白い砂浜!青い海!照りつける太陽!南だ!島だ!バカンスだ!こんな環境で仕事が出来るなんて、なんて幸せ____
「暑い...。」
「焼け死ぬであります...。全裸になって海に飛び込みたい...。」
「お前はまだスカートだから良いじゃねえか。俺なんて長ズボンだぞ。」
「新高殿はスカートが履きたいのでありますか...?いや、自分は人の趣味を否定したりしないであります。ただ三メートルほど距離を空けていただければ嬉しいのでありますが。」
「暑くて突っ込む気にもなれん...。」
「外...突っ込む...なるほど、つまりそういうことでありますな。」
「ちげえよ。」
当然ながら、バカンスなどとは程遠い。しかもこのクソ暑いのに、俺は軍服、あきつ丸も軍服という見た目にも暑い格好である。というか長袖なので実際暑い。
「さっさと鎮守府へ行くぞ。ここにいたら暑さで頭がやられそうだ。」
「同感であります。しかし、どんな鎮守府なんでありましょうか...最前線でありますから、堅牢な建物なんでしょうな。海軍は金持ちでありますから、きっと豪勢な建物である可能性も...!へっへっへ、楽しみであります。」
「そうであってほしいな。まあ前線であるとはいえ、建物はしっかしているだろう。」
暑さでおかしくなった(元からかもしれない)あきつ丸が少し現実からトリップしている。とはいえこの暑さでは、俺もそのうち本当に頭がおかしくなってしまいそうだ。渡されていた地図を片手に、鎮守府が記されている方向へと進む。
「新高殿!きっとあれが鎮守府であり...ま...」
しばらく進むと、建物が見えてきた。が、これは...。住宅街などに一、二軒ほどある大きな木造の日本家屋を想像して頂きたい。俺達が見つけた建物は、まさにそれであった。ボロボロという訳では無いが、どう考えても敵の攻撃に耐えられるような建物ではない。
「オウフ...」
あきつ丸は絶句しているが、とりあえず中の艦娘とコンタクトを取らねばならない。予定では秘書となる艦娘が迎えに来てくれる事になっていたはずなんだが...。
「あなたが司令官さん、ですか?」
背後から聞こえた声に、思わず振り向く。そこには1人の女の子が立っていた。
「本日付けでここへ配属になった新高 武だ。君が秘書になる艦娘かな?」
「電といいます、よろしくお願いするのです。」
電と名乗った艦娘は、にこやかに笑みを浮かべた。可愛らしい娘だ。いかにも幼女、といった感じだろう。こんな娘が秘書になってくれるなら、前線へ来た辛さも少しは和らぐというものだ。
「新高殿、それは流石に犯罪であります。」
「何も言ってないんだけど?!」
「ロリコン提督なんて最低であります!」
「司令官さん、ロリコンなのですか...?」
「違うわ!ちょっ、電!誤解だから後ずさりながら泣きそうになるのやめて!俺が泣きそう!」
「さて、新高殿の事は憲兵に任せるとして...。電殿、司令部へ入る前に鎮守府全体の案内を頼みたいであります。我々も今後の行動に支障が出るのは好ましくないので...。」
俺の発言を華麗にスルーしたあきつ丸の意見により、先に鎮守府全体の施設を見て回ることになった。提督って上官に当たるんじゃないのか...?扱い雑すぎません?
「ところで電殿、司令部についてなのでありますが」
「あぁ、建物の事なのです?以前はコンクリート製の頑丈なものだったのです。でも少し前に吹き飛んでしまって...。前任の司令官さんが内地へ戻ったのも、その時に重傷を負ったからなのです。」
「そうか...大変だったろう。」
前線ともなれば、鎮守府そのものへの攻撃も有りうるということなのだろう。砲撃や爆撃に晒されれば俺もただでは済まない。頑丈な建物すら破壊する程の攻撃を加えてくる敵と、死への恐怖で体がこわばる。
「まったくなのです。資材置き場で陸奥さんの砲塔が爆発してしまって...。燃料と弾薬に引火して、そのまま建物ごとドカン、なのです。」
「そうか...えっ?」
前線ともなれば、人手不足で艦娘でも資材管理をしなければならないということなのだろう。資材の誘爆に巻き込まれれば俺もただでは済まない。頑丈な建物すら破壊する程の爆発を引き起こす身内と、死への恐怖で体がこわばる。
「幸い建物はほとんど修復できたのです。資材も皆で手分けして、大分集まってきているところなのです。」
そういう電には、少し疲れの色が見えた。恐らく前任の提督がいなくなってから、その代理として頑張っていたのだろう。
「...ご苦労だったな。」
電の頭に手を置き、軽く撫でる。いくら艦娘とはいえ、こんな小さな子にまで戦わせるのは少し気が引ける。もしかすると俺がモルモットにされている試作兵器も、艦娘への引け目から作られたのかもしれない。
「はわわ...///」
「...新高殿?憲兵をご所望でありますか?」
「待ってくれ落ち着こうあきつ丸。俺は少し頭を撫でただけじゃないか。」
頑なに憲兵を呼ぼうとし続けるあきつ丸をなんとか説得し、何故か顔が真っ赤な電に連れられ、ようやく司令部の建物へ入った頃には少し日が傾いていた。
「ふぅ、ようやくひと息つけるな...。」
太陽もとっぷり沈み暗くなった外を眺めつつ、執務室の椅子に腰掛けて独りごちる。異動初日という事もあって疲れが出ているようだ。布団も敷いたし、今日ははやく休んで明日からの執務に備え____
「新高殿ォ!酒であります!」
「木曾だ。お前に最高の酒を与えてやる。」
「いやぁ、軽巡寮の近くで迷っていたところを助けてもらったのであります。まあ最初は斬られるところでありましたが...。」
「侵入者だと思ったんだ...悪かったよ。お詫びに酒でもと思ったら、ここへ案内されてな。お前が新任の提督か...宜しく頼むよ。」
「...俺は今から寝ようと思ってるんだ。悪いんだが疲れていてだな...」
「あー!あー!新提督殿が艦娘を襲おうとしているであります!しかも用意周到な事に布団まで敷い____」
「疲れていると思ったがそんなことは無かったな!よぉし飲むぞ!」
「それでこそ新高殿でありますな。」
「少しだけだからな...。」
まあ、艦娘との親睦を深める為だと思えば良いか。この木曾と名乗る艦娘は、眼帯にマントに軍刀とかなり恰好いい。話し方も落ち着いているし、しっかりした性格なのだろう。
「さて、それでは...乾杯であります!」
「はぁ、明日から大丈夫かな、俺...。」
「不安なのか?」
しまった、ついうっかり口に出ていたようだ。部下に愚痴るのは少し恥ずかしい。ここは何か誤魔化しておこう。さて、どうしたものか...。
「(新高殿、ここは自分の言う通りにするであります。我に策あり、であります!)」
「(正直不安しかないんだが...いや、頼む。)」
「(ではこう言うであります。いや、大丈夫だ。心配事と言っても____)」
「いや、大丈夫だ。心配事と言っても大した事じゃない。」
「ほぅ...ならどんな事だ?」
「あぁ、実は俺は幼い子に興味があってな、さっきも駆逐か____」
「新高殿ォ!ストップであります!もげる!四肢がもげるぅ!」
「あきつ丸ゥ!!」
「ほんの冗談であります!ギブギブ!」
「...いいぜ。俺とお前の仲じゃないか。黙っておいてやるよ。」
「いや、誤解なんだ!俺は別にロリコンじゃないんだって!」
「往生際が悪いでありますよ新高殿ォいだだ!腕はそっちには曲がらないであります!」
「違うんだ!俺はノーマルなんだって!俺の好みは幼女じゃなくて、例えば...」
「雷巡でありますな!」
「そう!雷巡のような...あれ?」
「お前...。」
どうしよう。盛大にやらかしてしまったかもしれない。
「そ、そうか...いや、しかしな。今日あったばかりでそういうのは...あぁ、決して嫌なわけじゃないんだが!」
全身で、私は狼狽えていますよ、と表現してくる木曾。なんてことを...。
「やったでありますな新高殿。そんなに悪くない反応でありますよ?」
とりあえずこの馬鹿はもう一度シメておこう。
「待ってくれ木曾よ、誤解なんだ。」
「いいぜ...俺とお前の仲じゃないか...。」
酒が回ったからなのか、おもむろにしなだれかかってくる木曾。
「オーケーわかった落ち着こう。木曾、これは誤解なんだ。」
「お前に、最高の夜を与えて...や...」
「...木曾?」
「どうやら眠ってしまったようでありますな。案外お酒に弱い方だったようで...少し意外でありますゥゥ痛いであります!もっとやさしく!やさ...し...あぁ...ん...」
「変な声を出すな...!」
まったく...。木曾を布団に寝かせ、あきつ丸へ再度攻撃を仕掛ける。あきつ丸も酒がだいぶん回っていたようで、途中で寝てしまった。しかし、傍から見ればこの光景、色々とまずいような...。
パシャリ。
「...えっ?」
「......青葉、見ちゃいました。」
カメラを下ろし、満面の笑みで走り去る艦娘。その姿を見て、あぁ、明日からしばらく誤解を解くことが仕事になるんだろうな...。などと思いつつ、俺の意識もまた、暗闇へ落ちていった。
というわけで「着任」でした。次話の投稿は、すみませんが未定です。前書きにあるように少し忙しくなってきてしまい、なかなか筆が進んでおりません。でもきっと投稿致しますので、どうぞ気長に待ってやって下さい。