話を考えるのが楽だからなのか、シリアス展開の時とは比べ物にならない速度で書いていけます(笑)
前回のあらすじ『りーさんの水着姿にメロメロの彼の背後に…』
彼は胡桃の提案により、遂に由紀たちと共に水浴びする事が出来た。
ここのところ元気のなかった彼がそれによって元の調子を取り戻した事に一時は安堵した胡桃だったが、今…彼女は心底呆れた表情をして、水着姿の悠里と楽しげに話す彼を見つめていた。
「似合ってます…!ほんとに似合ってます!!」
悠里「そう…?ふふっ、ありがと♡」
胡桃「………」ブチッ
水着姿の悠里…彼はそんな彼女の胸の谷間をチラチラと覗き見て、鼻の下を伸ばす。彼が元のような人間に戻ったのは喜ばしいと思っていた胡桃だが、いくらなんでもここまで露骨に態度が違うと腹が立つ…。胡桃の水着姿を見た時は、もっと普通のリアクションだったからだ。
胡桃(…シャベル、どこだっけ)
にやにやと笑う彼に苛立ってしまい、胡桃はシャベルを手に持つ。
そうしてから胡桃は川際に座る悠里と話す彼の背後に立ち、彼に狙いを定めてから静かにそれを振り上げた。
「………ん?」
背後に殺気のような気配を感じ…彼は振り向く…。
そっと顔を後ろに向けた彼が見たのは、異様に冷めた目をしてシャベルを振り上げる、水着姿の胡桃だった。
胡桃「…言い残すことは?」
胡桃が呟く…。
彼は何のことか分からず、不思議そうに首を傾げた。
「えっ…と?」
胡桃「………」
ただじっとこちらを見つめる胡桃…。その表情から察するに、彼は胡桃の機嫌を損ねたらしい。このままでは、彼女は本当にシャベルを振り下ろしかねない…。彼は自らの脳を最大限に稼動させ、自分の行動の何が彼女の機嫌を損ねさせたのかを考えた。
「…………」
(…………あっ)
約10秒程考えたのち、彼は察する。
悠里の水着姿が魅力的過ぎたのでつい浮かれてしまったが、胡桃はそれを良く思ってないのだろう。
(まぁ、りーさんを見た時のリアクションは自分でも少し気持ち悪かったって自覚はある。けど、それほどにりーさんの水着姿が魅力的すぎてっ…!!)
胡桃の水着姿も十分に魅力的で、今こうしてシャベルを振り上げている彼女の体をつい見てしまう…。だが、彼女の胸よりも一回り大きい悠里の胸…その破壊力は彼が思っていた以上のものだったのだ。
悠里「えっと……胡桃?」
悠里は何故胡桃がシャベルを振り上げているのか分からず、そっと声をかける。胡桃はそんな悠里を横目でチラッと見つめると、ため息をつきながらシャベルを下ろした。
胡桃「……はぁ。やっぱ、りーさんの胸はお前に見せちゃダメだったな」
「なっ…!?」
悠里「………」
胡桃の呟きを聞いた悠里は彼に胸を見られているのが恥ずかしくなったのか、両腕でそっと胸元を隠す。彼は自分が胸ばかり見ていた人間だと思われたくなかったので(実際見ていたが)慌てて言い訳をした。
「りーさんっ、違います!僕はりーさんの胸だけじゃなく、カラダ全体を見た上で素敵だと言ったんです!!」
悠里「ほ、ほんと…?」
「もちろんっ!」
彼の言葉を聞き、胸元を隠していた両腕をそっと下ろす悠里…。
その腕が完全に下りかけた瞬間、またしても胡桃が呟く。
胡桃「胸のほかにはどこを見てたんだろーなぁ…やらしーなぁ…」
「っ!?」
悠里「………」
彼がそっと悠里の顔を覗き見ると、その目が笑っていないのが分かった。
どうにか言い訳してこの場を逃れようとする彼だったが……
「み、見てもいいでしょ!せっかくの水着姿なんだ…普段見れないところ見ないと意味がないっ!!」
考えるよりも先に、本音が漏れてしまった。
これはさすがに引かれると思って彼は焦るが、直後に彼女達が見せた反応は意外なものだった。
胡桃「…っく、あははっ!」
悠里「ぅ…ふふっ!」
「………へ?」
引かれる、もしくは怒られると思っていたのに、彼女達は笑いだした。何がおかしかったのか分からずに彼がそれを見ていると、胡桃が笑顔で言った。
胡桃「なんか…こういうの久々な気がするな!」
悠里「ええ、ここ最近は色々と大変だったからね…」
「………」
言われればそうだなと、彼も思う。
自分が胡桃に怒られ、悠里に叱られ、美紀に呆れられ、それを見て由紀が笑う…。何度か経験してきた事だったが、最近は色々あってそういった事が減っていた。
「えっと…とりあえず、二人とも今は怒ってないですか?」
悠里「まぁ、あなたをここに呼んだ時点である程度見られる事は分かってたもの。今さら気にしないわ」
胡桃「だそうだ。りーさんの寛大さに感謝しろ」
胡桃はそう言って川へと向かっていき、すれ違いざまに彼の肩をパシッと叩く。それを受けた彼は少しだけ微笑み、まだ挨拶をしてなかった由紀と美紀の元に歩み寄る。
「おぉ…由紀ちゃんの水着姿も素敵ですなぁ」
由紀「そう?えへへ~♪」
由紀の着ている水着は上下ともにピンクで、なんとも彼女らしい色だった。そんな水着を着ている彼女の体はほっそりとしているがそれでも胸はしっかりと膨らんでいて、彼女を子供だと思っていた彼は複雑そうな顔をする。
「ちゃんと……大人の女性になっていくんですね」
由紀「ん?どーゆーこと?」
美紀「先輩にヘンなこと言わないで下さい…」
無邪気に笑いながら由紀が首を傾げていると、その後方に座っている美紀が彼に言い放つ…。その表情からかなり呆れていることが分かるが、彼はそんなことよりも彼女の羽織っているパーカーが気になって仕方なかった。
「美紀さんの着てるそれは…」
美紀「……なんですか」
川辺に座る美紀は女性陣の中で一人だけパーカーを羽織っており、どんな水着を着ているのか分からない…。自分もパーカーを羽織っている彼だが、彼女にはそれを脱いで欲しいと心から思った。
由紀「ほら、みーくんも水着姿ほめてもらおうよ!」
『せっかくなら、なんの邪魔もなく彼女の水着を眺めたい』
彼がそんな事を思った瞬間、まるで祈りが通じたかのように由紀がそれを脱がした。着ていたパーカーをいきなり脱がされ、美紀の胸元が露になる…。彼女は顔を真っ赤にし、驚きの声をあげた。
美紀「せっ、先輩っ!?なにしてるんですかっ!!」
由紀「だって、せっかく__くんが来たのに一人だけこんなの着てるんだもん!これじゃ水着が見れないよ!!」
美紀「見れなくする為に着てたんですっ!!」
由紀の手によって乱れたパーカーを着直そうとする美紀だが、今回は由紀の方が
由紀「大丈夫っ!みーくんスタイルいいから♡」
美紀「そ、そういう問題じゃなくっ…!恥ずかしいから…っ…」
着ていたパーカーが無くなり、美紀の水着姿が彼の目に入る…。
色は胡桃の着ている水色の水着よりも少し濃い、紫がかった色をしていて、それがどことなく彼女の雰囲気に似合っていた。そんな美紀の太ももや胸に目を向けると、彼女は顔を真っ赤にして彼を睨む。
美紀「…どこ見てるんですか」
「えっ?いや…その……」
美紀「もう…帰ろうかな…」
彼に水着姿を見られた美紀は恥ずかしくなり、車内に戻ろうと立ち上がる。だが、それを引き止める人間が二人いた…。
悠里「だ~め♡彼を交えて初の水浴びだもの。もう少しだけ、のんびりしましょ?」
由紀「そうだよ!もうちょっとだけ、このままお喋りでもしてようよ」
悠里と由紀の二人は美紀を挟むようにして彼女の左右に立ち、その肩を押さえる。美紀はそれに観念したのか、ため息をついてからまたその場にそっとしゃがんだ。
美紀「……わかりましたよ。少しだけですからね」
悠里「ええ、少しだけ♪」
由紀「えへへ~♪」
そうやって楽しそうに笑う三人を眺める彼…。
するとそんな彼の横に胡桃が歩み寄り、そっと耳打ちをした。
胡桃「ほら…美紀の水着も褒めてやれよ」ボソッ
「あ…あぁ…」
さっきあんな反応をされた手前、多少の言いづらさはあるものの…彼は美紀のそばに寄る。
「……美紀さん」
美紀「…なんですか?」
まだ彼の事を警戒しているのか、少しだけ不安そうな目をしている美紀…。だが彼はそんな目を見ても引くことなく、ハッキリとした声で言った。
「水着、似合ってますよ。可愛いです」
美紀「かわっ…!!?」
突然"可愛い"と言われ、美紀の顔が真っ赤に染まる。
だが彼のことだ、特に深い意味は無いと理解したらしく、美紀はすぐに落ち着きを取り戻した。
美紀「その……ありがとうございます」
小さな声で礼を言ったのち、彼女達は彼を交えて水浴びをしていく。
彼は彼女達から少し離れた所で髪を洗い流し、ぱぱっと体を洗う…。
その後はただ川辺に座りながら彼女達と会話を交わし、気づけば小一時間経っていた…。
由紀「ほいっ!」バシャッ!
胡桃「ぬおっ!?」
川に入った由紀が川辺に座る胡桃へと水をかける。
突然の事に驚く胡桃を見た由紀は満足そうに笑うが、それが胡桃の闘争心を煽った。
胡桃「このっ…!」
バシャバシャと音を発てながら川に入り、由紀の元に向かう胡桃。由紀は彼女を迎撃するかのようにして水をかけたが、その程度の事で止まる胡桃ではない。
由紀「ていっ!ていっ!!」バシャッ!バシャッ!
胡桃「そんなもの……効くかぁっ!」
かかる水をものともせずに歩み寄り、胡桃はニヤリと微笑む。
その笑顔に言い様のない恐怖を感じた由紀は必死に水をかけるが、結局胡桃には効かずに接近をゆるしてしまい、由紀は肩を掴まれる。
由紀「ひっ!」
胡桃「ほいっ!!」
胡桃は由紀のその肩をグイッと引っ張り、彼女を川に投げ倒した。
大きな音、大きな水しぶきがたち、川に倒れる由紀だったが、彼女はすぐに起き上がり、ムスッとした表情を胡桃に向けた。
由紀「う~…胡桃ちゃん、ヒドイよ~」
胡桃「あはは、わりぃわりぃ。ついつい力が入っちまって」
胡桃は由紀に手をさし伸べ、ニコッと笑う。
由紀はそんな彼女の手を掴み、立ち上がってから同じように笑った。
由紀「次はもうちょっと優しくしてね♡」
胡桃「はいはい、わかりましたよ」
「……イチャイチャしてる」
川の中央で笑い合いながら手を握りあう由紀と胡桃を見つめ、川辺に座る彼がボソッと呟く。彼の横にいた美紀はその呟きを聞いてから由紀と胡桃を見つめ、少しだけ微笑んだ。
美紀「イチャイチャ…というと誤解がありますが、仲が良いのは事実ですね。二人とも、ほんとに楽しそうです」
最初は彼に水着姿を晒すのを恥ずかしがっていた美紀だったが、少ししたら慣れたらしく、今は普通に彼のそばにいた。目の前ではしゃぐ由紀と胡桃…そしてそばにいる美紀と悠里…その全員が水着姿という幸せを彼が心に刻んでいると、横に座っていた悠里がスッと立ち上がる。
悠里「今洗えるものだけ、先に洗っちゃおうかな…」
美紀「あっ、手伝いますよ」
悠里「大丈夫。美紀さん達はのんびりしてて♪」
彼や美紀、遊ぶ由紀と胡桃を残し、悠里は一人車へと戻る。
"今洗えるもの"というのは彼の前でも洗えるもの…。つまり、下着などを除いた衣服やタオルなどの事だろう。悠里はすぐにそれらを詰めたカゴを手に川辺へと戻ってきて、一つずつ丁寧に洗い始めた。
(ほんと…みんなの母親みたいな人だな)
少し離れた場所で洗濯をする悠里をじっと見つめてそんな事を思っていると、誰かが彼の肩をトントンとつつく。肩をつついたのは、隣に座る美紀だった。彼がそっちへと目線を向けると、彼女は座ったまま顔を俯け、静かに口を開く。
美紀「…楽しんでますか?」
「ええ、そりゃもちろん。すごく楽しいですよ」
ハッキリ答え、彼は笑う。
彼の答えを聞いた美紀は俯けていた顔を上げ、嬉しそうに微笑んだ。
美紀「なら、よかったです。たぶんこれは内緒にしておいた方が良いんでしょうが…やっぱり教えておきます。今回、あなたをここに誘おうって最初に提案したのは…胡桃先輩なんです」
美紀の言葉を聞いた彼は少しだけ驚き、その視線を川で由紀とともに遊んでいる胡桃へと向ける…。
胡桃『もう、お前との生活も長いしな…水着姿くらいなら見せてやってもいいって、そんな判断になったわけだ』
車内にいた彼を誘う時、胡桃はこう言っていた。
彼女がそれほどに自分を信頼していてくれるなら嬉しいと思う彼だが、胡桃が彼を誘ったのには他にも理由があったらしい…。
美紀「先輩は、最近のあなたが元気なかったのを気にしていたようです。だからこうして一緒に水浴びをして、少しでも元気付けられたら…今回の行動は、そう考えてのことらしいですよ」
「…………」
あの屋敷から出発してからの二日間…胡桃を治す為の手がかりがまるで掴めず、彼は自分でも無意識の内に焦り、怯えていた。このまま胡桃を助けられなかったら…失ってしまったら……心のどこかでそう考えてしまい、気持ちが落ち込む。
胡桃は彼のそんな変化に気付き、今回の事を提案してくれたのだ。
水着姿を見せるのは恥ずかしかっただろうに、彼のため…彼女は笑顔でいてくれた。それが申し訳無くて、彼はじっと胡桃を見つめる…。
由紀と川で遊ぶ彼女はとても楽しげに笑っているが、本当はそんな余裕が無いくらいに怖いハズだ。自分がいつ"かれら"のようになってしまっても…おかしくないのだから。
「一番大変なのは自分だってのに……なんで僕の心配なんか…」
美紀「ああ見えて、本当に優しい人なんです。だから自分がどれだけ大変な状況にあっても…あなたの事が心配だったみたいです」
ありがたいとか、嬉しいとか、彼がそんな気持ちを抱いたのはほんの一瞬だけの事…。あとはただ申し訳無いという気持ちと、情けないという気持ちのみが残る。
(屋敷にいた時もそうだ…。あの娘には何度も助けられてる。助けなきゃいけないのはこっちの方だってのに……)
胡桃を助けるどころか、自分が彼女に助けられている。
本当に情けなくて落ち込みそうになるが、ここで落ち込んでしまったら彼女の努力が無駄になる…。彼は深く息を吸ってから自分の気持ちを落ち着かせ、改めて胡桃を見つめた。
「ここまでされたら、絶対に助けなきゃいけないな…」
美紀「はい。私も精一杯がんばりますから、一緒にあの人を…胡桃先輩を助けましょう。あなたなら……私たちなら…絶対に上手くいきます」
彼は視線を美紀に向ける…。
こちらに向けられた美紀の瞳には強い意思が宿っており、それを見ているだけで不思議と力が湧いた。
「正直一人じゃ厳しいけど、美紀さんと……みんなと一緒なら、胡桃ちゃんを助けてあげられそうな気がする」
美紀「気がする…じゃダメです。絶対、絶対に助けるんです。あなたと…私と…由紀先輩と…りーさんの四人で」
「ああ、そうですね…絶対に助けましょう。…にしても」
横に座る美紀の顔をじっと見つめ、彼は笑う。
美紀は彼が何故笑っているのか分からず、ただ眉を寄せた。
「美紀さんは…世界一頼りになる後輩ですね。あなたがそばにいてくれるだけで、何でも出来そうな気がしてきます」
美紀「何でもって…それは言い過ぎです」
少し大げさにも聞こえる彼の言葉だったが、美紀にとっては嬉しい言葉だった。時おり良からぬ事を企む彼に対して未だ多少の警戒心を抱いている美紀だが、それをチャラにするくらい信頼しているのもまた事実…。そんな彼に頼りにしてもらえたのが嬉しくて、美紀は頬をゆるめた。
美紀「私も…あなたのことを頼りにしてますよ」
由紀「ていっ!」バシャッ!!
呟いたその言葉は由紀が鳴らした川の音にかき消され、彼の耳には届かなかった。だが、美紀はそれでいいと思い顔を俯ける。正直に言うと、少しだけ恥ずかしかったから…。
「んじゃ、僕も少し遊んでくるかな…。美紀さんはどうします?」
彼はそっと立ち上がり、美紀に尋ねる。
それに対して美紀は座ったまま首を横に振り、ニッコリと微笑んだ。
美紀「私は大丈夫です。楽しんできて下さいね?」
「…はいっ!」
美紀に向けて笑顔を見せ、彼は由紀達の元に向かおうとする…。
その瞬間だった…由紀達の方へと彼が振り向くよりも先に、由紀が彼の背に突進した。
由紀「と~うっ!!」バシッ!
「な…っ!?」
それは美紀と話してばかりいる彼へのちょっかいのつもりだったのだが、あまりにタイミングが悪かった……。由紀の不意打ちを背に受けた彼はバランスを崩し、そのまま川辺に座る美紀を巻き込むようにして倒れてしまったのだ。
美紀「うわっ!!?」
「っ!!」
地面に倒れる寸前、彼は美紀を押しつぶしてしまわぬように両手を地面に伸ばす。伸ばした両手の内、左手が地面につき、自らの体を支えた事によって美紀の上に体を重ねてしまう事だけは避けられた。…だが、右手を伸ばした場所が悪かった…。
フニッ…
美紀「っ!!?」
彼の右手のひらに伝わる柔らかな感触…。よくある漫画の主人公ならここで『あれ?柔らかいものが…』などと言うのだろうが、彼はそんな事を言う間もなく、すぐさまその感触の正体に気付いた。
(やっ…ちゃったな……)
スーっと血の気の引く音が聞こえてきそうな程、彼の顔が青ざめていく。
何故なら、押し倒されたようにして目の前にいる美紀の顔は真っ赤に染まり、じっとこちらを見つめている。
美紀「っ…///ぅぅ…っ!!」
念のために確認しようと、自分の右手へ視線を向ける。
そこにあったのがあまりに予想通りの光景で少し笑いそうになる彼だが、洒落にならないのでそれは抑えた。
伸ばされた自分の右手は美紀の左胸を水着越しにガッシリと握っていて、その柔らかな胸に指先が少し沈んでいるのが分かる…。一刻も早く手をどけるべきなのだろうが、惜しい気がして動けない…。
(ヤバい……何がヤバいって、柔らかすぎてヤバい……!)
自分がぶつかったせいで彼に押し倒された美紀…。その光景を目の当たりにして由紀が驚く中、彼は全神経を右手に集中させていた…。この感触を記憶に刻み込む為である。ほんの数秒前は焦りで血の気の引いていた彼だったが、そんなものは美紀の胸に触れているという事実と向き合った途端、ただの興奮に変わった。
美紀「いっ、いやっ!!」ドンッ!
「うおっ!」
美紀は堪らず彼を突飛ばし、その場から逃れる。
彼の手から離れた美紀は両手で胸を隠すような仕草をして、彼の事を睨みつけた。
美紀「『何でも出来そうな気がする』って言って、その直後がこれですか…!!?まったく、あなたって人はっ…!!」
「いや…そのっ…!」
美紀の目が段々と潤んでいき、今にも泣き出しそうな顔になる…。
異変に気付いた胡桃や悠里もその場に駆け寄ってきて、彼の焦りはピークに達した。
胡桃「どした~?」
悠里「…大丈夫?」
寄ってくる胡桃と悠里…。もしこの二人が今の出来事を知ろうものなら、彼はどうなるのだろうか……。
(…良くてもサヨナラ。最悪、死刑執行だろうな)
彼の額にはじわりと汗が浮かび、体が震える…。
その焦りは相当のものだったが、少し離れた位置ならそれを見ていた由紀の焦りもかなりのものだった。
由紀(わ、わたしのせいで……大変なことにっ…!!!)
途中の流れ的に、今回はちょっと良い話で終わると思ったんじゃないでしょうか?残念、もう一波乱あります(笑)
不慮の事故とは言え、みーくんの胸に触れてしまった彼…。
(しかもガッツリと)
『このままではダメだな。はやく手をどかさないと…』心ではそう分かっているのに、惜しくて中々手を離せず、普通に興奮し始めた彼は本物です(本物の何なのかはあえて言いません…)
元の調子を取り戻した途端にトラブル続きの主人公くんですが……みーくんの胸に触れた以上、わりと悔いなく逝けるのではないでしょうか(-_-;)