NARUTO筋肉伝   作:クロム・ウェルハーツ

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信じ合う心

 大きく息を吐き出す。そして、大きく息を吸う。

 

「だから運ゲーは嫌いぜよ」

 

 痰を吐き出しながら、鬼童丸は毒づく。

 

 彼の服は土で汚れていた。そして、土の色だけではない。緋色にも汚れていた。返り血である。

 では、その血は誰のものか? 鬼童丸が現在、いるのは木ノ葉隠れの里から少し離れた森の中。

 答えは明白。

 木ノ葉隠れの里の者の血だ。

 

 そして、血で汚れているのは鬼童丸だけではない。左近、次郎坊、そして、多由也もまた、鬼童丸と同じように返り血を浴びていた。

 

「こっちは急いでるっつうのによ。タラタラ休息しなきゃならねーとはな」

「仕方ねーだろ。“状態2”でやり合ったら、消耗が激しすぎる」

「それより、しばらく体が使えないのが難儀だ……だが……」

 

 彼らも鬼童丸と同様に悪態を吐く。

 彼らの言葉、そして、態度には傷つけた人間への配慮は皆無であった。

 

 その所作は、彼らの里長である大蛇丸に、どこか似通っている。

 まだ青年には成り切れていない年齢にも関わらず、他者を思いやる心が一片も感じられない。それは、里長の教育の賜物か、それとも、持って生まれた性質か。

 

 とにかく、彼らには他人を思いやる余裕はなかった。

 

「なあ……」

「なんぜよ?」

「あ?」

「どうした、次郎坊?」

「休憩はもういいだろ」

 

 額の汗を拭い、次郎坊は他の三人を促す。

 無言で頷き、渋い顔をしながら立ち上がった彼らには、乳酸が溜まった体に鞭打ってまでも、一刻も早く動かなくてはならない理由があった。

 

 三代目火影から腕を封印されてから、大蛇丸の体調は日に日に悪くなっていっている。いつ鬼籍に入るか予断を許さない状態だ。だからこそ、一刻も早くサスケを大蛇丸に捧げる必要があった。転生忍術によって、サスケの体を得た大蛇丸は腕の痛みから解放される。それを狙ってのことだ。

 そして、サスケを生け贄にするための下準備は済んだ。呪印の覚醒だ。

 そもそも、呪印とは大蛇丸のチャクラそのものだと言っても過言ではない。大蛇丸のチャクラを生け贄の体に馴染ませることで、転生の成功率は高まる。

 つまり、サスケの呪印を覚醒させながら移動することで、アジトに到着次第、シームレスに転生の儀式を行うことができる。

 

 サスケに里を抜けさせるのは、実にスムーズにいった。

 左近の予想では、サスケは数日、ウジウジと悩むだろうと考えていたが、サスケの決断は早かった。ここまでは問題はない。

 鬼童丸はそう考えていた。

 しかしながら、そう上手くは事が運ばない。

 多由也は数刻前のことを思い起こす。

 中忍試験第三の試験、本選。その試験官であった木ノ葉の特別上忍に運悪く発見された。

 次郎坊は頬についた血を拭う。

 哨戒(パトロール)中の実力者に見つかったのは不運だった。だが、それを下した今、警戒すべき木ノ葉の忍は少ない。

 現在、木ノ葉の上忍、中忍は里の防衛用に最低限の戦力を残し、あとは任務で里外に出ていることを音隠れは把握している。里の最高戦力である暗部の忍は言わずもがな。追っ手として木ノ葉が自分たちに差し向けることができる戦力は、せいぜい下忍。下忍相手で自分たちが遅れを取ることは、まず有り得ない上に、そもそも、普通の頭があれば、今の状況下では追っ手を出すなんてことは、まず、しないだろう。

 ああ、絶対にしない。そんな指示を出すような人間は里のトップには立てない。例え、里抜けした者がうちは一族の末裔であろうが、まずは里を優先させる。そうに違いない。大蛇丸様がサスケの体を乗っ取った後に、再度、木ノ葉崩しを行うと予想して、それを防ぐために、オレたちに追っ手を差し向けたいと考えるのは当然だが、問題は人員がいないこと。木ノ葉に残っている実力者は動かせない。そして、火影自ら、抜け忍を追うとは考えられない。残るは、下忍を追っ手にするぐらいだが、下忍では勝ち目はないと判断するのが普通。普通。それが普通だが……。

 

 言い様のない不安が次郎坊を襲う。

 なにか、よく分からないものに急かされるようにして、次郎坊はサスケが入った棺桶に近づく。

 

 なにか、なにか、よく分からないが……見落としている気がしてならない。なにか、致命的な大きなものを、衝撃的な巨大なものを見落としている、いや、無意識の内に目を背けているような、そんな気が、して、ならない。

 

 次郎坊はゴクリと生唾を飲み込む。

 同時に、遠くの方から朗々と響き渡る声がした。

 

「絆、裂く者。傷、咲く心」

「!?」

「心は(いた)み、涙を流す。散りゆく桜花(おうか)、大河に流れん」

「う……」

「ここに還すと誓いを立てる。(とり)が別れを(うた)えども。決して切れぬは、この絆」

「……うずまき……」

「過ぎ行く(あお)(はる)! 知り行く(あか)(なつ)! 悟り行く(しろ)(あき)! 霞み逝く(くろ)(ふゆ)!」

「……うずまきナルトだぁあああああ!」

「我らが青春、その血潮! あまりに若い、その血潮! いつかは潮騒にせしめんと! 一天四海、響く名を! うずまき……む!? 貴殿は己を知っているのか?」

 

 忘れていた。違う。

 見落としていた。違う。

 考えないようにしていた。そうだ。そうでなくては、説明がつかない。

 でなくては、このような致命的で衝撃的で、でかい漢を勘定に入れないなど有り得るだろうか。いや、ない、絶対に。

 

 木ノ葉崩しの際、誰よりも早く──それこそ歴代火影で最強と呼ばれる三代目火影よりも早く──大蛇丸様を攻撃した漢だ。

 大蛇丸様と向かい合い、殺気をぶつけ合った漢だ。

 その漢が今、自分たちを追いかけていた。

 

「逃げるぞ!」

「ああ!」

「おう!」

「分かってる!」

「させねーよ」

「!?」

 

 四人の判断は早かった。うずまきナルトを認識した瞬間、疲れを見せないほどに機敏に動こうとした四人だったが、残念ながらシカマルの判断は彼らの上をいった。

 

「影真似の術」

「ぐっ!」

「くっ!」

「なっ!?」

「このッ!」

 

 どこから現れたのか、サスケが入った棺桶の上にあるのはシカマルの姿。

 

「何やってんだ! 鬼童丸!」

「違う! コイツ、糸に引っ掛かってない!」

「じゃあ、空でも飛んできたっつーのか!? あ?」

 

 左近は鬼童丸に怒声を浴びせる。

 そもそも、辺り一面には目視が難しいほどに細い糸が敷き詰められている。この糸の先は全て鬼童丸に繋がっており、少しでも振動があれば、鬼童丸は気がついていた。その糸の包囲網を掻い潜って、棺桶の上に姿を現すなど不可能。それこそ、空を飛ばない限りは。

 

 ──上手くいったな。

 

 そう、シカマルは空を飛び、棺桶の上に着地したのだ。

 音の忍たちを見つけた後、シカマルはナルトへと簡単な指示を出した。

『上に向かってオレを投げろ』と。シカマルの物理演算能力はサクラにも引けをとらない高水準なもの。中忍試験での第三の試験、本選でサクラがドスに対して発動した水遁と同じく、放物線を描いた投擲。そうすることで四人の虚をついた。

 

 そして、現在、音の忍たちはシカマルの影真似の術で指一つも動かせない状態。この好機に、隊の全員の全力を以て、敵を一気呵成に攻める。それがシカマルの作戦だった。

 

「嘗めんじゃねーぞ、ゲスチンヤロー」

「何だッ!? コイツ、急に……」

 

 今度はシカマルが驚く番だった。

 影真似の術が破られようとしていた。しかも、里を出る前に、ナルトがシカマルの術を破ろうとした時と同一の方法。力で以て、拘束を破ろうとしていたのだ。

 

 ──筋肉もないっつーのに、どうやって……!? 

 

「シカマル!」

 

 後ろからの声。思わず、シカマルは振り向いてしまう。

 ナルトたちがこちらに向かってくる姿。そして、キラリと光を反射した細い糸がシカマルの目に入る。

 

「!? バカッ! 来るんじゃねェ!」

 

 シカマルの叫び声が森に響いた。だが、それは遅かった。

 

「フンッ!」

「ラァ!」

「いくぜよ!」

「ザコが!」

 

 四人の影からシカマルの影が外れた。

 

「おらよ!」

「む!?」

「何ッ!?」

「ワァ!」

「ぬおッ!?」

「キャン!」

 

 鬼童丸が腕を上げる。それに呼応して、シカマルのフォローに回ろうと駆けていたナルト、ネジ、チョウジ、キバ、そして、赤丸の体が宙へと持ち上がる。

 自分の前へと転がされた仲間の姿を見て、シカマルは冷や汗を流す。完全な想定外。影真似の術に込めたチャクラは、先にナルトを拘束した時と同じ量を込めている。四人の同時拘束とはいえ、数秒で、しかも、力業で破られるなど想像の埒外。

 

 その上、ナルトの巨体を細い糸で引っ張り上げる。それだけでも、信じることができないというのに、シカマルの目の前で起こった出来事は、ナルトに加え、ネジとキバと赤丸、そして、チョウジまでもが引っ張られ、地面に転がされている。

 

 あり得ないことだった。一体、どれほどの重量を上げたというのか。考えたくもないほどの力だ。

 だが、思考を割いてしまっていた一瞬の隙。その隙を見逃すほど、眼前の敵は甘くない。

 

「いつまで乗ってんだ、カスが」

「グッ!」

「シカマル!」

 

 チョウジの悲痛な声が響く。

 多由也の蹴りがシカマルの腹に入り、彼の体はいとも容易く、サスケが入った棺桶から吹き飛ばされた。

 

「ガハッ!」

「シカマル! 大丈夫!?」

「う……悪い。ミスっちまった」

 

 チョウジの隣へと蹴り飛ばされたシカマルは痛みを訴える腹に手をやろうとし、そこで、手が動かないことに気がつく。

 

「こいつは……!」

「理解が遅いぜよ。ワイヤーよりも細く丈夫で、強力な粘着力を持つ、ほとんど見えない糸だ。つまり、お前はもう動けねーぜよ」

 

 前方からの声にシカマルは視線を向ける。

 

「お前……お前ら……それは……!?」

 

 四人の体に取り巻く刺青のような模様。

 それは、中忍試験、第二の試験で見たものと似ていた。

 

 ──あれは……サスケと同じ……? 

 

 死の森で音隠れの忍──ザク、キン、ドス──と戦った際にサスケが見せた“力”だ。

 あの禍々しさは忘れることができない。そして、ザクを一撃で戦闘不能に追い込むほどの身体能力。サスケ自身の力に上乗せされた力。

 その力を目の前の四人が持っている。

 

 ──正直、ここまでの奴らだとは思ってなかった。

 

 そもそも、情報が少ない中での任務だ。相手の情報を集めることができない任務だ。

 だが、引くことはできない任務だ。

 

 ──そうだろ、ナルト。

 

「ふんッ!」

「ハッ!」

「これで、ゲームオーバーぜ……へ?」

 

 鬼童丸は呆ける。

 目の前の余りにも嘘のような現実を前に、呆けてしまった。

 

 呪印発動前に仕込んでいた糸の強度は、呪印発動後よりも弱い。伸縮性があり、強度も鉄で作られたワイヤーと同様。刃物で簡単に切れるようなものではない。

 

「嘘だろ……」

 

 ましてや、素手で引き千切るなどあり得ないこと。百歩譲り、見るからに力強いナルトが千切ったのならば、分かる。が、その他の下忍も糸の拘束から抜け出しているのは、どういうことか? 

 鬼童丸は分からなかった。

 

 そして、その後の展開も彼は読めなかった。

 

 糸から抜け出した5人の木ノ葉の忍と一匹。

 木の影の中、爛々と光る6対の目。

 

 ──マ、マズいぜよ。

 

「土遁結界・土牢堂無!」

 

 横からの術の発動。

 一瞬にして、シカマルたちの姿が土壁に隠れる。

 

「鬼童丸! 先に行け! 左近、多由也! お前たちもだ」

「次郎坊。お前、まさか……」

「早く!」

「……分かったぜよ」

 

 それ以上、言葉を交わす時間はない。

 最後に次郎坊に向かって頷いた鬼童丸は棺桶を担ぎ、左近と多由也を伴って音隠れの里に向かって走り出した。

 

 一方、次郎坊の土遁に閉じ込められたシカマルは舌打ちをするしかなかった。

 

 ──敵の能力を全部、確認する前に全員捕まっちまうとは迂闊だった。しかも、この中……。

 

 シカマルの額に汗が流れる。

 

 ──チャクラを吸いとってやがる。

 

 シカマルの焦りはもっともである。

 忍にとってチャクラとは、細胞におけるATPのようなもの。忍術はもちろん、身体強化、治癒能力など行動全てに対する共通通貨。それがチャクラだ。

 チャクラが吸収されてしまうということは、自身の行動が制限され、相手の行動が拡がることに等しい。

 

「して……シカマル。どうすればいい?」

 

 シカマルの耳に低い声が届く。

 

 ナルトがじっと自分を見ている。いや、ナルトだけではない。ネジ、キバ、そして、チョウジ。

 全員が自分の言葉を待っている。

 

 ニヤリと不敵に笑って見せた。

 

「なあ、アンタらのリーダーと話がしたい!」

 

 シカマルは大声を出し、外の次郎坊に声を掛ける。

 

「なんだ?」

「サスケを返してくれ。そしたら、アンタらを追わない」

「くくく……オレの餌にしかならない奴らが吠えるなァ」

 

 上手くいった。

 鬼童丸に注意を向けている隙に、ナルトを含めて全員を一網打尽にした。かつてない高揚感に次郎坊は満たされる。

 

「サスケ様を返す訳がねーだろ、バカが! お前らはここから出さねェ! 出られねェんだよ、絶対に! いいか! この術は内側から破ろうとしても修復する。吸収したお前らのチャクラを使ってなァ! つまり……」

「ナルト、チョウジ。ここだ。ここを思いっきり殴れ」

「然り」

「うん」

「……は?」

 

 包まれていた高揚感が消え失せた。

 

「フンッ!」

「部分倍化の術!」

「何っ!?」

 

 吹き飛ぶ体。目に写る空を確認し、何をされたのか正確に理解した。

 地面に横たわりながら次郎坊は呟く。

 

「オレの結界忍術を殴り壊し……オレを殴り飛ばしたか……」

 

 ゆっくりと立ち上がりながら次郎坊は体を叩き、砂ぼこりを落としていく。

 

「よくも……やってくれたな。テメェら! 全員! 骨も残さず殺してやる! 土遁 土陵団子!」

 

 術を発動させ、瞬きの間に作り上げた巨大な土塊を投げる。

 

「ボクがいく! 肉弾戦車!」

 

 土塊を破砕し、勢いを止めないままチョウジは次郎坊に向かう。

 だが、次郎坊に油断はもうなかった。

 

「クッ……」

 

 酷薄な笑みを浮かべた次郎坊は膝をチョウジの肥大した体に叩き込む。

 

「昇膝!」

 

 次いで、肩でチョウジを吹き飛ばす。

 

「突肩!」

「うぐッ!」

 

 飛ばされたチョウジの体を受け止めるナルト。追撃は不可能。

 盤上はリセットされた。

 

「チョウジ!」

「やってくれんじゃねーか!」

「ワンッ!」

「みんな、待て!」

 

 いきり立つ隊員を収め、シカマルは言葉を紡ぐ。

 

「ここから二手に分かれるぞ。時間がない。このままじゃサスケに追い付けなくなる。副隊長はネジ……アンタだ。アンタがキバとチョウジを連れてサスケを追ってくれ。こいつはオレとナルトで何とかする」

「また影縛りの術でもするか?」

 

 次郎坊は鼻を鳴らす。

 

「下らん術だ。一度見れば十分の大道芸なみ。くく……確かお前が隊の隊長だったな。二手に分かれて本気でオレらをやれると思っているのか? それに、お前らは全員、オレが喰らう。逃がしはしない」

「……」

「状況判断もできないバカな隊長を持つと苦労するなぁ……下っ端は」

 

 次郎坊の目的は他の三人が逃げる時間を稼ぐこと。

 そのために、言葉を選び、ここに釘付けにする。

 

「まぁ……影好きな陰気なヤローの下についているようなカス共は苦労を感じる前にオレが殺してやるがな」

「それ以上、口を開くな」

 

 バキンと骨を鳴らす音が響いた。ナルトだ。

 次郎坊の挑発が効いた証拠だ。

 

「程度が知れるぞ」

「くく……大した殺気だ。だが、まだまだ甘い、鈍い、本物ではない」

「ならば、受けてみるか? 己が……」

「ボクだ!」

「……チョウジ?」

「こいつはボクがやる」

 

 立ち上がったチョウジは次郎坊を真っ直ぐに見遣る。

 

「シカマル。皆を連れて、サスケを追って」

「チョウジ、お前……まさか……完成したのか?」

「そう……ボクにはとっておきのアレ(……)がある」

「けど、お前、アレは……!」

「皆を頼むよ、シカマル」

「……チョウジ」

 

 シカマルは一度、目を閉じ、決断を下した。

 

「絶対、後から追い付けよ……チョウジ」

「うん」

 

 ──目付きが変わった。

 

「フン……」

 

 ──喰い応えが出てきたか。

 

「みんな、行くぞ!」

 

 ──だが……。

 

「逃がすか!」

「そう上手くはいかないよ」

「貴様……」

 

 身を翻したシカマルたちを止めようとした次郎坊の体が、チョウジによって止められた。

 本来、止めることのできないほどにあった力の差を埋められた理由。

 それは、チョウジが口に放り込んだ青色の丸薬のせいだ。

 

 ──三色の丸薬。兵糧丸じゃない……何だ? 何を喰った? 

 

「みんな、行けーッ!」

 

 ──青のホウレン丸。これで、なんとか……。

 

 がっぷりと組み合った二人は動けない。どちらも全力で相手をここに留めている。

 

 その隙に、場を離脱したシカマルたちだったが、すでに音の忍たちの姿は見えなくなっていた。

 

「……シカマル」

 

 ネジがシカマルに尋ねる。

 

「さっきのお前とチョウジの会話。何か切り札のようなモノがある感じだったが……チョウジに勝算はあるのか?」

「“アレ”って言ってたヤツだよな」

 

 ネジに続けてキバも尋ねる。

 

「チョウジは今回の任務に丸薬……自分で調合した秘薬を持ち込んでいる」

「しかし、それはドーピングではないか?」

「兵糧丸以上の効果がある薬だろ? じゃなきゃ、あんなに強気には出れねェ」

「……キバの言う通りだ。それに、ナルトのいうドーピングってのも、そうだ。お前たちが心配しているのは……副作用だろ?」

「然り」

「ああ」

「それがわからない。今までなかった丸薬だ。副作用どころか試す機会も多分……なかった」

「それは危険どころか効果もあるかどうか不明ということか?」

「理論上は効果がある。だが、それしかわかってない」

 

 ──効く薬には必ず副作用がある。早めに決着を着けてくれ、チョウジ。

 

 祈ることしかできない自分を悔やみながら、シカマルは森を駆ける。

 

「シカマルよ」

「ん?」

 

 ナルトの声だ。

 

「チョウジは己らを信じて、託してくれた」

「ナルト……」

「だからこそ、己らはチョウジの想いに応えなくてはならぬ」

「……そうだな」

 

 後悔なら、後でいくらでもすればいい。

 今は、今すべきことは……。

 

「さっさとサスケを取り戻して、チョウジを迎えにいくぞ」

 

 クナイを取り出したシカマルは木に印を付けながら、足を速める。

 親友の元に繋がる道標を残しながら。

 

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