軌跡〜ひとりからみんなへ〜   作:チモシー

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惚れ薬により、未だ暴走状態にあるみーくん…。
この件については今回の話でとりあえず一区切りとなっていますが、少々長めになっています。見辛い所も多々あると思いますが、のんびりお楽しみ下さいませm(__)m


『気のせいだろう…』

 

美紀「先輩…どうしたんです?さぁ、美紀の事が好きだって…はやくそう言って下さい…。それさえ言ってくれれば、私に好きな事が出来るんですよ…?」

 

「あ~…その………まいったな……」

 

美紀「……私のこと、嫌いなんですか?」

 

ベッドに仰向けのまま倒れている彼…美紀は相変わらずその上へ馬乗りになっており、瞳を涙で潤ませる。彼が中々良い返事を返してくれないので、不安になってしまったらしい。

 

 

 

「いや、美紀のことは……好き、だけど…」

 

美紀「本当ですか…?なら、嬉しいです…」

 

彼が少し言葉を返しただけで美紀は涙を引っ込ませ、その胸へ嬉しそうに顔を埋める。上半身下着姿の彼女にこうして馬乗りになられ、胸へ顔を埋められる……それは彼にとってかなり魅力的な状況であり、今すぐにでも美紀を襲ってしまいたいと、本当はそう思っていた…。

 

 

 

(けど、どうにもおかしい…。あの美紀が、こんな事をしてくるなんて…)

 

彼女に告白され、こうして身を寄せあっているというのは正直かなり幸せだ…。しかし、今日の美紀は何かがおかしい…。その疑念があったからこそ、彼はギリギリで理性を保っている事が出来たのだが……

 

 

 

美紀「先輩…大好きですよ…。ほんとに、ほんとに大好きです…。今日はずっと一緒にいて…私と色んなことしましょうね…♡」

 

 

「あ……ぐ……っ……」

 

(そろそろ…我慢の限界かも…)

 

美紀の真っ赤な頬、額に浮かぶ汗、そして少しだけ荒めの吐息…それらがやたらと色っぽくてただでさえ我慢の限界なのに、彼はもう一つ、あることに気が付いてしまう…。美紀の胸を覆う白い下着の肩紐が左右ともにずり落ちてしまっており、その胸は緩みかけた下着から今にも溢れてしまいそうになっていた…。

 

 

 

美紀「先輩…せんぱいっ…♡」

 

それを知ってか知らずか、美紀は彼に密着させたその身を楽しげに揺らす。彼女の下着はその度に少しずつずり落ちていき、1ミリ…また1ミリ、その胸を彼の視界に晒していく。

 

 

 

「あ、あの……美紀、胸が……」

 

美紀「胸?胸が何ですか?あっ……見たい…ですか?」

 

「いや、そりゃ見たくないわけはないけど……けど…ね…」

 

見たくないと言えば嘘になるが、こんな様子の美紀が相手だと見てはいけない気もする…。しかし、美紀はそんな彼を見てイタズラに微笑み…

 

 

 

美紀「…ふふっ、仕方ないですね♡じゃあこれも脱ぎますから…少し待って下さい」

 

「………マジか」

 

横たわる彼に寄せていた身を起こすと、美紀はその両腕を自身の背中へと回した。どうやら、下着のホックに手をかけているらしい…。

 

 

 

(ああ…まったく、どうしたもんかね……)

 

今はどうにか保てている理性も、美紀の胸を見てしまったらあっさりと消え失せるだろう…。そうなってしまえばもう歯止めは効かない。このまま美紀とそういう関係になってしまうべきか…それとも、彼女を押し退けてでも止めた方が良いのか…。

 

 

 

 

 

ドンドンッ!!

 

美紀「…………」

 

「っ…?」

 

悩みに悩んでいる最中、部屋の扉がノックされる。その力はわりと強めであり、慌てているようにも思えた。下着に手をかけていた美紀も思わずそれを中断し、背中に回していた両腕を下ろす。

 

 

 

「美紀…誰か来たから、出ないと…」

 

美紀「…無視していれば大丈夫ですよ。どのみち入ってこれませんから。鍵、かけたって言いましたよね?」

 

「…そうだったな」

 

二人はベッドの上で身を寄せたまま沈黙し、気配を殺す。しかしその後も数回ノック音が響き、それでも反応が無いとみるやドアノブがガチャガチャと回された。

 

 

 

ガチャッ…!ガチャッガチャッ!!

 

美紀「先輩…声出しちゃダメですよ…?外が静かになったら、すぐに続きをしてあげますから…ちょっとの我慢です」

 

「…………」

 

どう動けば良いのか悩みもしたが、今はとりあえず美紀の言葉に従う事にしよう…。彼はそう考え、ドアの外にあるその気配が消えるのを待った。

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

ガチャガチャッ!!

 

 

圭一「……ちっ、反応無しか」

 

彼と美紀が身を潜める部屋の外…その扉の前に立っていた圭一は苛立ったように舌打ちをする。美紀が彼と共にこの部屋に向かったと胡桃達から聞き、二人の間に間違いが起きないように止めておこうと思ったのだが、やはり部屋には鍵がかけられていた。

 

 

柳「居留守かい?」

 

圭一「だろうな……」

 

柳「ふむ…困ったものだな」

 

廊下の壁に背中を寄せ、柳は右手でまいったように頭を掻く。事故のような事とはいえ、自分の作り出した薬で美紀が過ちを犯してしまうのは少しばかり申し訳ない気がしていた…。

 

 

 

圭一「…どうする?この扉をぶっ壊して中に入るか?」

 

柳「いやぁ…それはそれで勘弁してほしいな…。君があとで元通りにしてくれると言うのなら構わないが、無理だろう?」

 

圭一「ま、無理だな………」

 

ならばもう打つ手などない…。このままこの場を立ち去り、美紀がどうなってしまうかは天に…というよりは彼に任せるしかないだろう。そう思った圭一と柳が諦めたようにため息をついた、その時だった……

 

 

 

真冬「二人とも、何してるの…?」

 

真冬が廊下の向こうから現れ、彼の部屋の前に立つ二人を不思議そうに見つめる。しかし、彼女がやって来たからといって状況が改善される訳でもない。この時、圭一と柳はそう思っていた。

 

 

 

圭一「ああ、狭山か…。いや、別に大した事じゃないんだが……」

 

柳「彼に少しだけ用事があってね。それでこうして部屋を訪れたんだが、寝てしまっているらしくて返事をしてくれないんだ。入ってみようにも鍵がかかっているようだし、本当にまいったよ……」

 

真冬「ふぅん…。その用事って急ぎなの?」

 

柳「まぁ…緊急といえば緊急…かな」

 

自分が作った惚れ薬を圭一が美紀に渡してしまい、そのまま彼と共に部屋へ消えた……などと真冬に言えるわけもなく、二人はただ冷や汗を流す。事故とはいえ、責任は自分達にあるのだ。本当の事など言えたものではない。

 

 

 

真冬「…急ぎなら鍵を使って開ければ?」

 

真冬がしれっと言い放つが、それは無理な話だ。この部屋の鍵はもう彼に渡してしまっていて、その彼は室内にいるのだから。

 

 

柳「鍵はもう彼に渡してあるから、それはムリだと―――」

 

真冬「いや、だからもう一本の鍵を使えばいいんじゃない…?」

 

柳「…もう一本の鍵?」

 

 

真冬「うん…。屋敷内にある全ての部屋の鍵は念のために二本ずつ用意されてるって、前に柳さん自身がボクに教えてくれた……忘れたの?」

 

柳「……あぁ、そういえばそうだったな…」

 

言われてハッキリと思い出した…。この屋敷にある部屋の鍵は万が一紛失した時用に、二本ずつ用意してあった事を。スペアの鍵の保管場所はたしか………

 

 

 

 

柳「ええっと、どこだったかな……私の部屋の奥にある棚にしまったかも知れないが…」

 

圭一「部屋奥にある棚か?よし、ちょっと待っていろ…!!」

 

ダッ!!!

 

 

真冬「わっ……圭一さん、すごく急いでるね…?」

 

柳「あ、あぁ…そうだね」

 

圭一が突然廊下を駆けていったため、真冬は目を丸くする。あんなにも焦ったような圭一の表情など、これまで一度も見たことがなかった。

 

 

 

柳(直樹君にあの薬を渡してしまったこと、圭一君は圭一君なりに申し訳無く思っているのだろうな……)

 

あの圭一が美紀のような少女相手に罪悪感を抱いているのだと思うと、なんとなく面白い。柳は静かに『ふふっ』と笑い、真冬は訳も分からぬままその場に立ち尽くす…。圭一が鍵を手に入れてそこへ戻って来るまで、数分とかからなかった。

 

 

 

 

 

圭一「あったぞ!どれがどの部屋の鍵なのか分からなかったから、全部持ってきちまったが……」

 

圭一は柳の部屋の奥の棚、そこに入っていた工具箱のような物を床の上へ置く。蓋を開いてみると沢山のスペアキーが雑にしまわれており、柳は眉間にシワを寄せた。それぞれの鍵にはタグがついており、それに番号が記されているが…何番がどの部屋の鍵なのか今一つ分からない。

 

 

 

柳「むぅ……どれがこの部屋の鍵だったかな……」

 

圭一「おいおい、しっかりしろよ…。お前の家の鍵だぞ、見りゃわかるだろ?」

 

柳「あぁ分かる…分かるとも…。ええっと、これが地下室の鍵で…これが私の部屋の鍵……そしてこれが……何の鍵だったかな…?」

 

真冬「それは食料庫の鍵……」

 

柳「おお、そうだったそうだった…。で、お目当ての鍵はどれかな…」

 

柳は床に座り込み、箱の中をガチャガチャと漁る…。しかしどれがどの部屋の鍵なのかハッキリと把握していないらしく、動作がいちいちノロマだ。

 

 

 

圭一「ったく…狭山に代わってもらえ」

 

柳「そうするとしよう…。狭山君、この部屋の鍵がどれか分かるかい?」

 

真冬「えっと………………あった。多分これ」

 

真冬は柳の隣へ座り込み箱の中を漁ると、ものの十数秒で一本の鍵を取り出す。どうやら、それが彼の部屋のスペアキーらしい。

 

 

 

柳「じゃあ…悪いが部屋を開けてくれるかな?もしかすると、部屋の中では我々が見てはいけない事が行われているかも知れないんでね……」

 

真冬「??……わかった」

 

柳の発言に首を傾げながら、真冬は扉の前へと立つ。そうして手にしていた鍵を扉の鍵穴へと差し込み、クルリと回した…。

 

 

…ガチャッ

 

どうやら、鍵は合っていたらしい。部屋の鍵が開いた事を音で確認した後に真冬はそっとドアノブを回し、扉を開いて中にいるであろう彼へと声をかける。

 

 

 

ギィィッ……

 

真冬「ねぇ、キミに用事があるって柳さんが――――」

 

 

 

美紀「あ…っ………」

 

「………………」

 

 

 

バタンッ!!!!!

 

 

 

目に映ったその光景があまりにも衝撃的で、真冬は開いたばかりのその扉を勢いよく、それはもう勢いよく閉めた。開いた扉の先に広がる室内は明かりもついておらず薄暗かったが、真冬はその目でハッキリと見たのだ。部屋の奥に置かれていたベッド…そこには彼が仰向けに寝そべっていて、その上に…上半身下着姿の美紀が馬乗りになっているのを…。

 

 

 

 

真冬「エッ…エッチしてた…!!!!」

 

いつになく声を張り上げ、真冬はその顔を真っ赤に染める。そんな報告を受けた柳と圭一は互いに顔を見合せ、何とも気まずそうに辺りをうろつきだす。

 

 

 

柳「しまった…遅かったか」

 

圭一「……やっちまったな」

 

 

 

 

『いや…!まだそこまでやってないから!!ギリギリだからっ!!!』

 

柳、圭一が冷や汗をかき、真冬が顔を真っ赤にしたままボーッとしていると、扉の向こうから彼が大声で言う。どうやら、真冬が放った先程の発言が聞こえていたらしい。彼の言葉を聞いた真冬は柳、圭一の顔を一度見つめた後、再び部屋の扉を開く…。

 

 

 

ギィィッ……

 

真冬「…ほんとに?ほんとに…してないの…?」

 

ほんの十センチばかり開けた扉の隙間から目だけを覗かせ、恐る恐る尋ねる。しかし彼と美紀を見つめる勇気は出ず、真冬は部屋の入り口辺りの床を見つめていた…。

 

 

 

「してないっ!まだしてない!!」

 

部屋の奥…ベッドが置かれているであろう位置から彼の声がした。真冬はそーっと目線を上げ、そちらを見つめる…。そこではやはり、彼がベッドの上で美紀に乗られていて……

 

 

 

真冬「わ…っ…!!やっぱりしてるじゃん!!!」

 

真冬はその光景に耐えられず、またしても目線を逸らす。

 

 

 

「してないって!真冬にとってはこれでもうアウトなのか!?」

 

真冬「だ、だって…!男の子と女の子が同じベッドの上で寝て……!しかもっ…美紀…ブラジャーが見えちゃってる…!は、はずかしくないのっ…?」

 

美紀「うん…別に平気だよ。下着を見られたって、その下を見られたって…触られたって…私は平気。先輩のこと…大好きなんだもん」

 

真冬「あわ…わわっ…!!?」

 

堂々と言い放たれた美紀の言葉を聞き、真冬の顔は益々真っ赤に染まる。彼女は軽いパニック状態に陥ったのか、目線を扉の中から背後に立つ柳、圭一へと移して目を潤ませた。

 

 

 

真冬「やっ、柳さん…!どうすればっ…!?」

 

柳「…………」

 

圭一「狭山…悪いな、頼れるのはお前だけだ」

 

真冬「へ…っ?」

 

次の瞬間に圭一は部屋の扉を勢いよく開くと、真冬の背中をグッと押す。そうして突き飛ばした真冬がそのまま部屋の中へと入ったのを確認すると、圭一は外から扉を押さえつけた。

 

 

 

ドンドンドンッ!!!

 

真冬「ちょっと!開けてよ!!ボクにどうしろっていうの!?」

 

圭一「美紀とアイツがヤバい関係になる前にどうにか止めてくれ!」

 

真冬「っぐ…!無理だよぉ…」

 

圭一「狭山ならやれるっ!!だから頑張れ!言葉ででも、何なら力ずくでも良い!そいつらに過ちを犯させるな!!」

 

 

ドンドンドンッ!!!!

 

部屋の扉は内側から繰り返し叩かれるが、圭一は動じることなくそれを押さえつけていく…。いくら叩いても無駄だと分かったのか、中にいる真冬はやがて大人しくなった。

 

 

 

圭一「…………」

 

柳「圭一君…結構酷いことするね」

 

圭一「…こうでもして止めないと、美紀は無意識の内にアイツとそういう関係になっちまうだろ。そうなっちまった場合、少しばかり気分が悪い…。俺にも…ほんの少しは責任があるからな」

 

 

柳「結果はどうあれ…どのみち狭山君には恨まれそうだね」

 

確かに…その通りだ…。圭一は柳に言われてようやくそれに気が付き、額に冷や汗を流す。静かになった扉の向こうから、真冬のすすり泣くような声が聞こえた気がした…。

 

 

 

 

圭一「狭山…すまない。がんばってくれ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~

 

圭一に突き飛ばされた真冬は部屋の中に閉じ込められ、扉へすがるように身を寄せていた。しかし、扉は外から押さえられていて開く気配がない…。真冬は仕方なく振り返り、ベッドの方へ目線を向ける。

 

 

 

真冬「っ……ぐ……」

 

美紀「真冬…なんで入ってきたの?」

 

目が合った瞬間、美紀が冷たい声で言う。彼女に馬乗りになられ、下に敷かれている彼は気まずそうに目線を横へと逸らしていた。

 

 

 

真冬「ボクは…そのっ……」

 

 

美紀「…まざりたいの?」

 

真冬「まざっ……!!?」

 

思いがけない言葉をかけられ、真冬は再び顔を赤く染める。美紀はそんな彼女を冷めた目で見つめていたかと思うと、自身の下にいる彼を抱きしめるように覆い被さった。

 

 

ギュッ…

 

 

「っ……」

 

美紀「ダメだよ…。先輩は私だけのものだから…真冬にもあげない…。りーさんにも、由紀先輩にも、もちろん胡桃先輩にだって……絶対に渡さない…」

 

ギュ…ゥッ…

 

(うわ……胸、やわらか………)

 

 

美紀は言いながら真冬を睨み、彼に覆い被さりながらその身を抱く…。真っ白な下着に覆われた胸の間…美紀の腕に抱かれた彼の頭はそこに埋まっており、困ったような…それでいてどこか幸せそうな顔をしている。

 

 

 

真冬「み、美紀は…彼の事がそんなに好きだったの…?」

 

美紀「うん…大好きだよ…。先輩の事を見てると…こうして身を寄せていると…胸がドキドキしてたまらないの……」

 

真冬「そう…なんだ………」

 

真冬は色恋沙汰(いろこいざた)(うと)かった為、そんな言葉しか返せない…。女の子というのは、大好きな男の子の前だとこんなに変わるんだ…。一時期、美紀は自分と似ていると思っていたが…やはり彼女と自分は全く違う。自分なら、いくら大好きな人が相手だとしても下着姿など見られたくない…。真冬はそんな事を思った。

 

 

 

美紀「邪魔しないならそこにいてもいいよ…。私と先輩がするの、見てていいからね……」

 

真冬「あ…うぅ………」

 

「あ、あの…本当にやる気?真冬の前で…?」

 

美紀「先輩だって…本当はしたいんですよね?言葉に出さなくたって、私にはバレバレです…。ふふっ、恥ずかしがらなくても大丈夫ですよ…♡」

 

耳元で囁くように告げた後、美紀はニッコリと微笑む…。そんな中、彼は真冬の事を一瞬だけ見つめてため息をついていた。

 

 

 

「やっぱり…今日の美紀はなんかおかしいだろ……」

 

美紀「いいえ…それは先輩の思い過ごしです…。私はいつだって先輩の事が大好きで……大…好きで…………」

 

「……?」

 

突如、美紀の様子がおかしくなっていく…。彼女は上に覆い被さったまま彼の事をじっと見つめているのだが…その息が少しずつ乱れ始めた。

 

 

 

美紀「はぁっ…はぁ…っ………っ…ん…んんっ……!」

 

「おいおい…大丈夫?」

 

美紀「は、はい…。ちょっと、頭がふらふらしちゃって……。ごめんなさい、心配かけちゃいましたね…もう大丈夫です…から……」

 

彼が肩に手を添えると、美紀は自分の顔を右手で押さえながらプルプルと首を振る。その後、彼女は彼に笑顔を見せたのだが、直後に辺りを見回してからハッとした表情を浮かべていき……

 

 

 

美紀「え…っ…?私っ…何をっ……??」

 

「……美紀?」

 

 

美紀(部屋の中で…先輩の上に乗って……って、私、下着のままっ…!?)

 

薄れていた正気を取り戻し、美紀は今の自分がおかれている状況に顔を赤く染める。自分はベッドに横たわる彼の上へ馬乗りになっており、上の服を脱いでしまっていた。また、下着の肩紐もずり落ちていて今にも胸が(こぼ)れそうになっており………

 

 

 

 

美紀「ひ…っ……!きゃぁぁっ!!!!!」

 

自分でも驚くくらいの声で叫び、美紀は彼の上から…そしてベッドの上から降りる。しかし薄暗い部屋の中のどこへ行ったらいいのか分からず、美紀は一先ず隅の方へと駆けた。

 

 

 

美紀「どういうことですかっ!!?なんで…なんで私っ……!!!」

 

部屋の隅でしゃがみこみ、彼に背を向けたまま両腕で胸元を隠す。なんでこんなことになっているのか、自分でも訳がわからない…。

 

 

美紀「せ、先輩っ…私に何かしましたっ!!?」

 

「いや、してないって…。むしろ、美紀がしてこようとしてただろ?」

 

美紀「私がそんな事…っ…!」

 

『そんな事をするハズがない…』彼にそう言おうとする美紀だったが、徐々に思い出していく…。彼をベッドに押し倒した事……彼の耳や首筋にキスした事……大好きだと告白した事……自分から進んで服を脱いでいった事……。

 

 

 

 

美紀「や、やだ…私っ…なんで………」

 

全てを思い出していき、美紀はこれ以上なく真っ赤に顔を染める。彼に告白しただけでなく、もっと凄い事をしようとしてしまった……。それがとてつもなく恥ずかしくて、思わず涙が溢れる。

 

 

 

美紀「…っ…ぐすっ…!っッ…!!!」

 

美紀はベッドの横に落ちていた制服…そしてインナーシャツを手に取り、それを抱えて部屋を飛び出す。先程までの彼女とはまるで違うその雰囲気を目の当たりにした彼、そして真冬はただ呆然としていた。

 

 

 

「どうしたんだろう…?」

 

真冬「さ、さぁ……ボクにもさっぱり……」

 

二人が訳も分からず顔を見合せると、廊下にいた柳、圭一が部屋の中へ訪れる。その瞬間、彼と真冬は同時に同じ事を思った……。

 

 

 

真冬「もしかして、二人は美紀の様子がおかしかった理由を…」

 

「…知ってるのか」

 

 

圭一「…………」

 

柳「そ、それは………とりあえず、ついてきてくれ…。ここまで来たのならもう、直樹君にも全てを話した方が良いだろうからな…」

 

圭一は無言のまま目を逸らしていたが、柳は観念したように口を開いた。彼と真冬は柳の言葉に従い、そのあとをついていく…。柳は彼と真冬、そして美紀の三名へ同時に事情を説明したいらしく、二人と圭一を連れたまま美紀の部屋を訪れた。

 

 

 

コンコンッ…

 

柳「直樹君、ちょっといいかい?」

 

 

…………………。

 

ノックして呼び掛けるが、中から返事はない……。しかし、扉の鍵はかかっていないようだ。柳は仕方なくドアノブに手をかけ、扉を開く。

 

 

 

柳「……入るよ?」

 

念のため一言告げてから少しずつ扉を開き、部屋の中へと入る…。美紀はしっかりと部屋の中にいたが、隅に置かれていた椅子に座ったままボーッとしていた。

 

 

 

美紀「柳さんに圭一さん…それに真冬と…先輩まで…何の用ですか…」

 

柳「あ、あのだね…少し…言っておかないとならないことが……」

 

重苦しい空気の中、柳は全てを打ち明けた…。以前、偶然にも惚れ薬を作り出してしまった事…。そしてその惚れ薬を圭一が誤って美紀へと手渡してしまった事……全てを話した……。

 

 

 

 

柳「……と、言うわけで…何と言うかその……すまない…」

 

圭一「今回は…さすがに俺も謝る…。美紀、すまなかった…」

 

いつからだろう…事情を説明する内、二人は気付けば床へと正座していた。事情が明らかになっていくにつれ、みるみる冷たくなっていく美紀と真冬の目線に耐えきれなかったからかも知れない…。

 

 

 

美紀「……事情は分かりました。なら、私が先輩にあんな事をしたのは全て薬のせい…という事ですね」

 

柳「そ、そういう事になるね………」

 

 

「ってことはつまり、美紀が言ってきた『大好き』って言葉は…」

 

美紀「薬のせいに決まってるじゃないですか…。私、先輩の事なんて大嫌いですもん…」

 

「あ~…それはちょっとキツいな……」

 

全てを知った事で美紀はかなり機嫌を悪くしてしまったらしく、彼に冷たく言い放つ。しかし、彼女が怒りの矛先を向けたのは何も彼だけではなく……

 

 

 

美紀「ついでに言うと、圭一さんの事も見損ないました…。私に…あんな物を飲ませるなんて………」

 

圭一「なっ!?どうしてそうなる!?あれはわざとじゃないって言ったし…それにもう謝っただろう!?」

 

 

真冬「うん…ボクも圭一さんと柳さんの事を見損なった…。二人は真面目な人かと思ってたけど、結局は穂村と同じ…ただの変態」

 

柳「私が…穂村君と同じだとっ…!?」

 

真冬「うん…同じ。もう二度と、ボクに検査とかしないで…」

 

 

 

 

圭一「穂村と……」

 

柳「同じ……」

 

そう言われた事があまりにもショックで、二人はその後の記憶が少しばかり抜け落ちてしまう…。気付いた時には二人揃って柳の部屋へと戻っており、事の発端となった薬品保管用の冷蔵庫をボーッと見つめていた。

 

 

 

 

 

圭一「………穂村と同じ…か…」

 

柳「言わないでくれ……(うつ)になってしまう…」

 

あの穂村と同じレベル…それは二人にとって最大級の侮辱であり、屈辱であった…。あんな人間と同レベルだと思われるのはとても辛く、力すら湧かない…。

 

 

 

圭一「…とりあえず、残ってる惚れ薬は全て処分しておけ…。今回のような事件は…もう二度とごめんだからな…」

 

柳「あぁ……そう…だね」

 

 

ガチャッ……

 

 

柳「……ええっと、もう残ってないな…。直樹君が飲んでしまったヤツが最後の一本…だったか?」

 

圭一「あ?……どうだろうな…覚えてねぇ…。似たようなのが何本かあったような気もするし、無かったような気もするし……」

 

柳「……私も記憶が曖昧だ…」

 

『穂村と同じレベル』…その言葉がひたすらにショックだったからだろう。二人揃って記憶力が低下している…。

 

 

 

圭一(穂村といえば…今日、アイツは静かだな…)

 

柳が冷蔵庫を閉めた後、圭一はそんな事を思う…。

 

そう言えば、柳が美紀達に事情を説明していた際…部屋の外に誰かの気配があったような気がしたが、気のせいだろうか…。『穂村と同じ変態』だと真冬に言われてショックを受け、放心状態で廊下を歩いている途中…穂村とすれ違ったような気がしたが、気のせいだろうか…。

 

 

 

 

圭一(………まぁ、気のせいだろう)

 

すれ違った穂村が見覚えのある茶色い小瓶をいくつか抱えていたような気がしたが…それもきっと気のせいだ…。あまり深く考えないようにしよう…。圭一は疲れきった頭を休ませるために自室へと戻り、夕飯の時間まで眠る事にした…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




続きを匂わす、ちょっと意味深な終わり方になりました。
実のところ、柳さんの作った惚れ薬は数本残っていたのですが…何者かが、それを全て盗み出したようですね…。(言うまでもなく、犯人は奴です)

次回はまた違う話になるかと思いますが、近い内にこの『惚れ薬回』の続きをやっていこうと思います(*´-`)さて、次の犠牲者は誰にしようか…(悪者の笑み)

是非、ご期待下さいませ(*^_^*)
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