この章ではある程度話を進展させていく他、以前から書きたかった話を書いていく予定です!皆さんにも楽しんでもらえたらなと思っておりますm(__)m
前回までのあらすじ『みーくんは頼りになる』
百七話『みつけた』
彼はある声に悩まされており、その正体が死んだ境野の幻だという事を美紀に打ち明けた翌朝…。美紀の言葉に力をもらったことで幻が消えたことの他、誰かに相談出来た事で心が軽くなったのか…彼は他の全員が起きてなお一人眠り続けていた。
由紀「ほんとによく寝てるね~。そろそろ起こす?」
席に座り、テーブルに顔を伏せて寝息をたてる彼…。
つい先程悠里がかるく声をかけたのだが、彼はそれでも起きる事がなく未だ眠り続けている。由紀はそんな彼の正面の席に座り、その頭を指先でツンツンと突いた。
悠里「朝食の準備もまだだし、もう少しだけ寝かせておいてあげましょう」
由紀「…そだね」
指先で小突くのをやめ、由紀はニッコリと笑う。彼がここまで深い眠りについているのを見るのは随分と久しい気がする…。
美紀「この人にはこれからいっぱい頑張ってもらわなきゃですから、朝くらいはのんびりとさせてあげましょう…」
彼に悩みを相談され、少しでもその力になれた気がした美紀は一人誇らしげに微笑む。すると胡桃がそんな彼女を横からじっと見つめ、何故かニヤニヤとしていた。
美紀「な、なんですか…」
胡桃「…い~や?ただ、コイツは良い後輩に恵まれたなぁと思って」
美紀「………」
眠る彼へと視線を移す胡桃を見て、美紀は口ごもる。
胡桃の口振り、そして表情は何かを知っているかのようだ…。
もしかしたら昨夜の事を見られていたのかも…。そんな事を思って美紀が微かに頬を染めると、由紀が突然彼女に抱きつく。
ガシッ!!
美紀「うわっ!?な、なんですかっ!?」
由紀「胡桃ちゃんっ!心配しなくても大丈夫!みーくんは皆の後輩だよ!」
胡桃「あはは…わーってるよ、そんなこと。つまり、あたし達も良い後輩に恵まれたってわけだ」
由紀「そういうことっ!みーくんはほんと~に最高の後輩だよ♡」
美紀「……はいはい。由紀先輩も最高の先輩ですよ」
抱きつく由紀の頭を撫で、優しく微笑む美紀…。その光景を見ているとどちらが先輩か分からなくなりそうになり、悠里と胡桃は頬を緩めた。
胡桃「…色々ありがとな」
美紀「えっ?」
由紀の相手をしていたのでハッキリとは聞こえなかったが…胡桃が美紀にそう呟いた気がした。美紀が目線を向けても彼女はごまかすように目線を逸らしたので確信はないが…恐らく…。
美紀(やっぱり、胡桃先輩は昨日の夜のことを……)
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「すいません…寝過ぎました…」
数十分経ち、彼が目覚める。朝食の準備が出来たので悠里が起こしたのだが、ぼんやりしているその表情はまだ寝足りなそうにも見えた。
悠里「朝ごはん、食べられる?」
「もちろん…。でもその前に顔だけ洗ってきます…」
寝ぼけている頭を覚ましてくるべく、彼は外へと向かう。しかし今車を停めている公園から最寄りの川までは多少の距離があるため、寝起きの彼一人では少し不安だ。
悠里「ここから川までは遠いわよ。車の水使ったら?」
「いや…目覚ましの散歩ついでに行ってきます…」
眠そうな声で彼が答える…。
それを見た美紀はため息をつき、彼の背を叩いた。
美紀「はぁ…仕方ないですね。私がこの人についていきますから、先輩たちは先に食べちゃってて下さい」
悠里「そう?ちゃんと気を付けてね」
美紀「もちろん。さぁ、行きましょ…先輩」
「んん、美紀…ありがとう…」
彼が美紀の事を呼び捨てにした…。
それを目の当たりにした由紀・悠里・胡桃はハッとした表情をしていたが、当の本人は眠たげに目を擦っている。
悠里「あら、いつの間にそんな間柄に…」
由紀「おぉ~っ……!」
胡桃「寝ぼけてるから…なのか?」
美紀「っ…!ど、どうでもいいでしょう!?呼び方なんてっ!!先輩っ!さっさと行きますよっ!!!」
「…ん~」
まだ意識がハッキリとしない彼の手をガシッと掴み、美紀は外へと飛び出す。車内に取り残された三人は不思議そうに顔を見合わせ、それからニヤニヤと微笑んだ。
悠里「ああいう美紀さん、なんだか新鮮ね」
由紀「だねっ!胡桃ちゃんもそう思うでしょ?」
胡桃「ははっ、そうだな♪」
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一方こちらでは、彼と美紀が川を目指して道路を歩いていた。
日の光を浴びながら歩いていたらだんだん目が覚めてきた彼だったが、その隣を歩く美紀は顔を俯けながら何やらブツブツと呟いている…。
「えっと……美紀さん?」
美紀「……なんですか」
眉にシワを寄せていて、明らかに不機嫌そうな美紀…。
たった今意識がハッキリし始めたばかりの彼は彼女が何故こんな表情をしているのか理解できず、額に冷や汗を流した。
「何か…怒らせるようなことしましたっけ?」
美紀「いえ…大したことじゃないです…。ただ、皆が見ている前で私の事を呼び捨てにしました」
「ああ、それは無意識ですね……。嫌でしたか?」
美紀「…あなたの方が先輩ですし、本来なら構いません。でもあなたは私の事をずっと"さん付け"で呼んでたので、それが急に呼び捨てに変わると変な誤解を招きそうというかなんというか……」
「いや…皆はそこまで深く考えないと思いますよ?」
美紀「………それもそうですね。私が一人で気にし過ぎただけかも…」
そんな会話を交わしながら歩いていくと、ようやく川が見え始める。着く頃にはとっくに彼の目も粗方覚めていたが、せっかくなので顔を洗っていく事にした。
バシャッ…!
「……ふぅ」
川辺に寄った彼は両手でその水を
「………」
美紀「なんです…その顔は」
彼は顎先から水をポタポタ垂らし、濡れた手をその場で振っている。美紀は彼が伝えたい事を察し、ため息をつきながら持っていたハンカチを差し出した。
美紀「自分で出ていったのに、拭く物の一つも持ってこなかったんですか…。しっかりしてくださいよ…」
「すいませんね、ほんと……」
美紀からそのハンカチを受け取り、濡れた顔と手を拭く…。拭き終えた後でそれをそっと返すと、美紀はそれを手に取って微かに微笑んだ。
美紀「まったく、先輩は本当にダメな人ですね」
「んなっ!?ハッキリ言われるとさすがに傷付くっていうか…。まぁ、自覚はありますけど…」
美紀「ふふっ、冗談ですよ。さぁ、みんな待ってますから…はやく帰―――」
???「……仲いいね」
二人が笑い合っていると、誰かがその背後から声をかける。気配なく寄ってきたその人物に驚いた二人は咄嗟に振り向き、警戒心を露にした。
「!?」
美紀「っ!誰ですか!?」
???「………」
振り向いた先にいたのは一人の少女…。少女は二人を見たまま無表情で固まっていたが、彼はその黒髪中髪の少女に見覚えがあった…。
「あなたは……たしか……」
???「ボクの事…覚えててくれたの?じゃあ、自己紹介はもう少しだけおあずけ。頑張って思い出してみて…」
少女は無表情のまま小さく手拍子を鳴らし、彼が自らの事を思い出すよう催促しだす。薄茶色のコート…そして紺色の短パンに身を包んだその少女が真顔で手拍子する様を美紀は横から不思議そうに見つめていた…。
「…思い出した。
彼が静かに答える…。
すると少女は微かに微笑み、パチパチと拍手を鳴らした。
狭山「…正解。よくできました」
美紀「狭山真冬……たしか、以前あなたが会ったっていう…」
以前、悠里が病に倒れた時の事だ…。
それを治す為の薬を所持していた生存者の隠れ家へ胡桃が単身潜入してしまった時、胡桃を助けに向かった彼が帰り際に出会った少女の名こそ…この狭山真冬という少女。美紀も彼から話だけは聞いていたので、その名前は知っていた。
「まだ無事だったんですね。よかったよかった」
狭山「…そっちもね」
彼に返事を返した後、狭山は美紀の方をじっと見つめる…。その目線があまりに強いので、美紀は言葉を失ってしまっていた。
狭山「…………」ジーッ
美紀(な、なんでこんなに見てくるんだろう…?まだ、ちゃんと挨拶してないからかな……)
狭山「……こんにちは」
美紀「へっ?あ、ああ……こ、こんにちは…」
やはり、挨拶をしていなかったのが原因なのだろうか…?
美紀は戸惑いながらも返事を返すと、直ぐ様自己紹介を始めた。
美紀「私は直樹美紀です…。えっと…真冬…さんは、何をしにここへ?」
狭山「……それは後々話すよ。それより確認したい事があるんだけど。君たち…今は二人だけで行動してるの?」
美紀「いえ…他にもあと三人います」
狭山「へぇ…三人か…。みんな元気?」
美紀「そ、それなりには……」
美紀の言葉を聞くと狭山は「ふ~ん」と言いながら川辺に座り、その水に手をつけてパシャパシャと音を鳴らす…。彼女が何を考えているのか今一つ分からず、彼と美紀は何とも言えない表情をした。
「狭山さん……今は一人ですか?」
狭山「一応仲間はいるけど…
美紀「訳っていうのは?」
狭山「…今は内緒。また後で教えてあげるね」
そう答えて狭山は立ち上がり、濡れた手をプルプルと振る。その後、彼女が遠くの方を見たまま何かを言いたげにしていたので彼と美紀もそちらに目線を向けると…"かれら"がのんびりとこちらに向かって歩いてきていた。
美紀「先輩、これ以上寄ってこられる前に戻りましょう」
「そうですね…。狭山さんはどうします?」
狭山「…もしよかったらだけど、少しだけお邪魔してもいいかな?本当によかったらの話だから…無理なら断ってね?」
彼と美紀の顔を交互に見て狭山が告げる…。
本人は「無理ならいい」と言っているが…"かれら"が寄ってきている状況でこんな少女を一人残してはいけなかった。
美紀「先輩、別に構いませんよね?」
「んん、そうですね…。じゃあ、ついてきて下さい」
狭山「…うん。ごめんね…」
少し駆け足で車へと戻る彼と美紀のあとを狭山もついていく…。車への距離は数百メートルほどあったが、その間狭山はほとんど喋らなかった…。
美紀「えっと、あれですね。あの車です」
少しして公園にたどり着き、美紀がそこに停めてあるキャンピングカーを指さす。狭山は二人と一緒にそれに歩み寄り、小さく呟いた。
狭山「こんなのに乗ってたんだ…。知らなかった…」
美紀「人数が人数なので少し狭いかもですが、のんびりしていって下さいね」
バタンとドアを開け、美紀が狭山を中へと招く…。その向こうにもう三人の少女がいるのを確認すると、狭山は怪しげに微笑んだ。
狭山「よかった…ボクが一番乗り…。やっと見つけた…」
外伝を見てくださっている方はご存知と思いますが、彼とみーくんの前に現れた少女『狭山真冬』はその外伝に登場する人物です。(結構前、本編にも一度だけ出てますね)
今回、突然二人の前に現れた狭山真冬ちゃん。彼女が二人の前に現れるまでの経緯も書こうかと思いましたが、テンポが悪くなりそうだったのでカット!(もしかしたら、その内外伝に投稿するかもしれません)
ここに来るまでかなりかかりましたが、ようやく外伝と本編が絡み始めます!
特に警戒せず彼女を車へ招いた彼とみーくんですが、果たしてその選択は正しかったのか…。ではではっ(・ω・)ノ