相棒(聖剣)が有能すぎて俺は今夜も眠れない   作:機工

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11.大司教の孫娘

 そして翌朝。朝と言うより夜明けと共に、フレイが宿にやって来た。

 まだタダシが朝練に出かける支度もしていない時間である。

「確かに朝早くとは言ったけど、またえらく気が早いな……」

 適当な時間になったら寺院に迎えに出向こうと考えていたタダシが頭をかいた。

「クリスナーヤのやつ、起きているかな」

「ごめんなさい、気が気じゃなくて」

「いや、俺は寝ないから別に構わないけど。ま、まあ、みすぼらしい部屋だけど入って座ってよ」

 タダシがアルコールランプに火をつけて、お茶の準備を始めた。

 毎日のようにクリスナーヤと打ち合わせがあるし、暇を持て余した女子中学生(あや)が現れることも度々だったので、奮発してお茶道具を仕入れたのである。

 部屋にあって唯一の道具らしい道具だった。

 

「……」

 フレイの視線を感じて、タダシは動きがぎくしゃくと硬かった。

 サーバーに湯を注ぐ手が震える。

 これはもしかして……

 好みの女性を意識した経験はいくらでもあるけど、その逆は皆無だ。

 もしかして……もしかして彼女は俺に気があるのではないだろうか。

 こんな美人に一目惚れしてもらえるなんて夢みたいな話だけど、そんな事が起こりうるのだろうか。

 こ、困ったな。こういう時にはどう反応すればいいんだろう。

「あの、不躾ですが……」

「は、はいっ?」

 春だ。とうとう俺にも春がやって来たのだ。

 タダシの声は裏返っていた。

 心の中で彩が笑い転げていたが、黙らせる余裕なんかない。

「もしかして解脱者……でしょうか?」

「は?」

 何だそれは。聞き覚えのない単語だった。

「アンデッド、と言うことはないですよね?」

「……」

 そういうことか。

 タダシはようやくフレイの言いたいことを理解した。

 大司教の孫娘ともなると、プリースト系の呪文は一通り身につけているに違いない。

 だから、タダシが普通の肉体を持っていないことを見抜いて不思議に感じたのだろう。

 ちくしょう、これはしばらく彩に言われ続けるだろうな。

 俺はどうして身の程もわきまえずに夢を見てしまったんだろう。

「ええと、俺の身体のことだよね」

 タダシが気落ちした声を出した。

「はい。アンデッドじゃないのなら、肉体解脱の儀式を通過した方なのかなと」

「う~ん、信じてもらえるか分からないけど、こうなったのは事故なんだ」

 タダシはかいつまんで精神体になった経緯を話してやった。

 元の世界云々の話は一応伏せておく。

「転移魔法陣ってあるでしょ。その類いの装置の実験台になった時に、肉体を失ってしまったんだよ」

「なるほど、そうでしたか。それなら納得です」

 フレイがにっこり笑った。

「……」

 そんなに簡単に納得していいのか。

 タダシは突っ込みたくなるのをこらえた。

 

「プリーストってヒーリングが仕事なのかな。実はよく分かっていないんだけど」

 タダシはプリーストという職種について、正しく理解出来ている自信がなかった。

 餓狼団との戦いでザハの動きを見て何となく「ああいう感じかな」と思っている程度だ。丁度いい機会なのでフレイに質問してみる。

「ええ、回復に関するスキルは、私たちの最も得意とするところです。普通は怪我をすると動けなくなってしまいますので」

「でも、魔道士とプリーストって共通して使える呪文もあるんだよね? うちのクリスナーヤは初歩的な回復呪文なら使えるけど、高度なやつはプリーストだけって事? 完全回復とか、蘇生とか」

「その通りです。プリーストだけが扱うことの出来る戦闘スキルも色々とありますよ。アンデッド系やゴースト系の始末は私たちの十八番(おはこ)です」

 フレイによると、物理攻撃が通じず魔道士の呪文に耐性を持つことが多いアンデッド系やゴースト系の魔物を、呪文一つで消滅させる事が可能だと言う。

「ほほう……」

 そいつは素晴らしい。タダシが感嘆の声を上げた。

 そろそろ、クンベの迷宮にもアンデッド系の厄介な魔物が出てくる頃だ。

 先に進みたければ戦って倒すしかないことは言うまでもない。

 一匹や二匹なら彩の衝撃波で何とかなるだろう。でも、もし集団に出くわしたら、今のタダシたちではお手上げなのだ。

 是非ともパーティにプリーストを加えておきたいところだった。普段はヒーリング係でも全然構わない。

「通常の戦闘では、私たちは主にサポートの呪文を使います。目くらましや強制睡眠、身体機能増強などですね。基本的に魔道士は殲滅の専門家、プリーストはサポートの専門家と考えると分かりやすいかもです」

 フレイが丁寧に説明した。

「なるほど……」

 タダシは餓狼団との戦いで、ザハの目くらましが大いに役立ったことを思い出して頷いた。

 

 フレイをスカウトできないだろうか。タダシは考えた。

 きっと頼りになるに違いない。しかも美人だし胸も大きいから、主に自分の士気が上がる。

 ―― でも昨日の様子だと何か大事な使命を抱えているみたいだった。残念ながらスカウトは無理だろう。とても残念だけど。

 じゃあ、ザハは?

 いや、彼も無理だ。だって祭司頭らしいし。保証もなしに仕事を辞めてくれなんて言えるはずがない。

 先のことを考えると悩ましいタダシであった。

 

 

 しばらく雑談しているとクリスナーヤが起きてきたので、タダシたちは宿を出てクンベの迷宮に向かった。

 大司教の孫娘は結構有名人らしく、朝っぱらから活動開始したタダシたちにフレイが同行しているのを見た髭の衛兵が、目を丸くしていた。

「『気』を見つけたのは、どのあたりでしょうか」

「地下5階の一番奥だな」

「地下5階ですか。たどり着くまでが大変ですね」

「ああ。何度か魔物と戦闘になるのは避けられないから、あんたは安全な位置まで下がっていてくれ」

 タダシが真面目な顔をして言った。

 フレイを危険な目に遭わせたりしたら、大司教にもフレド爺さんにも顔向けできない。

 だから今回に限っては、稼ぎになる魔物でも安全第一で始末するつもりだった。

「あら、私にもお手伝いさせて下さい」

 タダシの言葉にフレイが口を尖らせた。

「いやいや、万一のことがあったらいけないからいいよ」

「私、これでも腕前はエルド・マール教団で上位十傑に入るんですけどね」

 フレイが不敵に笑う。

 見かけによらず武闘派なのかもしれない。

「そう? じゃあ、ケースバイケースで行くかな」

 タダシが譲歩した。

 譲歩したけど、安全第一の方針を変えるつもりはなかった。

 地下4階までは、全てクリスナーヤに焼き払ってもらえば問題ないはずだ。

 クリスナーヤはどれだけ呪文を連発しようとマナ切れとは無縁だから、安心して任せられる。

 問題は地下5階だ。面倒な魔物が出なければいいのだが。

 

「えっ、どうなっているのですか」

 クンベの迷宮に潜ってタダシの手に彩が現れた瞬間、フレイが驚きの声を上げた。

 まあ、妥当な反応だろう。何もないところからいきなり派手に光る剣が出現するのだから、普通は驚くに決まってる。

「俺の相棒なんだ。変わってるでしょ。コイツがいなければ、俺はとっくに死んでる」

 タダシがちょっと得意顔を見せた。

「古代の魔法がかかった剣……ですか?」

「どうだろうな。詳しいことは俺にも分からない。少なくとも1000年以上『生きてる』みたいだけど」

「なんと不思議な……」

 フレイは彩が気になるようで、何度も目をやっては首をかしげていた。

 

 地下1、2階はクリスナーヤが進行方向に魔物を見つけ次第、火球で退治してくれたので、歩みを緩める必要すらなかった。

 地下3階も同様だった。魔物の群れをシールドで閉じ込めて炎の壁で焼き払うだけ。

 地下4階には知能があってたやすく捕獲できない魔物が出る。油断ならない階層だが、タダシとクリスナーヤが連携してかかれば苦労するほどでもなかった。

 そして地下5階に降りた時だ。

「ハンナ様の杖が……」

 フレイが呟いた。

「どうした?」

「杖が反応しています」

 フレイが持つハンナの杖は、見るからに年季が染みこんだ長杖だ。骨太でタダシが読めない文字がびっしりと書き込まれており、杖頭には精巧な装飾が施されていた。

 タダシの目にはどう反応しているのか見分けが付かなかったが、フレイは何か変化を感じ取ったようだ。

「とすると、フレド爺さんの見立て通りだったと言うわけか……」

 『気』に杖が反応している。

 さすがは賢者、よくあれだけの情報で当たりがついたものだと感心するしかなかった。

 

「タダシさん、魔物の群れがいます」

 昨日の隠し階段に向かう通路に入ったところで、クリスナーヤが立ち止まって前方を指差した。

「うぇ、あいつらかよ。沢山いるなぁ」

 タダシも分岐の四つ辻をびっしりと埋める魔物の群れを認めた。

 見た目は何の変哲もないスライム。お馴染みのゼリー状の軟体生物だ。

 いかにも弱そうなのだが、見かけに反して倒すのはひと苦労なのである。

 シールドを張っても、壁との隙間から抜け出してくる。その上魔法に耐性があって、クリスナーヤの呪文を食らっても簡単には死んでくれない。

 更に厄介なのは、抜け出してきた奴をタダシが斬りつけると、急所に当たった時以外は分裂して増えてしまう点である。

 倒すには地道に一匹ずつシールドに閉じ込めて、灰になるまで炎で焼き尽くすしかなかった。

「防御します」

 クリスナーヤが四つ辻の手前に物理シールドを張った。

 通路の断面形状に合うようにコントロールされたシールドだが、でこぼこした部分に隙間が出来てしまうのはどうしようもない。

「ちょっと長い戦いになる。あいつら、メチャクチャしつこいんだ」

 タダシはフレイに自分たちの後ろに下がるよう合図した。

 頭の中で、最悪の事態に陥った際の退却手順を確認する。

 クリスナーヤがタダシたちに気付いて動き始めた魔物どもに、先制攻撃のブリザードを放った。

 物理シールドの向こうが白くかすみ、隙間から漏れる冷気が肌を撫でた。

 クリスナーヤのブリザードは、本来なら敵を一瞬で凍結させる威力がある。なのに魔物は幾分動きが鈍っただけだった。耐性を備えている証拠だ。

 

「ようやく私の出番ですね」

 フレイは下がるどころかクリスナーヤと並んで立った。

「お、おい」

 タダシが引き戻そうと手を伸ばす。

「大丈夫。まあ見ていて下さいな」

 フレイが短く詠唱して腕を伸ばすと、驚いたことに一斉にスライムどもの動きが止まった。

 シールドの隙間を抜けようとしていた奴も、そのままの形で静止している。

「クリスナーヤさん、もう一度ブリザードを。今なら効きます」

「え? は、はい」

 クリスナーヤが半信半疑でブリザードを唱えた。

 するとフレイが言う通り、スライムどもはカチンコチンに凍り付いてしまうのだった。

「どうなってるんだ?」

 タダシが狐につままれたような顔をしていた。

「眠ってもらっただけです。さ、始末するのは今ですよ」

「あ、ああ……」

 タダシは凍ったスライムを手当たり次第に割って回った。パリンパリンと景気のいい音が響く。

 これまで散々苦労して倒したのが嘘のような簡単な作業だった。

「ううむ、すごいな」

「どうです? サポートの呪文も役に立ちますでしょう?」

 フレイがドヤ顔で胸を張った。

「これほどとは。正直、驚いた」

「素晴らしいです!」

 プリースト恐るべし。タダシたちは認識を改めるのだった。

 

 

 隠し階段を降りて小部屋に入る。

 またあの魔物が潜んでいるのではないかという不安がタダシの心をよぎったが、それはなかった。

 小部屋は昨日の状態のままだ。

 埃っぽい匂いが鼻についた。

「……」

 タダシはまっすぐに奥の崩れた壁に向かった。

 おそるおそる、積み上げた石囲いの中を覗き込む。

「お。いたいた」

 謎の『気』は囲いの中をうろうろしていた。

 昨日よりも少し大きくなっているような気がする。

(よしよし、ちゃんと大人しくしていたみたいだね)

 ほっと胸をなで下ろす。彩も嬉しそうだった。

「来てくれ。ここだ……」

 タダシは入り口で立ち止まっているフレイを手招きした。

「……」

 フレイが神妙な顔をして『気』に近付く。

 傍目にも緊張していることが分かった。

 杖の先が小刻みに震えている。

「大丈夫か?」

 ぶっ倒れるのではないかと心配になったタダシが声をかけた。

 フレイが無言のまま頷く。

 それから覚悟を決めたように壁を背にして立ち、ハンナの杖を捧げ持った。

 すると、謎の『気』が見る見るうちに輝きを増して、直視できないほどになった。

(すごいエネルギーだわ。タダシ、少し離れて。ナーヤも)

(あ、ああ。フレイは?)

(この子は大丈夫。耐える力があるわ)

(分かった)

 タダシはクリスナーヤの手を引いて数歩下がった。

 

 不思議な光景だった。

 まばゆいエネルギーの塊が幾筋にも別れてたなびきながら、ハンナの杖に吸い込まれていく。

 一定量のエネルギーが吸収される度に、杖頭から様々な色の光が放出されて渦を巻いた。

 その様子は色とりどりのガス雲を捉えた宇宙空間の写真に似ていた。

 光が放出されると同時に、ハンナの杖にびっしりと書き込まれた文字が薄くなって、洗ったように白くなっていく。

「ぬぉぉ……」

 タダシは身体がでたらめに動き出そうとするのを、苦労して押さえつけなければならなかった。髪の毛が逆立ち、奥歯が勝手にガチガチ鳴り始めて止まらない。

 精神体であるが故に、この種のエネルギーの影響を強く受けてしまうのだ。

(タダシ、耐えて)

(何なんだ、この力は……)

 彩もシールドを張って防御してくれているようだが、防ぎ切ることは出来なかった。

 同じく魔力に敏感なクリスナーヤも、額に汗を浮かべて脚を踏ん張っている。

「ハンナ様、私は……」

 フレイは杖を捧げた姿勢のまま、気丈に立ち続けていた。

 膨大なエネルギーが部屋中をゆっくりと回転しながら、杖頭の一点に収束していく。

 

 やがてエネルギーの塊が完全に吸収されたとき、ハンナの杖は緩やかに弧を描いた形に姿を変えていた。

 それまでの古びた重厚な外見から、若返って覚醒を果たした印象だ。

 磨き上げられた白檀よりも白く、気品があって美しい。

 杖頭には様々な色の光を内包した宝玉が収まっていた。

 それは確かに、タダシが目にした謎の『気』が昇華した形に相違なかった。

 

「終わった……のかな」

「そのようですね」

 かなりきつかった。タダシとクリスナーヤが顔を見合わせて安堵の表情を浮かべる。

 フレイは杖を抱いて立ったまま動かなかった。

(あ……)

 彩が小さく声を上げた。

(どうした?)

(あたし、知ってる)

(何を?)

(あの杖。昔、パーティのメンバーだった子の装備)

(……)

(ファナ……ハンナ……そっか)

 

 

「なあ、大司教の『また戦いが始まるのか』って言葉だけど……差し支えなければ意味を教えてもらえないか」

 タダシが思い切って訊ねた。

 謎の『気』がハンナの杖を活性化させたことは、目の前で見て理解できた。

 でも、それがどう大司教の言葉につながるのか。

 このままフレイをガルムンドの町に送り届けてサヨナラしたら、謎のままで終わってしまう。

 一介の冒険者の立場で気安く大司教に会いに行けるはずもないし、気になって飯も喉を通らないではないか。それはよくない。

「それは、この杖が邪を討つものだからです。ハンナ様の杖が蘇る時、すなわち邪がふたたび現れ出でたる時」

 フレイが静かな声で答えた。

「邪とはどのようなものなのですか」

 クリスナーヤも気になるようだった。

「まだ『ここにいる』『あそこにいる』と言える時ではありません。でも、間違いなく現れます」

「あんたはその邪を討ちに行くのか?」

 タダシはフレイが『私は行かなくてはなりません』と語ったことを覚えていた。

「はい。私はこの杖を託された者ですから」

「お一人で……ですか?」

 クリスナーヤが訊くと、フレイが首をゆっくりと横に振った。

「もちろん、同じ使命を持つ仲間たちとです。プリーストが一人で戦えるはずがありませんもの」

 それからフレイはタダシの方を向いて「私の考えでは、それはあなたたちだと思っています」とにっこり笑った。

 

「何だってー!?」

 驚いたのはタダシである。

 自分はたんまり稼いだら、お城みたいな家に住んで毎日うまいものを食うつもりでいるのだ。そんな大それた使命なんて聞かされていない。

 そもそもその手の難儀は、勇者とか呼ばれる人種が背負うのがお約束ではないのか。

「今はご存じない。それだけのことだと思いますよ。だって、単なる剣士に古代の魔法の力を宿す剣が従うはずがないじゃありませんか」

 フレイが彩を指して自信たっぷりに言うので、タダシは不安になった。

(おいっ、彩。どうなんだ?)

(さあ? あたしだって先のことは知らないよ?)

「し、知らないって言ってるぞ」

 うわずった声で叫ぶタダシ。

「ですから、今はご存じないだけかと」

 フレイは動じなかった。

「ううむ、しかし……」

 タダシがうなる。

 クリスナーヤはタダシがどうするつもりか黙って見ていた。

 

 今回の出来事を単なる偶然と片づけるには無理がある。

 タダシにしてもそれは理解できた。

(……なあ、さっきの話を聞かせてやってもいいか?)

 少し間があって、タダシがそっと訊ねた。

(うん、いいよ)

 彩が穏やかに答える。

 何にせよ、逃げ出したくはない。

 彩の記憶をそのまま告げよう。どう判断するかはフレイ次第だ。

 タダシはそう決めた。

「……当時はハンナじゃなくて、ファナと呼ばれていたそうだ」

「はい?」

 フレイがいぶかしげにタダシを見つめる。

「うちの彩が、その杖の持ち主と同じパーティだったらしい」

「え……」

 フレイは絶句したまま、しばらくタダシの顔と、無造作に手に握られた剣(あや)を見比べていた。

 クリスナーヤも目を丸くしている。

「こ、これはもう間違いありません!」

 ああ、やっぱりこうなるのか。

 感極まったフレイに抱きつかれながら、タダシはちょっぴり後悔したのだった。

 

「俺は(こいつ)に拾われた。だから、とことん付き合ってやろうと思う」

 タダシが目を上げて言った。

 勇者でもないのに、大変な荷物を背負ってしまったようだけど仕方ない。

 使命があるならそれでいいじゃないか。行けるところまで行ってやる。

(タダシちゃん、格好いい)

(うるさい、黙れ)

(やっぱ、あたしが見込んだだけのことはあるよ)

(この流れで「や~めた」なんて言えるはずないだろうが)

 心の中で彩とじゃれ合いつつも、タダシは気分が高揚するのを感じていた。

 

 そうしてタダシたちは、フレイを加えて3人パーティになったのだった。

 もちろんクリスナーヤからも彩からも異議はなかった。

 

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