怪人バッタ男 THE FIRST   作:トライアルドーパント

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二話連続投稿の二話目。今回のタイトルは『鎧武』が元ネタで、作者としてはタイトルで既にネタバレしている様な気がします。でも他に良いタイトル思いつかなかったし、仕方なかったんだ……。

さて、今回で原作第三巻の分の話がようやく終わり、原作第四巻へと突入します。個人的に原作が漫画作品の方が、二次小説をサクサク書ける様な気がします。何となくですが。

それから、この話を投稿した後で、タグを追加・一部変更しようと思います。それもこれも全部、イナゴ怪人って奴の仕業なんだ。

2018/5/21 誤字報告より誤字を修正しました。報告ありがとうございます。


第9話 衝撃! 怪人ライダー大集結!

俺がスタジアムに到着して間もなく、出久や轟、勝己と言った見知った面々から、B組のよく知らない連中まで、主にヒーロー科の奴等が続々とスタジアムに帰還する。

 

そしてイナゴ怪人V3に乗っ取られたプレゼント・マイクだが、俺がここに到着してからは「用は済んだ」とばかりにV3の呪縛から解放され、今では無事に(?)実況に復活している。何でもV3に乗っ取られた間の記憶が全くないらしい。

 

その一方で唯一予選を生き残ったイナゴ怪人アマゾンはと言うと、上鳴と瀬呂を抱えてスタジアムに到着すると、取り込んでいた峰田を吐き出す形で腹の中から解放した。

 

「オゲゲェエ―――――――――――――――――――ッ!!」

 

「オブォオオオオオオオオッ!!」

 

「ちょ!? み、峰田君。大丈夫!?」

 

「……ハッ、ハッ、ハッ……。地獄だ……、地獄を見てきた……」

 

「………」

 

吐き出された峰田は全身がイナゴジュースに塗れ、小動物のように小刻みに震えていた。どうやら峰田は乗っ取られた間の……と言うか、取り込まれた間の記憶がちゃんとあるらしい。

しかし困った。峰田がこんな状態では、俺はもはや峰田に何も出来ないではないか。まあ、怒りは体を動かした所為で発散されたのか、峰田に手を出そうという気があまりしないのもまた事実ではある。

 

ちなみにイナゴマンとイナゴ怪人ストロンガーの二体も、それぞれ瀬呂と上鳴の肉体を乗っ取っていたらしいのだが、二人に関しても乗っ取られた間の記憶は無く、「気がついたら何時の間にかゴールしていた」と発言している。

そして、この二体に関しては、俺が『超マッスルフォーム(仮)』になった時に発生した衝撃波で、知らない間に吹き飛ばしてしまった為、もう完全に怒れる様な感じじゃなくなってしまっている。

 

こうなると、残るはイナゴ怪人V3だが、こうなってしまうとコイツにだけ制裁を加えるのもなんだか気が引ける。手段はアレだが俺の為に動いたらしいし……何というか、怒りも出来ないが、褒めることも出来ない感じ。メッチャもやもやする。

 

……まあ、いずれにしてもアマゾンに関しては「よくやった」と言っていいだろう。こんな事を言う日が来るとは思わなかったが……ありがとう、イナゴ怪人! ありがとう、アマゾン!

 

「ウウ……、アマゾン、王ノトモダチ、守ッタ」

 

「ちょっと待って! 何故アマゾンだけが褒められ、神実況の私が褒められないのだ!?」

 

テレパシーでイナゴ怪人アマゾンを褒め称える俺に対し、猛烈に詰め寄って抗議するイナゴ怪人V3。……いや、お前がやったのは神実況って言うより、只の放送テロだろ。

 

「何を言うか! 敵を欺くにはまず味方からとよく言うであろう! それに私のお陰で電脳世界では、実況スレが開会式から早くも大・大・大・大・大爆発ッ! 凄まじい勢いで弾幕が飛び交い、掲示板は怒涛の勢いで乱立され、サーバーなど何時飛んでも可笑しくないのが現状だ!! 試しにコレを見るがいいっ!!」

 

そう言うイナゴ怪人V3は俺のスマホを勝手に持ち出しており、俺に一つの掲示板を見せてきた。それは――。

 

 

○○○

 

 

【雄英体育祭掲示板】ヒーローの卵の中に怪人がいる件について語るスレ№3

 

752:名無し

今年の一年の雄英体育祭は、もはやバッタ怪人祭って感じだよな。

 

753:名無し

ヒーローの卵が勝てる気がしない。怪人軍団が負ける気がしない。

 

754:名無し

どう足掻いても絶望。ついに怪人が世界を征服する時が来た。

 

755:名無し

ヒーロー飽和社会終了のお知らせ。

 

756:名無し

18禁ヒーロー目当てにテレビつけたら、18禁Gヒーローが映っていた。

 

757:名無し

>>756

お前もか、歓迎するぞ同士よ。

 

758:名無し

今年こそ死人が出る(確信)。

 

759:名無し

不死身の怪人をカウントすると、もう9人死んでる。

 

760:名無し

限りなくヴィランに近いヴィラン。

 

761:名無し

>>760

もはや只のヴィラン。

 

762:名無し

ヴィランキターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!

 

763:全は一。一は僕。

アレこそが正に、次世代のオールマイト。次の“平和の象徴”となる男に違いない。

 

764:名無し

>>763

お前の目には一体何が映っているんだ!?

 

765:名無し

>>763

アレが“平和の象徴”とか、未来は一体どんな人外魔境なんだよ……。

 

766:主人を守る目

しかし、確かに使った技の多くが、オールマイトの技を模倣したものと思われる。

 

767:ste-sama

>>766

俺の他にもその事に気づいた者がいるとは……。相当なオールマイトファンと見える。

 

768:名無し

7人の不死身の怪物を従える怪人が“平和の象徴”って、それってもう世紀末じゃないか。

 

769:名無し

>>768

世紀末? 黙示録の間違いだろ?

 

770:はぶりん

一年生で誰よりも輝いているのは紛れもない事実。

 

771:名無し

>>770

輝いていると言うより暴れ回っているが正しい。

 

772:名無し

イナゴ怪人V3の実況でオールマイトの“個性”が「魔法(物理)」って言ったのは笑ったけど、「オールマイト=魔法使い」説は、あながち間違いでも無いような気がする。色んな意味で。

 

773:名無し

筋肉もりもりマッチョマンの魔法使い(意味深)かよ(笑)。

 

774:主人を守る目

>>772 >>773

貴様等……オールマイトを馬鹿にしているのか?

 

775:ste-sama

>>772 >>773

粛正が必要だ……。

 

 

○○○

 

 

「………」

 

「どうだ! 驚いたであろう! 何せこの短時間で既に№3だ! 凄い事だと思わんか!?」

 

いや、確かに凄いし、誰の記憶にも残らないよりはマシだと思うけど……何だろう、凄く悲しい。俺は全力で頑張っただけなのに。

 

「シン君、デク君……! 凄いねぇ!」

 

「この“個性”で遅れをとるとは……やはりまだまだだ。僕……俺は……!」

 

「HARUUUUU……」

 

「麗日さん、飯田君」

 

「一位と二位なんて凄いね! でも、最後の爆発は流石に死んだと思ったよ……」

 

「……フッ。まだまだガールだな。王の事をまるでワカッテない」

 

「? どう言う事だ?」

 

「この予選を『出動要請を受けたヒーロー』と仮定して考えるがいい。現場に向かうヒーローが、道中で遭遇した無数のヴィランを無視して素通りすると思うか? 地雷と言う脅威を残したまま、何もせずにその場を後にすると思うか?」

 

「いや……ま、まさか……」

 

「そう! つまり王はこの予選を、『実戦』と捉えて挑んでいたのだ! 只の予選一位では無いッ! 市井の人々を守る為に複合的な行動を求められる現代ヒーローにおいて、マルチタスクは必須技能ッ!! その為に世間の目や自身の負担など気にせず、“個性”を使うことを恐れない、この呉島新こそ正に真の『英雄【ヒーロー】』!! 漢の中の漢だと思わんかッ!?」

 

「た、確かにッ!! そうか……、俺と呉島君は、この予選にかける覚悟から既に、圧倒的な差が開いていたのか……ッ!!」

 

「………」

 

全然違う。ロボに関してイナゴ怪人が「任せろ」って言うから任せただけだし、地雷原の大爆発に関しても只の流れ弾が原因で、しかもアレは元々妨害目的で放ったモノだ。

 

大体、普通に考えてヒーローが、地雷が埋まっている場所の近くに人がいる状態で、地雷を起爆させて処理をする筈が無いではないか。

まあ、イナゴ怪人V3の言う「仮定」とやらを考慮すれば、今回の地雷原にいたのは一般人ではなく同業者と言える存在だろうが。

 

しかし、イナゴ怪人V3の言葉を聞いていたのであろう、俺の周りにいる面々は驚愕の眼差しを俺に向けており、特に飯田は物凄い顔芸を披露している。……不味い。騙されている。

 

「……A、II」

 

「波乱に満ちた予選もようやく終了ね! それじゃあ、結果をご覧なさい!」

 

「………」

 

俺が皆に弁解する間もなく、主審のミッドナイト先生によって、予選の結果がスクリーンに映し出される形で発表される。一位は勿論この俺だ。

しかし、スクリーンに映し出された写真はさっきの『超マッスルフォーム(仮)』の時の物らしく、何時撮ったのだろうと思う反面、本人の俺から見ても物凄く怖かった。

 

「予選通過は上位44名!! 残念ながら落ちちゃった人も安心しなさい! まだ見せ場は用意されてるわ!! そして次からいよいよ本選よ!! ここからは取材陣も白熱してくるよ! キバりなさい!!」

 

上位44名か。見た限りではほぼA組とB組で占められているから、実質ヒーロー科の生徒同士で潰しあう様な感じだな。

 

「さ~~~て、第二種目よ!! 私はもう知ってるけど~~~~~~~……何かしらぁ!? 言ってる傍から~~~……コレよッ!!」

 

「GUUUU?」

 

「『騎馬戦』……!」

 

「個人競技じゃないけど、どうやるのかしら?」

 

そんな俺達の疑問に答えるように、ミッドナイト先生の説明が続く。それによると参加者である俺達はこれから2~4人でチームを組むのだが、第一種目の成績に従って各自にポイントが振り分けられるとの事。

つまりは一般入試の実技試験と同様に、ポイント稼ぎを目的とした競技であり、ポイントは44位が5P。43位が10Pと言った具合に5Pずつ増えていく……のだが肝心の俺のポイントは220Pでは無かった。

 

「上位の奴程狙われちゃう下克上サバイバルッ! 上を行く者には更なる受難を! 雄英に在籍する以上、何度でも聞かされるよ! これぞ『Plus Ultra【更に向こうへ】』ッ! 予選通過1位の呉島新君ッ!! 持ちポイント1000万ッッ!!!」

 

なん……だと……。1000……万……ッ!?!

 

「FUUUUUUUUUUUUUUUUUUU……!!」

 

瞬間、俺を見た全員が、その場から一歩引いた。

 

俺としては「面白い。望む所だ」と言う意味で笑っていたのだが、周りのリアクションから察するに、その表情は恐ろしく不気味で、途轍もなく不敵なモノに映ったのだろう。それこそ「ニタァアアア……」と効果音が出そうな程に。

 

その後もミッドナイト先生による騎馬戦のルールの説明が続き、それが終わるといよいよチームを決める為の交渉タイムがスタートする。

パッと見た感じ、A組では勝己と轟が人気だ。まあ、二人とも持ちポイントが高いし、“個性”も汎用性が高いから、当然と言えば当然だろう。

 

しかし、俺も“個性”に関しては二人に決して負けてないと思うので、チームを組むのにはさほど困らない筈。そう思っていたのだが……

 

「MUUUUUUU……」

 

「……僕達、超避けられてるね」

 

「(……妙だな。“個性”を使いこなせていない緑谷少年はともかく、呉島少年の場合“個性”の汎用性や、数々の特殊能力を考えれば、持ちポイント1000万でも選択肢としては十分にアリだ。にも関わらずこの状況……どう言う事だ?)』

 

――何故、新が避けられているのか? 1000万Pを保持し続けるより、終盤でソレを奪う方が戦法として理に適っているからか?

 

違う。新本人でさえ気づいていない事だが、出久や轟、勝己の様に「トップを狙う」。或いは「打倒怪人バッタ男」と言った目標を掲げていない面々にとって、この雄英体育祭で最も恐るべき事態は、最終種目における新とのタイマンである。

 

雄英体育祭の最終種目は、毎年トーナメントや総当たりと言った具合で形式が変化する事はあるものの、例年一対一で争う事になっている。

 

前年度はスポーツチャンバラだったが、新の力をコレまで嫌と言うほど目の当たりにしてきたA組の面々、特に『USJ』の事件で脳無と呼ばれたヴィランを圧倒した場面を目撃した面々からしてみれば、樹木を根こそぎ引っこ抜く様な竜巻を体ひとつで起こし、『USJ』を全壊に近い状態にする程の攻撃力を発揮する相手とサシで相対するなど、例え金を山と積まれたって絶対にゴメンだ。

 

仮に今年もスポーツチャンバラだったとして、新が繰り出すエアーソフト剣の一撃を正面からモロに受けた時の事を考えると、そこにアクリル製の防具があったとしても、命の保証があるとは到底思えない。

……何かが確実におかしいような気がするが、実際にそんな感じの印象を抱かせているのだ。マッスルフォームの怪人バッタ男は。

 

つまり、新と組めば高確率で最終種目には進めるだろうが、それと同時に最終種目で新と当たる可能性が浮上するのである。

だからこそ、「団体戦であるこの第二種目で新を脱落させておきたい」。これはこの場にいる大半の人間が抱いている共通認識であり、心からの願望でもあった。

 

ちなみに、出久に関しては“個性”をちゃんと見せていない為に信用が無い事に加え、“個性”の使用に伴って骨折等のデメリットが発生する事を考慮すると、「騎馬であろうが騎手であろうが基本的に“個性”が使えず、“個性”を使ったとしても最終的に足手纏いになる」と言う理由から除外されている。

 

「UUUUUMMM……」

 

「だ、大丈夫だよ。僕と二人で出ればいいんだからさ。とりあえず作戦を……」

 

「シン君、デク君。一緒に組も?」

 

「FAAA!?」

 

「麗日さん!?」

 

何と言うことだろう。暗黒の中学時代を思い出させる、俺と出久の二人騎馬戦を覚悟したその時、麗日が俺達に声を掛けてきたのだ。

 

「良いの!? 僕達1000万超え故に、超狙われると思うけど!?」

 

「二人がガン逃げしたら勝てるじゃん」

 

「そ、それは過信し過ぎなんじゃ……」

 

「するさ! 何より、仲良い人とやった方が……良いッ!!」

 

「………ッ!!」

 

「FUCUU……!!」

 

俺達は麗日の慈愛に満ちた天使の様な笑顔を直視してしまい、その所為で出久は珍妙な表情を作り、俺は思わず目元を覆った。感動の涙だった。

 

「実は僕も組みたかったんだ。ありがとう! チームを組むなら、なるべく意思疎通がスムーズに出来る人が望ましいもの!」

 

「うんうん! ……ん? スムーズ?」

 

「GUUUU……」

 

言いたい事は分かる。だけど、俺と出久は幼馴染だからか、出久はこの状態の俺の言う事が、なんとなく且つ大体分かるのだ。だから全く問題ない。

 

その後、出久の考えている策に乗る形で、飯田にチームを組んでくれるように声をかけたのだが……。

 

「……流石だ、緑谷君。……だが、済まない、断る」

 

「VVNN?」

 

「緑谷君には入試の時から、呉島君には入学してからずっと負けてばかり……成績だけの話じゃ無い。さっき分かった。これはきっと俺の覚悟の問題なんだ。

君達は素晴らしい友人だが、だからこそ……俺は未熟者のままではいたくない。君達をライバルとしてみるのは、爆豪君や轟君だけじゃない。俺は今日、君達二人に……挑戦するッ!!」

 

「飯田君……」

 

「………」

 

……アレ? コレってもしかして、俺が誤解を解かなかった所為で断られたって事なんじゃないか? なんてこった。因果応報とはこう言う事を指すのだろうか。

 

「フフフフ……やはりイイですねぇ。ありとあらゆる意味で目立ってますもん! 私と組みましょ、一位の怪人さんッ!!」

 

「FAA!?」

 

「えッ!? 誰!?」

 

「私はサポート科の発目明! 貴方の事は知りませんが、立場利用させて下さい!」

 

「NVAA?」

 

飯田に断られてどうしようかと途方に暮れていた俺達に声を掛けてきたのは、サポート科で唯一予選を突破した一人の女子だった。

 

サポート科にとってこの雄英体育祭は、「自分の発想や開発技術を企業にアピールする為の場」と考えられており、大会中の競技で自分の“個性”を使う事はまず無い。

それはつまり、彼女は自分の開発したサポートアイテムだけを使って予選をクリアしたと言う事であり、彼女が相当に優秀な技術者の卵であると言う事の証明でもある。

 

ただ、この発目と言う女子は、自分の事だけ話して会話が成立すると思っているタイプなのか、こっちが聞きたい事から聞きたくない事まで、マシンガンの様に一方的に喋りまくり、コッチの言う事は殆ど聞いていない。現に麗日の言葉は完全にスルーしている。

 

「それでですね。私ベイビーが沢山いますので、それをイナゴ怪人さん達にも使わせて欲しいんですよ! 特にコレなんかお気に入りでして、とあるヒーローのバックパックを参考に独自の解釈と改良を加えて……」

 

「それひょっとして、バスターヒーロー『エアジェット』!? あ、そう言えば、あっちゃんのお父さんも最近、飛行用のサポートアイテムを造ってるんだよね? 確か、『重力低減装置』だっけ?」

 

「GUVAA」

 

「うむ。現在開発中のコスチュームである『八式』の装備だ」

 

「!? 開発中のコスチューム!? 興味あります!!」

 

「……ふむ。流石に機密に属するので『八式』について教える事は出来ないが……」

 

何時の間にか復活し、隣に出現していたイナゴ怪人1号が俺の言葉を代弁し、先日の『USJ』の事件で大破した強化服。通称『一式』のデータを発目に見せた。

俺のタブレットを無断で持ち出している1号の行動に怒りを覚えるが、発目を味方に引き込むためだ。仕方ない、見逃してやろう。

 

「『S.M.R.【System Masked Riders】』ですか。なるほど、“個性”に見合ったコスチュームと、二輪兵器と言える専用バイクのセットですか!

おお! ヘルメットはガス等の化学兵器が通用しない防毒性に、暗視ゴーグル、サーモグラフィー機能を筆頭に、様々なモニタリング機能を搭載!? 更に衛星との通信による電子能力も搭載する予定だったと!?

むむむッ! 胸部装甲もさることながら、下のライダースーツの方も凄いですね! この耐弾性なら機関銃の一斉掃射や、大口径銃の一撃すら弾けますよ! しかも、零距離からの火炎放射に耐え抜く耐火性を備えている上に、身体能力を数倍に上昇させるパワーアシスト機能まで!! ふぉおおおおおおおお、これはぁあああああああああっ!!」

 

一方の発目だが、強化服『一式』のデータを見て、エラく興奮していた。

 

確かに考えてみれば、俺のコスチュームは他と比べても、誇張無しに破格と言える超性能を誇る代物だ。サポート科に所属する彼女にとって、『一式』は興奮を禁じ得ないお宝に等しいのだろう。

そして、一通りデータを見終わった発目はタブレットから目を離すと、獲物を見つけた猛禽類を彷彿とさせる視線を俺に向けた。

 

「因みに、呉島さんのご家族は?」

 

「呉島家は父子家庭だ。父親が男手一つで王を育てた」

 

「呉島博士に結婚のご予定はありますか?」

 

「有る訳が無いだろう。有ったらとっくに再婚している」

 

「では、呉島さんと私が結婚するのはどうでしょう?」

 

「……何が言いたい」

 

「仮に呉島さんと結婚して呉島博士の血縁関係者になれば、必然的に呉島家の財産を共有する事が出来る訳じゃないですか!? そうすると呉島博士の研究所に義理の娘が居てもなんら問題無い訳で、つまりは私のドッ可愛いベイビーの為の大きな揺り篭が手に入るって訳じゃないですか!? その上、幾ら失敗しても替えの利くベイビーの実験体として、イナゴ怪人さん達を提供して頂く事も出来るって事じゃないですか!?」

 

「「「「………」」」」

 

……コイツ、完全に結婚を、自分の願望を満たす手段として考えてやがるッ!!

 

何処かの誰かが言った言葉に、「結婚とはビジネスパートナーを見つける事と覚えたり」と言うのがあったが、発目にとって結婚とは正にそれなのだろう。

その余りにもあけすけで、自分の考え……否、野望を全く隠さない彼女の在り方に、出久と麗日は絶句し、イナゴ怪人1号でさえ何と言えば良いのか分からないと言った感じに黙っている。

 

「と、とりあえず、これで4人揃ったね」

 

「そ、そうだね」

 

「それでですね、実はパワードスーツに関しても自信作がありまして……」

 

「……良いだろう。使ってやる」

 

「………」

 

こうして、俺が会話に加わること無く、勝手に話が進んでいった。そして、打算と欲望に満ちた人生初のプロポーズを受けた事に思い至り、俺は亡き母を思いながら天を仰いだ。

 

 

●●●

 

 

出久がチーム構成をミッドナイト先生に伝えに行き、鉢巻きを持って戻ってきた。ソレを見ると、他のチームのトータルPが多くても600台であるのに対し、俺達は1000万台と言うふざけた数値を叩き出している現実を、改めて確認させられた。

 

「よし……やろう、あっちゃん!!」

 

「ZYAAA!! UUUUUU……WOVAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

 

出久の合図によって、俺は脇の下から生えている、小さなバッタの中足に精神を集中させた。すると、小さなバッタの中足はみるみる肥大化し、人間の腕の様な歪な形を経て、最後には「ハイバイブ・ネイル」と「スパイン・カッター」を備えた、立派な二本の腕に変化した。

 

これこそが俺の隠された能力「四本腕」。これは、テレビゲーム等をしながらポテチを食べても、コントローラーが油でべとべとにならないと言う恐るべき能力であり、コレを知っているのは、父さん以外では一緒によく遊んでいる出久。後はオールマイトだけだ。

 

そして俺は脇の下から生えている方の腕を後ろに回し、麗日と発目の二人と手を握って、騎手である出久の足場を作る。これで俺は残り二本の腕を使う事で、前騎馬でありながら「超強力念力」の微細なコントロールによる、不可視の攻撃が出来ると言う訳だ。

 

『さァ、上げてけ、鬨の声!! 血で血を洗う雄英の合戦が今ッ!! 狼煙を上げるッ!!!』

 

「あっちゃん!!」

 

「RUBUWA!!」

 

「麗日さん!!」

 

「っはい!!」

 

「発目さん!!」

 

「ヘヘヘ!!」

 

「イナゴ怪人!!」

 

「「「「「「「うむッ!!」」」」」」」

 

「よろしく!!!」

 

「任せろ! 奴らに『本当の騎馬戦』と言うものを見せてやるッ! 出でよ! ローカスト・ホォオーーーーーーーースッ!!」

 

イナゴ怪人1号の叫びに呼応し、大量のミュータントバッタがスタジアムに飛来する。再びパニックを起こす選手と観客達。そんな悲鳴と怒号をBGMにして、混乱渦巻くスタジアムに現れたのは、新たなるイナゴ怪人……ではなく、サラブレッドの様な美しい体躯を誇る7頭の黒馬だった。

 

『な、何だぁーー!? 突然現れたイナゴの大群が、馬になったぞぉーーー!?』

 

『……イナゴ怪人の能力だな。多分、ミュータントバッタで馬を創ったんだ』

 

――そう。イレイザーヘッドの言う通り、これはイナゴ怪人がミュータントバッタを材料に、「ローカスト・ホース」と言う馬を創造し召還すると言う、出来たてホヤホヤの固有能力である。

 

事の発端は『USJ』の事件で、新が『敵連合』に対し、自身を『仮面ライダー』と名乗った時に遡る。

 

新の父親である呉島新太郎が『S.M.R.【System Masked Riders】』にバイクを組み込んでいる事から分かるように、『仮面ライダー』と言うからには、当然ながら「ライダー」である必要がある。

しかし、新は現時点でバイクの免許など持っていないし、それをこれから習得するにしても、最短で今年の二学期あたりまで待たなければならない。

 

つまり新は現時点では『仮面ライダー』とは言えないのである。これでは全く様にならない。

 

――それなら王が免許を取るまでの間、バイクの代わりとなる物を創り出せば良いのでは無いか?――

 

そう考えたイナゴ怪人達は、「どんな物なら王がライドするに相応しいか」を三日三晩かけて議論し、人知れず闇の中で実験を繰り返す事によって、遂に体育祭の前日と言うギリギリの時間で、ミュータントバッタを用いて馬を創造する事に成功したのである。

 

「……あっちゃん。“アレ”知ってた?」

 

「UBUVAAAU……」

 

「……そっか。やっぱり、知らなかったんだ……」

 

「よしッ! 行くぞ、皆の者ッ! 全ては王の悲願成就の為ッ!! 『ぶぉぉお~~~! ぶぉぉお~~~!』」

 

イナゴ怪人達がローカスト・ホースに跨がると、イナゴ怪人1号が時価6万円のホラ貝(俺の通帳から勝手に拝借。購入後に殴った)をどこからともなく取り出し、勇ましくも野太い音色を奏でる事で、イナゴ怪人達の士気を上げる。

ローカスト・ホースに跨がるイナゴ怪人の中には、発目が考案したパワードスーツを纏っている者も存在し、その姿は鎧武者の様に見えなくもない。

 

『そ、それじゃあ、行くぜ!? 残虐バトルロイヤル・カウントダウン!! 3!!! 2!! 1……! START!!!』

 

「行けぃ! ローカスト・ライダーズよ! ここからは、我々のステージだぁああああああああああああああああああッ!!」

 

「「「「「「WUWOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!」」」」」」

 

ローカスト・ライダー。つまりは、『175R【イナゴライダー】』のパクリ……いや、オマージュか。

 

そんな事を俺が頭の片隅で考える傍ら、イナゴ怪人1号の号令により、2号~ストロンガーの6騎のローカスト・ライダーが、フィールド内の鉢巻きを根こそぎ奪うべく、地鳴りのような蹄の音を響かせて一斉に駆け出した。

 

そんなイナゴ怪人達の背中を見た俺は、俺達の出番がもう少し後になる事を予感した。

 

 

〇〇〇

 

 

雄英体育祭・一年ステージ第二種目『騎馬戦』。それを見た観客、選手、視聴者、その全てが等しくこう思ったと言う。

 

違う。コレは、尋常の騎馬戦では無い。

 

コレは正に鎧武者が馬に跨がり戦場を駆け抜けた戦国時代。比喩表現などではない。これは文字通り、「合戦」の光景だッ!

 

「「「「「「WUWOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!」」」」」」

 

一方の選手達は、明らかに自分達と機動力が異なる上に、サポートアイテムで武装した怪人軍団をしっかりと見据え、本丸である1000万Pの前に、イナゴ怪人攻略の為の思考を高速で巡らせる。

 

どうする、一年生ッ!? どうなる、雄英体育祭ッ!?




キャラクタァ~紹介&解説

発目明
 病的に自分本位な発明少女。シンさんには自分の発明品のアピールの為に近づいたが、シンさんにコスチュームに関して卓越した才能と能力を持っている父親がいて、その父親が自分の研究所を持っている事。更にイナゴ怪人と言う何度でも替えの効く不死身の人型モルモットが完備と、ある意味で優良物件のシンさんに興味津々。
 ぶっちゃけた話、体育祭編以降の彼女の出番は今の所考えていない。しかし、『ジョジョ』第一部のディオとはベクトルが違うものの、手段を選ばない彼女に呉島家が侵略されてしまう日は近いかも知れない。

イナゴ怪人(V3&アマゾン)
 生き残った(?)イナゴ怪人。V3は口が上手い上に「勘違いも含めて全部、王の為に利用してやろう」と考え、アマゾンは「王ノトモダチ」を第一に考えている。実はアマゾンは初め、八百万を『乗っ取りローカスト』しようとしていたのだが、峰田がやらかした結果、悩みながらも八百万を助け、代わりに峰田を取り込むことを選択したと言う裏設定がある。
 ちなみに、仮に轟と八百万の二人が乗っ取られていた場合、「フリーザーショット」や「火柱キック」を放つイナゴ怪人V3と、武器を創造して「バイオレントブレイク」を使いまくるイナゴ怪人アマゾンが見られた事だろう。

ローカスト・ホース
 元ネタは『鎧武』の「サッカー大決戦!黄金の果実争奪杯!」で、仮面ライダーマルスが騎乗していた、イナゴの集合体である黒馬。イナゴ怪人達が努力の末に創り出した存在であり、厳密にはイナゴ怪人の様に、シンさんの“個性”から生まれた存在ではない。ただ、見た目こそ普通の馬だが、コイツ等もミュータントバッタの集合体である為、結局イナゴ怪人と同様に魔物染みた存在である事に変わりは無い。「メルメルメ~」とか「パルパルモ~ン」とか鳴いたりはしない。
 ちなみに作中の『175R』ネタは、『雄英ビッグ3』の一人である通形ミリオが、自身のヒーローネーム「ルミリオン」に『レミオロメン』を引き合いに出していた事が原因。これも単行本派の人には悪いと思っている。



雄英体育祭掲示板
 作者が一度書いてみたかった掲示板ネタ。名無し以外は全て、原作に名前ありで登場している人物。中には『THE FIRST』では登場しない予定の人物も含まれている。彼等は一体、何者なんだ……。

第二種目「騎馬戦」
 原作との相違点は、シンさんとぶりぶりざえもんを入れる為に、上位42名から44名に増えた事。ちなみに予選突破のメンバーは「原作+シンさん&ぶりぶりざえもん」の結果に落ち着いている。
 シンさんが介入した結果、通常の騎馬戦とは大きくかけ離れた様相を呈しており、「不死身の怪物を従える強大な力を持った魔王軍に、ヒーローの卵達が力を合わせて立ち向かう」と言った構図になっている。もしくは『HELLSING』の「零号を解放したアーカードVSアンデルセン」。いずれにせよ、シンさんのラスボス扱いは変わらない。

四本腕のシンさん
 元ネタはS.I.C.の「改造兵士レベル3」が、パーツの差し替えで四本腕に出来る事。このパーツはシンさんの方にも流用できるので、その気になれば「四本腕のシンさん」が誕生する。
 しかし、新しい能力として採用した結果、ますます化物染みてきた一方で、「四本腕でポテチを食べながら、テレビゲームをプレイするシンさん」の姿は、想像すればあまりにもシュールな気がする。



後書き
 これにて今回の投稿は終了です。騎馬戦は『雄英体育祭編』での、イナゴ怪人達の最大の見せ場とする予定ですので、この作品のイナゴ怪人ファンの読者さんは期待して待って貰えたらと幸いです。まあ、ポジション的には完全にヴィランなのですが……。

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