軌跡〜ひとりからみんなへ〜   作:チモシー

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境野達がいなくなり、雰囲気が明るくなったおかげで更新の速度が上がっております(*´-`)

やっぱり、暗い話より明るい話の方が楽しいですね♪
それでもまだ暗い要素はありますけど…境野達がいた頃より遥かにマシなのです!


九十六話『みんなで』

 

 

 

 

 

 

 

誠「……おかしいな。いくらなんでも、そろそろ来るはずだろ」

 

境野の仲間達は遅くても朝には来ると言われていたが、やって来ないまま昼をむかえた…。念の為にと思いながら窓際に立ち、外を見張っていた誠だが、いつまで待っても敵は現れない…。『もしかしたら、連中はこのまま来ないのではないだろうか…』そんな考えが誠の頭に浮かぶ。

 

誠が一人窓際に立ちつつ考えていると広間の扉が開く音がして、そこから現れた宮野がこちらへと歩み寄る。

 

 

宮野「お疲れ様です…。もうお昼ですが、現れませんね」

 

誠「…なぁ、境野や三瀬が殺されている事に戻った仲間連中が気付いたとして、それでもここに来ない理由はあるか?」

 

宮野「ない…と思います。私以外のほぼ全員が二人を信頼していたので、殺されたと分かれば仕返しを考えるはず…。そして、それをすべき相手はこの屋敷にいるという事も彼等は知っています。だから来ない理由なんて…ないはずなんですが」

 

誠「念入りに準備をしてから…って事は考えられるか?」

 

宮野「どうでしょう…なんとも言えません…」

 

元々連中と組んでいた宮野といえどその行動を完璧に読むことは出来ず、頭を悩ませる…。誠は彼女が悩んでいるのを見て、ある決意をした。

 

 

 

誠「…少しだけ見張り代わってくれ」

 

宮野「構いませんよ。疲れました?」

 

誠「少しな。でも休むわけじゃない…ちょっと広間に戻って、それから出かける」

 

宮野「出かける?どこにです?」

 

誠「境野達がいた、あの倉庫だ。あそこに行って、境野の仲間達が何をしているのか直接確かめてくる」

 

宮野「えっ!?あ、危なくないですか?」

 

誠「バレないように行動するから問題ない。これはあくまで偵察…戦いにいくわけじゃないからな。すぐに戻るから、そんな心配するな」

 

宮野「は…はい。気を付けて下さいね」

 

誠は軽く手を振ってそれに応え、一度広間に向かう。

一応、他の皆にも言っておいた方が良いだろうと思ったからだ。

 

 

 

 

 

…バタン

 

広間に入って早々、誠は周囲を見回す…。

夜遅くまで見張りを手伝ったからだろう…由紀、そして美紀は床に毛布を敷いて眠っている。

 

他の者は起きているが、ずっと警戒し続けている影響で顔に疲れが出ていた。誠はその様子を見て小さなため息をつき、そばの椅子に座って休んでいる彼の元へと歩み寄る。

 

 

 

誠「…よぉ」

 

「ん、どうしました?」

 

声をかけた誠の方へと顔をあげる彼もまた、僅かに疲れた表情をしていた。昨日の事もあって彼が心配になり、誠は尋ねる。

 

 

誠「お前…少しでも寝たか?」

 

「一応、少しは寝ましたよ。それより宮野さん…あの人の方がヤバい」

 

誠「宮野?どうして?」

 

「皆それぞれ少しずつ休んでましたけど、あの人だけはずっと寝てませんよ」

 

誠「…そうか」

 

そう言われれば、彼女の目の下にはくまが出来ていた。

彼女が一睡もせずに警戒を続けているのは恐らく、連中と仲間だったという事への罪悪感のようなものだろう…。

 

 

誠(一時的とはいえ、境野達と一緒に由紀達を追い詰めた事を気にしてんのかもな。まったく、それで自分が倒れたらどうすんだか…)

 

 

誠「じゃあ悪いけど、宮野と見張り代わっといてくれるか?俺は今から境野達がいた倉庫に行って、少し状況を確認してくる」

 

近くで休んでいる悠里、胡桃達には聞こえぬよう、小さな声で彼にだけ伝える。彼は驚いたような表情をしたが、その首を縦に振って廊下へと出てくれた。誠もそのあとに続き、静かに廊下へと出る。

 

 

 

バタン…

 

 

 

 

 

「もう昼だってのに来る気配がありませんからね。僕もですけど、りーさん達も考え始めてます。もしかしたら、敵なんて来ないんじゃないかって…」

 

誠「まだ油断出来るほどの時間は経っていないが、このまま何の情報も無しに警戒してたら倒れちまうからな。パパっと探ってくる」

 

二人会話を交わしながら廊下を進み、見張りをしていた宮野の元に着く。

じっと外を見つめて動かない彼女の肩を、誠はパシッと叩いた。

 

 

 

誠「おい、見張りはコイツに任せて、お前は少し休め」

 

宮野「えっ?いや、まだ大丈夫ですから…」

 

誠「いいから、ほら!」

 

誠が半ば強制的に宮野をそこから離し、すかさず代わりとして彼がそこに立つ。宮野はそんな二人に後押しされ、渋々広間へと向かっていった。

 

 

 

宮野「じゃあ…頼むね?」

 

「了解です」

 

 

 

 

誠「じゃ、俺も行くか…。もし連中を見かけたらすぐに戻るから、それまでは頼むぞ」

 

「了解、気を付けて」

 

彼がそう答えると、誠はそばにある階段を足早に下っていく。

その後彼が窓から外を見張っていると、誠が門をしんどそうによじ上って外へと出ていくのが見えた。

 

誠が外に出た直後、どこからともなくゾロゾロと"かれら"が現れて誠を襲おうとしたが、誠は"かれら"に囲まれるよりも先に目的の場所を目指して駆けていった。

 

 

 

 

 

(あのペースなら、20分としない間に帰ってくるかな…)

 

誠の走りを見た彼のその考えは的中し、約15分後…誠は屋敷に戻る。屋敷に入り、二階へと戻った誠は不思議そうな顔をして、見張りをしていた彼へと言った。

 

 

 

「…どうでした?」

 

誠「それが…誰もいなかった」

 

「一人も、ですか?」

 

誠「ああ…あの倉庫は昨日俺達が出ていった時のままで、誰かが来た形跡がねぇ」

 

「………」

 

予想外の答えだった…。連中がここに来ないのはまだ準備をしているか、もしかしたら境野達を殺された事による仕返しなどするつもり無いからだと思っていた。だがそれはどちらも違って、連中はまだあの倉庫にすら帰ってきていなかったのだ…。

 

 

 

誠「…宮野を呼んできてくれ」

 

彼は無言で頷き、宮野を呼びに広間へと向かう。

宮野はすぐ彼と共にそこに現れ、偵察に出ていた誠にその結果を尋ねる。

 

 

 

宮野「どうでした?なにか分かりましたか?」

 

誠「えっとな、まだ…誰もあの倉庫に戻ってなかったんだが…」

 

宮野「っ!?誰も?一人もですかっ!?」

 

驚いたような声を出し、宮野は誠の目をじっと見つめる。

誠はすぐに頷き、見てきたままを彼女に知らせた。

 

 

 

誠「一人もだ。あの倉庫には、まだ誰も戻ってきてない。…あぁ、三瀬はあの化け物になって中をうろついてたから、仕留めておいたぞ」

 

彼に目線を移し、それを教える。彼は誠に感謝するかのようにペコッと頭を下げ、引き続き横でその話を聞いていた。

 

 

宮野「誰も……戻ってない…?それって……」

 

誠「あれ以来連中は出かけたままって事だが……これをどう捉える?」

 

そう誠に問われると宮野は自らの額に右手をあて、可能性として考えられる出来事を思い浮かべる…。その結果、彼女は二つの答えを導き出した。

 

 

 

宮野「考えられるのは二つ…。まず一つ目ですが、何らかの事情により動けなくなった…というものです」

 

誠「何らかの事情…具体的には何だ?」

 

宮野「あの人達は他のグループと戦いに行きましたが、その周辺を"かれら"の大群に囲まれた…とか」

 

誠「…なるほどな」

 

納得したように呟く誠だが、言った本人である宮野は何やら唸り声をあげており、自分の考えに今一つ納得のいっていないようだった。

 

 

 

宮野「…でも、如月さんのところの人員と境野さんの貸した人員を合わせたらその人数は約30人…。いくらなんでも、それだけ人数がいて一人も脱け出せないような"かれら"の大群なんて…見たことないですよね…」

 

誠「じゃあもう一つの可能性、そっちはどうだ?」

 

宮野「こっちは…一つ目以上にあり得ないかも知れません…」

 

誠「いいから、言うだけ言ってみろ」

 

自信がなくて発言を躊躇う宮野だったが、渋々その口を開いた…。

 

 

 

 

 

 

宮野「相手のグループを倒す事が出来ず……全滅…とか…」

 

誠「…約30人規模のグループが全滅か…なるほど、無くはないかもな」

 

宮野「無くはない…ですか?私は絶対にないと思いますけど…」

 

誠「お前はどう思う?」

 

絶対にないと考える宮野の横…そこで無言のまま立ちつくす彼へと尋ねる。彼は少し考えるようにして目を閉じた後、ポツリと呟きながらその目をゆっくり開けた。

 

 

 

「その相手のグループがかなりの人数ならとは思うけど、30人を相手に出来るだけの人数を揃えてるグループなんて…中々ないですよね」

 

宮野「ないと思うよ…。だいたい、如月さんが30人集めたのだってほとんど奇跡みたいなものだと思うもの」

 

誠「連中は戦いが終わったら、すぐに戻ってくるハズだよな?」

 

宮野「はい、それは間違いありません。境野さんに借りていた分の人員も出来るだけ早く返さなくてはなりませんし、相手から奪った物資も分ける約束をしていましたから…」

 

誠「じゃあ、どうなってんだ…なんでまだ戻ってすらいない…」

 

最早見張る意味があるのかも分からないまま、誠は窓際に身をよりかける。門の外は相変わらず"かれら"が数人うろついているばかりで、生きている人間などいなかった…。

 

 

 

誠「…もう一日だけ様子を見て、また明日あの倉庫に行ってみる。もし明日も戻ってきていなかったら、連中は戦った相手に負けたものと考えよう」

 

「そうですね…。無駄に警戒ばかりしていたら、こっちの身がもたない…」

 

宮野「……わかりました」

 

とりあえず、今日一日は警戒を続ける事にした。

誠は窓からの見張りを引き続き彼に任せて広間へと戻るが、その前に彼に一つ頼み事をされる。

 

 

 

「あの、すいません」

 

誠「あっ?なんだ?」

 

「広間に戻ったら、胡桃ちゃんをここに呼んでくれますか?」

 

誠「胡桃?なんだ…一人じゃ寂しいからイチャイチャすんのか?」

 

「それ、胡桃ちゃんが聞いたら怒りますよ」

 

 

誠「ははっ、冗談だ。分かった、呼んどくよ」

 

ヘラヘラしながら彼に手を振り、誠は広間へと戻っていく。

その後すぐ、胡桃は廊下へと出てきて彼のいるそこへとやってきた。約束通り、誠が呼んでくれたようだ…。

 

 

 

 

 

胡桃「呼ばれたから来たけど、なに?」

 

胡桃は窓から外を見張る彼の横に立ち、自分も外の様子を覗きながら尋ねる。彼はそっと彼女の方へと目線を移し、真剣な表情を向けた…。

 

 

 

「あの…いきなりだけど……」

 

胡桃「…ん?」

 

思ってもない表情をされたために少し戸惑う胡桃だったが、真っ直ぐに彼を見つめ続ける。わざわざ呼び出すくらいなのだから、よほど大事な話なのだろうと思った…。

 

 

 

 

「もし、明日になっても連中が来なかったら……僕はここを出ていく」

 

胡桃「………えっ?」

 

彼の発言の意味が分からず、胡桃は目を丸くする…。

聞き間違いでなければ、彼は出ていくと言ったのだ…。

胡桃は思わず声を荒げてしまいそうになるが、彼は昨日『そばにいる』と約束してくれた。ならば何か意味があっての発言だろうと思い、落ち着いた状態のまま、静かに尋ねる…。

 

 

 

 

胡桃「…どうして?」

 

「胡桃ちゃん…完璧に治ってはいないんだよね?」

 

胡桃「………」

 

言われてすぐ、胡桃は理解した…。

彼はここから外に出て、彼女を完全に治す方法を探る気でいるのだ。

 

 

 

胡桃「…バカだなぁ、平気だっての!」

 

ふざけたようにニヤリと笑い、彼にそっと背を向ける。

こうすれば、なんとかごまかせると思っての行動だった。

 

 

「昨日言ってたじゃん…。意識が薄れる時がある…もうダメかも知れないって」

 

胡桃「それは……その…」

 

「もう、隠し事はしないんでしょ?」

 

彼は背中を向けた胡桃の前に回り込み、顔を覗きこむ。

確かに、彼にはもう隠し事をしたくない。そう考えた胡桃は目を伏せながら静かに頷き、制服の上に着ていた上着へと手をかける。一度、彼にあの傷跡を見せておこうと思ったからだ…

 

 

 

胡桃「………」

 

羽織っていた上着を脱ぎ、そっと床に置く。そうしてから胡桃は制服の右袖を捲り、そこに巻き付けていた包帯を外していった…。彼は無言のままそばに立ち、それを見守る…。胡桃が包帯を外し終えるとそこには痛々しい傷跡が残っており、彼は顔を悲しげな表情をした…。

 

 

胡桃「…うん…ダメだと思う。たぶん、もうじきかな……」

 

傷跡を見つめながら胡桃は呟き、ため息をついて壁に背をもたれる。

彼もまた彼女の隣に背をもたれ、右手で頭を抱えていた…。

 

 

 

「助かる方法を…どうにかして見つける…。外に出て必死に探れば、手がかりがあるかも知れない…」

 

胡桃「…一人で行くの?」

 

「うん。外は危ないし、皆はここに待たせておく」

 

彼がそう告げた途端、胡桃は彼の肩を力強くバシッと叩く。

その勢いに負けた彼が身をよろけさせて驚いたような顔を向けると、胡桃は呆れたようにため息をついていた。

 

 

 

胡桃「はぁ……バカだなぁ…」

 

「失礼な…こっちは皆の事を思って…」

 

胡桃「まず第一に、お前があたしを治す手がかりを見付けたとする!でもその時そばにあたしがいなきゃ、なんの意味もないだろ?」

 

「…急いで帰ってくる」

 

胡桃「その僅かな時間のムダであたしが死んだら、お前どうすんの?」

 

「うっ…」

 

何も言い返せず、彼は胡桃から目を逸らす…。

胡桃はそんな彼を見て満足そうに微笑み、包帯を巻き直し始めた。

 

 

胡桃「そういうわけだから…あたしはついてくよ?」

 

「……わかった」

 

観念して首を縦に振る…。

胡桃はすぐに包帯を巻き終え、床に置いていた上着を再び羽織った。

 

 

 

胡桃「でも、みんなは……」

 

切なそうな顔をして胡桃は俯く…。

由紀達はどうすべきか…これには彼もかなり頭を悩ませたが、すぐに一つの案が浮かんだ。

 

 

 

「事情を話して、ついてきたいって答えた人は連れていこう」

 

胡桃「…それで良いのかな…」

 

「だって、黙っていなくなったら皆怒るよ?皆の気持ちも考えるなら、これが一番良い」

 

胡桃「…さっきは一人で出ていく、とか言ってたクセに……」

 

「あはは……」

 

胡桃「…へへっ」

 

気まずそうに笑ってごまかす彼を見て、思わず微笑む胡桃。

確かに彼の言う通りだ…もし黙って出ていったら、由紀も悠里も美紀も…凄く怒るだろう…。

 

 

 

胡桃「…わかった、みんなに話してみるよ」

 

「いや、僕も一緒に話すよ。そういえば、皆は傷の事知ってる?」

 

胡桃「傷の事は知ってる…。ただ薬がしっかり効いてると思ってるから、あたしが危ない状態なのは知らない…」

 

「…了解」

 

彼はそれだけを聞き、再び外を見張る…。

胡桃はそんな彼を後ろから引っ張り、窓際から引き離した。

 

 

胡桃「見張りは代わっとく。だから…みんなに話しといてくれるか?」

 

「ああ、分かった…」

 

胡桃「あっ!昼ごはんまだだったから、なんか持ってきてよ」

 

「はいはい…」

 

 

彼はそこを胡桃に任せ、広間へと戻る。

するとタイミングよく悠里達が昼食を出してくれていたのでそれを胡桃の元に持っていき、それから自分も広間で食事をとった。

 

彼は食事を終えた後、由紀・悠里・美紀を廊下へと呼び出す…。

呼び出された三人は不思議そうな顔をしており、そのまま彼に連れられて見張り中の胡桃の元へと歩いていった。

 

 

 

悠里「…急にどうしたの?」

 

胡桃のそばに立ち、悠里が尋ねる。

美紀と由紀も彼女と同じ気持ちだったようで、彼や胡桃の事をじっと見つめている…。彼はすぐに彼女達全員を見回していき、静かに告げた。

 

 

「実は……」

 

胡桃の状態の事、それをどうにかする為に明日出ていくという事、この屋敷に残っていたいなら残っていて欲しいという事…彼はその全てを彼女達に告げる…。それを聞き終えて真っ先に口を開いたのは、由紀だった…。

 

 

 

由紀「胡桃ちゃん…治ってなかったの…?」

 

悲しげな表情をしながら尋ねる由紀の顔を直視できず、胡桃は静かに目を逸らす…。

 

 

胡桃「……ああ」

 

 

由紀「…どうして――」

悠里「どうして黙ってたの?」

 

由紀の声を遮るようにして、胡桃のことを見つめる悠里。

彼女はいつになく鋭い目付きを向けており、怒っているようだった…。

 

 

 

胡桃「心配…かけるし……」

 

悠里「まったく、そんな下らない理由で…!?」

 

胡桃「ッ!下らないって…そんな言い方しなくても…!」

 

 

悠里を強く睨み返し、声を荒げる。

それを見ていた由紀と美紀は慌てて二人の間に割って入り、どうにか落ち着かせようとした。

 

 

美紀「胡桃先輩っ!りーさんも…落ちついて下さい!」

 

由紀「そ、そうだよ…!」

 

 

悠里「だって、本当に下らないんだもの…」

 

胡桃「あたしはっ…!ただ…迷惑になると思って……それが嫌で…」

 

呆れたように放った悠里の言葉を聞き、胡桃が顔を伏せる。

悠里は落ち込んだ様子を見せる胡桃の前に立ち、自らも顔を伏せながら呟いた。

 

 

 

悠里「そんな下らない理由のせいで黙ってて…それで死んだらどうするの?残された私達は…何も知らないままあなたとお別れしなきゃならないのよ?」

 

泣きそうになるのを堪えているのか、徐々に悠里の声が震えていく…。胡桃はそっと顔を上げ、目の前で語る悠里を静かに見ていた…。

 

 

 

悠里「もう嫌なのに…誰かが死んだりするのは…嫌なのにっ…どうして……どうしてこんな事ばかりっ…!!」

 

グッと拳を握り、肩を震わせる悠里…。

チラッと覗いたその表情はとても辛そうで、見ているだけでも胡桃は辛い気持ちになった。

 

 

胡桃「そういう顔されるのが…嫌だった…」

 

 

悠里「……ばか」

 

胡桃「…ごめん」

 

溢れてきた涙を手で拭いながらボソッと呟く悠里に対し、胡桃は一言そう返す。直後に悠里は表情を一変させ、微笑みながら彼に告げた。

 

 

 

悠里「こんなどうしようもない娘だから、私がそばで見てなきゃね…。私も二人についていくけど、構わない?」

 

「…もちろんです」

 

外は危険なので残っていて欲しいという思いも少なからずあったが、自分と二人きりよりかは慣れ親しんだ友達がいた方が胡桃も幸せだろう…。そんな事を考え、彼はニッコリと微笑んだ。

 

 

由紀「私もついてくよ!どんな時も、胡桃ちゃんのそばにいる!!」

 

そう言ってから由紀は胡桃に抱きつき、彼女を離さない。

胡桃は戸惑いながらその顔を真っ赤にし、由紀の顔を間近で見つめた。

 

 

胡桃「わ、わかったからっ!離せって!」

 

由紀「はなさないっ!ずっとこうしてる!!」

 

胡桃「くぅぅ……///」

 

両手でぎゅ~っと抱きしめながら、由紀はその顔を胡桃の胸へと埋める。悠里と美紀はそんな光景を前にして楽しげに笑っていた。

 

 

悠里「ふふっ…美紀さんはどうするの?」

 

美紀「もちろん私もいきますよ。先輩達が頑張ってるのに、後輩の私一人だけ楽は出来ませんから」

 

美紀の答えを聞き、悠里は微笑む。

胡桃もしっかりとその答えを聞いており、抱きつく由紀を引き剥がそうとしながら悠里と美紀を見つめていた。

 

 

 

胡桃「…ほんとに…いいの?」

 

悠里「もちろん、当たり前でしょ」

 

美紀「胡桃先輩を__さんと二人きりにするのは色々と不安ですからね…」

 

横目でそっと彼を見て美紀が呟く。

彼は心外そうな表情をして、美紀の顔を見返した。

 

 

「それってどういう事ですかね…」

 

美紀「どういう事だと思います?」

 

「………」

 

聞きはしたが彼は薄々気づいていた…。

つまり美紀は、胡桃と二人きりになった瞬間に彼が色々な意味で暴走すると考えているのだ。無論、今の彼にそんなやましい気持ちは無いが、胡桃と二人きりの生活が長く続くとなれば話は別…なんとも言えなくなる…。結局彼は美紀に何も言葉を返せず、逃げるように視線を胡桃の方へと向けた…。

 

 

 

胡桃「由紀もいいのか?外、危ないぞ?」

 

由紀「大丈夫っ!ずっと一緒だよ♡」

 

即答する由紀を見て胡桃は嬉しそうに微笑み、彼女の頭を撫でる。頭に被っていた帽子越しに撫でられながら由紀は目をギュッと閉じ、ニッコリと微笑んだ。

 

 

 

胡桃「…んじゃあ、これからも頼むな…」

 

小さく囁き、由紀・美紀・悠里・そして彼を見つめる…。

結局、元々一緒にいた全員が胡桃についてきてくれる事になった。

あとは今日も敵が来ないのを祈るばかりなのだが、やはり…今日も連中は現れなかった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




境野の仲間達は何故かいつまでも現れない為、彼は胡桃ちゃんを救う方法を求めて再び外へと旅立ちます。しかしそれを聞いた由紀ちゃん達が大人しく待っているハズもなく、結局はみんなで一緒に行くこととなりました。

この章はあと二話で終了の予定になっていますが、その内の一話はある時期の話を別視点で回想するストーリーですので、実際は次回が最後の話となります。

それから少ししたらまた次の新章へと移りますので、暖かく見守っていただけたらと思っておりますm(__)m
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