怪人バッタ男 THE FIRST   作:トライアルドーパント

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二話連続投稿の一話目。そして、9月に投稿した短編作品の『Fate/After Zero』で、「ガチャで酒呑が出たら続きを書く」と宣言していた訳ですが、その結果を此処で発表したいと思います。

ガチャ宗教のロマンを求め、作者が「書いたら出る教」の他にも「深夜2時教」・「最終日に回す教」・「フレポ教」を試しに組み合わせた所……400回やってもフレポガチャで星3鯖が出ないと言う予想外の事態が発生。
仕方ないので、フレポガチャで入手した大量の種火を使って「大成功教」を組み込む形に変更し、10連ガチャ+単発ガチャ10回の合計20回のガチャを回して見たところ……。

作者のカルデア
茨木(槍)「酒呑こい! 酒呑こい!」
源頼光✕2「「あらあら、まあまあ」」
茨木(槍)「ギャアアアアアアアアアアッ!!」

……と言う訳で、ユルセンボイスのロリ鬼は出ませんでした。でも、マルフォイ……じゃなくて、ケイネス先生のリキッドメタルな礼装も出たから良しとしよう。……本当に、引きが良いんだか悪いんだか。

そんな訳で、今回は期末試験編。そして今回のタイトルの元ネタは『ビルド』の「最終兵器エボル」。理由は読めば何となく分かるかと。

2018/11/9 誤字報告より誤字を修正しました。報告ありがとうございます。

2020/10/26 誤字報告より誤字を修正しました。報告ありがとうございます。


第33話 最終兵器シンさん

遂に高校一年の夏と言う、二度と戻ってこない青春時代が天国になるか地獄になるかの命運を分ける期末試験が始まった。

取り敢えず、筆記試験については、最大の問題であった上鳴と芦戸の二人は八百万のお陰でかなり手応えがあったらしく、俺を含めて他の面々も少なくとも赤点は無さそうだった。

 

「それじゃあ、白黒ハッキリ着けようかA組ィイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!」

 

「B組の物間! 相変わらず気が触れてやがるぜ!」

 

「キチガイヒーローって、路線としてはアリなのか?」

 

そして、いよいよ「未知の境域」と言える実技課題の演習試験となった訳だが、コスチュームを着て待機しているのは俺達A組だけではない。B組の面々もまたコスチュームを着込んだ上で整列しており、相澤先生とB組の担任であるブラドキング先生の二人から話されるだろう試験の説明を待っていた。

 

……あん? 演習試験の攻略を目的とした特訓はどうかったかって?

 

そんなの、実技試験が入試と同じロボット戦闘だから、生物系バイオレンス戦闘マシーンと模擬戦をする必要が無いと思ったからか。はたまた、イナゴ怪人・ハザードフォームとロボ爺の戦闘を見て恐れ慄いたのかは知らないが、俺の家には誰一人としてこなかった。

強いて何かあったとすれば、八百万が先日の俺の誘いを覚えていた様で、その事に対する断りの電話を入れてきた位である。何でも、上鳴達との勉強会で忙しいらしい。……まあ、その声色は楽しさや嬉しさを隠しきれていない様子だったが。

 

仕方が無いので、イナゴ怪人全員に『ハザードレジスター』を使って貰い、8体のイナゴ怪人・ハザードフォームを相手に、俺は父さんの研究所の敷地内でこれでもかと言わんばかりに暴れまくった。

まあ、八つ当たり気味にバーニングマッスルフォームのフルパワーを使い、チュドーンとばかりに火山活動と見紛うばかりの巨大な火柱を発生させた結果、近隣住民からの通報を受けた警官が駆けつけ、父さんにメッチャ叱られる事になったが、それは些細な事だろう。

 

「揃ったな。それじゃあ、演習試験を始めていく。この試験でも勿論、赤点はある。林間学校行きたけりゃ、みっともねぇヘマはするなよ。もっとも、諸君なら事前に情報仕入れて、何するか薄々分かっているとは思うが……」

 

「入試みてぇな、ロボ無双だろぉおーーーー!!」

 

「花火! カレー! 肝試ーーーーーーーー!!」

 

「残念!! 諸事情あって、今回から内容を変更しちゃうのさ!!」

 

相澤先生がマフラーの様に携帯している捕縛布の中から現われた校長先生の発言により、上鳴と芦戸の二人が石化した。地味にB組の物間も石化しているあたり、彼等の思考回路は似通った構造をしているのかも知れない。

……とは言うものの、校長先生による期末テストの内容変更宣言に動揺していたのは上鳴達だけではない。事前に情報を仕入れていたが為に、両クラスに共通して大なり小なり動揺が見られるのは事実だ。

 

しかし、俺個人としては試験の内容変更など、正直な話驚くに値しない。そもそも、入学初日から「“個性”把握テスト」と言う通常と異なるカリキュラムを生徒に課し、更には「最下位は除籍」という理不尽極まる条件を吹っかけてきた前例がある以上、去年の期末テストの内容が全くアテにならなくなる可能性がある事は分かりきっていたからだ。

 

「変更って、どう言う事ですか?」

 

「それはね。これからは対人戦闘・活動を見据えた、より実戦に近い教えを重視する事になったからさ! と言う訳で、諸君にはこれから二人一組で、プロヒーローの一人と戦闘を行って貰う!!」

 

「プロヒーローと?」

 

「そうだ。今回の試験にあたって我々雄英ヒーローの他に、外部からプロヒーローを何人か仮想ヴィランとして招集させて貰った。尚、ペアの組と対戦するヒーローは既に決定済み。但し、試験でどんなヒーローと戦うかは、その時になってみないとお前達生徒には分からない。ペアに関しては動きの傾向や成績、親密度……諸々を踏まえて独断で組ませて貰ったから発表していくぞ」

 

かくして、急造ペアでお互いに協力して試験の合格を目指す事となり、発表されるペアの大半はA組の生徒同士、もしくはBの生徒組同士の組み合わせになっていたのだが、中には切島と鉄哲と言った具合にA組とB組のペアも少数だが存在する。

ちなみに発表されたペアの中では、出久と勝己のペアがありとあらゆる意味で一番不安だ。二人の対戦相手となったプロヒーローが誰かは分からないが、色々な意味で前途多難としか言い様がない。

 

「最後、A組の呉島とB組の神谷のペア」

 

「おう?」

 

「ふむ……まあ良いだろう」

 

一方の俺は職場体験以来となる、「ぶりぶりざえもん」こと神谷とコンビを組むことになった。ピンチになったら速攻で俺を裏切り、対戦相手に寝返って媚を売りまくりそうなこの男が相棒であると考えると物凄く気が重い。

 

「以上、21ペアそれぞれに戦闘用のステージを用意してある。制限時間は30分。お前達の勝利条件はこの『ハンドカフスを対戦相手にかける』。もしくは『ペアの内どちらかがステージから脱出する』のどちらかを満たす事だ」

 

「戦闘訓練と似てんな……」

 

「ってか、逃げてもいーんですか!?」

 

「今回の試験は極めて実戦に近い状況での試験だからな。相手をヴィランそのものだと考え、会敵したと仮定した場合、戦って勝てるならそれで良い。だが、実力差が大きすぎる場合、逃げて応援を呼んだ方が賢明だ。つまり、『戦って勝つか』『逃げて勝つか』と言う、お前達の判断力が試される訳だ」

 

「しかし、相手が百戦錬磨のプロヒーローで、こちら側に逃げる事が許されるなら、普通は逃げの一択なんじゃ……」

 

「そこで今回、お前達に戦闘を視野に入れさせる目的で、ハンデとして仮想ヴィランは体重の約半分の重量のおもりを装着する事になった。まあ、『手傷を負ってある程度消耗している状態のヴィラン』だと考えてくれれば良い。説明は以上。まずは10ペアが一斉にスタートだ。発表されたペアは速やかに学内バスに乗れ」

 

かくして、プロヒーローを相手に勝利と林間学校をもぎ取る為の戦いは、予想外の試験内容によって若干心を折られている者が、その精神的ダメージを回復できないまま始まろうとしていた。

現に、ロボが相手だからと全く実技試験の対策をしていなかったのか、上鳴と芦戸は既にして敗北者の様な雰囲気を醸し出している。

 

「さて。それでは手早く済ませるとするか」

 

「………」

 

……まあ、コッチも他人の心配をしている様な状況ではないがな。気合いを入れて、頑張るZOY!

 

 

●●●

 

 

意気込んで演習試験に臨んだのは良いものの、市街地演習場の中央で試験開始の合図を聞いてから既に10分が経過した今、俺と神谷はこれ以上無い程の窮地に追い込まれていた。

 

それと言うのも、試験開始直後にその場から一歩踏み出した瞬間、あらゆる方向から此方に向かってゴム弾、フラッシュバンミサイル、トラロック入りガス弾……と言った具合に、様々な飛び道具が殺到し、それらを避ける、防ぐ、叩き落すと言った具合に捌いていったのだが、攻撃を避けた先は元より、態勢を整えるべく逃げ込んだ先にもトラップが山と仕掛けてあり、そのパターンも地雷に落とし穴に吊るし縄とバリエーションが豊富だ。

 

そして、何よりも俺達が追い込まれている最大の原因と言えるのは……。

 

「ライダー! 避けろぉおおおおおおおおおおおおおおッ!!」

 

「ぐわぁあああああああああああああああああああああああッ!!」

 

「ライダー! おのれ、仮想ヴィランッ! よくもライダーを!」

 

「いや、お前の所為だからな!?」

 

……こんな感じで、俺が捌ききれない位置から向かってくるゴム弾やフラッシュバンミサイル等に対して、神谷が俺の体をどかして当たらないようにしようとするのだが、何故か100%の確率でソレ等が俺に直撃するのだ。ぶっちゃけ、動かなければ当たらない様な気がする程に高い命中率である。

 

「10分経過か……。脱出ゲートからは遠ざかる一方。そして、未だに相手の姿すら確認できてない。どうするか……」

 

「ええい! メソメソしてんじゃねぇ! こうなったらやる事は一つしかねぇだろうが! こうなったら……」

 

「こうなったら?」

 

「校長に土下座して、演習試験を合格にして貰おう」

 

「………」

 

やはり、コイツはあまり当てには出来ん。取り敢えず、俺が考えている事を提案してみよう。

 

「……状況を整理しよう。まず、仮想ヴィランの姿はこれまでに一度も確認できてない。攻撃手段は道具を使ったトラップに終始していて、“個性”によるものと思しきモノは一つも無い。そして、狙い澄ました様に繰り出される攻撃の数々から、相手は此方の動きを完全に把握していると思われる……」

 

「だからどうしたと言うのだ!? このままでは我々は不合格になってしまうのだぞ! ううう、嫌だ! 学校での補習地獄など真っ平ゴメンだ! こうなったら、このバッタ野郎を生け贄に……」

 

「落ち着け。俺だって補習地獄は受けたくない。そこで、俺に考えがある」

 

「うん? 何だ? 言ってみろ」

 

「まず、トラップを攻撃に使っている事から、相手の“個性”は直接戦闘に使えるタイプの“個性”ではない。そして、『外部から何人かプロヒーローを呼んだ』と言っていたが、どんなプロヒーローも普通は常に幾つかの仕事を抱えているから、そう気軽に何人も呼べるものじゃない。多分、生徒の大半は雄英ヒーローで対応する事になっている筈だ。

そして、雄英ヒーローの中で此方の動きを正確に読む事が出来て、攻撃を武器に頼っている事を考えれば、該当しそうなのは『ハイスペック』の“個性”を持つ校長だ。そう考えれば、『二人一組で戦え』と言うのも、俺達の行動を誘導し、制限する為のモノだったのかも知れん」

 

「……なるほどな。ならば話は早い。早いトコ見つけ出して土下座しよう」

 

「いい加減に土下座から離れろ。……そこでだ。敢えて『二人一組で協力しないで戦う』と言うのはどうだ?」

 

「む? どう言う事だ?」

 

「要するに、相手の計算にない行動をして、相手の計算を狂わせるようと言う事だ。つまり、何時もの自分と逆の行動をするんだ」

 

かくして、試験時間が残り20分を切った所で、俺達は別行動を開始した。

 

俺の場合、普段なら仮想ヴィランを探し出して倒す所だが、今回は仮想ヴィランから逃げるべく、脱出ゲートに向かって全力疾走する。

 

神谷の場合は、普段なら速攻で仮想ヴィランから逃げるところだが、逆に仮想ヴィランが潜んでいそうな所を虱潰しに探していく。

 

正直な話、神谷が素直に俺の話を聞いたのは意外だったが、どうも相手が攻撃的な“個性”を持たない校長だと言う事で、自分でも倒せそうな相手だと思った事が賛成した理由らしい。

 

もっとも、この試験会場からの脱出も容易ではない。何せ、脱出ゲートが一つしか無い以上、その道中にトラップを仕掛けていない訳が無い。

その上、こちら側の手札を相手が熟知している所為か、此方がやろうとしている事……例えば、アクセルフォームを使った超高速移動は、狙い澄ました様なタイミングで作動したトラップ攻撃によって出鼻をくじかれて失敗しており、ハッキリ言ってかなり歯痒い展開だ。

 

イナゴ怪人の『ローカスト・エスケープ』を使えば楽に脱出できると思うのだが、何を考えているのかあの魑魅魍魎共は「大事な用事がある」とかでこの試験をボイコットしやがった。まあ、トラロック入りガス弾が用意してあった事を考えると、ソレも難しいのかも知れないが……。

 

しかし、それでもフィジカルと強化服の性能に任せたゴリ押しはある程度有効だった。完全な脳筋作戦だが、先程よりはスムーズに事が進んでいる様な気がする。神谷が居ないと言う事もあるかも知れんが……。

 

「あと、もう少し……」

 

「ブヒィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!?」

 

「でッ!?」

 

このまま一気に脱出して試験クリアかと思われた矢先、背後から大きな爆発と豚の様な悲鳴が上がり、思わず足を止める。

そして、ふと後ろを向くと、神谷と長身の男が此方に向かって空中を移動し、神谷をクッションにして長身の男が俺の眼前に降り立った。

 

「!? あ、貴方は……」

 

「残り時間、約10分。ここまではおおよそ『見た通り』だ」

 

 

○○○

 

 

演習試験から一週間ほど前に遡った雄英高校の一室で、教師陣による白熱した議論が展開されていた。

 

「まず、芦戸と上鳴の二人。この二人は良くも悪くも単純な行動傾向にありますので……今回の試験では校長の頭脳でソコを抉り出していただきたい」

 

「オッケー」

 

今回の演習試験において、雄英は生徒に対して意図的に課題を与える方針から、ペアとその対戦相手となるヒーローを、それぞれの意見を交換しながら慎重に決定していた。基本的に生徒達は各々が様々な欠点を抱えており、相対するヒーロー達はペアとなった者達の欠点を突く事が出来る者をあてがい、欠点を自覚して貰おうと言った所である。

ちなみに、大体の生徒は雄英ヒーローで対応可能であったが、そうでない者には欠点を突くことが出来るプロヒーローに連絡を入れて、試験に協力して貰う形を取って臨機応変に対応している。

 

しかし、そんな雄英ヒーローをして、非常に厄介な生徒が二人居た。

 

「最後……この二人がある意味で一番問題なんですが……」

 

「確かに。果たして誰を当てればいいのか……それが最大の問題だ」

 

A組の呉島新とB組の神谷兼人。この二人は試験でペアを組むことはすんなりと決まったのだが、「このペアの仮想ヴィランを誰がやればいいのか?」と言う難問が雄英ヒーローの頭を悩ませた。

 

新は異形系の“個性”特有の高い身体能力が、オールマイトの常軌を逸した訓練によって一年生の中でもずば抜けている上に、その高い身体能力を生かす為に実戦を経て研鑽された格闘術を習得している。

また、『温度』と言う弱点を突こうにも体育祭でそれを克服してしまい、他で狙い目になりそうなのは体力を削る事を目的とした消耗戦だが、並外れたスタミナに加えてオールマイト並の身体能力を獲得しているとなれば、新が消耗する前にハンデを課せられた此方が撃破される可能性が高い。

 

神谷に関しては、神谷本人の性格に難がありすぎる上に、身体能力もそれほど高い訳ではないのだが、神谷の“個性”『ギャグ補正』が常時発動型の“個性”である為に、神谷の意志に関係無く“個性”の恩恵が本人や周囲に与えられる事を考えると、その特性上少なくとも相方がまともであれば、相手側の勝利が半ば確定してしまう。

 

つまり、生半可な“個性”や技術を持ったヒーローでは、それこそ束になっても相手にならないのである。だからこそ、彼等には今のうちに『弱点を突く事が出来る』と言うか、『天敵たり得る能力を持った相手』を当てておきたい所なのだが、如何せん持っている力が強大過ぎる。

 

「流石に彼等にだけハンデ無しのヒーローを当てる……と言う訳にはいかないですよね?」

 

「仮にハンデ無しにしても、このペアの相手は厳しいでしょう。特に呉島の相手は」

 

「てゆーか、呉島君の“個性”を考えると、下手に追い詰めると進化して更に厄介な事になりますよね?」

 

「ええ、味方としては頼もしい能力ですが、敵に回るとこれほど恐ろしい能力はないですよ」

 

そして、彼等の頭を悩ませる最大の要因は、新の「相手からの感情波や余剰エネルギー等の、あらゆるエネルギーを吸収して常に進化する」と言う、窮地に追い込めば追い込むほどその恐るべき進化と真価が発揮され、不思議な事が起こって理不尽極まりないパワーアップを果たす事。

事実、この能力によって新は数多くの窮地を脱してきた訳だが、此方が有利になればなるほど、より強力になって復活を果たすと言う、敵対する者にとって悪夢のような自己進化能力は、これまでの歴代雄英生の中でも前例がない。

 

しかも、この能力は新本人だけに留まらず、先日の授業参観で何をとち狂ったのか、イナゴ怪人が「ミュータントバッタを用いた空間系能力」を獲得した事から鑑みても、その“限りなく進化する力”の常識破りな性能に関しては、もはや疑いの余地はない。

一応、「ミュータントバッタを用いた空間系能力」に関しては、USJでの『敵連合』との戦いの際、黒霧の“個性”で右腕を切断された時に黒霧の“個性”のエネルギーを吸収していた事が原因ではないかと新とその父親が推測していたが、いずれにせよ今後も新の“個性”の進化が続くことは間違いないだろう。

 

「本来なら個性届の更新は二回までなんですが、呉島君の場合はその特殊性から『“個性”の変更』ではなく『能力の追加』と言う形で何度も個性届を更新しているらしいですね」

 

「普通なら受理されないが、あんな風に突拍子もない事を実際に何度もしてりゃ、流石に認めるしかないだろうしな」

 

「しかし、どれだけ特殊な能力が追加されても、呉島の“個性”はあくまで異形系の『バッタ』ですからね。俺の『抹消』は役に立ちませんよ」

 

「アイツを見てると、バッタって何だっけって感じになるけどなー」

 

「確カニ……」

 

「でも中身はピュアな男の子でしょ? 私の“個性”ならイケると思うのだけど?」

 

「呉島君が生身ならまだしも、呉島君が着ているコスチュームは高い防毒性を備えていますから、少なくともヘルメットを外さないと効果はありませんよ」

 

「仮に眠らせたとしても、直ぐに復活しそうな感じがするがな」

 

「……もしも、それで呉島君が新しい能力を身に付けたとしたら、それはどんな能力だと思います?」

 

「ふむ、呉島少年がミッドナイトの大人の香りでメロメロになって、ぐっすりおねんねしたとしたら……そうだな、『体から特殊なフェロモンを発して女性をメロメロにする』とか、そんな感じの能力に目覚めるんじゃないかな?」

 

「……あー、確かに何となくソレっぽいわね」

 

教師陣の中で最も新と付き合いの長いオールマイトの推測にミッドナイトが同意し、他の面々も首を縦に振って肯定する。実際に「アイツならそれくらいの事はやってのけてもおかしくはない」と言う新に対する信頼が、彼等の中で構築されている事が伺える光景である。

 

「まあ、ミッドナイトを無力化する事を考えると有り得そうな話ですね」

 

「そう言えば、子供の頃に読んだファーブル昆虫記でも、昆虫のフェロモンについてどうこうって話があった気が……」

 

「フェロモン云々は別として、体育祭でも思ったんだけど、あの子ってアレで結構女子からの受けが良いのよね。心がイケメンだからかしら?」

 

「そうですね。ミッドナイトのコスチュームが破れた時に、観客席からマントを投げてましたし」

 

「人ハ外見ヨリモ内面トイウ好例ダッタナ」

 

ミッドナイトの言葉に、特に新と接点は無いものの、新に対して割と好意的なセメントスとエクトプラズムが、我が意を得たりと言わんばかりの雰囲気を醸し出している。そして、そんな彼等もまた心はイケメンである。

 

「それじゃあ、仮に僕と戦った場合はどうなるでしょうか?」

 

「ふむ……仮に呉島少年が13号と戦ったなら……」

 

 

 

~もしも、13号と戦って呉島少年が進化したら~

 

「そんなに今の地位に固執するか……良いだろう」

 

『オーバー・ザ・エボリューション!』

 

「今日がお前達の命日だ……」

 

『バッタ! ライダーシステム! レボリューション!』

 

『Are you Ready?』

 

「変身ッ!!」

 

『ブラックホール! ブラックホール! ブラックホール! レボリューション! フッハッハッハッハッハ!』

 

「フェーズ13……完了! 参考までに言っておこう。俺のハザードレベルは13.0だ」

 

~完~

 

 

 

「……ってな感じになるんじゃないかな?」

 

「いや、フェーズ13とか、ハザードレベルとか一体何ですか。そもそも普通がどれ位なのか分からないんで、イマイチ凄さが分からないんですが」

 

「いや、戦闘力が数値化されると何か燃えるだろう?」

 

「確かに! 俺ッチそーゆーの大好き!」

 

「………」

 

オールマイトの言葉にプレゼント・マイクがテンション高めに同意するが、ハッキリ言って本当にそうなったとすれば、新はヒーローと言うよりはヴィラン……と言うかラスボスだ。それも歴史に悪名を刻んだ犯罪者の中でも、ぶっちぎりで邪悪な部類の。

 

「それじゃあ、呉島君が僕と戦った場合、オールマイトはどうなると思うんだい?」

 

「校長とですか? そうですね、その場合……」

 

 

 

~もしも、根津校長と戦って呉島少年が進化したら~

 

「さあ、自意識過剰な正義のヒーローの復活だ!」

 

『グレイトゥ!』

 

『オールイエイ! ジィイーーーニアスッ!』

 

『イ゛ェ゛エ゛エ゛イ゛ッ!』

 

『イェエーーーーーーーイ!』

 

『イ゛ェ゛エ゛エ゛イ゛ッ!』

 

『イェエーーーーーーーイ!』

 

『Are you Ready?』

 

「変身!」

 

『完全無欠のバッタヤロォオオオオオオオッ!』

 

『ホッパージィイーーーーーーーーニアスッ!』

 

『スゲェエエエエエエイッ!』

 

『モノスゲェエーーーーイ!』

 

「勝利の法則は……決まったッ!」

 

~完~

 

 

 

「……と言った感じで、呉島少年が掛け声に合せて60本のリポ○タンDを一気飲みし、大幅にIQが向上した頭脳を十全に駆使する感じになるかと」

 

「なるほどね……」

 

「いや、リポ○タンDを60本一気飲みって死ぬでしょ」

 

「それならオロ○ミンCを60本でどうだろう? 頭脳労働は莫大なエネルギーを使うからね」

 

「やく○とヲ60本ジャ駄目ナノカ?」

 

「それだとお腹壊しちゃうわね」

 

「……それで、勝利の法則ってどう言うものなんですか?」

 

「そうだね……多分色々考えた結果、下手に策を講じるよりも力でねじ伏せるのが一番手っ取り早いと言う結論に……」

 

「脳みそが筋繊維で出来ていそうな回答ね」

 

「………」

 

リポ○タンDでもオロ○ミンCでもヤク○トでも過剰摂取は駄目だろうと相澤は思ったが、話の流れが明らかにおかしな方向に向かっている為、その辺は無視して話の流れを元に戻そうと思った矢先、同じ事を考えていたのか、スナイプがある事を提案した。

 

「それなら能力的にコピーのしようがない相手ならどうだろうか? 例えば、呉島の持っている能力と同じ“個性”を持っているヒーローとか」

 

「ソウスルトシテ、一体誰ヲ?」

 

「実力的にエンデヴァーはどうだろうか? 能力的に“個性”がコピーされる事も無いと思うが?」

 

「なるほど……良いかも知れないな」

 

「……いや、呉島少年を甘く見ない方が良い」

 

「「「「「「「「「「え?」」」」」」」」」」

 

スナイプの、一見して良策だと思えるアイディアで、呉島・神谷ペアの相手がエンデヴァーに決定しそうな雰囲気の中、オールマイトが待ったをかけた事で、元に戻った話の流れはまたもや明後日の方向に転換した。

 

「呉島少年は轟少年の“個性”を元に弱点を克服しているから、仮にエンデヴァーをぶつけて追い詰めたなら、弱点を克服したバーニングマッスルフォームがより強化されるか、もしくはソレが反転した能力を獲得する可能性が高い」

 

「バーニングマッスルフォーム?」

 

「ああ、体育祭で見せた紫の炎を使う形態の事だ。呉島少年から聞いた」

 

「彼、そんな名前付けてたのね」

 

「……それで、そのバーニングマッスルフォームの強化。もしくは反転した形態と言いますが、どうなると思っているので?」

 

「うむ。私が考えているのは……」

 

 

 

~もしも、エンデヴァーと戦って呉島少年が進化したら(その1)~

 

『ナックルバァーン! ホッパーマグマァ!』

 

『Are you Ready?』

 

「変身!」

 

『極熱筋肉ゥ! ホッパーマグマァ! アーチャチャチャチャチャチャチャチャチャアチャァアーッ!』

 

「力が漲るッ! 魂が燃えるッ! 俺のマグマが迸るッ! もう誰にも止められねぇええええええええええええええええッ!!」

 

~完~

 

 

 

「……と言った感じで、エンデヴァーの“個性”の完全な上位能力になるのが一つ」

 

「何っすかね? エンデヴァーが呉島に腹ぶち抜かれて『愛してくれて、ありがとう』って言いながら死ぬような気がするんっすケド」

 

「奇遇ですね。何故か知りませんが、僕もそう思います」

 

「……それで、能力が反転した場合と言うのは?」

 

「その場合はだね……」

 

 

 

~もしも、エンデヴァーと戦って呉島少年が進化したら(その2)~

 

『ナックルキィーン! ホッパーブリザァードッ!』

 

『Are you Ready?』

 

「……出来てるよ」

 

『激凍心火ッ! ホッパーブリザァアードッ! ガキガキガキガキ! ガッキィーン!』

 

「心火を燃やして……ぶっ潰すッ!!」

 

~完~

 

 

 

「……と言った感じになると思う」

 

「ソッチは何かエンデヴァーも呉島も死にそうな気がするっすね」

 

「我モソウ思ウ」

 

「あとは、マッスルフォームに先程言ったマグマとブリザードの特性が両腕に顕現したトリニティマッスルフォームが……」

 

「………」

 

またもや話が『ぼくが考えた最強の怪人バッタ男』みたいな路線になってしまった事に頭を抱えつつ、相澤はもうオールマイトには黙っていて欲しいと切に思った。

もっとも、実際にそれらが起こらないと完全に否定できない所が、オールマイトに対して強く言えない原因なのだが、そもそも呉島がこうなる下地を作ったのは他ならぬオールマイトなので、究極的には「全部、オールマイトって奴の仕業なんだ」って事になるのだが。

 

「……結局、呉島が勝つ所しか想像できませんね」

 

「そうだね。今回のテストは天敵になり得る“個性”を意図的に当てて、彼の『逆境を打ち崩す力』を封じる様な状況を作りたかったのだけど……」

 

「……いや、実は一人だけ、私に心当たりがあるんですが……」

 

「「「「「「「「「はあ!?」」」」」」」」」

 

今まで散々混乱していた会議の中心にいたオールマイトの言葉に、一同は目を点にしつつも「だったら何で今まで言わなかったんだ」と言う思いを込めて、オールマイトを凝視した。そんな彼等の思惑を察してか、オールマイトはバツの悪そうな表情をしながら、その心当たりのあるヒーローの事を話し始めた。

 

「恐らく、彼の“個性”を上手く使えば、呉島少年は“個性”のエネルギーを吸収しての新しい能力の獲得。或いは進化を封じる事が出来るでしょう。そして、能力の特性上、ハンデが有っても呉島少年は元より、神谷少年に対しても有利に立ち回る事が出来る筈です。ただ……」

 

「「「「「「「「「「ただ?」」」」」」」」」」

 

「……訳あって気マズイ」

 

「「「「「「「「「「私情(かよ/ですか)、オールマイトォッ!!」」」」」」」」」」

 

その後、オールマイトが二人の弱点となり得る“個性”を持ったそのプロヒーローの名前を言った所、元々新に興味を持っている事もあって、満場一致でそのプロヒーローが呉島・神谷ペアの仮想ヴィランに決定。校長から要請を受けたそのプロヒーローは、二つ返事で彼等の相手を了承した。




キャラクタァ~紹介&解説

神谷兼人
 本人としては有効な戦力を脱落させない為という打算もあったものの、シンさんを助けようとしたのは本心からの行動であった……のだが、実は彼の“個性”である『ギャグ補正』は「善意の行動が裏目に出る」と言う弱点が存在しており、シンさんの足を引っ張る結果になってしまった。彼の『救いのヒーロー』への道のりは遠い……。

オールマイト
 シンさんの事で妄想爆発。しかし、その内容が有り得ない事ではないので周りが否定しきれず、結果として暴走を許されてしまっていた。妄想の中でシンさんが星狩り族や天才物理学者や筋肉馬鹿やドルヲタと化しているが、親の七光りクソコーデおじさんにはならなかった。ネタ切れとも言う。



演習試験の変更
 基本的には原作と同じなのだが、1クラスにつき21人となった為、A組とB組でペアを作って行う形に。また「自分達の対戦相手が不明」という点で、原作より攻略難易度が上がっている。
 元々、シンさんはぶりぶりざえもんと組ませる予定であったが、最近の原作を見ると小森希乃子と組ませるのも面白そうではあった。『怪人バッタ男VS怪人マタンゴガール』とか、ある意味夢の共演だと思いません?

イナゴ怪人「『イナゴ怪人・マタンゴフォーム』……胸が躍るな!」
シンさん「………」

シンさん新フォーム(妄想)
 オールマイトによる妄想の産物。これの何が恐ろしいって、シンさんなら全部出来そうだって事。元々は感想欄に書かれていた「シンさん・ブラックホールフォーム」を採用した一種の読者サービス。そして、『ビルド』も終わったから他にも色々出してみようと考えてみたら、この世界のシンさんで再現出来そうなフォームが結構多い事に気がついた。
 尚、変身の際の音声が公式と異なる部分があるが、これは音声の力強さに対する表現と面白さを追求した結果、ワザとこうしている。つまり、大体若本ヴォイスの所為。

1.シンさん・ブラックホールフォーム
13号の“個性”のエネルギーを吸収して進化した、どう見てもラスボスにしか見えないシンさん。ちなみに、ハザードレベル13.0は「シンさんが13番目の昭和ライダーだから」と言うだけの理由で決めたが、シンさんなら本当にそれ位のハザードレベルがあってもおかしくない様な気がする。フェーズ5~12は気にするな。

2.シンさん・ジーニアスフォーム
 校長の“個性”のエネルギーを吸収して進化した、ジーニアスとは名ばかりの脳筋フォーム。恐ろしく体力を消耗するので、変身には60本分のリポ○タンDかオロ○ミンCかヤ○ルトが必要となる。これら三種類を用いたチャンポンでも変身は可能。その所為か体はモノスゲーイカラフル。

3.アナザーシンさん・マグマフォーム
 バーニングマッスルフォームの強化形態。『極熱筋肉』の名に恥じぬ暑苦しさを誇るが、稼働時間はかなり短い。体液がマグマの如く沸騰し、炎をも焼き尽くす超高温を体から発する為、殺傷力……もとい攻撃力は絶大。「エンデヴァーは所詮、先の時代の敗北者じゃけぇ」とは言わない。

4.アナザーシンさん・ブリザードフォーム
 バーニングマッスルフォームが反転した亜種的な強化形態。上記の極熱筋肉よりは稼働時間に余裕があり防御力も高いが、その分攻撃力で劣る。そして、見た目が何となく初期の轟のコスチュームっぽくなる。作者的には『ジョジョ』第五部に登場するスタンド「ホワイト・アルバム」の様なイメージだったりする。

5.アナザーシンさん・トリニティフォーム
 実は体育祭編における轟戦で、作者の中ではバーニングフォームの他に、このトリニティフォームが新フォームの候補に挙がっていた。結局、バーニングフォームを採用した訳だが、今なら「マグマナックル」と「ブリザードナックル」の複合と考えればアリ……なのかも知れない。

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