軌跡〜ひとりからみんなへ〜   作:チモシー

122 / 323
百十三話『窮地』

 

 

境野『俺としては…この女をここで殺す事をオススメする』

 

 

「わざわざお前に言われなくても、そのつもりだ」

 

彼は境野の幻にそう答えた後、目の前にたたずむ狭山へ攻撃を始めた。『少し本気になって躊躇いを無くしただけでは自分に勝てる訳がない…』狭山はそう考えていたからこそ彼が本気になるよう挑発したのだが、彼と数分戦った後にその考えは甘かったと後悔する…。本気になった彼は思っていた以上に手強く、徐々に追い詰められてしまっていたからだ。

 

 

 

 

「っ!!」

 

彼が狭山へ向けナイフを振る…。勢いよく振られたそのナイフを警棒で防ごうとする狭山だが、その守りは僅かに間に合わずナイフが脇腹に届いてしまう。

 

 

 

 

狭山「い…っ!」

 

ナイフが狭山の肌を切り、脇腹に痛みが走る。思わず声を出してしまう狭山だが、これを痛がっている暇などない。目の前にいる彼がまた、ギラリと光るナイフを振り上げていたからだ。

 

 

 

狭山「ぐっ…ぅ」 

 

次の瞬間に振り下ろされたそれを避けるべく、狭山は左方向へ転がるようにして攻撃をかわす。雨で濡れた道路に転がったせいで服はかなり汚れてしまったが、そんなことを気にしている場合ではない。

 

 

 

 

「まったく、今のは当たると思ったけどな…」

 

転がって距離をとった狭山を追うことはせず、彼がその場で呟く。彼もここまで連続で攻撃していたのがキツかったらしく、乱れてきた息を整えていた。

 

 

 

 

狭山(…痛い…。彼の攻撃を受けたのは今ので三度目か…)

 

狭山は彼の攻撃を防ぎきれず、少し前に右手の甲、そして左足の太ももを切られていた。それらは大して深く切られてはいないようで痛みも少なく、出血も僅かだけ…。しかし今脇腹に受けたものは少しばかり深く、切られた部分の服は綺麗に裂けていた。裂けた衣服の隙間からは狭山の白い肌が見えているがその一部は直線的に切られ、赤黒い血がじわっと溢れてきている。

 

 

 

 

狭山(面白いと思って挑発したけど、彼の事見くびりすぎてたな…。このままじゃ、ちょっと危ないかも…)

 

脇腹の傷口を右手で撫で、その手についた血を見つめる…。血は狭山の手のひらを赤く染めていたが、降り注ぐ雨によってすぐに流れていった。

 

 

 

 

「さて…もう一頑張りだな」

 

狭山「凄いね。ほんとに手加減なしだ…」

 

ナイフを握り直し、彼が少しずつ歩み寄る…。狭山は警棒を構えて迎え撃つ準備をするが、このままでは少々危ないと思い始めていた。

 

 

 

 

 

境野『順調順調。中々に良い感じだな。さぁ、もっと深く切れ。深く突き刺せ。そうすればこの女を殺せるぞ』

 

境野の幻が彼に向けて囁く。彼が本気で狭山を相手にしているのが嬉しいのか、その幻はニヤニヤと頬を緩めている。

 

 

 

(こいつの声に従っているみたいで気分が悪いけど…今回ばかりは仕方ない。この女をこれ以上ほっとけば、皆がまた危険な目にあうかも知れないからな…)

 

目の前にいる警棒を持った少女は雨や泥に汚れ、息も微かに乱れていた。長めの前髪からチラチラ見える目も少し力が無くなっているようにも思え、どこか痛々しい。普段の彼ならこんな少女にこれ以上ナイフを向ける事など出来ないが、今回は違う…。この少女、狭山真冬は由紀達にとって危険な存在なのだ。

 

 

 

 

 

(美紀さんに怒られるかもな…)

 

『出来るなら真冬を傷付けないでほしい…』美紀にそう言われた事を思い出しながら、彼はナイフを持つ手にグッと力を込める。それで狭山を突き刺そうとし、彼はこの争いを終わりにしようとしたのだが……。次の瞬間、彼は突如強い衝撃を受けて横へと吹き飛んだ。

 

 

 

ドッ!!!

 

「ぐっ…!!?」

 

 

 

雨に濡れた道路の上に倒れた彼は慌てて立ち上がり、その衝撃の原因を見つめる…。そうして彼が見た先には、一人の見知らぬ男が立っていた。どうやら、先ほどの衝撃はこの男の蹴りによるもののようだ。男はスタスタ歩いて狭山の方へと寄り、ボロボロになった彼女をじっと見つめた。どうやらこの男、彼女の仲間のようだ。

 

 

 

 

???「危ないところだった…。まさか、お前がたった一人にここまで追い詰められるなんてな」

 

狭山「圭一(けいいち)さん、ごめんね。ちょっと油断しちゃってて…」

 

圭一と呼ばれた黒髪のその男…外見から察するに年齢は25~30ほどだろう。男は深いため息をついたと思うと、今度は彼の事をじっと見つめた。男の目は一見すると気だるそうにも見える目だが、どこか鋭さを感じさせる目だった…。

 

 

 

 

圭一「この前怪我した左手もまだ治ってないだろ…。そんな状態で無茶するからこうなるんだよ」

 

狭山「うん…反省する。ところで穂村は?」

 

圭一「さぁな…。アイツと俺は別行動してたから居場所までは知らない。アイツにも連絡したんだろ?」

 

狭山「一応ね。じゃあ…もしかしたら穂村は先に公園についてるかな」

 

圭一「かもしれないし、まだ道に迷ってるかもな…」

 

圭一はそう呟き、横に立つ狭山の事を横目で見つめる。それはほんの一瞬の間だけだったが、彼はその隙を見逃さなかった。

 

 

 

 

(…今ならっ!)

 

狭山だけを相手にするのも一苦労なのに、この上更に増援などたまったものではない…。彼は圭一が自分から目を逸らした一瞬の隙を突き、一気に接近してナイフを圭一の首へと振り払った。

 

 

…が、そのナイフは圭一の首には届かない。彼はかなり良いタイミングで攻撃したのだが、ナイフは圭一の首まであと二十センチほどというところでその動きを止めていた。圭一の左手が、彼のナイフを持つ手を寸前のところで受け止めていたからだ。

 

 

 

 

 

 

「ちっ…!」

 

圭一「ったく…。こっちはまだ話している途中なんだがな…」

 

呆れたように呟きながら圭一は彼の胸に手のひらをあて、力をグッと込めて彼を押す…。それはただ押しただけとは思えないような衝撃を生み、彼を数メートル向こうまで突き飛ばした。

 

 

 

 

 

「ぐ…っ!!」

 

彼は道路の上を何回か転がった後に受け身をとり、直ぐ様立ち上がる。狭山もかなり手強い人間だが、この圭一という男もかなり手強いという事が今のやり取りで理解できた。

 

 

 

 

(これは…ちょっとマズイな…)

 

狭山だけならギリギリどうにか出来たかも知れないが、今は彼女の仲間である圭一がいる…。さすがに一対二では分が悪いが今のままでは大した打開策もなく、彼は頭を悩ませた。

 

 

 

 

狭山「…圭一さん、ごめん。ここは任せてもいい?ボク、さっき逃げた彼女達の方が気になっちゃって…」

 

圭一「構わないが、追い付けるのか?」

 

狭山「急げば大丈夫だと思う。もし穂村が間に合わなかったらこのまま逃げられちゃうからね」

 

圭一「…じゃあ好きにしろ。俺はこの少年の相手をしてればいいんだな?」

 

狭山「うん。ありがと」

 

そう言って狭山は彼女達が向かった方へ体をクルリと回すが、彼はそれを無視できない。ここで彼女を向かわせてしまったら、由紀達の身がまたしても危なくなる…。

 

 

 

 

 

「おい待てっ!!」

 

彼は狭山を止めるべく向かっていくが、圭一が立ちふさがってその行くてを阻む。

 

 

 

 

 

圭一「おい狭山、コイツを相手にすれば良いのは分かったが…」

 

狭山「どこまでやればいい…って聞きたいんでしょ?まぁ、彼はもう殺しちゃっていいよ。彼が死ねば、さすがに美紀達も現実を見るようになるだろうし」

 

圭一「…………わかった」

 

狭山「じゃ、任せたよ」

 

そう言い残し、狭山はパシャパシャと音を発てながら水溜まりの上を駆けていく。彼はどうにか狭山を止めたかったが目の前に立つ圭一に隙が出来ず、結局狭山の姿が見えなくなっても動けなかった…。

 

 

 

 

 

 

圭一「あいつ、いつもと雰囲気が違うな…。お前、狭山に何かしたか?」

 

「何かしたかって?冗談言うな…被害者はこっちの方だ。訳も分からないまま急に襲われてかなり焦ってるよ」

 

圭一「…だろうな、俺も驚いてる。狭山はお前らを見つけてもそこまで手荒な事はしないと思っていたからな」

 

先程不意を突かれたからなのか、今度の圭一は彼から一瞬たりとも目を離さない。その表情を見ていた彼には分かるのだが、圭一は狭山の行動には本気で驚いているようだった。

 

 

 

 

 

「出来ればあんたにはアイツを止めるか、僕を見逃すかしてほしいんだが…」

 

圭一「悪いがそれは無理だ。そんな事したら後で狭山のヤツに何を言われるか分かったもんじゃない」

 

「…じゃあいい。すぐにあんたを退かして、アイツを止める」

 

圭一「いい返事だ。やれるだけやってみろ」

 

彼がナイフを手に一歩ずつ迫る。雨に打たれながら徐々に迫る彼を見て、圭一は拳にグッと力を入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~

 

一方、キャンピングカーを停めた公園内。

そこにたどり着いた彼女達が辺りを警戒しながら車へと進む中、由紀が道の先を指差した。

 

 

 

由紀「…!?みんなっ、あっちにいるのって……」

 

美紀「人…ですね」

 

由紀の指差した方角…そこに立つ人影はどうやら"かれら"とは違うようだが、今このタイミングでここにいる人間というと…。

 

 

 

 

胡桃「くそっ、真冬の仲間か…」

 

悠里「車はあの先……どうする?」

 

キャンピングカーまであと少し…。傘すら持っていない人影の立つ場所は十数メートル先だが、まだこちらには気づいていないようだ。雨のせいで視界も悪くなり、周囲の音が聞こえづらいのが幸いだった。一足先に由紀が気付いたのも偶然だろう。

 

 

 

 

美紀「回り込んでも良いですが、どうしてもあの人には接近してしまいますね…。運が良ければ気付かれないかもですが…」

 

悠里「万が一気づかれればただじゃ済まないかも知れない。運に任せて行動するにはリスクが高すぎるわね…」

 

由紀「…………」

 

胡桃「…仕方ない。あたしが注意を引くから、みんなはその隙に車へ急げ」

 

このまま徒歩で逃げる事も出来るが、やはりあの車はこれからも必要になる。胡桃は一人であの人影の注意を引くことを提案するが……。

 

 

 

 

美紀「…何言ってるんですか」

 

由紀「そんなのだめだよ!」

 

胡桃「まぁ、そう言われると思ってたよ…」

 

やはり由紀達は賛成しなかった…。こうなるだろうと想像していた胡桃はため息をついて髪を結ぶ一本のリボンを解き、それを羽織っていた上着のポケットにしまう。

 

 

 

 

由紀「髪…なんで下ろしたの?」

 

胡桃「ん?あぁ…さっき真冬と争った時に片っぽ解けちゃったからな…。片っぽだけ縛ってるとかえって邪魔なんだよ」

 

一方は狭山と戦っていた際にほどけてしまっていたので、胡桃は残っていた一方の髪も自分でほどく。そうして完全に下ろした黒髪は長くて少しばかり動きづらいが、片方だけ縛っておくのは落ち着かなかった。

 

 

 

 

 

悠里「最悪の場合はあの車を捨てて逃げると彼にも伝えたし、そうした方が良いかしら…」

 

胡桃「けどあの車には食料から着替えまで全部あるんだ。置いてったら厳しいだろ」

 

悠里「確かにそうだけど、無理してあの車に向かって何かあったら…」

 

あの人影が狭山の仲間だというならば、きっと自分達の敵となる存在だ。そんな人物に捕まろうものなら何が起きてもおかしくない。少なくとも、狭山は自分達を殺そうとしているのだ。四人が雨の中でこれからどうするべきか頭を悩ませていると、辺りから"かれら"がチラホラ姿を現し始めた。

 

 

 

美紀「決めるなら早くした方が良さそうですね…」

 

胡桃「……分かった。あの車は捨ててこのまま――」

 

『このままみんなで逃げよう…』胡桃がそう言おうとした時だった。彼女達の前方…恐らくはあの人影が彼女ら目掛け、雨音に負けない大きな声で呼び掛ける。声から察するに、あの人影の人物は男のようだ。こちらに現れ始めた"かれら"を警戒しようとしたところ、彼女達の存在に気付いたらしい。

 

 

 

 

 

???「おいっ!!そこの奴等!!!」

 

由紀「ひっ!?」

 

胡桃「くそっ!気付かれた!!」

 

男の声に反応し、辺りに潜んでいた"かれら"もこちらへと向かってくる。四人は急ぎその場を離れようとしたが、先にいる男は彼女らに歩み寄りながら続いてこう言った。

 

 

 

 

 

???「逃げるなって!とりあえず周りの感染者を処分するだけだからさ」

 

四人のそばに歩み寄ってきたその男は肩まで伸びた長い茶髪が印象的で目付きもキツく、お世辞にも柄が良いようには見えない。ただ辺りにいる感染者をかわしながらこの男の追撃もしのぐのはかなり厳しい為、彼女達は男の言う通りにして仕方なくその場にとどまる。

 

 

 

 

 

 

美紀「辺りの感染者を倒して…そのあとはどうするんですか?」

 

???「あ?どうするって何が?」

 

美紀「あなたは真冬ちゃんの仲間なんですよね?なら、私達を殺す事が目的なんじゃ…」

 

???「真冬ちゃん……あぁ狭山先生か。そうだな、俺はあいつの仲間だけど…。なに?お前らあいつに殺されそうなの?」

 

胡桃「……ああ」

 

その男を警戒しつつ胡桃は答える。するとその男は辺りにいる数体の感染者を警戒しつつ、どこか驚いたような表情を見せていた。

 

 

 

 

 

???「『彼女達を見つけたから手伝え』とは言われけど、もしかして殺しを手伝えって事だったのか…?あの狭山が殺る気満々ってのはちょっと珍しいな」

 

由紀「お兄さんも…わたしたちのことを…?」

 

辺りには"かれら"…。そしてすぐそばにはあの狭山の仲間だという男…。それらに囲まれている状況の由紀は微かに声を震わせ怯えたように尋ねるが、男は彼女ではなく"かれら"の事を見つめていた。

 

 

 

 

???「あ~……考え中!!とりあえずコイツら片付けるまで待っとけ!途中で逃げようとしたらさすがに追うからな?」

 

悠里「く……っ」

 

油断は出来ない…。しかし『考え中』だと答えた以上この男は狭山より話し合いが出来る人間かも知れない…。そう思い四人が動きを止めていると男は所持していたナイフを右手に構え、辺りにいる"かれら"の処理を始めた。

 

 

 

 

 

由紀「今の内に逃げたりしたら…ダメだよね…?」

 

美紀「…はい。この状況で全員が逃げ切るのは厳しいですので、ここは大人しくしていた方が良いと思います…。この人はまだ話し合う余地がありそうですし」

 

四人が緊張して待つ中、男はナイフを片手に"かれら"の頭を突き刺していく。しかしその途中、胡桃がシャベルを手に男の方へと駆け出した。

 

 

 

由紀「ちょっ…!?」

 

悠里「胡桃っ!?」

 

駆け出した胡桃を見て彼女達が慌てたのは、胡桃があの男の不意を突いて攻撃をする気なのではと思ったから…。しかし実際はそうではなく、胡桃は男の背後に迫っていた一体の感染者の頭をシャベルで砕いた。男がその感染者の存在に気づいていないようだったので手を貸したのだ。

 

 

 

 

???「へぇ…サンキューな」

 

胡桃「…目の前で人に死なれるのは嫌だからな」

 

???「お優しい事で。マジで狭山にも見習ってほしいわ…」

 

仲間である狭山への愚痴をブツブツと呟きながら、男は残った感染者を処理していく。胡桃ももう少し手を貸そうかと考えたが、その必要はないほどに早くそれは終わった…。

 

 

 

 

 

???「はい、終わりっ!」

 

最後の一体を倒し、男はニヤリと笑う。辺りに感染者の死体が転がる中、男はその屍を踏まないようにピョンと飛び越えつつ彼女達の前へ歩み寄った。

 

 

 

 

 

穂村「普段は初対面のヤツに自己紹介とかあまりしねぇんだけどな…。まぁアンタらはずっと探してきたターゲットだし特別ってことで……。俺は穂村(ほむら)竜也(たつや)。狭山の仲間でアンタらの敵……になるのかな?」

 

悠里「ターゲットってどういう事ですか?」

 

自らを穂村竜也と名乗ったその男に悠里が尋ねる。この男と出会ったことなどないハズなのに、ずっと探してきたと言われるのは納得がいかなかった。

 

 

 

 

穂村「ああそれ…なんつーか…話すと長いんだよね。だから簡単にまとめると、俺らがあるところに仕掛けたカメラにアンタらが映ったもんで、それきっかけで興味を持って暇潰し感覚でアンタらを探してた。つまりファンみたいなもんだ」

 

美紀「…ファン?」

 

穂村の発言はよく分からないが、要約するとこの連中の仕掛けたカメラに自分達が映ってしまい、それからターゲットにされたという事だろう。しかしそのターゲットというのがどうにも嫌な響きで、四人の表情が不安を示す。穂村はそんな四人の顔を順に眺めると、嬉しそうな顔をしてニヤニヤと微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

穂村「いやぁ…こうして生で見ると四人ともレベルたけぇな…。こんなに可愛い娘ばかりとは思わなかったわ…」

 

美紀「穂村さんは…私達の敵なんですよね?なら真冬ちゃんと同様、私達を殺すのが目的ですか?」

 

穂村「…どうかな。敵には違いないけど俺は可愛い娘に弱いし…」

 

頭をかきながらその場でぐるぐると歩き回り、穂村は唸り声をあげて頭を悩ませる。敵だと分かっているが、やはりこの男は狭山より話し合いが出来そうだと思う悠里達だったが…。

 

 

 

 

穂村「コイツら殺したって何も良いことねぇよな…。せっかくの美少女をわざわざ殺す事にメリットはない……狭山のヤツは何もさせてくれないから、俺も癒しが欲しいしな……」

 

歩き回る穂村から嫌な言葉が聞こえ、由紀を除く三人の表情がみるみる青くなっていく。次の瞬間、穂村はピタッと立ち止まって悠里の体をじっ…と見つめた。

 

 

 

 

穂村「……スゲェな」

 

悠里「…っ!」

 

穂村の目線が自らの胸にいってると気付いた瞬間、悠里は穂村に背中を向けるように体をそらす。そんな彼女の頬が微かに赤くなっている事に気付いた穂村はまた嬉しそうにニヤニヤと微笑み、手にしていたナイフをしまった。

 

 

 

 

穂村「あははっ!ヤベェ、アンタらマジで可愛いな!身近な女が狭山しかいなかったから、すっげえ新鮮な気持ちだわ」

 

一人笑う穂村だが、四人は以前として生きた心地がしない…。命の危機だけでなく、身体の心配すら必要になってきたような気がしたからだ。

 

 

 

 

穂村「狭山も見た目は良いんだが、無愛想過ぎてからかっても楽しくねぇんだよ。良いねぇ、楽しい楽しい!」

 

美紀「こっちには楽しんでる余裕なんてないんです!結局、穂村さん達は私達をどうしたいんですか?」

 

彼が時間を稼いでいてくれてるのに、こんなところで無駄話している暇などない。美紀が少し苛つきながら尋ねると、穂村はまたしても頭を悩ませているようだった。

 

 

 

 

穂村「あぁ……そこだよなぁ…。どうすっかなぁ……」

 

雨降る空を見上げながら、穂村は彼女達をどうするべきかと悩む。

そんな中、由紀は不意にある事が気になり声をあげた。

 

 

 

 

 

由紀「穂村って……どこかで……」

 

この男の穂村という名字、これをどこかで聞いた事がある気がする…。由紀がそれをどこで聞いたか思い出そうとすると、悠里が横からその答えを教えた。

 

 

 

悠里「空彦(そらひこ)くんと名字が同じね…」

 

由紀「あっ、そっか……だから聞いた事があったんだ」

 

一時は行動を共にしたあの少年、空彦の名字も穂村だった。由紀がそれを思い出したその時、由紀と悠里の会話を聞いていた穂村がハッとした表情を向ける。

 

 

 

 

 

 

穂村「そういやあいつのいる学校は巡ヶ丘の高校だったか…。たしかアンタらも同じだったよな……。アンタら、あいつの事知ってるのか?」

 

美紀「えっ?」

 

胡桃「あんた、あいつとどういう関係だよ…」

 

薄々気づき始めていたが、念のために尋ねる。

次に穂村が返した答えは胡桃達が想像していた通りのものであり、四人の表情がまたしてもひきつり始めた…。

 

 

 

 

 

 

穂村「あいつは…俺の弟だ」

 

 

 

 




前書きにもあった通り今回の話は書き貯めてあった物ですが、改めて見直すとやはり見辛い点が多々ありますね(汗)


とりあえず今回の話では外伝メンバーの『穂村竜也』と以前本編の方に登場したあの『穂村空彦』…この二人が兄弟だという事が判明しました。兄弟揃って危ない人間ですが、ハキハキしてる分、兄の方がマシかもしれません…。(弟の方はネチネチした性格でしたので)


本編の方をご覧の方はご存知でしょうが、空彦君は既に亡き者に(自業自得ですが)由紀ちゃん達はそれを正直に告げるのか誤魔化すのか…。正直に告げた場合穂村(兄)はどんな反応を返すのか…。その辺りにご注目下さいませm(__)m

彼女達は穂村(兄)に見つかり、狭山もそこに向かっている…。そして彼はもう一人の外伝メンバーである『神崎圭一』と戦闘中…。かなり危機的な状況ですが、希望を捨てずにお付き合い下さいm(__)m


そして今さらですが『穂村竜也・狭山真冬・神崎圭一』この三人を知らない方は本作の外伝をご覧下さいませ。(本当に今さらな発言ですいません)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。