怪人バッタ男 THE FIRST   作:トライアルドーパント

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ふと、気がつくとお気に入り件数が2500件を突破し、更には通算UAも何時の間にか200000を超えていた(某ポルナレフ風)。
……と言う訳で、作者が日頃のご愛読へのファンサービスを目的として、職場体験編に入る前にワンクッションを入れようと思ったら、予想以上にクッションの部分が多くなってしまったので、今回も二話同時投稿と相成りました。次話から職場体験編へと入ります。

そして、今回のタイトルの元ネタは『ドライブ』の「黄金のドライブはどうやって生まれたのか」。『DXオーズドライバーSDX』から来た読者の方は、その温度差も含めてお楽しみ下さい。


第24話 黄金のホッパーはどうやって生まれたのか

結果論で言うなら、雄英体育祭の一年生ステージは、マスコミ連中の目論見通り……いや、ある意味でそれ以上の視聴率を叩き出す事に成功した。

 

地獄の釜の蓋が開いた様な暴力的でR指定待った無しの殺陣と、血と内臓が零れ出す阿鼻叫喚の絵面が、何度も何度も無修正で放送された事によって全国のお茶の間は凍り付き、それを見た子供達が絶叫・号泣・嘔吐・失禁・脱糞する事件が日本を超えて世界中の国と地域で同時多発的に発生。それは酷い場合は大の大人でさえ、夜になると怪人バッタ男の大虐殺ショーの悪夢に魘され、数十年ぶりの夜尿症を経験するという悲惨さであった。

 

そんな八面六臂の大活躍(意味深)を見せた『怪人バッタ男』には、様々な二つ名が付けられていた。

 

曰く、『雄英最恐の生物』。

 

曰く、『鬼神【オーガ】』。

 

曰く、『リアル蝗魔大公』。

 

曰く、『バッタのヤベー奴』。

 

そして――

 

「間違いない!! アレは『黙示録』に出てくる『奈落の王アバドン』!! うわああああああああああああああああああ!! 世界はもうおしまいだぁああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

これは、そんな恐怖の『雄英体育祭』から一日が経過してから始まる物語である。

 

 

●●●

 

 

雄英体育祭の翌日。雄英高校は本日を入れて二日間休校となっており、休み明けには「プロヒーローからの指名」と言う形で、雄英体育祭での頑張りが目に見えて反映される事となる。

 

そんな休日一日目となる本日の予定は驚くなかれ。昨日、俺は八百万と二人で父さんの研究所に行く約束を取り付ける事に成功し、今は待ち合わせ場所である駅前で八百万が到着するのを待っているのだ。

近くでは『終わりは近い』と書かれた段ボールを首から下げている、同年代とみられる金髪の女子が「備えよ~~~」と言いながら涙目でベルを鳴らし、宗教活動らしき事を行っているが気にしない。

 

そして八百万が来るまで手持ち無沙汰な俺は、ふと昨日イナゴ怪人が見せた件の掲示板がどうなっているのか気になり、スマホを取り出して調べてみた。すると――。

 

 

○○○

 

 

【雄英体育祭掲示板】ヒーローの卵の中に怪人がいる件について語るスレ№44

 

210:名無し

結局、誰一人としてあの恐るべき怪人に勝つ事は出来なかったな。

 

211:名無し

本当、嫌な事件だったな……。

 

222:名無し

放送局的には事件所か大災害レベルだろう。色んな意味で。

 

213:名無し

現段階で既に現役のヒーローや大抵のヴィランが霞んで見えるレベルの戦闘力だったが、コレが一年後にはどうなっていると思う?

 

214:名無し

>>213

腹からビームを撃てるようになっている。

 

215:名無し

>>213

幻覚を見せる事が出来るようになっている。

 

216:名無し

>>213

オーラを操る事が出来るようになっている。

 

217:名無し

>>216

新しいミュータントな生物を僕にしている。

 

218:名無し

どれもこれも有り得ないと言い切れない所が怖いな……。

 

219:主人を守る目

>>213

模倣したオールマイトの技の完成度が高まる。

 

220:ste-sama

>>213

オールマイト本人に見える様になる。

 

221:名無し

>>220

流石にそれはちょっと無いと思うが……。

 

222:名無し

>>220

もしそうなったら、眼科か脳神経外科に急げ、今すぐにだ。

 

223:浪速のフーセンデブ

戦闘能力に目が行きがちやけど、メンタルの強さにも注目すべきやろ。アレは相当心臓に毛ェ生やしとる。ウチでインターンしとる奴に見習わせたいわぁ。

 

224:ドラゴンレディ

仮に雇った場合、サイドキック一人分の給料で、実質サイドキック八人分の働きが出来るって事にも注目すべきじゃないかしら?

 

225:血飛沫炸裂ガール

ところで、皆さんにとっての彼のベストバウトは何ですか? 私としては、『騎馬戦』のイナゴ怪人虐殺か、『本戦・一回戦』の血塗れボディのどちらにするかが悩み所なのですが……。

 

226:ムッシュ・メラメラ

本戦・準決勝。哀しいなぁ……轟焦凍。

 

227:名無し

本戦・二回戦。実際に会場で見たんだけど、アレが“個性”じゃないってのが今でも信じられん。

 

228:はぶりん

私はテレビで見たけど、ちゃんと見えたわ。究極のパントマイムって多分あんな感じね。あと、私としてはどれも一番って感じかしら。

 

229:ste-sama

本戦・一回戦。バッタ怪人からヒーローへの『変身』。実に良かった。

 

230:じしゃっく♡乙女

全部がベストバウトよ。常識という名の鎖を、これでもかと引き千切る戦いっぷり……嫌いじゃ無いわッ!!

 

231:全は一、一は僕

決勝戦。正に総力戦と言った戦いぶりだったが、あの分だとドンドン引き出しが増えていく事は容易く予想できる。いずれ彼は世界の運命を賭けて、想像を絶する様な巨悪と対決する事になるだろう。

 

232:主人を守る目

>>231

私もそう思う。そしてその戦いの勝利者こそが、この世界の“新しい象徴”となるに違いない。

 

233:名無し

>>231 >>232

何でだろう。それって「勝った方が俺達の敵になる」ってだけの様な気が……。

 

234:名無し

そうなれば、もはや神だ。そして我々人間は神にだけは勝てない。服従しか無いんだ……。

 

235:名無し

>>234

神と言うよりは魔王だろ。色んな意味で。

 

236:名無し

そう考えると、『敵連合』が負けたのは当然だわな。むしろ、アレを相手によく戦ったと言うべきか?

 

237:名無し

>>236

ヒーローの巣窟と思いきや、実は怪人の跋扈する魔窟だった訳ですね。分かります。

 

 

○○○

 

 

「………」

 

いやはや、大変な反響である。しかし、ずっと怪人の姿で暴れ……もとい、活躍していた為か、人間の姿をしている俺を見ても誰も騒いだり、指を指してキャーキャー言われたりする事もない。仮にこの場で怪人の姿になったが最後、ライオンがインパラの群れに飛び込んだかの様な大パニックが起こるだろうが……。

 

「おい、あの子って雄英の……」

 

「そうだよ! あの怪人と戦った子だよ!」

 

「凄いよね。私なら速攻で逃げ出しちゃう……」

 

はて? 何やら騒がしくなってきたな……と思ってスマホから声のする方に視線を移動させると、私服姿の八百万が此方に向かって手を振って歩いてきていた。ソレに対して俺も手を振って返すが、やはり八百万の様に優れた容姿と実力を兼ね備えている人物は、メディアに出ると大衆からの受けが良いらしい。

 

「お待たせしました。呉島……」

 

「すみませんッ!! 突然ですが、貴方は『神』を信じますかッ!?」

 

「え!? いや、あの私は……」

 

「お願いしますッ!! 貴方の幸せの為に祈らせて下さいッ!! 世界が終わりを迎えるその前にッ!!」

 

「え!? ああ、は、はい……」

 

「………」

 

何と言う事だ。何を思ったのか、宗教女子は進退窮まった様な表情で八百万に自身の祈りを要求すると、八百万はそんな彼女の提案を断る事が出来なかった。流石は押しに非常に弱い上に、頼まれたら断れない系女子の八百万だ。実に将来が不安になるメンタルである。

 

結果、俺は宗教少女の祈りが終わるまで、約5m先にいる八百万を更に40分ほど待つ羽目になった。

 

 

●●●

 

 

予定よりも大幅に遅れたものの、無事に父さんが日夜コスチュームの研究・開発に勤しんでいる研究所に到着した。

今回は体育祭で新しく獲得した様々な能力の性能をテストした他、八百万のアドバイスを交えて、自分の持っている知識と技量を高めるべく、三人でディスカッションを行っていた。

 

「調べた結果、イナゴ怪人の言う通り、新が八百万君との戦いで手に入れた能力は“触れたモノを分子・原子レベルで分解・再構成できる”で間違いない。ジャージから作った強化服が見てくれだけのハリボテだったのは、新がその構造をよく知らなかったからだろう。もっとも、この場合はそれが功を奏したとも言えるがね」

 

「ヒーロー科がコスチューム着たら反則になるからな……」

 

「その点は私の“個性”と似ていますわね。私の『創造』も対象となる物の構造を正確に把握していませんと、見せかけだけの偽物しか作れませんの」

 

「しかし、逆に言うなら形状や材質、そして構造等を把握していれば何でも作れるし、幾らでも作り直すことが出来ると言う訳だ。ならば、『仮面ライダー』は更なるステージに進む事が出来る様になる」

 

そんな事を口にした父さんがキーボードを叩くと、モニターに『HOPPER-VersionⅩ』と名付けられた、新しいコスチュームらしき物の設計図が表示された。

 

「これは?」

 

「“変身ヒーロー『仮面ライダー』”。その為に必要な強化服、つまりはコスチュームの理想とした最終形態は“完全なる全局面対応型”。陸上は勿論の事、水中、空中、果ては宇宙と言った“ありとあらゆる状況と環境での活動”を想定したものだった。

例えば試作機の『強化服・伍式』は水中での活動を。製作中の『強化服・八式』は空中での活動を。そしてその次に製作する『強化服・九式』は宇宙空間での活動を想定して設計したものだ」

 

「つまり“如何なる災害や事故にも対応する事ができる”と言う訳ですわね」

 

「その通り。そして『拾式』はそれら全てが集約した“強化服の完成形”。つまるところ『一式』から『九式』までの強化服は、この『拾式』を造る為のプロトタイプに過ぎないと言う訳だ。

たが、やはり特定の状況に特化したそれぞれの強化服と比較すると、どうしても『拾式』の性能はそれらよりも見劣りしてしまう。だが、新が八百万君との戦いで得た能力……仮に『モーフィングパワー』と呼称するが、この能力があればそれらの問題は解決する」

 

「どうやって?」

 

「『拾式』に『一式』から『九式』までの強化服のデータを内蔵し、そのデータを元にして新がモーフィングパワーで強化服を分解・再構成するんだ。その時々の状況に応じてね」

 

「……つまり、一着のコスチュームで合計10通りの形態に変化する?」

 

「その通りだ」

 

ソレは凄い。オールマイトの様に「ゴールデンエイジ」や「シルバーエイジ」と言った具合に、活躍した時期でコスチュームが変化しているヒーローは存在するが、その場で臨機応変にコスチュームを変化させるヒーローは今も昔も存在しない。仮に実現したとするなら正に『変身ヒーロー』だ。

 

……ただ、一つだけどうしても言わせて欲しいことがある。

 

「コスチュームの機能については分かったんだが、その『拾式』の“全身が金ピカで黒マント”って言うデザインは、何と言うかこう……ラスボス臭いデザインだと思うんだけど」

 

「そうかい? 私としては最終形態に相応しいデザインが良いと思って、全身を金色にしてみたんだが」

 

「………」

 

いや、せめて「いぶし銀」とか「ツヤ消し銀」とか、そんな感じの少し抑えた感じの金色だったならまだ賛成できた。しかし、こんなギンギラギンな感じで、青山のキラキラ☆コスチュームの1000倍はド派手なゴールデン……いやGOLDENなコスチュームは、俺の基準からすると流石に“ナシ”だ。

 

まあ、確かに父さんの言う事も分からなくはないのだが、コレを着ていたら最終的に仲間に裏切られた挙げ句、脱出不可能な牢獄に半永久的に封印されそうな感じがする。何故そう思うのかは分からないが、多分野生の勘というヤツだろう。

 

「……八百万はどう思う?」

 

「そうだね。ここは一つ、第三者の意見を聞いてみよう」

 

「え!? わ、私ですか!?」

 

突然のキラーパスに動揺する八百万。意見が二つに割れた今、八百万の発言が俺の今後を左右すると言っても過言では無いが、ここは幼少時から高い教養を受けたであろう、八百万のセンスを信じるのが吉だろう。

 

「わ、私としては、その……今風の色彩と言いますか、一周回ってヒーローっぽいと言いますか……要するに、その……こうしたカラーリングも“アリ”だと思いますが……」

 

「ほら見ろ新。やはり今のヒーローの最終形態は、キングでエンペラーな風格と、エクストリームでグレイトフルでハイパームテキな雰囲気を醸し出すゴールドを基調とするのが正解なんだ。仮にコレが赤をベースにした色合いにした場合を想像してみろ。精々、『赤いの!』とか言われて殆ど印象に残らないのが関の山さ」

 

「………」

 

俺は出来る事なら反論したかった。しかし、2対1と言う状況下では分が悪く、確かにこの方が今のヒーローっぽいと言われれば否定しにくい所がある事も事実なので、俺は二人に対して何も言わない事にした。

 

かくして、俺のコスチュームの最終形態(予定)の『強化服・拾式』のデザインは「金ピカ黒マントのバッタ」に決定。父さんは『八式』の完成を急ぎつつ、『九式』の開発と『拾式』の核となる「メモリーキューブ」なる部品の製作を同時進行でおっ始め、俺は八百万の指導の下、モーフィングパワーの練習を開始した。

 

「私が物を作る工程としましては、最初に“必要なパーツの列挙”。次に“物の素材選び”。三番目に“組み立て”で、最後に物によっては“塗装”です。これらを頭の中でイメージしてようやく一つの完成品が出来るのですが、大きい物や複雑な物を作る程、長い時間が掛かりますわ。それが複数となると更にです」

 

「俺と八百万の違いは『体内の物質から作る』か、『体外の物質から作る』か……って所か?」

 

「そうですね。私の場合は体内の脂質を様々な原子に変換して物を作っていますわ。それと練習を繰り返していけば、特に何も考えなくても物を作る事が出来る様になります。現に私はマトリョーシカなら何も考えずに作る事が出来ますし」

 

「マトリョーシカねぇ……」

 

「ええ、幼い頃に練習で作っていまして」

 

「取り敢えず簡単……と言うか原始的な物は作れるから、もう少し複雑な物を作る所から始めるのが良いかな? 例えば、輪ゴム鉄砲とか」

 

「……そうですね。『複数の物質から出来ている簡単な構造の物』から作り始めるのが良いかも知れません」

 

かくして、俺は八百万が見つめる中、モーフィングパワーを使って自分の頭に思い浮かんだ簡単な構造の道具や玩具を作り続けた。市販品と何ら変わらない完璧な出来派映えの傑作から、見ていて心が不安になる前衛芸術の様な代物まで、俺の作った物の完成度は様々だが、自分が段々と能力に慣れてきているのは、確かな手応えとしてしっかりと感じている。

幸い、八百万と違って一つのモノを何度でも作り直す事が出来る為、研究所の一角にガラクタの山が出来る……と言った事にはならずに済んでいる。

 

「ふと思ったんだが……八百万って構造さえ理解していれば何でも創れるんだよな?」

 

「? ええ、ソレが何か?」

 

「いや、何と言うか“現実に存在する物以外”も創れるのかな……と思って」

 

「“現実に存在する物以外”と言いますと、例えば?」

 

「例えば、原理的には現代の科学でも実現可能な『荷電粒子砲』とか」

 

「『荷電粒子砲』……ですか。可能か不可能かで言えば“可能”かも知れませんが、よしんば出来たとしても実用性はあるんでしょうか?」

 

「………」

 

言われてみれば確かにそうだ。創る事ばかり考えていたが、実際に使うとなれば荷電粒子砲なんて一体何に使えると言うのか。少なくともそんじょそこらのヴィランを退治する為には使えない。

 

「い、隕石の破壊……とか?」

 

「! なるほど! 来たるべき宇宙時代の事を考えていらっしゃったのですね!」

 

いや、そんな事は全然考えてない。実際の所は平和的な利用方法を考えた末のデマカセ紛いのアイディアだ。しかし、八百万は我が意を得たりと言った感じのキラキラした表情で俺を見ている。

 

「それならば、お手伝いするのも吝かではありませんわ! 私が必ず、呉島さんが『荷電粒子砲』を作る事が出来る様に、精一杯助力して差し上げますわ!」

 

「……ああ、よろしく」

 

本当は全然違うけど、張り切ってる八百万がカワイイから良いか。うん。

 

 

●●●

 

 

休日二日目。今日も今日とて俺は、人間の姿で堂々と町に繰り出していた。

 

道を行く誰もが俺を見て普通に素通りしていく。誰一人として、俺が世界中を恐怖と混乱のどん底に叩き落し、放送禁止レベルのトラウマ映像を際限なく生み出した『怪人バッタ男』だとは夢にも思っていない。

そんな事をしでかしたとなれば、普通は休み明けに発表されるプロヒーローからの指名がどうなっているか気になる所だろうが、俺の場合は少なくとも指名数が0と言う事はない。何故なら俺にはMt.レディと言うコネ……もとい、希望があったからだ。

 

『体育祭見たわよ。優勝おめでとう! 職場体験では貴方に指名入れるから、覚悟して頂戴♪』

 

昨夜、Mt.レディ本人からそんな電話を貰い、明日は全く気後れする事無く学校に登校できる俺の気分は正に上々。ここは一つシャレオツなカッフェで優雅な一時を……と思っていたら、見知った顔を発見した。

 

梅雨ちゃんだ。しかし、一人では無く二人連れで歩いている。

 

スカートを履いているから相手は確実に女子。そして私服なので分かりづらいが、恐らくは同年代……だと思うのだが、顔が完全に蛇のソレなので断言は出来ない。

 

そんな事を考えて二人を見ていると……何たることぞ、何の前触れも無く梅雨ちゃんがイキナリ後ろに倒れたではないか! その光景は正に……蛇に睨まれた蛙ッ!!

 

「梅雨ちゃぁあああああああああああああん!?」

 

「あら。こんにちは、シンちゃん」

 

「あ……うん、こんにちは」

 

……どうやら、思ったよりも梅雨ちゃんは大丈夫らしい。立ち話も何だと言う事で、近くのファミレスに入ると、二人の口から事の真相が明らかとなった。

 

「え? 梅雨ちゃんの中学校からの友達?」

 

「万偶数羽生子よ」

 

「びっくりしたでしょ? この子の“個性”、睨んだ相手を弛緩させる事が出来るのよ」

 

「コントしてたの。題して『蛇に睨まれた蛙』」

 

「そうか……」

 

正直、ツッコミ所は多々あるが、全て二人の友情の形と言う事で納得しておこう。友情の形は人それぞれだろうし。

 

「羽生子ちゃん。この子がクラスメイトのシンちゃん。今噂のバッタさんって言った方が分かりやすいかしら?」

 

「……そうね。正直、梅雨ちゃんじゃなかったら、噂の『怪人バッタ男』だなんて言われても信じなかったわ。上手く擬態してるのね。バッタだけに」

 

「………」

 

「体育祭の中継も見てたケド、正直一番輝いてたわ!! カッコイイじゃない!! 連絡先教えなさいよ!! それと私もシンちゃんって呼んで良い!?」

 

「……ああ、うん。良いよ」

 

相変わらず表情と真意は読めないが、取り敢えずこの女子の性格は「ツンデレで不器用」と言う認識で良さそうだ。まあ、梅雨ちゃんと仲良しなんだから、悪い子ではないのは当然だろう。

そんなこんなで、羽生子ちゃん(そう呼んでと言われた)と連絡先を交換し、三人で甘い物を食べながら和気藹々と話し込んでいると、意外な人物がファミレスに来店したのが見えた。

 

「……アレ?」

 

「? どうしたの?」

 

「あの女の子、昨日駅で八百万に『貴方の幸せの為に祈らせて下さい』って言ってた人だ。もう一人のインド人みたいな人は知らんケド」

 

「胡散臭いわね。他にも『幸せになる壺』とか売られたんじゃないの?」

 

「いや、何も売られては無いし、買ってもいないが……」

 

そんな会話を三人でしていると、そんな奇妙な組み合わせの二人組が、俺達のテーブルから植木鉢を挟んだテーブルに座った。どうも女の子の方は俺に気づいた様子が無いので、彼女達がどんな人物なのかを見極める意味を込めて、このまま静かに聞き耳を立てる事にした。

 

「いよいよ……地上最後の革命の時が迫りましたねえ!」

 

「はあ……?」

 

「来たるべきモノが来たと申しておるのです」

 

「? 何のことでございましょう」

 

「『怪人バッタ男』の事ですよ」

 

「と……おっしゃいますと?」

 

「来たるべき時代に“東方に神童が現われて世界を一つにする”と言う事は、一万年も前から神秘学界に繰り返し予言されていた事なのです」

 

「神秘学……やっぱり胡散臭い連中じゃない」

 

「いや、そうとも限らない。超能力者やUMA、魔女や聖人、悪魔や妖怪と言ったオカルトの正体は、『大昔に“個性”が発現した人間である』とも言われていて、今の神秘学は表向きは立派な“個性”研究の学問だ。胡散臭いと判断するのはまだ早い」

 

一般的にこの世で最初に“個性”が確認されたのは、中国軽慶市の『発光する赤子』だとされているが、“個性”を研究する学者の間では、「それ以前に“個性”が発現した人間が存在していた」と考えている人が大勢居て、「聖人や悪魔は“個性”が発現した人間の事なのではないか?」とも言われている。そして何を隠そう、俺の父さんもそう考えている一人だ。

 

それにしても、話題がよりにもよってこの俺であり、しかも俺が『東方の神童』だと? 俺が言うのも何だが、ぶっちゃけ間違っても『神童』なんて柄じゃないと思うのだが……。

 

「昔から言われている『東方の神童』が、果たして怪人バッタ男であるかどうかと言う事は、彼の今後の行動を見なければ分かりませんが……早くも世界の注目を浴び、表の世界の権力者や実力者達は勿論の事、今まで人目を避けていた裏社会に君臨する巨頭連までもがボツボツと動き出しているのです。小耳に挟んだ話では、アメリカやイスラエルが既に腰を上げているとの噂ですよ」

 

「しかし、どうして彼がそれほど色々な方々に注目されているのです?」

 

「今でこそ“個性”と言う名前で一般に浸透していますが、超常の力というモノは本来、昔の皇帝が徹底的に弾圧しなければ自分の地位が危うくなる程の恐ろしい代物なのです。現に現代でも小国に強力な“個性”を持って生まれた者が一人でも現われれば、場合によっては大国とも対等に渡り合う事が可能となります。それこそ極端な事を言えば、その人物がヒーローになろうがヴィランになろうが、その点だけは同じ事です」

 

「なるほど」

 

「今より遙か昔、そうした人知を超えた超常の力が目覚め、異端の烙印を押されて迫害された者達は密かに各地から集い、自身に宿った超常の力を操る術を研究・発見すると、それは闇から闇へ、秘密から秘密へと受け継がれていき、その技術は時代と共により洗練されていきました。

そうやって何千年と秘伝を受け継いだ技術は、傍から見れば森の人が爆弾を見て驚くのと同じように、我々には全く意外な術に見えるでしょう。しかし、それらは“個性”が身体機能の一つであると解明された通り、我々の知らない自然の摂理や人体の構造を利用するモノなのです」

 

「なるほど……」

 

「ユダヤ、インド、マヤ、メソポタミヤ、中国……と、それぞれの地域で独自の発展と発達を遂げ、継承されてきた何千年来の秘術は……“ただ一つの野心”を満たす為に使う時を、今も人知れず待っているのです」

 

「ただ一つの野心?」

 

「それは悪い言葉で言えば……『世界征服』。良い言葉で言うなら、人類の究極の目的である『千年王国』を創造する事です」

 

「それは悪い事ではなさそうですね」

 

「………」

 

いや、その理屈はおかしい。

 

冷静になって考えてみろ。『世界征服』だろうが、『千年王国』だろうが、それは少なくとも現在の国家をどうにかすると言う事だ。いずれにせよ、そんな事を本気でやらかそうと企んでいる奴は「国家転覆を目論んでいる危険人物」と言う事に変わりは無い。

 

「しかし……どんな秘術も使い手によっては白くも黒くも染まります。例えば『地上に楽園を創るのだ』と言って、自分の利益の為だけに力を使う様な人達が、善良な大衆を利用したとしたらどうでしょう? 出来てみたら『一部の人達の楽園』にしか過ぎなかったとしたら……?」

 

「なるほど!」

 

「何時も馬鹿を見るのは善良な貧乏人です! そう言う事は昔から心ある人々の胸を痛めてきたことです。現在の世界を見てみなさい! 多くの人の働くエネルギーが国家という壁がある為に無駄に使われている! このままでは何時までも世界は争い、貧乏人は惨めな一生を送らなければならない!

例えば人は同じように働いていながら……自宅に大きなプールを持った人がいると思えば、何万人という子供達がプール無しで困っている……と言った具合なのです!」

 

「「「「………」」」」

 

「今此処に、ずば抜けた能力を持った一人の人が現われて、その強力な力でこの不浄に満ちた悪魔の支配する世界を粉砕し、悪の無い世界平等の地上天国を実現すればどうでしょう? その人こそ人類が待ちに待った『東方の神童』なのです!」

 

「悪の無い世界平等の地上天国……? つまりは『救世主【メシア】』!?」

 

「まあ、そう言う見方も出来るでしょう。そして実は私は、神秘学に造詣の深いインドの首相から“怪人バッタ男が本当に『東方の神童』であるか確かめてこい”と言う密命を受けて来日し、事情を詳しく知る為に現地の協力者を探していた……と言う訳なのです」

 

「しかし、どうして東方……つまりは日本にそんな強力な力をもった人物がいずれ現われると信じられていたのでしょうか?」

 

「それは昔から優れた超常の力を操る術を持った能力者達は、誰もが密かに日本に渡って最後の研究に励んでいたからです。だから、昔の高名な能力者は皆、日本で亡くなっています!」

 

「何ですか? 最後の研究って……」

 

「『自然界のエネルギーを操る』事です! コレが超常の力を操る技術において、最高であり究極なのです! そして世界中で日本がソレを習得するのに最も適しているのです!」

 

「どうしてその『自然界のエネルギーを操る術』とやらに、そんな大きな価値があるのですか?」

 

「超常の力。つまり“個性”が身体能力の一つである以上、自分一人の力ではそれを使うエネルギーに限界があります。しかし、『自然界のエネルギーを操る技術』を身に付けたなら、自然界が持つ無限に等しいエネルギーのバックアップを得る事が出来、更には自然界に存在するあらゆるパワーを身に付ける事が出来るようになると言われているのです。

そして仮にソレが出来たとするなら、世界中に自分のパワーを血管の様に張り巡らせ、世界の隅々にまで影響を及ぼすことも可能となります。そんなパワーを意のままに用いる事が出来れば、その人は世界を手に入れたも同じではありませんか……!」

 

「しかし、それが悪い方に使われると世界は破滅ですね」

 

「そうです。そして怪人バッタ男が本当に『東方の神童』ならば、我々は彼を助けてやらなければなりません」

 

「何故……?」

 

「それは、『千年王国』を創れる人間が『東方の神童』だけだからです。この国を含めた巨頭連中は自分達でその絶大なパワーを手に入れ、自分達で世界を自由にしたがっていますからね!

もしも怪人バッタ男が『東方の神童』で、『自然界のエネルギーを操る技術』を手に入れた場合、彼等の何千年の秘伝が一瞬でフイに成り、彼等は世界の王にはなれません……」

 

「しかし、具体的にはどうすれば彼が『東方の神童』だと判断できるのですか?」

 

「『東方の神童』に関する予言や伝説は様々で、半分は作り話かも知れませんが……恐らく怪人バッタ男は『千年王国』を建国するにあたり、『十二使徒』を集めると思われます」

 

「十二使徒?」

 

「十二使徒とは、『東方の神童』によって呼び出され、肉体を与えられ、『千年王国』の建国を手助けすると言われる“十二人の忠実な僕”の事です。まあ、立派な召使いとでも申しましょうか……」

 

「………」

 

十二使徒。『東方の神童』に呼び出され、肉体を与えられ、手助けをする“十二人の忠実な僕”ねぇ……。

ぶっちゃけ、コレに関してだけは心当たりが有り過ぎる。と言うか、条件に合致する存在が既に7体もいる。もっとも、得体の知れない改造を施した寄生虫の卵を、ドサクサに紛れて飲ませるようなヤツ等を忠実と言って良いのかは分からんが……。

 

そんな実に判断に困る連中の事を考えていると、昔のアニメの主題歌のような着メロが鳴った。音の発信源は怪しげなインド人だ。

 

「おや? どうやら急用らしい! それでは私の連絡先を教えておきますので、私に何か用があったら連絡をして下さい」

 

「はあ……では、失礼します」

 

怪しげな会話は終わり、二人は観察対象が至近距離に居た事に気づくこと無く、スタスタとファミレスを後にした。

 

「……俺達も帰るか」

 

「そうね。そうしましょ」

 

「ケロ」

 

正直、楽しいお茶会を楽しもうと言う雰囲気も、それをするだけの気力も完全に無くなっていた。思っていたよりも話のスケールがデカかった上に、その話の中に世の中の真理を突いている部分があった所為だろう。要するに白けてしまったのだ。

 

しかし、悪い事ばかりでもない。俺は「ありとあらゆるエネルギーを吸収して進化する能力」を持っている。ならば、彼等の言う「自然界のエネルギーを操る技術」とやらも体得できる可能性は充分にある。色々とぶっ飛んだ内容の話だったが、自分をパワーアップさせる技術の存在を知れただけ、今日の出来事はプラスになったと思おう。

 

「何か変な感じになっちゃったな」

 

「……でも、昔から心ある人達は、病気の人やお年寄りや、色んな不幸を背負っている人達が、普通の人と同じような生活が出来る世界を創ろうとしていたわ。イエス様も、お釈迦様も、マルクスも、それぞれの方法は違っているけど、根本にある考え方は皆同じよ。

世界が一つになって、貧乏人や不幸の無い世界を創ることは、遅かれ早かれ誰かが手をつけなきゃいけない“人類の宿題”なんじゃないかしら……」

 

「……それなら本当に俺達でそんなヒーローを目指してみるか? そうなれば俺は『救世主・バッタ男』で、梅雨ちゃんは『第一使徒・蛙女』になるケド」

 

「なら私は『第二使徒・蛇女』ね」

 

「ハハハ……」

 

「ケロケロ……」

 

誰かが手をつけなきゃいけない“人類の宿題”……か。俺としては「自分の“個性”で生き辛い思いをしている人達の『希望の象徴』」になれればそれで良いんだけど……。

でも梅雨ちゃんや羽生子ちゃんと一緒にヒーローをやるのは面白そうなので、そこは実現させても良いかも知れない。

 

そして、二人と別れた後に、羽生子ちゃんからラインで「サプライズで梅雨ちゃんの誕生日を祝いたい」と来たのだが、俺が「2月の予定を今から考えるなんて気が早くないか?」と返したら、それ以来羽生子ちゃんから返事が返ってこなくなったのは、梅雨ちゃんには内緒だ。




キャラクタァ~紹介&解説

呉島新
 前回までの活躍が、日本どころか世界各国で様々な話題と憶測を呼び、密かにドエライ事になっている怪人。そして自身の目指すヒーローになる外堀よりも、どこぞの『大首領』や『魔王』や『救世主』となるルートの方が、知らず知らずの内に出来上がってしまっている。
 ところで、「大自然のエネルギーを取り込んで、その力を己が物とする」事で、強大な力を得る事が出来たバッタの怪人と言えば……?

ZO「出番かッ!!」
シンさん「………」

呉島真太郎
 前話に引き続き今話も登場。「コスチュームの開発秘話が見たい」と言う感想に対する、作者のファンサービスその1。コスチュームこと強化服の完成形が“ありとあらゆる環境とトラブルに対応する事”なので、地球上は元より宇宙空間さえも『仮面ライダー』の活動範囲と考えていた凄ェ親父。しかし、やっている事がどこぞの『大首領』と似ているとは気付いていない。気付く筈も無い事なんだケド。

八百万百
 今回、第17話の伏線回収を担当。そして「八百万ヒロインが一番良い」と言う感想に対する、ファンサービスその2。人から頼られると嬉しくなって頑張ってしまうカァイイ性格によって、シンさんがモーフィングパワーで荷電粒子砲を創る事が出来る様になる為、全力でシンさんの力になろうとしている。それが余計にシンさんのラスボス化を助長させてしまっているのだが……。
 考えてみれば、八百万もその気になれば荷電粒子砲を“個性”で造れそうな気がするが、実際に造った所で実用性があるかと言われれば……と言った所ではある。将来的に『強化服・九式』を纏ったシンさんと一緒に、月面や火星で宇宙開発に使うのが、唯一の平和的有効利用なのかも知れない。

蛙吹梅雨
 原作者のプロットでは蛙男になる筈だった蛙女。その没設定の所為で『悪魔くん 千年王国』に登場する蛙男を元ネタにした話が、連載を開始した時から既にアイディアとして存在していたケロイン。そして彼女の誕生日は2月12日。決して6月ではない。
 今回は下記の羽生子ちゃんと一緒に登場。バッタ・蛙・蛇と、一見すると「三竦み」っぽい感じが出ているが、実際にこれをやったらバッタが蛙と蛇の挟み撃ちになってしまうのはご愛敬。まあ、シンさんの場合、どちらも返り討ちにして喰ってしまいそうなイメージがあるが……。

万偶数羽生子
 満を持して登場した、とっても怪人っぽい蛇な女の子。必然なのか偶然なのか、体育祭で大活躍(意味深)したシンさんに直接出会ってテンションは結構高め。本編には一切登場していないキャラクターだが、原作第10巻に収録されている番外編や、『すまっしゅ!!』を読んだことのある読者ならば、今話の元ネタも容易く分かるだろう。
 所で今回「自然エネルギーを操る技術」の存在が仄めかされた訳だが、“蛇が自然エネルギーを身に付ける”となると、ジャンプの読者的には全然忍んでない某NINJA漫画が脳裏をよぎるが、果たして……。

羽生子「完全な仙人の力は蛇を脱皮し……龍へと昇華したのよぉおおおおおッ!!」
シンさん「………」

宗教活動をしていた少女
 今回だけの一発キャラ(の予定)その1。“個性”による終末論の事をあらかじめ知っていた事も相まって、シンさんを『黙示録』に登場する「奈落の王アバドン」の化身だと思い込み、一人街頭で「世界の終末が迫っている」と警鐘を鳴らし続けていた。そして彼女の推測はあながち間違いだと言い切れないのが怖い所である。
 元ネタは『マンガでわかるFGO』シリーズに登場するジャンヌ・ダルク。ちなみに相手の真名を見抜くスキルは持っていないが、サポート系の効果を発揮する“個性”を持っていると言う設定。後、彼女には黒い妹が二人ほどいるらしい。

怪しいインド人
 今回だけの一発キャラ(の予定)その2。見た目はあからさまに怪しいインド人だが、その正体はスゴ腕(?)の諜報員。「予言の類いもまた“個性”によるものである」と言う神秘学の考えの元、シンさんが伝説の『東方の神童』なのか調べにやってきた所で、上記の宗教少女を発見。同士として勧誘するに至るが、そのシンさんが至近距離にいた事には全く気付いていない。
 元ネタは『悪魔くん 千年王国』に登場する呪医フラン・ネール。決して『悪魔くん(山田版)』に登場するインド人の魔法使いパコダではない。だから「世界金持ち連盟」とか言う、頭の悪そうな名前のスポンサーも存在しない。イイね?



雄英体育祭掲示板・ファイナル
 好評につきまたもや掲載された、作者のファンサービスその4。色々な意味でこの作品の未来を暗示する内容になってしまったが、作者が今後の作品の展開に対する伏線を張るのは何時もの事なので、特に違和感はない……筈。

強化服・拾式
 呉島真太郎が考える強化服の最終形態であり、現在は試験的な設計図だけが出来ている。『序章』から登場している『強化服・一式』や、まだ日の目を見る事が無い『強化服・九式』を含めた9つの強化服から得られたデータを元に、装着者であるシンさんとの“99%の同調と1%の抵抗”を目的とした『パーフェクト・バトルスーツ』。その為、素手でも充分に強いのだが、全身に様々な武器を搭載している上に、下記の「メモリーキューブ」による特殊変身が加わった所為で、もはや誰にも手に負えないレベルに……。
 元ネタは小説『仮面ライダー 1971-1973』の強化服と、『仮面ライダーSPIRITS』の「仮面ライダーZX」。「他の昭和ライダーへ変身する」と言うZXの没設定も採用したが、カラーリングが金ピカなので見た目はもはや「バッタがモチーフの『大首領JUDO』」。ある意味では、世界最古の等身大ヒーローにして、和製スーパーヒーローのご先祖でもある『黄金バット』への原点回帰と言えるかも知れない。

メモリーキューブ
 上記の『強化服・拾式』の重要機関。最終的に『強化服・一式』から『強化服・九式』までの強化服のデータが入力され、これにモーフィングパワーが加わる事で、『強化服・拾式』を『強化服・一式』から『強化服・九式』までの、9つの強化服に変形させる事が可能となる。また、装着者であるシンさんの戦闘データも新しく入力されていくので、『強化服・拾式』も戦えば戦うほど強くなっていく。
 元ネタは『仮面ライダーSPIRITS』に出てくる「メモリーキューブ」。元ネタでは村雨良が大首領JUDOの支配から逃れる為に使われた後、その大首領JUDOの手によって現世への復帰に使用されると言う、何とも皮肉な結果になってしまった代物。『ドライブ』的には「バンノドライバー」が脳裏をよぎる読者も居るかも知れないが、それは多分気のせいだ。

千年王国
 アナザールートのシャドーシンさんが掲げる『ゴルゴム帝国』とは似て非なるモノ。『ゴルゴム帝国』が「世界に忌み嫌われし者達の楽園」ならば、『千年王国』は「誰もが幸福になれる地上天国」と言った所。もっとも“国家を一つにまとめ、世界を統一する”と言う点を考えると世界征服と何ら変わらない為、傍から見ればこの二つにそれほど差は無いのかも知れない。
 元ネタは勿論『悪魔くん 千年王国』。妖怪水木ジジイこと、水木しげる先生が「こんな腐った世の中をぶっ壊せるのは悪魔しかいねぇ!」と言う考えで書いた作品らしいが、作中である登場人物が「現代の社会は悪魔が最も生きやすい世界だと言う事だ」と発言している為、その真意は不明。

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