3+4=   作:けーおー

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もうすぐ1000UA、嬉しいです。
ほのぼのとした日常は書いていて落ち着きます。


憂鬱な仕事 She_surprises_Me.

 

 

 平日の朝。

 

 一足先にマンションを出た御坂を見送ってから、白のシャツにタイトスカートといった社会人らしい服装を整えた麦野は、空になったマグカップをテーブルに置き、一つため息を漏らす。

 

 

「さあて……、そろそろ行くとしますか。行ってきまーす、っと」

 

 

 脳を目覚めさせるコーヒーを飲み終え、ソファーに座ったまま伸びをした麦野が呟く。

 麦野は、天気予測を読み上げるテレビを消して、小さめのカバンを肩にかけるようにして持ち、仕事場である研究所へと出発する。

 

 上司からの理不尽な仕事の押し付けやセクハラが待っていると思えば、麦野の足取りが軽いはずもなく、同様に肩を落としてとぼとぼ歩く大人たちがちらほらと視界に入る。

 対照的に、自分より先に出発した御坂が、やけに楽しそうな笑顔を浮かべていたことを思い出す麦野。

 

 

「今日は学校でイベントでもあるのか? 学園祭や体育祭って話は聞いてないけど……」

 

 

 学校外部に公開される際には絶対に顔を出し、御坂をからかってやろうとイベント関連の情報に対して常にアンテナを張っている麦野が訝しんでいると、いつの間にか目的地に到着していることに気付き、足を止める。

 

 ぼんやりし過ぎていたと反省しながら、カードキーを通して中に入り、警備員や同僚、上司に軽く挨拶をして施設内を移動していく麦野。

 社交性なんてゴミと同列くらいに考えていた麦野は、自分の成長を実感し内心心で自身をべた褒めしつつ、自分のネームプレートが掲げられた自室へと入る。

 

 朝のミッションを終えた麦野はカバンを置いて、室内に掛けられていた白衣を羽織り袖を通す。

 さて今日の業務は何から始めようかとデスクに座ってパソコンを立ち上げると、明るいチャイム音を合図に、施設内にアナウンスが流れる。

 

 

『職業見学の学生が到着しました。該当研究員は会議室Bに集合してください』

 

 

「学生……、ああ、アレは今日だったか。完全に頭になかったわ」

 

 

 学園都市のほぼすべての学校が実施している職業体験、職業見学。

 完結し閉鎖された学園都市だからこそ、どのような職業がこの世の中にあるのか知り、自身の可能性を広げることは学生の将来にとって大切なことである……という名目で、様々な企業が協力し、度々学生を受け入れている。

 

 学生にとっては、つまらない授業の代わりの遠足や息抜き程度に考えられているらしい制度だが、自分に関係ないこととはいえ、麦野はその重要性を理解していた。

 

 麦野が所属する研究所は、今日一日、高校生を何人か受け入れることになっており、アナウンスでようやく思い出した麦野。

 仕事の準備を一旦止めて、呼び出された通りに会議室に向かう。

 

 

「さてさて、どんなクソガキ共が雁首揃えてるやら……っと、失礼しまーす」

 

 

 ノックもなしに若干雑な挨拶で、麦野が会議室に入る。

 担当の研究員たちは既に全員揃い、椅子に座っており、長机を挟んで学生たちが椅子に座っているのを見た麦野は、研究員側に回って自分も席に着く。

 

 

「さて、全員揃ったところで始めます。まずは顔合わせと自己紹介から……」

 

 

 所長の言葉をBGMに、机の上に置かれていたスケジュール表を手に持ち、頬杖をつきながら目を通し始める麦野。

 そんな中、所長に促され、学生たちが一人ずつ順番に起立して、名を名乗っていく。

 

 学生たちの自己紹介を淡々と聞き流していた麦野は、自分の担当学生の名を見た瞬間、ぴたりと動きが止まり表情が固まる。

 そのタイミングを見越したかのように、とある生徒が自己紹介を始める。

 

 

「――御坂美琴です。発電能力者なので、電子デバイス関連には興味あります。今日はよろしくお願いします」

 

 

 麦野の耳に聞こえてくるのは、聞き慣れた声。

 資料を手に固まった麦野の視界に入ってくるのは、挨拶を終え席に着き、にやりと楽しげな笑みを向けてくる御坂美琴だった。

 

 

 

 ----------

 

 

 

 では解散、という所長の声に我に返った麦野は、それぞれ学生を連れて研究室へと戻っていく研究員達の背を呆然と見送る。

 苦々しげな舌打ちとため息の後、御坂を連れて自室に入った麦野は、憮然とした表情で椅子に座る。

 

 麦野の目の前にあるのは、得意げな笑みを浮かべて楽しそうな御坂の姿。

 

 

「何よ、さっきの顔。思い出すだけで笑い転げちゃいそう」

 

 

「そっちこそ、あんな優等生テンプレ挨拶かましてんじゃないわよ……、まったく、一本取られたわ」

 

 

「驚いたでしょ? ずーっと内緒にしてた甲斐があったわ」

 

 

 にやにやと笑みを浮かべたままの御坂に対し、完全敗北した麦野は椅子の背もたれに身体を預け、苦し紛れの皮肉を放つ。

 ようやく頭の整理が終わった麦野は、棚上げしていた業務の支度をパソコン上で進めながら御坂に視線を向ける。

 

 

「チッ……、……それじゃ、今日一日よろしくお願いしますね、み・さ・か・さ・ん?」

 

 

「こちらこそ、よろしくお願いします。麦野さん?」

 

 

 精一杯の皮肉を込めた麦野の笑顔の挨拶は、完璧優等生の仮面を再度顔に貼り付けた御坂に反射され、打ち返される。

 諦めたように肩を落とした麦野は苦笑すると、御坂と視線を合わせ笑い合う。

 

 事前にある程度考えておいた、ごく普通の職業体験プランを脳内でゴミ箱へと放り投げた麦野。

 御坂を連れて自室を出た麦野は、一定以上の権限を持った研究員しか入れない、最先端の研究が行われている実験エリアへと御坂を案内する。

 

 

「アンタ相手に普通のことしたってしょうがないし、何よりつまんないでしょ。この研究所でやってる面白いこと、見せてあげる」

 

 

「いいの? 見たところ、機密の塊って感じだし……、部外者の私が見るのはマズそうなんだけど」

 

 

「いいのいいの。少しくらい楽しんでもらわなくちゃ、ここまで来てもらった意味がないでしょ?」

 

 

 後ろを歩く御坂が尋ねると、振り返ることなくひらひらと手を振る麦野が、明るく楽しそうな声で答える。

 その声色で、麦野の機嫌がいいことを察した御坂は後ろから大胆に抱き付き、麦野は一瞬立ち止まるも手を後ろに回し、御坂の髪を撫でつつそのまま移動していく。

 

 同じエリアにいた所長の困り顔を尻目に、日頃の仕返しとばかりにやりたい放題の麦野は、昼食を挟みつつ、御坂と共に職業体験を目一杯楽しむのだった。

 

 

 

 ----------

 

 

 

 時刻が午後四時を少し過ぎた頃、やりたいことをすべてやり終えた麦野は、御坂と共に自室へと戻ってくる。

 スケジュール表では、学生は午後五時に会議室に戻って解散、ということになっていたことを思い出しつつ、麦野は二人分の飲み物を用意する。

 

 

「――どう? こんなちっぽけな研究所でもそこそこやってんのよ。アンタなら能力と知識は問題ないんだし、一緒に働かない?」

 

 

「んー……、悪くないかもね。考えとくわ。大学に行くか、それとも就職か……」

 

 

 席に着き、パソコンを片手間に操作しながら時折マグカップを口元に傾け、コーヒーを飲む麦野は、砂糖の入った温かい紅茶を飲みながら室内をうろつく御坂に声をかける。

 二人で一緒に働く未来を想像し、自然と同時に笑みを零す二人。

 

 キーボードを叩く麦野の姿を見て、昔からは想像できないが麦野がきちんと働いていることを実感させられた御坂は、麦野のデスクにそっとカップを置く。

 そのまま麦野の背後に回った御坂は、座って作業する麦野に腕を回し、後ろから優しく抱き締める。

 

 

「……お疲れ様、沈利」

 

 

「はいはい。何よ、誘ってるわけ? だったら受けて立ってあげる」

 

 

 麦野を抱き締めながら、椅子の背もたれに顎を載せた御坂は労わりの言葉を囁く。

 いつも通り、素直に言葉を受け取らない麦野は、変わらずパソコンのモニターに向かって作業を続ける。

 

 そんな麦野に対し、御坂は麦野の白い首筋にそっと顔を寄せ、強めに吸い付いてから顔を離す。

 不意を突かれた麦野がゆっくりと振り返ると、蠱惑的な笑みを見せる御坂の表情が眼前に迫っていた。

 

 

「誘ってる……って、言ったらどうする?」

 

 

「……誘い方、上手くなったじゃない。正直、かなりムラっと来たわ」

 

 

「毎日、誰に仕込まれたと思ってんのよ。普段やられっ放しの分、これくらいはやり返さなきゃ」

 

 

「そうね、この麦野先生のご指導の賜物ね。百点満点、花丸あげる」

 

 

 それを自分で言うのかと呆れ顔の御坂の唇は、椅子に座ったままの少し無理な体勢の麦野に、奪われ塞がれる。

 時計の秒針の音と、粘着質な水音、二人の女の熱い吐息だけがしばらく室内を支配する。

 

 

「……っは、あ……、ん……まだ、仕事の時間なのに……いいんですか、麦野さん?」

 

 

「誘っといて、今更何言ってるのよ……もう、美琴を抱くことしか考えられないから」

 

 

 啄むような口付けを交わしながら、自然とソファーに向かう二人。

 普段は麦野の仮眠用として使われているソファーに、御坂を仰向けに寝かせた麦野は、そのまま身体を覆い被せる。

 

 白衣や制服が皺になることなど全く気にしない二人は、そのままソファーで身体を重ね互いの唇を貪り合い始める。

 

 

 ――しかし、二人の欲望に任せた行為は、定刻になっても会議室に現れない二人を呼びに来た研究員のノックで中断を余儀なくされた。

 

 

 

 ----------

 

 

 

 まだ業務が残っているという麦野を残し、一足先に帰宅する御坂。

 灯りを付けて身支度を整えると、御坂は夕食の準備を始める。

 

 続きは帰った後で、という麦野との約束を思い出す度に、麦野の体温や香り、身体の柔らかな感触が脳裏に浮かび、御坂の身体は疼き火照ってしまう。

 

 麦野の大好物である鮭のムニエルをテーブルに置き、二人分の食事の準備を終えると、御坂の耳にチャイムの音が響く。

 出来たばかりの料理は適温を保っており、時間管理はバッチリだったと御坂が微笑みつつ、ドアを開けて麦野を迎え入れる。

 

 

「お帰りなさい、沈利」

 

 

「ただいま……って……、何、その格好?」

 

 

「もう、私に言わせないでよ……結構、恥ずかしいんだから」

 

 

 いつものように、帰宅した自分を迎えてくれる御坂の姿を見た麦野は、目を瞬かせながら一瞬だけ思考が停止する。

 一見普通のエプロン姿に見える御坂だったが、白く飾り気のないエプロンの下の衣服は何もないことは、麦野には一目瞭然だった。

 

 御坂の恥じらう表情に麦野の獣欲は簡単に刺激され、麦野が獰猛な笑みを浮かべつつ、御坂の身体を正面から強く抱き締める。

 

 

「そんなに抱いて欲しくてたまらなかったの? まあ、私も我慢の限界だったけど」

 

 

「ケダモノのアンタと一緒にしないでよ……、まあ、でも……違うとは言い切れない、かな……」

 

 

 平静を装いながらも肉欲を滲ませる御坂の甘い声色と態度に、麦野が欲望を抑えきれるはずはなかった。

 乱暴に靴を脱ぎ捨てた麦野は、御坂の身体を強引に抱き上げてベッドへと運ぶ。

 

 

「ちょっと、もう夕食出来てるんだけど……!」

 

 

「はぁ? 美琴を頂くのが最優先に決まってるでしょ。これ以上お預けされて、耐えられるわけ?」

 

 

「……耐えられない、かな……」

 

 

 御坂の頼りなく情けない声をきっかけに、二人の寝室に喘ぎと水音が響き始める。

 結局、御坂が作った夕食は温め直すことになるのだった。

 

 

 

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