軌跡〜ひとりからみんなへ〜   作:チモシー

106 / 323
リクエストを頂いた事で始まったこのシナリオ…。
前編を見た読者様から「バッドエンドしか思いつかない」という声をもらいましたが…今回の中編もかなり重い内容になっています…(汗)






異編-中編-『希望の終わり』

 

 

 

 

いなくなった彼を探すために誠は一度自室へと戻り、外に出る準備をしてから屋敷の庭へと出る。本当は明日の朝から探す事にしようと思っていたのだが、胡桃の本音を聞いた以上は早く安心させてあげたいので、夜遅いが外へと向かう事にした。そして屋敷から出た誠が庭から門へ歩みを進めていると、一足先に庭で待ち構えていた人物が歩み寄ってくる…。

 

 

 

誠「…胡桃、どうした?」

 

手にしていたライトを歩み寄ってきた少女…胡桃の方へと向ける。彼女はそっと誠の顔を見つめ返すと、手に持っていたシャベルを強くギュッと握り締めた。

 

 

 

胡桃「任せっぱなしも悪いからさ、あたしも行くよ」

 

誠「はぁ……それを言いたくて待ってたのか?」

 

胡桃「へへ…。ほんとは先に一人で行ってようかと思ったんだけどさ、あとでバレたら怒られるじゃん?」

 

誠「ま、そりゃそうだろうな…。」

 

胡桃「ってわけで!あたしも一緒に―――」

 

誠「ダメだ。お前は待ってろ」

 

食い気味に誠が告げる。胡桃はそれに対して明らかに不満そうな顔を見せ、尚も誠に言った。

 

 

 

 

胡桃「でもっ!一人じゃ危ないだろ!!」

 

誠「大丈夫だって、俺は元々一人で生きてきた人間だし…」

 

胡桃「それでもっ…あたしも……アイツを…」

 

少しずつ、胡桃が顔を俯けていく…。

彼女がついてくるのをこれ以上断っていると気まずくなってしまうそうだったが、それでも彼女を連れていけない理由が誠にはあった。

 

 

 

 

誠「俺が出ている間に境野の仲間がここにくる可能性もなくない。そうなった時、お前には俺が戻るまでの時間稼ぎをしていてほしいんだよ」

 

胡桃「…朝来なかったんだ。もう、来ないだろ……」

 

誠「万が一って事もある。頼むから、待っててくれ」

 

胡桃の肩をポンッと叩き、出来るだけ優しい声で頼む誠…。

胡桃は深いため息をつきながら顔を俯けていたが、どうにか納得してくれたようだった。

 

 

 

 

胡桃「…わかった。じゃあ…アイツを頼むよ……」

 

誠「ああ、見つけてきてやるよ」

 

暗い表情の胡桃を屋敷の中へと戻し、誠は庭から門を飛び越えて外に出る。左…右…正面…どの道を行こうか悩むところだが、一先ずは真っ直ぐ正面の道を行くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

誠(わざわざ待っててくれたのに…悪いことをしたかもな)

 

屋敷に戻る際、胡桃は顔を俯けながらトボトボとした足取りだった…。彼女は彼女なりに彼の事を心配しているのだから、彼女の気持ちを思えば連れていってやるべきだった。しかし、誠には彼女を連れていけない理由が境野達の事とは別にもう一つあった……。

 

 

 

 

 

 

誠(大丈夫だとは思うが、万が一って事がある…。万が一…アイツに何かあったとしたら。きっと…今の胡桃じゃ……)

 

正直にいうと、彼女を連れてこれない理由はそれにある。

一人で出ていった彼が"かれら"に襲われ、そして何らかの良くない事があった場合……。胡桃がそれを知ればショックを受けるだろう。

 

 

 

誠(もし、奴らと同じになってしまっているアイツと出会いでもしたら……俺はともかく、今まで一緒にいた胡桃にはキツすぎるだろう。まぁ、アイツがそんななってたらなんだかんだ俺もキツいがな…)

 

もしも彼が噛まれ、"かれら"と同じになっていたら…。

そしてそれを胡桃が見てしまったら…。

考えるだけでも嫌な光景だが、決してあり得なくはない。

その万が一の可能性を避ける為、誠は胡桃をおいてきた。もし彼がそうなってしまっていても、自分一人だけならある程度は落ち着いて処理できる。

 

 

 

 

誠(アイツに限ってそんなヘマはしないと思うが…。用心に越したことはない。一番ベストなのは無事にアイツを見つけ、あの屋敷に連れ帰る事なんだがな)

 

屋敷の事も心配だ…。出来るだけ早く彼を見つけて一緒に帰りたい。誠は駆け足で道路を進み、彼を探す。途中の路地裏やすぐに入れる建物などにも目を通していくが、出てくるのは"かれら"ばかり。誠は出くわした"かれら"を避け、時に戦いながら道を進んでいったが……目当ての彼は見つからない。

 

 

 

 

誠「くそっ、もう遠くに行っちまったのか…?」

 

それともただ単に見落としているだけか…。いずれにせよ、夜になったこの広い町中で一人の人間を見つけるのはかなりの難易度だ。大声で呼び掛けても寄ってくるのは"かれら"だけなのでその手段もとれないし、やはり地道に探すしかないのだ。

 

 

そうして必死に彼を探すこと約二時間…。その間ずっと早足で動いていた誠はさすがに疲れだし、路上の塀に背中を預ける。既に深夜の十二時を回っただろうか…空に月が出ているおかげで、辺りはほんの少しだけ明るかった。

 

 

 

 

 

 

 

誠(…一旦戻るか。いや…もう少しだけ探した方が……)

 

屋敷の事も心配だが、由紀や胡桃の為に一秒でも早く彼を見つけておきたい。誠は塀から背を離し、ゆっくりと歩き出す。すると目の前にあった曲がり角の先から幾つかの呻き声が聞こえてきた為、誠は今一度足を止めた。

 

 

 

 

『ァ……アァ…』

 

持ってきていたナイフを構えて曲がり角の先へと進む…。

進んだ先では"かれら"が十体近く群がっており、これから誠が進もうと思っていた進行方向を塞いでいた。

 

 

 

 

誠(ここを通りたいんだが、さすがに数が多いな…。仕方ない、誘き寄せて一体ずつ仕留めるか…)

 

そばにある電柱にライトを軽く叩きつけ、カツンカツンと音を鳴らす…。するとそれに気づいたそれが一体ずつ、列をバラバラに乱して誠の方へと向かってきた。

 

 

 

 

誠(よし、これなら…)

 

距離を空けて一体ずつ迫る"かれら"…。誠はその先頭、一番初めにそばへと迫った一体の前へと歩み寄り、ナイフで頭を突き刺す。そうして一体仕留めたあとはまた同じことを繰返し、一体ずつ慎重に…確実に数を減らしていった。

 

 

 

 

 

…ドサッ!

 

誠「はぁ…」

 

最後の一体を仕留め、誠は息を漏らす。

今日はやけに"かれら"に出くわす回数が多く、嫌な予感を感じていた…。

 

 

 

 

『グアァ……ッ…』

 

誠「おいおい、またかよ……」

 

たった今仕留め終えたばかりなのに、その騒ぎに引き寄せられたのかまた新たに"かれら"が現れる。だが、今度の数はほんの三体ほどなので大した事はない…。一気に横を駆け抜けてしまおう。

 

 

 

 

誠「っ…!」

 

誠は勢いよくダッシュして三体の横を通り過ぎる。

三体の内、二体は誠を捕らえようとして手を伸ばしたが、その鈍い動きでは素早く動く誠を捕らえられなかった。

 

 

 

誠(よし、コイツらはこのまま放置して……)

 

"かれら"の横を通り過ぎ、少し距離に余裕が出来たところで振り向く。手を伸ばしてきた二体はトロトロとした動きで誠を追ってきていたが、あとの一体は背中を向けたままどこかへと歩いていった。よく見るとその背中には見覚えがあり、それに気づいた誠の背筋がゾクッとした感覚に襲われる…。

 

 

 

 

誠「…っ!?おい嘘だろ…!」

 

思わず声に出しながら誠は目の前にいた邪魔な二体を突き飛ばし、起き上がるよりも先に頭をナイフで突き刺す…。こうして後ろで騒いでいるにも関わらず、残った一体は誠の事を気にもとめていなかった…。

 

 

 

 

 

誠「………ぐ」

 

静かに…慎重にその一体の前へと回り込む…。

そうしてある程度距離をとったところに来たが、その顔を確認するのにはとてつもない勇気が必要だった…。もしこの感染者が見覚えのある人物だったら……自分はどんな顔をして帰ればいい…。様々な思いが頭を(よぎ)る中、誠は意を決してその顔を覗き込み、ライトで照らす。明かりに照らし出されたその顔を見て…誠は悔しさから拳を強く握りしめた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誠「……バカヤロウが…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

 

 

誠「…よぉ」

 

あれから少しして、誠は無事屋敷へと戻った。

だが広間へと戻ったのは誠一人だけであり、本人も何やら浮かない表情をしている…。悠里達と共に広間にいた由紀は誠の前へと駆け寄り聞きたかった事を尋ねるが、由紀本人も結果は分かっているようだった…。

 

 

 

 

由紀「マコトさん……どう…でした?」

 

誠「…わりぃ。見つからなかった。また明日探しに行くから…あまり落ち込むなよ…」

 

由紀「っ………はい…」

 

残念そうな顔をして由紀が席へと戻る…。いつもなら寝ている時間なのに起きているのは、それだけ彼の事を心配しているからなのだろう。由紀の隣の席に座っていた悠里はただただ、慰めるようにして彼女の頭を撫でていた…。そんな二人を見ながらたたずんでいると、美紀・胡桃の二人が席から立ち上がって誠のそばに寄る。

 

 

 

 

美紀「あの…お疲れ様でした」

 

胡桃「こっちは異常なかったからさ、ゆっくり休んでよ…」

 

二人が告げる…。どうやら、境野の仲間達も今のところやって来ていないらしい…。これで彼さえいてくれれば、全ては順調に進んでいたのに…。

 

 

 

 

誠「……ああ、少し部屋で休む。お前達もしっかり休め」

 

そうとだけ言って誠は広間を出ていき、自室へと向かう…。

思った以上に疲れてしまったが、何もそれは彼を探すために走り回っていたからというだけの話ではない…。あの後の出来事さえなければ…ここまで心身ともに疲労する事はなかっただろう…。

 

 

 

 

 

 

…バタン

 

 

 

 

誠「……くそっ」

 

吐き捨てるように呟き、部屋にあった椅子へと座る。

あれは彼女達に教えておくべき事なのだろうが、いざ彼女達と顔を合わせると全く言い出せなかった。

 

 

 

 

誠(少なくとも…由紀には言えない。伝えるとするなら美紀のヤツか…。いや、アイツはアイツでかなり大変なはず…。これ以上の負担はかけられない)

 

ただ黙っているのも問題なので伝えねばいけないのだが…誰に伝えてもきっとショックを受ける。いっそ、このまま自分の胸にだけしまっておいても良いのではないのだろうか…。

 

 

 

 

コンコンッ…

 

そんなことを考えていると、部屋の扉がノックされた。

誠はその場から動くことなく、ただ返事だけを返す。

 

 

 

誠「鍵はかかってない。勝手に入っていいぞ」

 

 

 

…ガチャッ

 

返事を返すと、胡桃が扉を開けて中へと入ってきた…。

彼女のどこか重苦しい表情…そして訪れたタイミングから、誠はその用件を察してしまう。

 

 

 

 

胡桃「あの…ごめんな?休んでるときに…」

 

誠「……かまわない」

 

 

 

 

胡桃「あっ、あのっ…!アイツのこと…何かわかったか?」

 

誠「…言ったろ、見つからなかったって。また明日探しに行くから、あまり心配するな…」

 

やはり言えない…。伝えねばならない事なのに…彼女を前にしているとどうしても適当な事を言ってごまかしてしまう。思わずため息をつきながら目線を逸らすと、胡桃はそんな誠を見て何かを察したらしく…小さく呟いた。

 

 

 

 

 

 

胡桃「やっぱり……なにかあったんだな……」

 

誠「………」

 

少し悲しげで、微かに震えている声だった…。

ここまで気づかれているならばと、誠は意を決して彼女の目を見つめる。少し酷だが、最初に伝えるのは彼女にしようと思った。

 

 

 

 

 

誠「…ああ。正直にいうと、もうしばらく黙っているつもりだった」

 

胡桃「…………」

 

誠がそう言った時点で、胡桃は二つの可能性を頭に思い浮かべた。

一つ…誠は彼に会えたが、彼はどうしても帰る気がなく、誠を振り切ってどこかへと消えたのではということ…。そしてもう一つ…こちらは絶対にあってほしくない可能性だった…。

 

 

 

 

 

胡桃「会えたには…会えたんだよな…?」

 

誠「…一応な」

 

胡桃「………そっか」

 

そうして、互いが無言になる…。

誠は言い出すのが辛いから。胡桃は真実を知るのが怖いから。だからお互い、少しの間何も言えずにいた…。

 

 

 

 

 

 

胡桃「…じゃ、話してくれる?」

 

勇気を振り絞り、誠の目を見つめる。しかしそれはあまりに辛い出来事…。中途半端な意思ならこのまま知らない方がいい…。誠は最後に一度だけ、胡桃の意思を確認した。

 

 

 

 

誠「本当にいいのか?きっと…お前にとって辛い話だ」

 

胡桃「……うん。がんばるから…言って…」

 

目に力を入れながら胡桃は答える。

その目はうるうるしていて今にも泣き出しそうな顔だったが、彼女は下唇を噛んで必死に誠の事を見つめていた。

 

 

 

 

誠「…わかった」

 

誠は座っていた椅子を胡桃の方へと向け、真っ直ぐに向かい合う…。

胡桃は自分の鼓動が速まるのを感じながら、ただじっとしていた。

 

 

 

誠「………はぁ」

 

深いため息をつく誠…。

誠は直後に深く息を吸い込むと胡桃の目を真っ直ぐに見つめ、申し訳なさそうに…弱々しい声で言った…。

 

 

 

 

 

 

誠「アイツは…もう二度と帰ってこない…。いや、帰ってこれない…。

ここまで言えば、大体の事はわかるよな…?」

 

胡桃「…っ………ぁ………」

 

誠「…………」

 

伝えられるなら伝えてしまおう…。そう思っていたのに、誠は自分の発言を後悔しかけた…。言った瞬間、胡桃が声を押し殺しながら泣き始めてしまったからだ…。

 

 

 

 

胡桃「っ…ぐ………ひっ……ぐ…!うぅ……っ!」

 

誠「いつものアイツならそう簡単にドジしたりしないはずなのにな…。夜に出ていったのがマズかったのか…それとも生きる事を諦めたのかは分からない。ただ、アイツはもうダメだった…。本当に…すまないな…」

 

 

 

胡桃「う…うぅぅ~…!!っ…ぐすっ…!!」

 

膝をついてうずくまり、胡桃は泣いた…。

誠が謝罪の言葉を()べていると胡桃は俯けたまま首を横に振り、ただ自分だけを責めていた…。

 

 

 

胡桃「あたしがっ…もっと…もっと素直になればよかった…!!行かないでって、そばにいてって…!それだけ口に出してれば…っ!!あいつはきっと……そばにいてくれたのにっ…っ…!!あたしが…強がってばかりいたからっ…!!」

 

誠「胡桃……」

 

胡桃「や…だ……!やだ…っ!なんで…なんであいつばっかり…!あいつはっ…ずっとがんばってたのに……なんで…なんでっ!!」

 

 

 

誠の中で、胡桃は強い娘だというイメージがあった。

しかし、こうして目の前で泣きじゃくる彼女を見てそのイメージは(くつがえ)される。どれだけ強く見えても、結局…彼女は普通の少女だったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~

 

 

丸々三十分ほどして…ようやく胡桃が落ち着いてくる。

彼女は床にぺたっとしゃがみながら、真っ赤に腫れた目を誠に向けた。

 

 

 

 

胡桃「あ…いつ……もう…楽になれた…?」

 

声を押し殺しながらずっと泣いていたせいなのか、胡桃の声は少しおかしくなっていた。彼女の言う『楽になれた?』というのは、"かれら"として動いていた彼を止めてくれたのかという問いなのだろう。

 

 

 

誠「…ああ。しっかり終わらせてきた」

 

胡桃「…ありが…とう……。たぶん…あたしじゃ出来なかった……」

 

かなり落ち着いたように見えるがまだまだ動揺しているのか、真っ赤に腫れた目から溢れる涙は止まっていない…。胡桃は着ていたジャージの袖でそれをゆっくりと拭っていた…。

 

 

 

 

誠「それと…これは俺の勘違いかも知れないんだが…」

 

胡桃「……なに?」

 

涙を拭いながら、誠の顔を見上げる…。

これから告げる事は誠自身も勘違いかもと感じていたのだが、それでも胡桃には伝えておいた方が良いと思った。

 

 

 

誠「アイツな…あんなになってたのに、前に立つまで俺の事を襲ってこなかった。それまではずっとどこかに向かおうとしていたようだし、もしかしたら…ここに帰ろうとしてたのかもって思ってな…」

 

胡桃「…っ……そ…っか………」

 

その事実を聞いて、また涙が溢れてくる…。

もし本当にここに帰ろうとしていたのなら…"かれら"のようになってもまだ自分達の事を思っていてくれたのなら……胡桃にとってこんなに嬉しい事はなかった。

 

 

 

 

胡桃「会えてよかったって…そう思ってくれたのかな…?アイツの心の…ほんの片隅にでもあたし達は……あたしはいられたのかな…?」

 

誠「ああ。片隅どころか、心の真ん中にいるような大きな存在だと思うぞ…。だからこそ、アイツはあんな状態になってもここに帰ろうとしてたんだ。色々あったが、結局はお前達の事を愛していたんだろうな」

 

そうなら嬉しい…。でも、そうなら生きている時に言葉でそれを伝えて欲しかった…。そうすれば、自分ももっと素直になれたのに……。胡桃は悲しみに押し潰され、再び大粒の涙を流した。

 

 

 

 

胡桃「あたしもっ…!好きだよって…愛してるって……アイツに言ってあげればよかった…!!そうすれば…アイツのこと、助けられたかもしれないのに……!もっと…しあわせになれたかもしれないのに……!!」

 

誠「………」

 

胡桃が彼の事をここまで想っていたとは知らず、誠は言葉を失う…。

こんな時、少女になんて言葉をかけたらいいのか全く分からなかった…。

 

 

 

 

胡桃「…あいつ……今っ…どこにいるの…?」

 

誠「さすがに連れては帰れなかったからな、ここから数キロ先の道路の隅…そこに寝かせておいたよ…」

 

胡桃「そう…だよな………連れては…帰れないよな」

 

出来ることならしっかりと葬ってやりたい…。

だが、そうしようにもいい場所がない…。この屋敷の庭に墓を作ってやるのも良いが、ただでさえ大勢で世話になっている未奈にこれ以上の面倒はかけられない…。第一、それをするには皆に事実を伝える必要がある。でも、自分一人で受け入れるのだけで精一杯…この上、由紀達が悲しむ顔まで見たくはなかった…。

 

 

 

 

胡桃「由紀には…まだ言わないで…。絶対、ショックうけるから…」

 

誠「…ああ」

 

胡桃「りーさんと美紀には…またそのうち伝えるよ…。ゲンジとミナにも…そのうち……」

 

 

誠「宮野には俺から伝えておく…。白雪は…まだ知らなくていいな」

 

胡桃「うん…しっかりしてるけどあいつはまだ子供だからな…。こんなこと…知らなくていい……」

 

ゆっくりと立ち上がる胡桃だが、上手く立ち上がれずによろめき、そのまま倒れてしまいそうになる。誠は咄嗟に手を伸ばし、彼女の身体を支えた。

 

 

 

 

誠「おい…本当に大丈夫か?」

 

胡桃「大…丈夫。少しずつ…向き合っていくから……」

 

誠の手をそっと離し、胡桃は部屋をあとにした。

胡桃はそのまま自室へと向かい、扉に鍵をかけてベッドに潜る…。

そうした胡桃の頭に思い浮かぶのは、やはり彼の事ばかりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

胡桃(もう…会えないんだ…。嫌だなぁ……)

 

さっきあれだけ泣いたのに、また涙が溢れてくる…。会えないとなると、改めて彼に対する自分の想いに気付かされて辛かった。

 

 

 

胡桃(こんなことになるなら、伝えておけばよかった…。どれだけ言いづらくても、恥ずかしくても…言って…おけば……)

 

彼とずっと一緒にいれると思っていたからこそ、強がって伝えられなかった…。いつ別れの時が来てもおかしくない世界なのに、甘く見ていた事を胡桃は激しく後悔した…。

 

 

 

 

胡桃「あたしの…せいだ……。ごめん…ごめんね…」

 

あの時、自分の気持ちに正直になっていれば…。ただ一言『一緒にいてほしい』と言えば…。もっと別の結果になっていたハズなのに…。自分の無意味な強がりが彼を殺した…そんな事ばかりを考えてしまい、胡桃の心に大きな穴が空いた…。

 

 

 

 

胡桃「もう……いやだ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~

胡桃『この日から何日かして、あたしの身体は少しずつおかしくなっていった…。ほんとなら誰かに伝えるべきなんだろうけど、あたしはまた強がって誰にも言えずにいる。今、もしお前がいたら…あたしはちゃんと相談できたのかな…?』

 

~~~

 

 

 

 






結局、彼はここで終わってしまいました…。
ほんの少し言葉が足りなかっただけで様々な歯車が狂ってしまい、本来の方向とは全く違う…悪夢のような道へと物語は進んでいきます…。

自分でもここまで暗い話になると思っていなかったですが、是非とも最後までお付き合い下さいm(__)m
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。