数年が今までの自分からしても驚く程あっという間に経過した。それだけ何でも無いような日が続いていたからだろう。僕は自分に使った能力の影響で全く変化が無い。それは横で嬉しそうにしている伝も同じだった。流石に妖怪、簡単に老けることは無い。
このところ何も無い世界(せいぜい自然があるくらい)をずっと歩き続けて、訓練して話をして。
つまるところ彼女以外誰にも会っていない。
伝は自分の能力の電気をだいぶコントロールできるようになった。しかしまだ僕の実力には及ばない。感情が昂らない限りは問題ないだろう。八つ当たりでこちらを攻撃しないで欲しいけど。あ、別に怒ってはいないよ?
「『ところでさ』『そろそろ自分を封印しようと思うんだ』」
「どーして?」
「『ほら』『これだけ旅をしても何も見つからない』『そして僕は人間なんだ』『元々長く生きるものではない』『本来ならあと数十年もしないうちに死ぬ定めの生物さ』」
「でも死なないようになったんでしょ?一緒に居ようよ」
「『甘い』『縋るな』『いつまでも一緒にいられると思っちゃだめだ』『僕は君を不幸にしたくないんだ』『不幸せにしたくないからこそ僕はいなくなる』」
「い、意味が分からないよ?いつもの変な理屈を押し付けないでよ!」
「『押し付け、ね』『そのうち帰って来るからまた会った時はよろしく』『まあ今すぐはいなくならないけど』」
「はいはい・・・あーもうこの紛らわしさはどうにかならないかな」
さらに数ヶ月が経過。彼女もそこいらの雑魚は相手にならなくなって来た。
初夏の空気になり始める頃だ。ある一つの山を見つけた。
「『ここならいいだろうな・・・』」
「ん?何か言ったの?」
「『ばいばい』『また何十何百何千何万年とした時に同じ空気を放つから』『それに気がつけるほど強くなったらまた一緒に行こうね』」
伝は目を大きく開いた。僕の体を何本もの螺子が瞬時に出現し貫き、僕の髪の毛は真っ白になった。イメージは安心院さんの封印かな?「却本作り(ブックメーカー)」とは違うけど。そして光になって散った。
球磨川哿が居なくなってから何年経ったか覚えていない。それこそ皮肉で言われた何万年以上は経過しているはず。私はまだ彼を許していない。寂しくて悲しくて悔しくて。殴るだけで済ますつもりも無い。そして私はとても強くなった。周りに妖怪たちが再び多く見えるようになってきて、命知らずの馬鹿になんども戦いを挑まれた。ことごとく返り討ち、それも圧倒的な強さで勝った。周りが弱いだけなんだろうね。そのうち近くを通った山で自身を「大将だ」と名乗っているような奴も居た。さすがにそのレベルは実力があり、苦戦こそしたが負けなかった。去り際に「天魔、もしくは鬼なら・・・」という言葉を耳にしたがそれに関する情報は入っていない。
あいつを見返すために。仕返しするために私は強くなる。
そうしていたとき、今からしてみれば二度、同じ力を感じ取った。
1回目はまだあやふやだったが今度は確証を持って行った。
「絶対に許さないから」
誰に言うでも無く私は呟いた。体に電気を纏わせ、狼としての力も使い凄まじい速度で移動する。通り名はなんだっけ?たしか「雷狼」?
そして私の前に女の妖怪が現れた。
「あんた誰?気が立ってるからぶっとばすよ?」
「スキマ妖怪、とでも言おうかしら。別に邪魔する気はないけどお相手するわよ?「雷狼」さん」
全身にさらに強い電気を纏わせて私は突っ込んだ。