ソードアート・オンライン Tracer   作:夜型人間

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 前回の投稿から遅れに遅れ、年を跨いでの投稿になってしまい申し訳ありません。

 今年に入ってからすでに数日経過していますが、改めまして今年も本作品を読んで頂きありがとうございます。

 今年も頑張りますのでよろしくお願いいたします。

 では、ソードアート・オンラインTracer、十一話始まります。


コンビネーション

 薄暗く陰気な石造りの通路、壁には松明の炎が怪しく揺らめき、眼前には巨大な扉が存在している。

 

 その扉を四十六名に及ぶプレイヤーたちが皆一様に息を飲み見つめている。

 

 扉にはコボルトであろう怪物のレリーフが刻まれ、松明の灯りを浴び沈黙するそれは《扉》というより、俺たちを明確な死へと誘う冥府への《門》に思えた。

 

 「アルト、カナ、ちょっと来てくれ」

 

 その呼び声によって俺の意識は扉から離れることとなった。

 

 声の主の方を見ればこの二日間で見慣れた黒髪の少年が真剣な表情をして立っている。

 

 「ああ、今行く」

 

 キリトへ軽く手を振り、先ほどまで隣でつま先立ちになり、プレイヤーの列で隠れる扉を見ていたカナを引き連れ、彼の元へ行くとキリトはやや声を低めて話した。

 

 「昨日も言ったと思うけど、今日俺たちが相手をする《ルインコボルト・センチネル》は、頭と胴体の大部分を金属鎧で守ってるから、ただソードスキルを撃っても大したダメージは徹らない」

 

 「確か……鎧の隙間、喉元を狙えば良いんだよな」

 

 確認の意味も含めて言うと、キリトがゆっくりと頷く。

 

 「そうだ。基本的には俺とカナがコボルトの武器を跳ね上げるから、アルトたちはスイッチして喉元に突き系の攻撃をしてくれ」

 

 言葉は発することなく、こくりと頷き了解の意思を伝える。

 

 キリトの話を聞き終えると、ちょっとディアベルが全てのパーティー並ばせ終えたらしい。

 

 列になった集団を改めて見渡し、彼の騎士は広場で見せた陽気な雰囲気とは一転、まるで本物の騎士(ナイト)のように凛とした立ち振舞いで手に握る剣を頭上高く掲げ、誓いを建てるかの如く大きく頷いた。彼に続いて他のプレイヤーたちを武器を振り上げ、青髪の騎士へ頷き返した。

 

 それを見届けるとディアベルは身を翻し、聳え立つ扉を押し開いた。

 

 扉の奥は暗闇み包まれおり、部屋の一番端に巨大な玉座が置かれているのが目を凝らしてようやく確認できる。

 

 プレイヤーたちが何の変化も起きない暗闇に警戒ををしていると、突如として左右の壁に炎が出現し、奥へ数を増やしていく。炎が向かう先には玉座があり、先ほどまで空だったはずのそこには、鮮血のように赤い瞳と巨大な体躯を持つ何者かが鎮座している。

 

 最後の松明が灯った時、それは姿をさらした。《イルファング・ザ・コボルトロード》の表記と共に現れる四本のHPゲージ。フィールドをうろつくモンスターとは一線を越える巨体。瞳は殺意に染まり、右手に斧を携え、左手に革製と思われるバックラーを持ち、腰裏にはガイドに書いてあった湾刀(タルワール)を着けている。全てを萎縮させるその姿はまさに(ロード)の名を語るに相応しい。

 

 煌々と輝く瞳で俺たちを見据えた獣人(コボルト)の王は玉座から起立し、咆哮を放った。それを合図に玉座の周囲に青白い光が生まれ多数のセンチネルが出現する。

 

 ディアベルが掲げていた長剣を降り下ろし、イルファングへ構える。

 

 「行くぞ!」

 

 その声を皮切りにプレイヤーたちが迫り来るコボルトたちへ走り出す。双方は徐々に距離を詰め、ついに先頭を行くA隊とイルファングの刃が交差した。

 

 それに続き各隊もモンスターの戦闘を開始する。キバオウ率いるE隊とその支援にあたるG隊がセンチネルに飛びかかる。

 

 俺たちあぶれ組は互いに顔を見合せ、E隊G隊の取りこぼしたセンチネルに向け走り出した。

 

 十二月四日午後十二時四十分、アインクラッド初のボス戦が幕を上げた――

 

 降り下ろされるセンチネルの斧をキリトがソードスキルによって跳ね上げる。それによって生まれた隙にアスナが敵の懐へ飛び込み、がら空きの喉元へ《リニアー》を叩き込むが数ドットHPが残る。しかし、アスナはソードスキルの硬直が解けるや、最低限の動作で正確に喉元を突いた。

 

 瞬間、センチネルは青色に光る破片となり四散した。どうやら今のでE隊とG隊がこぼしたセンチネルは最後だったらしい。

 

 「ナイスコンビネーション。これは俺たちいらなかったかもな」

 

 センチネルを倒した二人へそう言葉をかけると、キリトとアスナはジトーっとした目付きで俺を睨み付ける。

 

 「いやアルトたちも戦えよ。さっきからずっと俺たちばっかりセンチネルの相手してるぞ」

 

 「そうよ。少しは動きなさい。作戦では交代で攻撃をするはずでしょ」

 

 二人が不満そうな声で言う。

 

 「ご、ごめんね。でも二人とも連携が早すぎて下手に入ると邪魔しちゃいそうだからさ。アルトもあんな風に言ったら二人とも怒るに決まってるじゃん! ちゃんと謝らなくちゃだめだよ!」

 

 そうは言うが、これは仕方ないことだと思う。何せ二人ともセンチネルがポップするや否や、すぐさま飛びかかるため、交代する暇などないのだ。多分あの二人、相当な戦闘狂(バトルジャンキー)だ。まあこれを二人に言ったらキリトはともかく、アスナは全否定するだろうが。

 

 うん、どうみても俺は悪くない、戦闘狂二人組が悪い。

 

 「いや、あれはどう考えても二人が……」

 

 そこから先の言葉は続くことはなかった。俺の視界が捉えたのはカナの笑顔。それも今まで見た中でも一二を争う位の良い笑顔だ。

 

 だが、どうしてだろうか笑顔の筈なのに殺気を感じるのは……カナは笑みを浮かべたまま俺の肩に右手を置く。

 

 「アルト……ちゃんと謝らないとダメだよ?」

 

 声も表情も穏やかな筈なのに悪寒が止まらない。ここで口答えをしたら無事では済まないだろう。

 

 「ハイ……二人とも戦闘、任せたままですいませんでした……」

 

 「あ、いや俺たちも二人のこと考えてなかったから、こっちこそすまない」 

 

 二人へ謝罪をすると、キリトがわずかに怖々としながら返す。というか自覚あったのか……。しかし、それ口にすれば再びあの笑みを浮かべたカナに注意されるので黙っておく。

 

 そうこうしていると、最前列でイルファングと戦っている集団から「二本目!」という声が上がり、同時に新たなセンチネルが出現する。

 

 どうやら冗談を言える時間は終わったようだ。気を引き締め直し、短剣のグリップを握りる力を強める。

 

 「俺とカナで攻撃を仕掛ける。キリトたちはその間他のセンチネルが接近してこないよう警戒してくれ」

 

 「わかった。俺たちだけ手の内を見られるのも何だからな。ついでに二人がどれくらい戦えるのか拝見させてもらうよ」

 

 小さく口角を上げるキリトに背を向けたまま「了解」と返し、俺は最も近くにいるコボルトへ特攻した。   

  

 直進してくる俺に気づいたコボルトは、水を得た魚のようにこちらへ走りだし、目前の獲物(オレ)へと殺意の刃を降り下ろしてくる。

 

 しかし、迫り来る斧は、俺の身を切り裂くことはなく、突如ジェットエンジンのような音と共に飛来した赤色の軌跡に弾かれた。

 

 軌跡の通り過ぎた先には、突如として現れたカナが、右手に握った剣を降り下ろした姿勢で立っている。

 

 先行する俺の背後を進むことで隠し球(ブラインド)のように重なりコボルトの視界から隠れ、俺にコボルトの攻撃が届くギリギリの所で側面に飛び、《ヴォーパル・ストライク》で急加速したのだろう。

 

 片手剣から赤色の光が消えると、カナは「スイッチ!」の言葉と共に後方へ下がる。

 

 その声を聞き届けるや、俺は地面を強く蹴り。地から浮いた状態のまま短剣を顔の横に構える。

 

 システムがモーションを検出し、短剣が青色の輝きを放つ。俺が発動させたのは短剣のソードスキルの中で一番最初に取得できる物であり、この二ヶ月間、俺が最も信頼を置き多様しているスキル、《アーマー・ピアーズ》がセンチネルの喉元を穿つ。

 

 ソードスキルによって、加速された一撃は深々と喉元に突き刺さり、コボルトのHPを大きく削り取る。

 

 スキル発動後の硬直が解けた瞬間、衝撃で動けずにいるセンチネルの腹を蹴り飛ばすことで、短剣を抜くと同時に隙を作り出す。

 

 抜き取った短剣を瞬時に構え直し、体制を崩され、がら空きとなった喉元を突いた。

 

 その一刺しで敵の残りHPは吹き飛び。獣人の王を守る衛兵は青色に輝くポリゴン片となり消滅した。

 

 衛兵の消滅を確認すると、俺たちは言葉を交わすことなく互いに顔を見合わせた後。新たな敵に狙いをつけ、凶刃を振るう怪物の元へ疾走した。

 

 

 

 よくわからない人。その人物に感じた第一印象はそのようなものだった。

 

 カナと呼ばれる女性プレイヤーに叱られている短剣使いの少年へと視線を向ける。

 

 親しげに話しかけてくる友好的な人かと思えば、冷たく現実主義な面を見せ、理由を聞けば恩人の為と律儀であったり、今も戦闘を終えた私たちに対して少しふざけた口調を取ったりなど、わずか二日の間だけでも多くの面を見せられた。

 

 カナに叱られ私たちに謝っている少年を見て、私は本当にこの二人は攻略に参加できるほど強いのか心配になった。

 

 そんな茶番を繰り広げていると、ボスと戦っている一団からあのディアベルという人の声が上がり、それと同時に衛兵たちが姿を現したことで、場の空気が変化する。

 

 再び現れた敵に飛びかからんとするが、それは短剣使いの呟きにより遮られた。

 

 「俺とカナで攻撃を仕掛ける。キリトたちはその間他のセンチネルが接近してこないよう警戒してくれ」

 

 「わかった。俺たちだけ手の内を見られるのも何だからな。ついでに二人がどれくらい戦えるのか拝見させてもらうよ」

 

 片手剣使いの言葉に彼は「了解」と一言告げると、二人は一気に駆け出した。

 

 最初にコボルトへ飛び込んだのはアルトだった。その背後にピッタリとカナが追走する。接近してくる短剣使いに気づいた衛兵がその命を刈り取らんと斧を降り下ろす。

 

 しかし、それでも彼は止まるこはなく進行を続ける、そしてその足が敵の間合いに侵入し、殺意を纏った刃が彼に届こうとした時――

 

 空間に赤い軌跡が走り、直後に激しい衝撃音と共に火花が上がった。

 

 その正体はアルトの背後を走っていたカナであった。彼女はスキルの硬直が解けた瞬間、「スイッチ!」と叫び後方へ飛ぶ、それと違い様にアルトがコボルトの懐へ飛び込む。

 

 その右手には青く輝く短剣を握りられ、ソードスキルにより加速された一撃は敵を穿たんと飛来する。

 

 そしてカナの攻撃により、隙だらけとなったコボルトの喉元へその一刺しは狙いを外すことなく命中する。それは敵のHPを大幅に消し飛ばすが、 コボルトのHPを全損させ、消滅させるには至らない。

 

 しかし、彼の攻撃はそれで終わることはなく硬直が解けた途端、衛兵の腹部を蹴ることで相手の体制を崩し、同時に引き抜いた短剣で素早く喉元を突き刺した。

 

 衛兵は一瞬、ビクリと痙攣すると、青い破片となり砕け散る。

 

 一連の出来事を見て、私は唖然とした

 

 先ほどのカナが発動したスキルやスイッチ。全てがコンマ数秒タイミングがズレれば互いの攻撃が被弾しかねないものであり、互いに強い信頼がなければすることは出来ないだろう。

 

 彼らに対する認識を改めなくてはいけない。二人もまた彼の片手剣使いと同じく、《強さ》を持っているのだ。つい先日まで戦い擬きをおこなっていた私が心配をするなど余計な御世話というものだ。

 

 会議の時カナが言っていたことを思い返す。『やってみなくちゃ解らない』と、まったくもってその通りだろう。 この世界に来てからというもの解らないことだらけだ。死に場所を探していた筈の私が攻略に参加するなど、二日前まで想像もしなかったのだから。

 

 この世界はナーブギアの生み出す電機信号が見せる偽物、ここでした行動は過程から結果まで全て偽りでしかない。だけど、今彼らが見ている《世界》を知りたいというこの気持ちだけは嘘偽りなく私の心が感じた本物だ。

 

 新たに遊撃隊から零れてきた衛兵に飛び込む、彼らの背中を、命を預けるパートナーとなった愛剣(ウインドフルーレ)を握りしめ追いかけた。




 メンバーの実力差はキリトが一番強く、その次にアスナとアルトが続き最後にカナ、といった感じです。

 アルトとカナは単体ではキリトより低いですが二人一組でのコンビネーションは現時点のキリトとアスナより優れています。

 アルトとアスナの実力は近いですが攻撃の正確性と速さにより現状はわずかにアスナが上です。

 

 本当に投稿が遅れてすみませんでした。  
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