Fate/Grand Mahabharata 幕間   作:ましまし

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ネタ ジューンブライド

「…………で? 言い訳はありますかキャスターのみなさん」

「気持ちは分かるが落ち着きたまえ! それにその姿で戦車はアウトだ!」

「それ以前にカルデア内で宝具の使用はやめてくれないか!!」

 

 

 

 

 事の発端はこうだ。

 

 天竺がどうの札がどうのド〇ゴンボーr……玉がどうのとマスターが必死でレイシフトする日々が続いていた。

 

 ライダークラスが駆り出される場所も多々あり、私はかなり最初の方からレイシフトに参加していたのだが、そろそろアイテム集めも終盤に差し掛かるらしく「ずっと連れまわしちゃってごめんね? 暫らくは休んでていいよ」と暇をもらったのだ。

 

 しかし休みを貰っても特にする事が無く、図書室で暇をつぶしていたところナーサリーライムがやってきて読み聞かせをせがまれたのだ。

 最近セットのジャック・ザ・リッパーの姿はなかった。なんでも今日はセイバー、アーチャー、ライダークラスがいる所を周回しているのでカルナやアルジュナと一緒にレイシフトしているとか。

 

 

「こうしてシンデレラは王子様と結婚して幸せに暮らしましたとさ。おしまい」

「ありがとう、スラクシャ! とーっても素敵だったわ! 次はこっちを読んで?」

「あ、はい」

 

 読み終わった側から新しい絵本を差し出される。何度目だこれ。せがまれるのは全部お姫様が出てくる絵本。今読んでたのはシンデレラ。その前は白雪姫だし、今差し出されているのはラプンツェル。

 

「……お姫様とハッピーエンドばかりですね」

「ハッピーエンドは大好きよ! でもバッドエンドは嫌い。見飽きてしまったもの」

 

 元が絵本の“子供たちの英雄”にこんな事言われた時ってどんな反応すればいいんだ。

 

「それにお姫様とお嫁さんは女の子の夢よ!」

「へー」

 

 お嫁さんねえ……。元男とかそういうの抜きにしても興味ない……ていうか

 

「想像がつきませんね……」

「あら、どうして?」

「生前は死ぬまで男装してましたからね。あまり女の子って言うのが良くわからないというか」

 

 身を守るため&私の精神衛生上ずーっと男装してたしな。実際それで被害は減るし、全然バレないしで結局死ぬまで女らしい服なんぞ着たことなかったな。

 ていうか結婚自体してないし。

 

 過去を思い出して一人頷く私をナーサリーライムがずっと見つめ、途中、ハッと何かを思いついたような顔をしたことに私は気が付かなかった。

 

 

 

 

 翌日。

 

「ああ。ちょうどよかった」

「? パラケルスス?」

 

 廊下を歩いているとPことパラケルススが近づいてきた。手には薬のようなものが握られている。

 

 いやな予感しかしない。

 

「私に何か用事でも?」

「ええ。……これを飲んでくれませんか」

「いやですけど!?」

 

 なにを言ってるんだこの魔術師。

 

「大体なんなんですかそれ」

「効果は言えませんが……どうしても飲んでくれませんか」

「当たり前です」

 

 効果は言えないとか怪し過ぎるだろうが。誰が飲むんだよそんなの。

 

「仕方ありません……施しの英雄辺りに頼み」

「飲みます」

 

 あの施しバカのことだから頼まれたらどんな効果だろうと百パー飲むに決まってるじゃないかそんな怪しいもん呑ませるくらいなら私が飲むわ!!

 

 パラケルススから薬を受け取る。

 今すぐに床に叩きつけたいところだが、また同じものを作られて私のいないところでカルナに呑ませられたらアウトだ。マスターが何といおうがブラフマーストラする自信がある。

 

 覚悟を決めて薬を飲み干す。味は特に悪くない……というか水と変わらない。

 

「……これでい、い゛っ!?」

 

 電流が走ったような衝撃が来たと思った次の瞬間には床にぶっ倒れていた。目の前が暗くなっていく。おま、毒か。毒なのか。

 

「……申し訳ありません。しかし、あの子に頼まれてしまったので……」

 

 良くわかんないけど起きたら絶対に轢いてやる事を誓い、意識が飛んだ。

 

 

 

 

「……………………!?」

 

 バッと目を覚ますこすと……医務室?

 

「良かった、目が覚めたようだね」

「ドクター。……あのイカレ魔術師はどこですか?」

「うん怒るのは分かるけど落ち着いて。まだ薬抜けてないみたいだし」

 

 言われると気付くが、確かに体が動きにくい。仕方ない、ベッドから降りるのは諦めよう。

 

「私にいったい何の恨みがあるんだあの野郎」

「うわあ。こんなに口の悪いスラクシャ初めて見た……。どうやらナーサリーライムに頼まれたらしくてね」

「私本気で何かしました?」

 

 え? 間接的に幼女に毒盛られたって事? 記憶を探るが心当たりは一つもない。

 

「えーとね。実を言うとこの2人だけじゃなくて。気絶した君を運んだのがジークフリート。ナーサリーライムの提案に賛成して着替えさせたのがマリー王妃とメディア。アンデルセンとシェイクスピアとダ・ヴィンチちゃんが面白がって協力した。今はエミヤとマルタ、それからジャンヌ・ダルクに説教されている」

 

 めっちゃ参加してんじゃねーか! 私が何をした!?

 

「ん? 着替え?」

「あー、えー、うん。そのー……」

 

 苦笑いをしながら布団を指差すドクター。めくってみろ、という意味だと気づいて衣服を確認する。

 

 それが目に入った瞬間、重い体を無理やり動かし、文字通りドクターストップを後方に聞きながら食堂に向かって全速力で走った。

 

 

 

 

 食堂の方から話し声……というか嗜める声が聞こえてくる。

 他のサーヴァントがやらかした、という可能性もあるかもしれない。が、そういったことは全力で無視した。

 

「そこかぁあ!!」

 

 声を荒げて食堂へ飛び込むと、その場の視線が一気に集中した。

 

「……当事者が来たようだ。後は彼女に言わせよう」

「その方が良いわね」

「そうですね」

 

 場所を譲ってくれた3人に目線で礼を言い、床に正座で座らされている(女性陣は免除)面々に向き直る。

 

「ごきげんよう、スラクシャ。やっぱり良く似合うわね」

「とっても可愛いわ! お姫様みたい!」

「当たり前よ。私の目に狂いはないわ! ……でも、もう少し宝石を使っても良かったかしら」

 

 無邪気に褒めてくるナーサリーライム(元凶)。反省するどころか改善点を話しはじめたフランスの王妃とコルキスの女王に頭が痛くなった。

 

「……あの、いつもの服に着替えようとしてもできないんですが」

 

 こめかみを押さえ、椅子に座りながら何とか絞り出した一言。

 

 

 私が今着ているのは、宝石とレースがふんだんに使われたレヘンガと呼ばれる、シャツとスカートに分かれたドレスの上に、ストールをサリーのように巻いたもの……の現代版ウェディングドレス。

 

 ご丁寧に宝石やら花やらが縫い付けられている当たりやる気が伺えた。

 

 

 

「しかも寝てたのに皺1つないって……」

「そりゃあ素材からこだわったからね。おかげで次の礼装をどうするか、大まかにだけど決まったよ」

「はあ……」

 

 ぐ……。礼装はマスターの役にも立つし……仕方ない、言いたいことはあるけどダ・ヴィンチは不問としよう。

 次は作家どもだ。

 

「「カルナとアルジュナの反応が面白そうだったから」」

「そんなに座に還りたいんですか。いいでしょう、潰れたメロンゼリーにしてあげます」

「落ち着きなさい、スラクシャ。」

「大丈夫です! とても似合ってます! 」

「フォローになってないぞ2人とも……」

「因みにその服が皺にならないのは彼らのエンチャントのおかげだよ」

 

 何という魔術と技術の無駄遣い!!

 

「……ジークフリート」

「……すまない……その、体調が悪いのかと……」

 

 あー、なるほどわかった。倒れている私を見てパラケルスス辺りに運ぶように頼まれて、言われるまま運んだらなんか着せ替え人形にされた、と。

 

「すまない……」

「ジークフリート無罪」

 

 これはジークフリート悪くない。どう考えても善意でやっただけだこれ。

 

「立っていいですよ」

「ああ、すまな……!」

「うわっ!」

 

 慣れない正座で足が痺れたらしく、ジークフリートがバランスを崩す。咄嗟に私の肩を掴んでバランスを取ろうとするが、

 

 ジークフリート 身長/体重:190cm・80kg。筋力:B+。

 私 身長/体重:168cm・52kg。筋力:D。

 

 問題。咄嗟のことで力加減が出来ずに思いっきり掴み掛られた場合どうなる?

 

 ヒント:筋力差

 

 

「いだだだだだ!! ちょ、肩砕ける!!」

 

 チクショウ! 再臨で鎧が無い上に不意打ちだったから余計に痛い! なんか涙出てきた!

 

「っ! す、すまない! 大丈夫か!?」

「は、はい。なんとか……」

 

 あぶねー……。危うく肩の骨粉砕されるところだった……。

 

「本当に大丈夫か? 痣になっているのでは……」

「ああ、確かに痛かったですけど大丈夫でしょう。ほら」

 

 肩の部分をずらして確かめさせ……ようとするとジークフリートに手を掴まれた。

 

「? 放してください」

「だ、ダメだ! というか何をやって……!」

 

 

「ただいまー。みんなで集まってどうし……」

「? どうしたのですかマス……タ……」

「? どうした。入り口で固まっては邪魔……」

 

 

 食堂が静まりかえ……あ、いや作家英霊sはなんか目輝かせてる。

 

「………神聖領域拡大、空間固て」

「ワー!! 待ってアルジュナ!! 事情を聴く前に宝具はやめて!!」

 

 マスターの叫び声にハッとジークフリートが手を放し、私はエミヤに叩かれた。

 

「あいたっ!」

「何を考えているのだね君は!? 女性がそう簡単に肌を晒すものではない!!」

「? ?? あ、そういうことか」

 

 あー、そっか。そういうことね。うん。完全に失念してたわ。

 

「スラクシャ」

「あ、兄上。お帰りなさい」

「ああ」

「何故泣いている。それにその姿は……」

「泣いているのは事故です。そしてこの格好は……」

 

「あのね、お嫁さんよ!」

 

「? 嫁……?」

「ええ! だって、スラクシャったら一度も女の子の格好したこと無いっていうんだもの! 一度でいいから、綺麗な格好をしなくちゃ」

「え、それでこんな大がかりなことを?」

 

 おい嘘だろ。昨日のあの世間話ともいえないようなあの会話が原因でこうなったのか!?

 

「そうか……思えば女らしい恰好どころか、女として生きていくことすらさせてやれなかったからな」

「待ってカルナ。別に私が自分からやった事ですから、そんな重くとらえなくても」

「今はサーヴァントの身。とはいえ、お前が奴……ジークフリートと添い遂げるというのならオレは応援しよう」

「待て!! とんでもない誤解が生じているぞ落ち着いてください!!」

 

 何がどうしてそうなった……この格好のせいか!! ろくな事が無いな女装!!

 

「……スラクシャ。本気でそこの男と生涯を共にする気で?」

「うんアルジュナ落ち着いて誤解だからその言い方やめてください。……だからジークフリートに矢を向けない!」

 

 

 

 この後事情を説明するのに30分以上かかった。

 原因のナーサリーライム、マリーさん、メディア……は微妙なラインだが一応善意ということで軽いお仕置き(3日間おやつ抜き)だったが、薬を盛ったパラケルスス、面白半分で加担したアンデルセンとシェイクスピアは肉体労働を命じられた。

 

 私としては戦車で轢いてやりたいところだったが、流石にマスターにそれはやめてくれと言われたので諦めた。

 

 

 

 

 

「……疲れた」

 

 ぐったりとした様子で机に突っ伏す妹の頭を、サリーの下に手をくぐらせて直接撫でる。

 無意識か、目を細めて気持ちよさそうに頭を摺り寄せるそれは猫のようだった。

 

「……脱がないのか」

「最低でも明日まで脱げないそうです。動きにくいったら……」

 

 確かに部屋にたどり着くまでに何度も躓いていたのを思い出す。物心ついた頃には男装を始めていたので慣れないのだろう。

 ナーサリーライムの言葉が思い出される。結局、死ぬまで一度も女らしい服も生活もさせてやれなかった。

 

 双子ゆえに男装をしても違和感はなかったが、こうして着飾ると確かに女なのだと実感する。近すぎたからこそ忘れていた。オレが一番忘れてはならないというのに。

 

 婚礼用の衣装と言っていた。スラクシャが女として生きていたのなら、きっと死ぬ前に着ることもあったのだろう。

 

 

 

 コンコン

 

 

「? はい」

『私です。入ってもよろしいですか?』

「ああ、アルジュナ。どうぞ」

 

 スッと扉が開き、手に何か……トレイを持ってアルジュナが入ってくる。一瞬オレを見て動きを止めたが、すぐに視線をそらしてスラクシャへ近づく。

 

「何か用事ですか?」

「はい。エミヤがこれを持って行けと」

 

 上に乗っていたのは涼しげな硝子の皿が3つ。その中には、おそらく今日手に入れた仙桃。

 

「桃のコンポートですか。これをエミヤが?」

「先ほどの騒ぎで疲れただろうから、これを食べて休めと言っていました。1つは貴女ので……もう一つはカルナに、と」

「そうですか。わざわざありがとうございます」

 

 嬉しそうに器を手に取り、机の上に並べる。そういえば、甘いもの、とくに果実には目が無かったな。

 

「それでは、私はここで」

「あ、待ってください。その1つは貴方のでしょう? どうせなら、一緒に食べませんか?」

 

 スラクシャの誘いにアルジュナは戸惑ったような表情を見せる。

 

「嫌ならいいです。無理しないで」

「いえ、そうではなく……」

 

 チラリ、とこちらに目を向ける。どうやら、オレを気にしているらしい。

 

「オレはかまわない」

「……いいでしょう。ここで食べます」

 

 宿敵と共に、それもこの距離で食事をするのは思うところもあるが、嬉しそうな顔をする妹を見るとそれもいいかと思えた。

 

 

 

 

「ああ、そうだ。スラクシャ」

「?」

「似合っている。明日になれば脱いでしまうのだろうが、たまには着てくれ」

「! っ、スラ、クシャ。……私も見たいので、その時は呼んでください」

 

 

「………………考えておきます」

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