タダシがこの世界に来てから3ヶ月ほど経過した。
朝練はもちろん、毎夜の素振りも真面目に続けている。
努力の甲斐あってか、今やメダルの刻印は『EEE』である。ギルドマスターのガルフによると、異例の成長ぶりだそうだ。
最近のタダシの主戦場は、クンベの迷宮の地下1階と2階だ。毒ヘビ狩りは卒業した。
クンベの迷宮は東の丘をふもとに沿って回り込み、低木地帯が途切れたところに入り口がある。タダシの足で、つまり走って半時間ほどの距離だ。
地下8階まであって魔物も多く、初心者から中級者まで幅広い冒険者たちが探索に訪れる人気スポットだった。
それと、内輪の大事件があった。それは、彩がたまに人間の姿を見せるようになったことだ。今のところ宿にいる時だけだが、ひょっこりと心の中から抜け出してくるのだ。
見かけは中学1、2年生くらいの女の子。ピンク色のポニーテールで、美人と言うよりも可愛い系の顔立ちをしている。目が大きく表情豊かだった。
誰が見ても「こいつはおてんば娘に違いない」と思うだろう。そしてそれは正解だ。
ただ、深いあかね色の瞳には経験に裏付けされた知性の光があって、単なる小娘ではないことは明らかだった。
その年頃の女の子にしては、メリハリのきいた曲線の持ち主だった。ひとつだけ言うなら、胸についてはボリューム不足であった。将来に期待するほかないだろう。成長するという前提ありきの話になるが。
彩がいきなり現れたのは、タダシがナーチェと呼ばれる木の実を持ち帰って食している時だ。
朝練開始前の雑談で美味だという情報を得たので、クンベの迷宮から戻る道すがら木登りして採ってきたのである。
ナーチェはメープルシロップに似た上品な味わいの、木の実というよりも果物に近かった。
こんな旨いものがあるのかと喜んでいたところ、「タダシだけずるい」と彩が現れたのだ。大好物だったらしい。
仰天したタダシは椅子から転げ落ちた。
彩はシーツ状の布を身体に巻き付けただけの、いわゆる『女神スタイル』だった。なのでタダシは記憶を頼りに、ブレザーとスカートの女子制服を絵に描いて見せてやった。こっちの方がオシャレだし可愛く見える、と。
ちなみにタダシの絵の腕前は、某投稿サイトで稀にランキング下位に入るくらいだ。だからある程度の説得力はある。
それまで現れなかったのは心の中に引きこもっていた方が楽だし、会話に不自由もないから。本人はそう言っていた。
以来、制服姿の
「今日はさっぱりだな。たまには場所を変えて気分転換するか」
クンベの迷宮に潜ったものの、半日うろついても収穫ゼロに嫌気が差したタダシが呟いた。
そういう時はある。
とは言っても、タダシが知っている狩り場は東の丘の毒ヘビか、その奥にある洞窟くらいだった。
クンベの迷宮の地下3階は、群れで行動する魔物が多いらしいのでまだ行っていない。個体では弱くても、同時に襲いかかられると単独行動のタダシには分が悪いからだ。
一応、朝練で信用できそうな知り合いも出来たことだし、ぼちぼちパーティ戦も経験してみたいとは思っている。
(そう言えば、髭の衛兵さんが東の丘の洞窟に見たことのない魔物が出たって言ってたよね)
「そんな話もあったな」
よし行ってみるかと、行動に移すタダシ。
あそこの洞窟は運が良ければオオハリネズミが大猟だし、最悪でも東の丘で毒ヘビを狩れば少しは稼げるだろう。
(変な匂いがしない?)
東の丘の洞窟に移動してすぐに彩が言った。
「ああ。家畜小屋の匂いだな、これは」
以前はこんな匂いはしていなかった。
見たことのない魔物の噂は本当なのかもしれない。
タダシはすぐに彩を構えて臨戦態勢を取った。
洞窟の照度に目が慣れるまでじっと待つ。それから足音を殺し、死角を作らないように壁に沿って進む。
「いるな……。気配がするぞ」
(うん、あたしもそう思う)
今のタダシは、簡単に魔物の不意打ちを食らうような甘ちゃんではない。
瞬時に自分の手に負えそうか判断し、危険だと思ったら撤退する。
冒険者として、基本的な動きが出来る程度には成長していた。
最初の曲がり角の先に動くものが見えた。オオハリネズミだ。
タダシは腕を伸ばしてプスリと首の後ろを突き刺した。
「一匹確保」
中枢神経を切断されたオオハリネズミは、ビクンと丸い身体を痙攣させて弛緩した。
拾い上げ、逆さにして血を抜いてから獲物袋に放り込む。
そしてさらに奥へ。
数歩も行かないうちに、コウモリが数匹襲いかかってきたので叩き落とした。
残念ながらこいつらは売り物にならない。
警戒しつつ洞窟の中央付近まで進む。
途中で出くわしたのは、ガラガラヘビみたいな模様の双頭のヘビが一匹だけだ。
タダシはヘビに威嚇音を発する暇も与えずに頭を刎ねて皮を剥いだ。
こいつは結構レアで、ザックじいさんの店に持ち込めば毒ヘビ5匹分の稼ぎになる。
モノによってはギルドでは買い取ってくれなくても、他でいい値段で売れることもあるのだ。
タダシは皮剥ぎに彩を用いると怒るので、腰の短剣を使った。
「匂いがきつくなってきたな」
近くにいる。間違いなかった。
タダシは地面にコウモリのものと思われる骨が散乱しているのを見つけた。
何者かに捕食されたらしい。
さらに進んで目を凝らすと、岩陰に動くものがあった。
タダシはそいつを敵として認識した。
一匹だけのようだ。向こうもこちらに気付いて様子を覗っている。
(ヤバい能力を持っていそうか?)
(……魔力は感じ取れないわね)
(よし……じゃあ殺るか)
壁を背に摺り足でさらに数歩進む。
薄闇の中に赤く光る二つの点が浮かび上がった。魔物の目だ。
敵は真っ黒い毛皮に包まれた、子牛ほどの大きさの四つ足だった。
確かにこれまでに見たことのない魔物である。
タダシは顔を四つ足に向けたまま、目だけ動かして他に敵が潜んでいないことを確認した。
四つ足がうなり声を漏らして起き上がる。
ガチガチと下あごから伸びた牙が嫌な音を立てた。
タダシが低く腰を沈め、地面を蹴って跳んだ。四つ足も一瞬遅れてタダシ目がけて突進を開始する。
流星剣の残光が尾を引く。
勝負は一瞬で決着がついた。
首から先を失った四つ足の胴体が惰性で数歩駆けて、どう、と倒れた。
斬り落とされた頭部は、タダシの足元に転がっている。
胴体の切断面から噴水みたいに噴き出す血が地面を濡らし、鼓動のリズムに合わせて生命の残滓を吐き出しながらゆっくりと活動を停止した。
「こいつの突進をまともに食らうとまずかったな」
タダシがほっと息をつく。
観察したところ、巨大な豚かイノシシのバケモノのようだった。
潜んでいた場所には大量の骨が残されている。
タダシが「これが匂いの発生源か」と顔をしかめた。
「食い意地の張ったことだ。洞窟の『先住民』も災難だったろう」
さて、『戦利品』をどうしたものか。
タダシは巨大な肉塊を前に途方に暮れた。
このバケモノは食料になりそうだ。つまり売り物になる。
タダシは胴体部分を持ち上げようと試してみたが、すぐに断念した。
間違いなく数百キロはある代物だった。担いで戻るのは無理だ。
(ギルドの代行サービスを頼んだら?)
彩がさりげなく言った。実に頼りになる相棒である。
「ああ、そういうのがあったな」
タダシはギルド証に名前を彫ってもらう待ち時間に、ギルドの活動内容について説明を受けたことを思い出した。
確かにその中に代行サービスというものがあった。
つまりギルドに手数料を払って、獲物を回収してもらうのである。
今回の例では、お肉を運ぶ役の駆け出し冒険者数名と、上位レベルの護衛役数名にギルドから声がかかり、臨時収入を得ることになる。
タダシとしても手取りは減るが、丸々失うよりはずっと良かった。
こういう需要が他にもあったのだろう。
ただ見込みを誤ると赤字になってしまうので、使いどころの難しいサービスではある。
「まずは食い物になるか鑑定してもらわないと始まらないな。彩、協力してくれ。こいつの脚を一本切り落として持って帰る」
(ちょっと、そういう用途にあたしを使わないでって……)
「いやいや、こんなぶっとい脚なんか短剣じゃ簡単に切れないぞ? 切れ味抜群のお前なら一発だろ?」
(と、当然でしょ!)
彩の気が変わる前にと、タダシは長剣彩空をひと振りしてバケモノの後ろ脚を根元から切断した。
それでも担ぐと腰がふらつく重さだ。
「これで売り物にならなかったらアホすぎるな。その時は笑ってくれ……」
タダシはギルドの購買に魔物の脚を持ち込んだ。
ちなみに町の入り口で髭の衛兵が「旨そうだなぁ」と物欲しそうだったので、ひと固まり分けてやった。
まだ未鑑定だからと言っても、「これは食える匂いだ」と自信たっぷりに言い切る相手に根負けした形だ。
まあ、彼には世話になりっぱなしだから、タダシとしても面目躍如である。
「ほほう。そいつはこの辺には生息しない筈じゃがのう」
購買のフレド爺さんが、カウンターの向こうから獲物の毛並みを一瞥するなり言った。
見た目はくたびれた老人だが、現役時代に賢者まで上り詰めた魔道士で、知らぬことはないと言われるほどの博識だ。引退後は経験を生かしてギルドの手伝いをしながら、余生を楽しんでいるらしい。
タダシが洞窟で戦った四つ足は『底なしの大食らい』という意味の長ったらしい名前がついており、主に南方に生息しているそうだ。
「売り物になりますかね」
タダシの興味はその一点だった。
「うむ。こいつの肉は臭みがなくて旨い。毛皮も使える。どうするかの?」
「もちろん売るよ。持ちきれなかった分がまだ洞窟に残ってるくらいだ」
タダシが小さく「やったぜ」とポーズを決めた。苦労して担いできた甲斐があったというものである。後で髭の衛兵にも「安心して食え」と伝えてやろう。
「どれ」
フレド爺さんは若い者に重さを量らせ、金額を提示した。
脚一本で300ゴールド。結構な稼ぎである。
洞窟に残してきた分についても、危険度の低い近場ということで『代行サービス』の手数料を払ってなお充分に元が取れそうだった。
「ねえ君、あの『底なしの大食らい』って奴はどこに出るのかな。良ければ教えてもらえないか?」
ギルドを出たところで、話を聞いていたらしい二人組に呼び止められた。
どちらも剣と斧を持った近接戦闘系だ。
「ん、東の丘の洞窟さ」
タダシが答える。
「ああ、あそこか。まだ他にもいるだろうか」
「どうかな。アレは洞窟の中程で仕留めたが、その先は分からない」
いい稼ぎになると知って、自分たちもあわよくばと考えただろうことは想像がついた。
ちらと見たところでは、一人のメダルの刻印は『FF』だった。
「俺たちも東の丘の洞窟なら入ったことがある。あいつ、どのくらい強かった?」
「突進に気をつければ問題ない気はするが……」
タダシが曖昧な返事をした。
別に隠し事をしたわけではない。一瞬で勝負がついたので、あの四つ足が本来どんな戦法を取るのか答えようがなかったのだ。おそらく体力が続く限り突進を繰り返すだけだとは思うが。
「分かった、ありがとう」
「……」
タダシは止めた方がいいのではないかと思った。Fランクの駆け出しでは多分苦戦する。
いや、こいつらにもプライドがあるだろうし、無理だと判断すれば逃げるだろう。
タダシが迷っている間に二人組は行ってしまった。
そして翌朝、タダシは朝練から戻るなりガルフに呼び出されることになる。
東の丘の洞窟から助けを求めて駆け込んできた男が言うには、仲間二人がでかいイノシシみたいな魔物に追い詰められて取り残されたというのである。
二人とも、魔物が入れない狭い岩の裂け目に身を潜めて避難しているらしい。
ガルフは直ちに救援隊を組織した。
タダシが呼ばれたのは、昨日その魔物と戦った経験があったからである。
あの二人か。タダシは止めておくべきだったと後悔した。
おそらく念のためにもう一人仲間を引き入れたのだろうが、それでも歯が立たなかったのだ。
救援隊のメンバーはDDランクの女魔道士とプリースト、それとDランクの戦士の3人だった。
戻ってきた男は全力で走り続けたらしく、立っているのもやっとの有様だったので、ギルドで待機しているよう命じられた。
タダシの役どころは、戦闘要員ではなくて案内係だ。
現場に向かう道すがら、タダシは知っている限りの情報をメンバーに伝えた。
東の丘の洞窟に入る。
さすがに闇雲に先を急ごうとする者はいなかった。
示し合わせたように、薄暗がりに目が慣れるまで警戒しつつ立ち止まる。
「お前、変わった剣を持っているな。先祖代々伝わる家宝の剣ってところか?」
ハルバートを装備した戦士が、タダシが持つ
妖しく刀身が光るせいで、目立つことこの上もないのである。
「まあ、そんな所だ」
タダシは話を合わせておいた。
「すげぇな。まるで生きているみたいだ」
(なあ、光らないように出来ないか?)
こっそりと彩と交渉する。
(出来るわよ。威力は落ちるけどいい?)
(良くはないが……時と場合で使い分けてくれ。下手すると敵に居場所を教えているようなものだし、何より目立ちすぎる)
(うん、了解)
刀身の光がふっと消えると同時に、力が少し抜けた気がした。
昨日四つ足を仕留めた場所を過ぎた。
『代行サービス』のおかげで肉塊は跡形もなく回収され、地面にどす黒く血の跡だけが残っていた。
「こっちだ」
壁に沿ってゆっくり進む。
「やっぱりここってコウモリが多いわね」
女魔道士が短く詠唱すると、掌にボールほどの火球が出現した。
時おり襲いかかってくるヘビやコウモリといった雑魚は、女魔道士の火球で瞬時に黒焦げにされるのだった。
しかも不思議なことに、掌の火球は投げてもすぐにポッと復活する。
初めて見る攻撃魔法にタダシは興味津々だった。
「つまり、敵が突進してくると言うこと以外は分からないのですね」
「ああ、その通りだ」
「その類いの魔物なら、突進に巻き込まれなければそう問題はあるまいよ」
洞窟の中を進みながら戦術を打ち合わせる。
「あっちだと思う」
タダシは二股の分かれ道の奥に魔物の気配を感じ取った。
あの四つ足の波長だ。それも複数。
二股の最奥は半球状の広い空間になっている。
コウモリが多くて面倒なだけなので、タダシは一度行ったきりだった。
「いやがるぞ」
戦士がハルバートを構えて臨戦体勢を取る。
足音を潜めて近づくと、魔物のうなり声と岩を削るガリガリという音が聞こえてきた。
「魔物が騒いでるって事は、少なくとも生きていそうだな」
「無事でいてくれるといいのだけど……」
最奥部の状況を確認出来る位置まで進む。
昨日の四つ足が2匹、鼻息も荒く岩の隙間に身体をねじ込もうとして苛立っている様子が見えた。
硬い岩が魔物の牙に削られて大きく窪んでいる。
昨日の二人は狭い岩の隙間に身を潜めているようだ。
さぞかし生きた心地がしないことだろう。
手前には大量のコウモリの骨に混じって、もう一匹の四つ足が地面に転がっていた。
そいつは息絶えているようで全く動きがない。
連中も一匹だけは倒す事が出来たみたいだ。
「どうする? こっちに気付かれる前に、あんたの魔法で黒焦げに出来たら手っ取り早いが」
「あの大きさだと、二匹同時に動きを止めるのはちと厳しいでしょうな」
プリーストが冷静に言った。
「隠れている人たちを巻き添えにしては元も子もありません、おびき出して始末しましょう」
「ああ、それがいい」
「プリーストさんは目くらましで動きを封じてもらえますか。私は雷撃を放ちます。戦士さんはトドメを」
女魔道士が魔物から目を離さずに言った。
案内役のタダシは作戦の員数外だ。ちょっと寂しい。
「不測の事態になった時は、タダシさんも加勢お願いします」
「あ、ああ」
先に女魔道士が、少し遅れてプリーストが詠唱を開始する。
呪文が発動する直前のタイミングで、戦士が前に踏み出して鋭く口笛を吹いた。
「何だ?」「何だ?」
岩の裂け目に執着していた四つ足どもが振り向く。
そして『新しいエサ』を発見した。
そのヨダレを垂らした顔は「食い物だ!」「食い物だ!」と驚喜しているように見えた。
タダシの目には、そいつらこそ食い物にしか見えなかったが。
「食わせろ!」「食わせろ!」
向き直った魔物どもが、先を争いながら突進してくる。
その醜悪な顔面に、プリーストが放った目くらましが命中した。
「プギャッ!?」「プギャッ!?」
慌てた魔物が見た目通りに豚に似た奇声を発しながら、あらぬ方向に走り出そうとする。
次の瞬間、空間が青白くフラッシュして、幾筋もの閃光が四つ足どもを轟音とともに貫いた。
女魔道士が放った雷撃は、対集団に用いる上位魔法だった。先ほどの火球の比ではない。文字通り、落雷に相当するエネルギーが魔物の身体を直撃したのである。
地面が衝撃で振動し、天井からパラパラと岩の破片が落ちてきた。
一匹はその場で即死。もう一匹は脚を痙攣させながら起き上がろうともがく所を、戦士のハルバートに心臓を突かれてとどめを刺された。
魔物の蹄には、電流が身体を通り抜けた際に出来た穴があいており、内側から湯気が上がっていた。恐るべき威力である。
「すげぇ……」
タダシは口をあんぐりと開けて、上位ランクの冒険者たちの戦いぶりを眺めていた。
加勢なんか不要であることは明らかだった。
戦いが終わって、九死に一生を得た二人が岩の裂け目から出てきた。
一人は腕の骨が折れ、もう一人もズボンが出血で濡れ雑巾みたいになっている。
ひどい有様だった。
顔をゆがめながら何度も「すいません」と繰り返す。
「ま、分かっているようだから、私からは何も言いますまい」
プリーストが、怪我をした部位に回復呪文をかけてやった。
ともあれ、無事で何より。
「一度痛い目に遭っておけば、次からは用心するだろうよ。そうやって強くなっていくもんだ」
戦士がハルバートの先で魔物の身体をつついて調べていた。「こいつ旨そうだな」とか呟いている。髭の衛兵の同類なのかもしれない。
「それ、脚一本が300ゴールドになったぞ」
タダシが言うと、戦士がヒューと口笛を鳴らした。
脚だけ数えたって12本もある。場の空気が和んで、冷静なプリーストまで笑顔を見せた。
「悪くない話ですな」
「ふふっ、たまにはこういう事がないと」
もしかしたらさほど怒られずに済むのではないか。
「あなたたちは、戻ったらガルフさんがみっちり絞ってくれますからね」
二人は甘い期待をしたようだが、女魔道士の言葉にがっくりとうなだれるのだった。
それから間もなく、ガルムンド中の酒場に期間限定のお肉メニューが並んで、冒険者たちを喜ばせたことは言うまでもない。