軌跡〜ひとりからみんなへ〜   作:チモシー

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今回の話は学園生活部の皆が真冬ちゃんの手を借り、それぞれの部屋の模様替えをするところから始まるのですが…その様が引っ越しっぽかったのでタイトルにしました(^^)

少し長めですので、ゆっくりご覧くださいm(__)m


百二十二話『ひっこし』

 

 

 

 

 

由紀「おぉ~っ!ほんとにいろんなのがあるね!!」

 

真冬「どれでも、好きなのを持っていって…。使わないやつばかりだから」

 

真冬に案内され、やって来た地下の倉庫。真っ暗だったそこは壁にあったスイッチを真冬が押した事でパッと明るくなり、由紀達は目を輝かせる。ここは思っていたよりもずっと広く、幾つもの棚が列を作るように置かていたのだが…それらの上には家電からインテリア用品まで、様々な物が並べられている。

 

 

 

 

悠里「これ、最初からここに?」

 

真冬「いや…元々は外にあったやつがほとんどだよ。使えそうだと思って回収してきたやつなんだけど、実際持ち帰ると置き場に困っちゃって…。それでこの倉庫にしまってあるの」

 

美紀「そういえば、食料とかもたくさんあったね。ああいうのって、全部真冬達が集めてくるの?」

 

真冬「うん…。そうだよ…」

 

先程、朝食をご馳走になった時に見たのだが、食料のストックもかなりの量だった。あれらを真冬達だけで集めるのは、相当大変だっただろう。

 

 

 

 

胡桃「おっ、ゲーム機まである」

 

真冬「ああ、欲しいなら持っていっていいよ…。テレビと繋げるのも手伝ってあげるから」

 

胡桃「マジ?じゃあ頼むわ」

 

由紀「あ~っ!良いなぁ~…」

 

棚に置かれていたゲーム機を手に抱える胡桃を見て、由紀は羨ましそうな目線を向ける。同じものがあれば由紀もそれを持ち帰ったのだが、どうやらこのゲーム機はここと真冬の部屋、穂村の部屋、それぞれに一つずつ…計三つしかないらしい。

 

 

 

「仕方ないね。やりたい時は胡桃ちゃんの部屋に行けばいいんじゃない?」

 

由紀「あっ、そっか。よし!そうしよう!」

 

「僕もそうさせてもらうとしよう」

 

胡桃「当たり前のように遊びに来ようとしてるけど、お前ら…あたしの意思とかは無視か?」

 

彼や由紀のことだ。きっとほぼ毎日遊びに来るだろう。それが容易に想像できた為、胡桃はため息をつく。個々の部屋を貰っても、一人の時間が増えることは無さそうだ。

 

 

 

胡桃(ま、それはそれでいいけどな……)

 

それぞれの部屋はたった一枚の壁を隔てているだけだが、やはり何となく寂しい。だから彼でも由紀でも、遊びに来てくれるなら温かく迎えようと、そんな事を思って胡桃は微笑む。

 

 

 

由紀「真冬ちゃんの部屋にも同じのがあるんだよね?たまに遊びにいってもいい?」

 

真冬「あっ………うん…。由紀が来たいなら…いつでも…」

 

由紀「えへへ~、ありがと~♪」

 

ニタニタと嬉しそうに笑う由紀から目をそらし、真冬は照れたような表情をする。どうやらまだ、友達が出来たという状況に慣れていないらしい。

 

 

 

真冬「じゃ、じゃあっ…みんな必要な物、欲しい物を適当に持っていって…。運ぶの、手伝うから…」

 

一同は真冬の言葉に甘え、それぞれが必要な物…気になった物を手に取る。それぞれの部屋は二階にあるが、軽い物ならまだ楽に運べた。しかし、苦労したのがテレビや本棚など、重くて運びにくい物だ。胡桃はゲームをする為、美紀は映画等を観る為…一台ずつテレビを貰ったが、それを地下から二階まで運ぶのは楽ではない。真冬の手を借りた事である程度楽になったものの、朝から始めた部屋の模様替えは結局昼過ぎまでかかってしまった…。いや、これでもかなり早く終わった方だろう。真冬の手がなかったら、夕方…もしくは夜までかかっていたかも知れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~

 

悠里「ふぅっ…。さて、みんなの部屋も終わった?」

 

美紀「どうにか終わったみたいです。先輩の部屋はかなり質素でしたけど、あれで良いみたいですし…」

 

「ま、あまり必要な物も無かったんでね…。とりあえず、ベッドさえあればそれでいいや」

 

由紀「ゲームしたいときは、胡桃ちゃんか真冬ちゃんの部屋にいけばいいもんね」

 

「そういうこと」

 

最初はベッドくらいしかなかったそれぞれの部屋は半日で大分変わり、生活感のあるものとなった。まぁ、彼の部屋だけはまだ少し飾りっ気がないような気もするが、それでも最初と比べれば良くなった方だろう。

 

一同はその後、一階リビングにて少し遅めの昼食をとる事にした。

広々としている綺麗な造りのリビングには左右に二つのテーブルがあり、どちらも六つの椅子に囲まれている。由紀達はそそくさと左のテーブルに座ったのだが、もう一方…リビングの右側にあるテーブルには穂村、圭一が座っていた。

 

 

 

穂村「おう、お前らも昼飯か?」

 

悠里「ええ…まぁ…」

 

穂村「そっかそっか。まぁ、遠慮なくやってくれや」

 

椅子に座ったままこちらを見つめ、穂村は笑顔を見せる。それは一見すると爽やかな物に見えるが何か裏があるようで、悠里達はもちろん、真冬や圭一すらも眉をしかめた。

 

 

 

圭一「ただ機嫌が良い…って訳じゃないよな。何を考えてる?」

 

真冬「ほんと、嫌な予感しかしない…」

 

穂村「いやいや、変な事は何も考えてねぇって。ただ、コイツらには弟が随分と迷惑かけたみてぇだし…その詫びみたいなもんだよ」

 

悠里達はその言葉を信じ、胸を撫で下ろす。しかしその一方、彼と真冬…そして圭一の三人だけは不思議そうに首を傾げ、穂村をじっと見つめた。あの時、悠里達は穂村からそれを聞いていたが、その場にいなかった彼や真冬達からすれば訳のわからない台詞だ。

 

 

 

「…弟って?」

 

穂村「ん?あぁ、お前にはまだ言ってなかったっけ…。一時期、お前らと一緒に行動した空彦って野郎がいたろ?あれ、俺の弟な」

 

「……なるほど。マジか…」

 

穂村「あぁ、マジだ」

 

そっと悠里達に目線を向けると、彼女達は無言のまま頷く。それを見た彼は穂村の言葉が真実だと知り、なんとも気まずそうな表情を浮かべる。訳があったとはいえ、この男の弟を殺したのは自分なのだから。

 

 

 

「……謝罪の一つでもしようか?心の込もってないもので良ければだけど」

 

穂村「ははっ。いらねぇよ、そんなの。お前がアイツを殺った理由もそこの嬢さん方から聞いたしな。ま、こんな世界だ。誰だって死ぬときゃ死ぬさ」

 

「…………」

 

穂村「弟の(かたき)~っ!!とかやるキャラでもないんで…。気まずさとかは感じなくてオッケーだぞ。ぶっちゃけた話、俺もアイツは嫌いだったし」

 

ヘラヘラと語るその表情は強がっているわけでも、嘘をついているわけでもなさそうだ。この男は本当に弟の事が嫌い…というより、興味がなかったのだろう。

 

 

 

「まぁ、あれを好きになる人間はいないだろ……」

 

穂村「おぉ!言うねぇ!!昨日の段階で薄々気づいてたけど、お前とは仲良くなれそうだ」

 

「それはそれは……」

 

穂村が彼の事を気に入っているのには理由がある。昨日、由紀達が風呂に向かった際、覗きの話に食い付いたからだ。屋敷の風呂には良い感じのポイントが無いので、隠しカメラでも使わぬ限り覗きは不可能なのだが、それを知らない彼は穂村の言葉に反応した。穂村はそれを見て、柳や圭一とは今一つ気が合わない自分も、彼となら仲良く出来るのではと考えたのだ。

 

 

 

穂村(圭一さんも柳さんも、話が合わなくてつまんねぇんだよな。けど、この少年となら上手くやっていけそうだ。二人で力を合わせれば、ここにいる女達の下着をこっそりと盗むことすら出来るかもしれねぇ…!)

 

一人の変態では不可能な事も、二人の変態でなら可能になる。無限に広がる未来の可能性を想像して穂村がにやけていると、圭一が口を開いた。

 

 

 

圭一「お前、弟とかいたんだな」

 

穂村「あれ?圭一さん達には言ってなかったっけ?」

 

真冬「言ってない…初耳…」

 

 

穂村「そうだったっけか。ああ、一応いたよ。これがまた…顔は俺と違ってダメダメだし、性格も根暗な変態だしで、何にも良いところがないやつでさー。この俺と本当に血の繋がりがあったのか怪しいところだぜ」

 

真冬「あぁ…穂村は明るい変態だもんね」

 

真冬が無表情のまま言った後、一同は何とも言えぬ表情で穂村を見つめる。暗いというか、陰湿な雰囲気を持っていた空彦とは違い、こちらの穂村は明るい。長めの茶髪やヘラヘラした雰囲気は、元気な不良…といったイメージだ。

 

 

 

胡桃「たしかに、弟とは雰囲気がまるで違うな」

 

穂村「だろっ?俺の方が百倍カッコいいだろ??」

 

真冬「穂村……ゼロの百倍はゼロのままなんだよ…」

 

穂村「なっ!?狭山は俺の弟の顔知らねぇだろっ!!」

 

確かに知らないが、この穂村があれだけボロクソに言っていたのだ。その弟というのは余程の人間なのだろう。真冬はそう決めつけ、ニヤリと微笑む。一同はそんな雑談を交わしたりしつつ、昼食を始めていった。

 

 

 

 

 

圭一「そう言えばお前、体は平気か?結構痛めつけたつもりだが…」

 

「昨日、あの柳って人にみてもらった。特に問題はないってさ」

 

圭一「へぇ、頑丈なヤツだ……」

 

「まぁ問題ないとはいえ、今も痛むんだけど…」

 

昨日、圭一と戦った際の傷は完全に癒えてなどおらず、動こうとすると腹の辺りがズキズキとする。彼はその痛みに耐えながら昼食を済ませ、由紀や真冬達と共にリビングを出た。すると、廊下にいた柳と出くわす。この男もまた昼食をとりに来たのかと思う一同だったが、どうも違うようだ。

 

 

 

 

柳「昼食は済んだかな?」

 

悠里「ええ。ごちそうになりました」

 

柳「ああ…。ところで、君らもこれから少しの間ここで暮らすんだ。少し案内でもしようかと思うんだが…」

 

真冬「それはボクがやっておくから、柳さんはお昼食べててよ。どうせまだでしょう…?」

 

柳「まぁ、そうだが…。じゃあ、お言葉に甘えるとしようかな。案内の方も狭山君に任せるよ」

 

真冬「うん…任せておいて」

 

真冬が頷き返事を返すと、柳はふふっと微笑みリビングへの扉を開く。真冬はその言葉通りに由紀達に屋敷内から庭まで、様々なところを案内していった。とはいえ、この屋敷は三階建て…かつ部屋の数も多い。わざわざ全ての部屋を回るのは時間の無駄になるので、今回案内したのは洗濯場や団らん室など…生活していく上で需要のある場所だけだ。

 

 

 

 

 

真冬「まぁ…こんなところかな…」

 

悠里「とりあえず、大体の構造は分かったわ。案内ありがとうね」

 

「助かったよ。さて…僕はそろそろ部屋に戻るよ。少し疲れた…」

 

胡桃「おいおい…。昨日はしっかり寝たのか?」

 

「寝た……つもりなんだけどな。どうにも体がダルい」

 

恐らく、昨日の疲れが完全にとれていないのだろう。彼は胡桃達に見送られながら、部屋へと戻っていった。そうして彼がいなくなり、女子五人だけになった後、真冬が思い出したように口を開く。

 

 

 

真冬「そう言えば、みんなは服とかの予備ある?ボクの部屋に色々あるから、もし良ければ好きなのを持っていってほしいんだけど…」

 

由紀「えっ?いいのっ!?」

 

真冬「うん…。じゃ、ついてきて」

 

キャンピングカーの中に置いてきた衣類等は既にそれぞれの部屋へと移したが、それらだけだと少し心もとない気もする…。ここまで来たならとことん真冬に甘えてしまおうと思い、一同は僅かな申し訳なさを感じつつ…彼女の部屋へと向かう。

 

 

 

 

ガチャッ…

 

真冬「ええっと…。ここの棚の中にあるやつ、全部いらない…。どれでも好きなやつ持ってって」

 

部屋に入ってから、真冬は一つの棚を開く。その棚の中には様々なスタイルの衣服がギュウギュウに詰められているのだが、彼女にとってこれらは不要品らしい。

 

 

 

胡桃「服が貰えんのはありがたいんだけどさ…ほんとにいいのか?」

 

真冬「うん。ボクが持ってても着ることないし……」

 

美紀「ああ、サイズが合わないの?」

 

と思い、美紀は棚にある服を一着取る。手にしたのはチェックの柄が可愛らしい半袖のシャツなのだが、恐らく、真冬でも問題なく着れるサイズだ。にも関わらず何故着ないのかと思ったら…これらの服は全て、穂村が真冬に着せようと外から取ってきた物らしい。

 

 

 

 

真冬「ボクは服にこだわりとか無いし…おしゃれとか興味ないのに…。穂村はしょっちゅう持ってくるんだよね…。めんどくさいから適当に受け取ってしまっておいたんだけど、もう棚に入らなくて……」

 

悠里「じゃあ、私達に気をつかってるとかっていう事じゃなく…本当にいらない物なのね?」

 

真冬「そういうこと…。なんか、ごめんね……」

 

悠里「ふふっ、大丈夫よ。私達、女の子だもの。おしゃれな服はいくつあっても困らないわ♪」

 

由紀「そゆこと!じゃ、えんりょなくもらってくね!」

 

真冬「うん。どれでも好きなの持っていって…」

 

悠里、胡桃に続き、美紀と胡桃もその棚の中にある衣服を品定めしていく。そうして見ている内に気付いたのだが、ここにある服はどれもわりと可愛らしい…センスの良いものばかりだ。これらを選んできたのがあの穂村だと思うと、なんだか複雑な気持ちになる…。

 

 

 

 

真冬「あっ。下着も使ってないやつがいっぱいあるから、良ければ持っていって…」

 

それぞれがいくつかの服を選び終えた後、真冬がそばにあったもう一つの棚を開く。その中には綺麗に畳まれた様々な下着がしまってあったのだが…それを見た瞬間…悠里、胡桃、美紀の頭に不気味な考えが浮かぶ…。

 

 

 

悠里「まさかとは思うけど……これも、穂村さんが?」

 

真冬「いや、さすがにこれは違う…。下着はボクが自分で探して、取ってきたやつだけだよ」

 

胡桃「だ、だよなっ?いや~、一瞬ビビったぜ…」

 

美紀「穂村さんが下着なんて渡してきたら…真冬も怒るでしょ?」

 

真冬「……まぁ、とりあえず殺しとくかな」

 

着ないとはいえ、服ならまだ受け取っておいてやる。しかし、穂村が『これを着ろ』と下着なんて渡してきたら、それはもう完全なセクハラだ。

 

 

 

 

悠里「じゃ、こっちもいくつか貰っていくわね?」

 

真冬「うん。どうぞどうぞ…」

 

 

胡桃「………あれ…?」

 

ふと思う…。真冬が集めた物なら、下着のサイズは彼女に合わせた物のハズだ。だとすると、他のメンバーが身に付けるのは無理があるかも知れない。ショーツならある程度はいけるかもしれないが、問題は上…ブラの方だ。大変失礼な話になるが、真冬の胸に合わせたサイズのブラなど、キツくて着けられないだろう。

 

 

胡桃(特にりーさんは絶対に無理だ…)

 

などと思う胡桃だったが、彼女は直後に驚く。棚を見ていた悠里が一つの下着を手にしたのだが、それはどう見ても真冬のサイズではないのだ。

 

 

 

悠里「これ、貰ってくわね?」

 

真冬「うん」

 

胡桃「いやいやっ!ちょっと待て!!真冬…お前、何でこんなサイズの下着を持ってるんだ?絶対にブカブカだろ!?」

 

真冬「胡桃…恐ろしいくらい失礼…」

 

胡桃は悠里が手にしたブラを奪いとり、真冬の眼前に突きだす。可愛らしいリボンが付けられている水色のそれはとても大きく、どう見ても悠里のような人間の為の物だ。真冬が持っていても意味はない。

 

 

 

悠里「言われてみれば、確かにそうね…。これ、狭山さんじゃサイズが…」

 

由紀「うん、ブカブカだね~」

 

真冬「……ぐ…ぅ」

 

胡桃が手にしたそれを今度は由紀が持ち、真冬の胸へと当てる。服の上からだとほとんど膨らみのない真冬の胸にそれが合う訳もなく、由紀の言葉通りブカブカだ。

 

 

 

真冬「せ……ちょ………かと…」

 

美紀「うん?なに?」

 

ボソッと呟かれた言葉が聞き取れず、一同は耳を澄ます。俯けられた真冬の顔は、耳まで真っ赤に染まっていた。

 

 

 

真冬「成長…するかと思ったの…。ボクだってこれから成長して、一年後…二年後には、悠里みたいな胸に……」

 

 

胡桃「お…おう……」

 

美紀「真冬…さすがにそこまでは無理だよ…」

 

 

悠里「でもね、大きくたって良いことないわよ?」

 

これからの目標を恥ずかしそうに語る真冬。そんな彼女の頭を撫でていく悠里だが、その言葉は決して慰めにならない。むしろ、真冬の表情をドンヨリと暗くしてしまった。彼女は諦めたようにため息をつき、静かに顔を上げる。

 

 

真冬「うん……そだね…。もう…あきらめるよ…」

 

恐らく、自分の胸はこれからも大した成長を見せないのだろう。未来を完全に捨てた真冬は半ば自棄(やけ)になり、これからの為にととっておいた大きめなサイズの下着を皆に配った。

 

 

そんな事をしている内に夜になり、一同は夕食を済ませる。真冬以外の人間とはまだ距離があり、少し気まずい食事ではあったものの、多少の会話を交わしながらそれを終えることが出来た。そうしていくらかの時間を過ごした後、それぞれが自分の部屋へと戻る。昨日は由紀の部屋に集まって眠った学園生活部一行も、今日は一人で寝ることにしたようだ。

 

 

 

 

胡桃「…ほっ」

 

ボスッ!

 

自室の中、縛っていた髪を解き、真冬に貰ったパジャマに着替え、胡桃は背中からベッドへ飛び込む。まだ眠気はないので誰かと話でもしていたかったが、他の皆は既に眠たそうだったので仕方ない…。

 

 

 

胡桃(久々に、ダラダラ出来た一日だったなぁ……)

 

今日一日を振り返っていると、部屋の明かりを消し忘れた事に気が付く。ただでさえ眠気がないのに、明かりをつけっぱなしにしては余計にダメだろう。仕方なくベッドから起き上がり、壁にあるスイッチを押して明かりを消そうとした、その時だった…

 

 

 

コンコンッ

 

続けて二度、部屋のドアがノックされる。一体、誰が来たのだろう…。由紀達や真冬なら良いのだが、穂村…圭一辺りだったら少し気まずい。いや、もしかしたら、柳が検査の結果を言いに来たのかも…。

 

 

 

胡桃(やっぱ治せない…とか言われたらキツいな…)

 

そんな不吉な事を考えつつ、そっとドアを開く。ドアの外…廊下に立っていたのは由紀や真冬、柳ではなく…彼だった。彼は胡桃と目が合うと微かに微笑み、口を開く。

 

 

 

「…寝るとこだった?」

 

胡桃「まぁな」

 

「あ~…じゃあいいや。おやすみ」

 

胡桃「へっ?いや、何か用があるなら別にいいぞ?あたし、まだ眠くないし」

 

彼がそのまま帰ろうとしたので、肩を掴み引き留める。彼が何の用で来たのかは知らないが、せっかく来てくれたのに追い返すのは心苦しい。

 

 

 

「そう?じゃあ、少し入っていい?その…話したいことがあって」

 

胡桃「おう、別にいいぞ」

 

ニコッと微笑み、彼を部屋の中へと招く。胡桃は今日、部屋へと運んできたばかりの椅子をベッドの前まで引きずり、彼をそこに座らせた後、自分はベッドの上へと腰掛ける。

 

 

胡桃「…で、話ってなに?」

 

真正面からその目を見つめ、彼に尋ねる。しかし彼はそれに答えず、『ん~』と唸るだけ…。そんな時間が丸々一分ほど続き、二人の間に気まずい空気が流れた。

 

 

 

 

 

 




少し中途半端な気もしますが、これ以上書くとまた長くなってしまいそうだったので…彼の言う『話したいこと』の内容が明らかになるのはまた次回です!!
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