ソードアート・オンライン Tracer   作:夜型人間

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 投稿遅くなりました。すみません。七話目です。
 


鼠のアルゴ

 あれから数分後、俺たちは街の入り口から離れ、人気のない路地にいた。

 

 あの後二人はすぐに落ち着き、アルゴと呼ばれた女性が場所を移動しようと提案してきたのだ。俺たちもそれに素直に従った。なんせ話の内容が不味い。

 

 今この世界ではベータテスターはかなり危険な立場にいる。理由は簡単なことで、デスゲームが開始された後、クエストや効率の良い狩り場の情報を持っていたのに新規プレイヤーたちを《はじまりの街》に見捨て、置いて行ったからというものだ。

 

 俺から言わせればそんなのは逆恨みに等しい、誰でも命の危機に陥れば自分のことを優先するに決まっている。そんな中カナのような人に出会った俺は相当運が良かったのだろう。

 

 それにあの日から少し後、ガイドブックが無料で配布されたのだ。俺たちも《メダイ》の道具屋で貰い、内容を見たがカナが知っていることと同じことが書かれている所がいくつかあった。つまりこれは新規プレイヤーが作ったものではなく、ベータテスターが作った物ということになる。

 

 ガイドブックには狩り場や危険な場所などが書かれており、これによって新規プレイヤーたちは十分情報を入手できたのだ。しかし、それでも二千人も犠牲がでた。これをベータテスターが悪いと言うのは筋違いだろう。

 

 話が逸れたが、カナの知り合いと言うことは彼女もベータテスターというこれになる。現に彼女は今「オレっちのバカ、何で返事するんだヨ……」と言って頭を抱えている。

 

 だが、いつまでもこのままではいられないので、俺は先程から話し難いオーラを出している彼女に意を決して喋りかけた。

 

 「えっと、さっきはすまん……色々と」

 

 「イヤ、謝らなくていいヨ……結果的にオイラが返事をしたのが悪いしナ」

 

 歯切れ悪く謝罪をすると、彼女は落ち込みながらも街の入り口でぶつかった時と同じく許してくれた。

 

 「本当にごめんねアルゴ……私知ってる人に会えたのが嬉しくてつい……」

 

 カナが消えてしまいそうなくらいか細い声で誤り、頭を下げる。

 

 「カナっちもそんなに気にしなくていいヨ。起きてしまったものは仕方がナイ。それに、会えて良かったと思ってるのはオレっちも同じダ。久しぶり、カナっち!」

 

 彼女――アルゴは落ち込んだオーラをなくしてシシシとカナに笑いかけた。

 

 「ありがとうアルゴ、無事に会えて良かった。今まで何してたの?」

 

 カナはアルゴへ礼を言い、サービス開始日から今日までどうしていたのか訪ねる。

 

 「あの後、オイラはベータの時の情報を使ってガイドブックを作ってあちこちで配ってたんダ。カナっちも聞いたことぐらいはあるだロ?」

 

 「やっぱりあのガイドブック、アルゴが作ったんだね! 私も持ってるよ。私の知らないことも載ってたし、さすが《鼠のアルゴ》だね!」

 

 なんとあのガイドブックは彼女が作ったものらしい。それに先程からアルゴという名前に聞き覚えがあると思っていたら、やはり情報屋の《鼠のアルゴ》のようだ。 

 

 「まあナ。ところでカナっち、さっきから気になってるんだケド。後ろにいる彼は誰だイ?」

 

 どうやらアルゴの興味は俺に向いたらしい。

 

 「ああ、紹介するのが遅れたね。この人はアルト、ベータテスターじゃないけどスッゴク強いんだー!」

 

 「今カナが言ったが改めて、アルトだ。よろしく、後カナが言ってるほど強くないぞ」

 

 カナがアルゴへ俺のことを話し、その後に続いて軽く自己紹介をしてカナの言ったことを否定する。

 

 「さっきからカナっちが言ってるケド。オレっちはアルゴ、よろしくナ、アル坊!」

 

 アルゴが簡単に自己紹介をする――いや、待て最後に彼女はなんと言った? アル坊?

 

 「あ、あはは、相変わらずだね」

 

 俺が困惑しているとカナが苦笑いを浮かべる。

 

 「アルゴは今みたいに人を何とか坊とか変なあだ名をつけて呼ぶんだよ」

 

 カナは俺の困惑の理由を察したらしく、説明をする。

 

 「む、変とは失礼だナ、これはオイラなりの親しみ方だゾ」

 

 アルゴはそう言って不機嫌になるが、さすがに俺もアル坊は嫌だ。

 

 「アルゴ……さすがにアル坊はちょっと……」

 

 「そうカ? じゃあアー坊……イヤ、アッくんの方がいいかナ……」

 

 どうやらアルゴは俺の名前を普通に呼ぶつもりはないらしい、十四歳にもなって女性にアッくんなどと呼ばれる位なら、最初のアル坊の方が百倍マシだ。

 

 「やっぱり、アル坊でいいです……むしろそれにしてください……」

 

 「だよナ。オレっちもそれが一番しっくりくるんだヨ」

 

 シシシと笑うアルゴに、俺は全てを諦めて苦笑いを返す。

 

 「ところでアルゴとカナはずいぶん親しいみたいにだけど、ベータテスター同士って点以外ではどういった関係なんだ?」

 

 現在ベータテスターたちはトラブルを避けるため、お互い深く関わらないのが暗黙のルールとなってる。それはカナも例外ではなく、一緒に行動しているとベータ時の知り合いに似てる人がいたと言ってくることが何度かあったが接触をしようとはしなかった。

 

 アルゴも先程の様子を見る限り、カナや他のベータテスターと同じくベータテスターだと露見しないようにしてきたのだろう。

 

 だが、今回カナはいつもと違い、アルゴの名前を呼んだ。アルゴも条件反射とはいえカナの呼びかけに答えた。そのまま人違いを装うことも出来たのに。

 

 つまり、彼女たちにはベータ時の知り合いということ以外に接点があるはず。

 

 「私とアルゴが知り合ったのはベータ開始日から少し後だったかな? 報酬がいいNPCクエストがあったんだけど、そのクエスト二人じゃないと受けられなくてさ、ベータでは知り合いもいないし、諦めようと思ってたんだけど、ちょうどその時アルゴが同じクエストを受けようとしてさ、それで一緒に受けたんだよ」

 

 「懐かしいナー、それでクエストを一緒にやってるうちに仲良くなったんだよナ」

 

 どうやら二人はクエストが切っ掛けで知り合ったようだ。しかもベータ開始日から少し後ということは結構長い付き合いになるだろう。

 

 「その後フレンド登録して、時々一緒にクエスト行ったり、アルゴの情報集めのお手伝いとかもしたよね」

 

 「二人でじゃないと受けられないクエストは結構あったからナ。オイラ一人だったらクエストの情報はほとんど集まらなかったと思うヨ」

 

 二人はベータの時のこと楽しそうに話している。俺は二人の話す姿を見て少し、いやかなり驚いた。特にカナが笑っていることにだ。

 

 この世界がデスゲームになってからカナは初めてあった時に比べて笑うこと少なくなり、笑ったとしてもどこか無理をしてる感じだった。

 

 しかし、今のカナが浮かべている笑顔は初めてあった時と同じように、無理のない自然なものに感じられる。

 

 おそらくアルゴとの再会が影響だろう。人は不安な時、親しい人物が側にいると安心できるらしいが、ここまでとは思わなかった。

 

 「ところで、カナっちたちは会議には参加するのかイ?」

 

 そんなにことを考えてるうちに話しの内容は変わっていたらしい。アルゴが俺たちに会議とやらに参加するのか尋ねてくる。

 

 「すまないがアルゴ、その会議ってのは何だ?」

 

 「アレ? 知らないのかイ?」

 

 俺が会議とは何のことか尋ねるとアルゴが以外そうな顔をして言った。

 

 「ああ、俺たちこの街を拠点にしてはいるけど、ほぼレベリングで外に行ってるから、街で起きたことは余り知らないんだよ」

 

 「そういうことカ、なら知ってるわけないよナ」

 

 俺の言ったことに納得した様子でアルゴが呟く。

 

 「で、その会議って何なの? アルゴ」

 

 カナが気になって仕方がないといった様子で聞く。

 

 「ああ、会議ってのは略称で正式な名前は別にあるんだヨ。それはナ――」

 

 アルゴは少し間を置いた後、再び口を動かした。

 

 「《第一層フロアボス攻略会議》サ」

 

 そう言ってアルゴはシシシと楽しそうに笑った。

   




 アルゴとカナはベータテストの時にクエストで知り合ったことにしました。ベータテスター同士なのに、なぜキリトの時とは違いベータテストの話題をもちだしたのかという理由は付き合いが長く、現実で女子同士なので話が合うためなのとクエスト以外にアルゴの情報集めを手伝っていたからだと思ってください。

 あとアルゴの一人称が安定しないのはアルゴの一人称が原作で《オレっち》と《オイラ》があるからです。《オネーサン》はキリトやアスナのような親しい人に対して使っているので当分使いません。カナは親しい人だからカナには使うけどアルトはまだあったばかりだからアルトがいるところでは使わないといった感じです。

 意見、感想お待ちしてます。
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