私は理解が追いつかなかった。神奈子の一撃を受けて負けたことまではわかった。しかしだ。その受けた衝撃が残っていない。
「今・・・何を?」
「『わからないのかい?』『決着がついたからダメージを「なかったこと」にしたまでだよ』
『スサノオ』『結界貼らせてもらうけどいい?』」
「どうしてだ?」
「『僕のできる高威力の技を行使するとこっちの世界があぶないから』『それに無意味に周りを壊したくないし』『丈夫なだけ以外何も作用しない結界だから平等だよ』」
「それならいいだろう」
「『「丈夫で外に一切の衝撃をもたらさない結界を創る」』」
湖の上に巨大な半透明の青い球体が出現した。
「『さて、久しぶりに安心院さんの「
禍々しい装飾のなされたサーベルを空間から取り出した。なんだかもう何があっても驚かない気がしてきた。
「おいおいなんだよそりゃぁ・・・」
そのサーベルは空中に突き刺さっていた。そのまま手を離しても何もないはずの空間から重力を無視したかのようにその場に留まっていた。
「『驚いた?』『次元すら切裂く能力の剣さ』『扱いが難しいし素振りもできないからうまく使えなかったら別の得物を使うよ』」
「おもしれーじゃねーか。命、落とすなよ?」
「『お互い様にね』」
そう言って2人は球体の中に入っていった。
「先手は頂くぜ!」
どういう理屈か宙に浮く僕ら。スサノオは刀の鯉口を斬って斬り掛かって来た。
が、
「『甘いね』」
絶断剣を横に振るう。ガードしようと刀の腹を向けるが
「!!うおあっ!」
とっさに回避行動に移り、背中を大きく反らす。逸らしきれなかった刀の鋒近くが空気同然に切り離される。
「『よく避けれたね』『なんて言うようなセリフじゃないけど』『避けてなきゃ一発DEADさ』」
「っ・・・どんな威力だよ」
「『簡単に言うなら防御無視』『次元をも切裂くことを目的に創られたこの剣に斬れぬものなどほとんどない!』『あ、能力を解放しなければ鈍ら以下だけど』」
「まじで洒落にならねーな・・・」
「『今振るってみてわかったけど』『使うのやーめた』『扱いやすいものが一番だよね』」
「は?」
僕は両手を広げる。絶断剣を空間に放り込み片手に螺子を「創った」。そして螺子山の部分から突起を「創る」ことで剣のようにする。
「『じゃん☆』『名付けて
「お前嘗めてんのか?喰らって死ぬ方がスリルあるだろーが!」
「『扱えない武器で無様に勝つのと』『扱える武器で精一杯戦うのなら』意地を張って精一杯戦うね!」
「はっ!そらしかたねーわな!」
お互いに打ち合う。力ではややスサノオが押し勝っている。僕は螺子のまわりの螺旋に剣を引っ掛けて押さえつけている。滑ることがなくなる。
「あああああああああぁ!」
気合いとともに弾き飛ばされる。その瞬間に左手を剣から放し新たな螺子を「創る」。その螺子の長さを「創る」ことで剣を振り上げたスサノオの体に鋭い先端が迫る。
が、先に剣を戻して弾き、螺子を放すと同時に勢いを流し捻切で防ぐ。そしてスサノオが弾き飛ばしーーー
「おらおらぁ!繰り返しか!?」
「『ならばとっておきで』」
距離をとった。そして
「『【ドラゴンブレス】』」
螺子の先から極太の真っ黒なレーザーが前方を埋め尽くした。貼っているこの結界が大きく揺れるが耐えきっている。流石の防御力だと自分のことながら思う。
「危ねー・・・防御しきれねーよ」
「『これをうまくやり過ごしたことを本当に讃えてあげたいくらいですよ』」
「いやいや。避けるのも大変だ」
2本目の捻切を「創り」出し、二刀流に構える。
「おおおおぉ!」
「『あああああぁ!』」
3回目の衝突。二刀流になっても力量差は覆らなかったが拮抗した。そして乱雑に狂ったように打ち合いを始めた。いや、訂正しよう。狂った。
「「『あはははははハハハハハハハ!』」」
2人の声が結界内で反響し、武器がぶつかり合う金属音に掻き消されていた。
「どうするんのよあれ」
「私たちが行ってどうこうできる問題ではないな・・・」
「ど、どうしましょう・・・」
アマテラスがとても弱気に見えた。だが実際、荒神スサノオとまともに渡り合っている時点ですでにあの子は人間を超えているようなものだ。それどころか一撃の威力で見るとスサノオを圧倒している。結界の影響でこちら側には一切の影響が出ていないが、あの極太レーザーの威力は私たちでも喰らえばまずいだろう。
そして何より、お互い一撃たりとも喰らっていないのにボロボロになり始めていた。螺子にはヒビが入り、螺旋部分は折れている。逆にスサノオの剣も刃こぼれが見受けられる。そして戦局は動いた。
「『せあっ!』」
持っている片方の螺子を打ち合い中に投げはなった。当然防がれるが剣の押しが弱まった一瞬で弾き上に飛ぶ。再び
だが。
「頂いたっ!」
真正面から突っ込んで来た。発射直前の一瞬を衝かれ、腰から肩口にかけて大きく斬られる。
「『がはっ・・・』」
決着がついてしまい、僕は負けた。結界が解け、湖に向かって落下し、水しぶきを上げた。
「かなり!」
諏訪子が助けに来てくれたみたいだ。でもね、もう遅いよ。
「『あーあ』『やられちゃった』」
水の上に浮きながら無傷の僕は呟いた。流石に今度は驚かなかったらしい。だが、悔しさはまったくない。むしろ手を抜いた。なぜなら
「何であの場面で大技を選んだの?」
「『格好つけるため』『それ以外の理由で使わないよ』」
「それで負けちゃったじゃない!」
「『勝つために戦うんじゃないだ』『格好をつけるために戦ったまで』『それでいいじゃん』『格好をつけれなかったよ』」
「ああもうなんなんだか・・・」
「おい球磨川!俺の負けじゃねーか!?」
螺子の剣が浅く足に刺さったスサノオの姿があった。僕はニヤリと笑った。