「あきつ丸!戦闘に参加出来ないなら下がってろ!いくらなんでもこの数ではお前を気にかけられん!」
いくらなんでも数が違いすぎる。先程から人間が乗る軍艦も砲撃を仕掛けているものの、やはり効果は薄い。
「新高殿、さすがにあの数は1人では無理であります!自分も戦うであります!」
『敵艦載機視認!敵航空母艦は発見出来ず!対空戦闘用意!』
戦艦だけではなく航空機までとは、これは敵も本気で潰しに来ているらしい。
『艦娘部隊が戦闘海域に到着!作戦行動を開始します!』
戦闘準備が整ったのであろう、続々と艦娘部隊が到着し、敵艦隊に集中砲火を浴びせる。
『艦娘だ!これで勝てる!』
『お前ら、あいつらにだけいい格好させるなよ!海軍魂を見せ____』
無線の音声が止まった。何があったのかと味方の船を見ても、特に異常はない。通信が途切れたわけでもないようだが...。
『嘘...だろ...。て、敵艦隊、損害なし!』
絶望したような声が無線から流れる。
『敵艦隊周辺に強力な重力磁場を確認!砲撃が無効化されています!』
「弱りましたね...緊急出撃できた艦娘は、軽巡洋艦と駆逐艦だけ 。彼女らの主砲では...。」
「新高殿!なぜ撃たないのでありますか!」
「艦娘が邪魔だ!ここから撃てば確実に巻き込む!」
あきつ丸が話し終わるのとほぼと同時に、深海棲艦の砲撃が始まった。砲弾はすべて、増援にかけつけた艦娘部隊に向けられている。一斉砲火をまともに受けた艦娘部隊は、ろくな抵抗もできずに砲火の前に倒れた。砲撃をくらった小さな艦娘が、吹き飛んで宙を舞う。深海棲艦は嘲笑うかのように、身動きがとれない彼女に砲撃を集中する。空中高く打ち上げられた彼女は、ぼろ雑巾のようになって海面に叩きつけられた。他の艦娘たちも、一方的な攻撃の前に撤退を開始する。しかし、敵もみすみす逃したりはしない。1隻、また1隻と、撤退する艦娘を砲弾が吹き飛ばす。
「新高殿!」
「新高少佐、艦娘部隊は撤退を開始しました。砲撃を開始してください。」
あきつ丸だけでなく、妖精からも攻撃を促される。
「よし...砲撃開始!」
敵艦隊の旗艦と思われる深海棲艦に、全砲門が一斉に火を吹く。着弾とともに、敵艦隊は爆煙に消えた。
「当たったようだが...。」
『煙が晴れます...敵艦隊旗艦、レ級大破!凄い...重力磁場を振り切った!』
敵艦隊旗艦が、煙の中から姿を見せる。80cm砲弾の雨に晒された彼女は、左腕がちぎれた状態で、信じられないような顔でこちらを見ている。
「次弾装填完了、発射!」
呆然と立ち尽くす彼女に、さらに追撃を浴びせかける。まともに直撃を喰らった彼女は、成すすべもなく沈んでいった。さて、次々いくぞ!
『敵艦隊旗艦レ級並びに戦艦ル級4隻、轟沈!残存艦艇、浮き足立っています!』
こちらが有利になったのを見てか、撤退していた艦娘たちが反転し、攻撃を仕掛ける。旗艦を沈められて混乱している深海棲艦達に、容赦なく魚雷が叩き込まれる。
「やったであります!大戦果であります新高殿!」
「お前は何もしてないがな...ッ!次!敵航空機接近!対空射撃!」
艤装についている対空兵装が展開し、敵航空隊に向けて攻撃を始める。
「無駄無駄無駄ァ!」
弾幕に突っ込んだ敵航空機が次々に墜ちる。なるほど、妖精が叫びたくなるのもわからなくもない。
『魚雷、戦艦ル級3隻に直撃!2隻轟沈を確認!...敵艦隊、撤退を開始!』
まさに命からがらといった様子で、深海棲艦が撤退を始める。敵航空機は、いつの間にか呉の空から消えていた。
『敵艦隊の撤退を確認。防衛部隊は負傷兵の撤収までその場で待機。繰り返す____』
恐らく司令部であろう場所から、戦闘終了の通信が入る。どうやら敵は完全に撤退したらしい。
「お疲れ様であります、新高殿。」
「全くだ。まさかいきなり実戦とは...。」
「お疲れ様でした、新高少佐。お陰で良いデータがとれましたよ。あ、早速なんですがね____」
「待ってくれ。戦闘終わりで俺も疲れてるんだ。...明日とかじゃ駄目?」
「何言ってるんですか、それとこれとは話が別です。今から試験再開ですよ。」
「ハッハッハ、ご冗談を...えっ、冗談だよね?」
「いいから行きますよ。まだとれてないデータがあるんですから。それとも反逆罪で捕まります?次はさすがに命の保証はないんじゃないですかね。」
「ひ、卑怯なり海軍!あきつ丸、なんとか言ってやってくれよ!」
「今晩...疲れた新高殿...癒す...ふむ。新高殿、さっさと試験再開であります。」
「ええい味方はいないのか!誰か、誰かぁぁぁ!」
俺の魂の叫びは、夕日に照らされた呉の空に虚しく消えた。
「ウオオオオオアアアーーーッ!」
「騒がしいであります。」
呉にも慣れてきた今日この頃。平穏な人生(モルモット)を謳歌している俺に届いた一通の手紙。それは...
『異動命令』
いやいや、落ち着け俺。確かに異動命令ではあるが、まだ行き先が前線と決まった訳では無い。むしろ俺のモルモットぶりを鑑みて、他の試験施設への異動とか____
「あ、新高殿の新しい任地でありますが、南国の島でバカンス(婉曲表現)だそうでありますよ。良かったでありますなぁ。」
「ノォォォォォーッ!」
よりによって南の島国である。何でこいつが知ってるのかはともかく、嘘だろおい...最前線じゃねえか...。
「まあ、これも仕方のないことであります。せいぜい頑張ってください。」
「いや、無関係みたいな顔してるけど、お前も来るんだぞ?その為にここにいるんだろ?」
「.........え?じゃあ...。」
あきつ丸が信じられないような顔でこちらを見ている。やれやれ...。
「一緒に南の島でバカンスしようぜ!」
「イヤァァァァーッ!」
こうして、俺とあきつ丸は南の島____『ラバウル』に向かうこととなった。
次回はいよいよ鎮守府へ(予定)!次回も一月後当たりを予定していますが、なにぶん年末ですので遅れてしまうかもしれません。それでは!