、GYAGYU、GOOOUUA、GUA」
塩崎「此処ではリントの言葉で話しなさい」
シンさん「………」

物間寧人
 B組の性格破綻者。今回の話は「コイツの性格が破綻しているのは、何かしらの破綻する様な過去があるからに違いない」と言う、作者の独自考察によって生まれたと言っても良い。可哀想なやっちゃで。
 彼の“個性”に関する事も、作者の独自考察によるもの。他に考えられる弱点としては「“無個性”だったり、銃火器を使ってくる等、『戦闘に“個性”を用いない相手』には意味が無い事」と、「将来的に他人の“個性”の劣化コピーにしかならない」と言った事が考えられる。また、これから彼の性格が破綻する理由が原作で描かれるかも知れないが、ソレは別の世界のお話なので気にしないで欲しい。



ぶりぶりざえもんの“個性”
 作者が設定したブタ男の“個性”は『ギャグ補正』。簡単に言うと、『ギャグ的な事柄』や『お約束』と言われる現象を現実に起こすことが出来る。常時発動型であり、一見するとアホっぽいが、その効果はある意味作中最強。また応用範囲が極めて広く、例を挙げるなら――

1.デススターもどきの爆発に巻き込まれた上に、生身で宇宙空間に放り出されても死なない。

2.敵の大群と一緒に人質の姫君も大岩の下敷きになったが、何故か人質の姫君だけ無傷で復活する。

3.『円月殺槍』を『臨月出産』と聞き間違える事で、瞬時に屈強な男を妊婦(マタニティ着用)に変える。

――と言った具合に、その気になればありとあらゆる法則を捻じ曲げる事が可能。作中で物間が酷い目に遭ったのも、「人を見下す嫌味なキャラは手酷いしっぺ返しを食らう」と言う、『お約束』に基づくもの。
 但し、“個性”の常時発動によるデメリットも大きく、「コンビニでエロ本を立ち読みしていたら、何故かクラスの女子に遭遇する(遭いたくない時に限って、何故か遭ってしまう)」と言った事柄も確実に起こってしまう。













 この“個性”の真の能力は、「『ギャグ』や『お約束』と言うルールに基づき、その場に居る自分や他人の運命を確定させる」と言うもの。つまり、『正義は必ず勝つ』、『悪は必ず滅びる』、『囚われた人質は無傷で助かる』、『どんなに苦戦し敗北したとしても、最後には必ず逆転して勝利する』と言った、物語における『ありがちな展開』を『現実』に変える事が出来る。
 これは極端な事を言えば「神谷がその場に居る」と言うだけで、「ヒーローの勝利とヴィランの敗北が確定する」と言う事であり、ヴィラン相手には必ず勝てる“個性”であると言う事。実際その気になれば、現時点でもオール・フォー・ワンを含めた全てのヴィランを打倒する事が可能である……と言う設定。
 
 正に「救いのヒーロー」を体現した“個性”であり、オールマイト以上のスーパーヒーローに成り得る“個性”であると言えるのだが、肝心の使い手が立派さの欠片も無い小物臭さが目立つ人物である上に、『相棒【サイドキック】』として雇うとしても「コイツのボケに対して本気の殺意を感じてしまう」と言った、『ソウルイーター』のエクスカリバー並みに扱いに困ると言う、致命的な弱点が存在する。

だが、其処がいい。

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