胡桃「…………せば……じゃ……か?」
悠里「ダメよ……たい……だし……しょう。」
半分眠りの中にいる彼の耳に、悠里達の声が入ってくる。
「……何かあったんですか?」
目を擦りながら、悠里達に尋ねる。
悠里「あら?ごめんなさい、起こしちゃったわね。」
胡桃「まぁこれで丁度良いじゃん。」
「…何が?」
悠里「朝ごはんの前にちょっと着替えをと思ったのだけど…寝てるのに起こすのも悪いから、__さんが自然に起きるのを待ってたの。昨日は疲れただろうから。」
「ああ…そう言えば昨日はいつの間にか皆パジャマに着替えてましたね。」
美紀「私達は胡桃先輩と__さんが物資の回収に行っている間に、胡桃先輩は__さんがトイレに行っている間に着替えたんです。」
「そうだったんだ…分かりました。少し外に出てるので、終わったら教えて下さい。」
悠里「悪いわね。」
「いえいえ…それじゃ。」
胡桃「覗くなよ!」
「はいはい。」
胡桃に適当な返事をしながら、彼は車の外へ出た。
「……ふわぁ~~!」
彼は外に出ると、大きくあくびをした。
(昨日は外から胡桃ちゃんと戻ってからは、わりとすぐに眠れたな。)
(…よかったよかった。あのまま一睡も出来ないかと思った。)
そんな事を考えながら、彼は周囲を見回す。
(…今何時くらいだろう?…7時くらいかな?)
(…だとしたら久しぶりの早起きだな。一人の時は起きるの大体12時前後だったから。)
(………………。)
(………まだかな?もう4~5分外にいるけど……。)
(まあ呼ばれるまで待たないとな……勝手に開けたら絶対胡桃ちゃんに殺されるし。)
バタン!
車の扉が開き、中から由紀が顔を出して言った。
由紀「__くんもういいよ~!」
「はーい。」
彼はそう由紀に返事をして、車内に戻る。
胡桃「覗かなかったみたいだな、えらいえらい。」
胡桃が戻った彼にそう言った。
「どうして覗いてないと思う?」
美紀「…実は着替え終わった後に窓からこっそり__さんの事見てたんです。」
胡桃「こっそりと覗きなんかする奴と一緒に暮らすのはイヤだからな!ちょっとしたテストみたいなもんだよ。」
「はぁ、…んで、僕はそのテスト合格かな?」
胡桃「ああ!合格だ!良かったな。」
悠里「ごめんなさい…私は止めたんだけど…。」
胡桃「けどりーさんも結局最後は一緒には窓から__を見ながら笑ってたじゃん。」
「…そうなんですか?」
悠里「あの~、多分覗きなんかしないとは信じてたけど……一応ね?」
「………。」
美紀「…怒らせちゃいました?」
悠里「ああっ…その……ごめんなさい!悪気はないのよ?」
由紀「あーあ。だからやめようって言ったのに!くるみちゃんのせいだよ!」
胡桃「な!?一番始めにお前が『もしかしたら__くんこっそり覗くかもよ?窓から様子見てみない?』…って言ったんだろ!!」
胡桃が由紀を捕まえて頬をつねる。
由紀「いたたた!だって面白そうだったからぁ~!」
悠里「あの……__さん?」
彼は悠里に近くで話しかけられ、ハッと我にかえる。
「あ、大丈夫。怒ってなんかいませんよ?…ただもし覗いてたら大変だったなって考えてました。…実は少しだけ覗いてみようかな~?なんて思ってたんですけど、良かった!止めといて。あははは!」
彼は場を和ませようと、冗談をいって笑う。
悠里「そうね………私も、もしあなたが覗きを働いてたらさすがに庇いきれなかったわ。」
悠里の雰囲気が少し変わる。
悠里「…だから…………………。」
(?なんだろうこの雰囲気は、……)
悠里「覗きなんかして、私達を失望させないようにしてね?」
そう言った悠里の表情は笑ってはいたものの、恐ろしいオーラのような物を纏っていた。
「あ、あの……はい……分かりました!!」
それに言葉に出来ない恐怖を感じた彼は、戸惑いつつもそう返事を返した。
悠里「本当に?さっき少しだけ覗いてみようかな?とか思ったって言ってた気がするけど、信じていいの?」
悠里がニッコリと笑いながら言った。
「あの……その……あれは、……冗談です。すいません。」
冷や汗をかきながら、彼は悠里に言った。
悠里「そう。冗談だったのね?良かった!」
その瞬間に、悠里の雰囲気はいつものそれに戻った。
(ムチャクチャ怖かった!何だったんだ?今のは!?)
悠里は彼の肩をポンと叩くと、その場を離れ、朝食の準備を始めた。
胡桃「りーさん、ああ見えて結構怖いとこあるから…あんま怒らせるなよ?」
胡桃が彼にそっと耳打ちした。
「うん。……よく分かった。」
その後、皆で朝食を済ませると、胡桃が運転席に、そして悠里が助手席に座り、車を動かし始めた。
由紀「トイレ行ってくる~。」
由紀が言う。
美紀「いちいち言わずに、黙って行ってくださいよ。」
由紀「みーくん冷た~い。」
由紀はそう言って、トイレに入る。
「…ところで、これからは何処に向かうんですか?」
彼が助手席の悠里に尋ねる。
悠里「目的としている場所は特にないの、ただ適当に車を走らせて物資のありそうな場所を探したり、生存者を探したりってところね。」
悠里がそう答えると胡桃がそれに続けて話した。
胡桃「まぁでも一応は目的候補みたいな場所はあるんだよ。」
「そうなの?」
胡桃「ああ。昨日、あたし達の先生の事は話したろ?」
「うん。」
悠里「あら?いつの間に話したの?」
胡桃「昨日の夜中にちょっとな。」
胡桃「んで、その先生…めぐねえがさ、あたし達に目的地を、進路を与えてくれたんだ。」
そう言って胡桃が運転席に置いていた地図を取り、彼に渡す。
その地図には何ヶ所かに熊のようなキャラのマークが付けられていた。
「んん…このマークが付いてる場所……聖イシドロス大学、それに……ランダルコーポレーションか。」
胡桃「ああ。多分めぐねえがあたし達の為に避難所になる場所を教えてくれたんだと思う。」
「……だったらこのどちらかに向かえばいいんじゃないの?」
彼が地図を見ながら胡桃に言う。
胡桃「どちらかに行こうか決めかねてるんだよ。…それにもしかしたら、先に避難していた人達に受け入れてもらえない可能性もある…昨日のお前の話を聞いたら余計にな。」
美紀「話って?」
胡桃「こいつ、今まで何度か生存者に襲われてるんだと。」
悠里・美紀「!!?」
美紀「本当ですか!?」
美紀が彼に尋ねる。
「はい。寝てる間に物資を取られた事もあるし…殺されそうになった事もありました。」
悠里「大変だったのね…。」
「はい…だから僕は今まで他の人間を信用せずに一人で生きてきたんです。……ただ、あなた達は信頼出来るような…そんな気がしたので仲間になりましたけど。」
胡桃「女しかいないからか?」
「それもあるかも、今まで僕が会ったのは男だけだったし。……でもそれだけじゃない……皆を見てると、普通の世界に生きている気がして…この化け物だらけの世界でも楽しい日常がおくれるんじゃないかって、そんな気がしたんです。」
悠里「…そう。なら良かったわ…__さんを仲間に誘って。」
悠里がそう言って微笑むと美紀と胡桃も笑った。
バタン!
突然トイレの扉が開き、中から由紀が飛び出して言った。
由紀「りーさん!!__くん誘ったのは私だよ!?」
悠里「あら聞いてたの?もちろん、分かってるわよ。」
悠里が由紀に微笑む。
美紀「こういう騒がしい人がいるから、__さんも私達に害は無いと判断してくれたんですよね?」
美紀が彼に笑いながら言った。
「ええ……楽しそうな人達だなって、そう思いました。」
由紀「騒がしいって…ちょっと失礼じゃない?」
美紀「そんな事はないですよ?」
「うん。誉め言葉だよ。…ね?美紀さん?」
美紀「はい。誉め言葉です!」
由紀「う~、なんか納得いかないよ~。」
少しの間、彼は美紀と一緒に由紀をからかうと、地図を胡桃に帰して話を続けた。
「話を戻すけど、つまりは危険な生存者がいたら心配だと…、そういう事だよね?」
胡桃「ああ、そういう事だ。……だからとりあえずは避難所は保留にして、卒業旅行って事で、各地を転々とすることにしたんだ。」
「なるほどね……。」
彼は少し考えた後、悠里にこう言った。
「りーさん、今なら僕もいますし、女の人しかいなかった時よりはリスクが減ると思います。さっきの避難所のどちらかに向かうなら、力を貸しますよ?危険な生存者には慣れていますし。」
悠里「…ありがとう。けど大丈夫よ、出来るだけ皆を危険な目にあわせたくないから、ゆっくりと情報を集めてからでも良いと思うの。」
悠里「奴ら相手なら、まだ何とか生き延びられるけど……危険な考えを持った生存者達相手じゃ分からないから……。」
「…そうですね、分かりました。」
美紀「…生き残っている人……どのくらいいるんでしょうね…。」
「さて……いる所にはいるんでしょうが、それがまともな人間かどうかっていうのが、面倒な所ですね。」
美紀「……まったくです。」
美紀が椅子に座り、窓の外をみながらそう呟いた。
読んでいただきありがとうございました。
この話を書くために、原作とアニメを見直して気付いたのですが、地図は原作だとヘリコプターから拾って、アニメだとめぐねえが用意してたって違いがあったんですね。
落ち着いて見て始めて気付きました。因みに本作品ではアニメ版のめぐねえが用意してたって方を採用しています。
あと今回始めに胡桃と悠里の会話を彼が聞いているシーン、彼は半分寝ているので飛び飛びで会話を聞いていますが正しい内容は、
胡桃「起こせばいいじゃないか?」
悠里「ダメよ、疲れてるみたいだし、休ませてあげましょう。」
…となっております。…わりとどうでもいいですね。