軌跡〜ひとりからみんなへ〜   作:チモシー

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この話を更新した時はちょうどクリスマスだったので、ちょっとした特別エピソードを書きました。本編との時系列等はあまり気にせず、あくまでも特別回としてお楽しみ下さい(*^-^)


特別編『どんな時もみんなの元へ』

 

とある日の事…由紀、胡桃、悠里、そして美紀の四人は広間に集まり、雑談を交わしていた。最初は何でもない会話をしていただけだったのだが、ほんの一時だけ広間に顔を出してきた穂村を会話に交ぜた事により、彼女達は二つの事に気が付かされた。一つ目は…今日が12月24日、クリスマスイブであり『明日はクリスマス』だということ。そして、二つ目は……

 

 

 

 

 

由紀「はぁぁ……」

 

 

胡桃「由紀のやつ…さっきからずっとあの調子だな」

 

美紀「まぁ、クリスマスの楽しみを一つ失ったわけですからね…仕方ないかも知れません」

 

悠里「にしても、由紀ちゃんがまだサンタを信じていたなんて…」

 

広間の隅、その窓際で外を眺めながらため息をつく由紀を、三人はただ静かに見守る…。皆、明日がクリスマスだという事すら忘れていたのだが、由紀だけはそれを覚えていた。彼女は未だにサンタクロースの存在を信じており、この日が来るのを楽しみにしていたらしい。しかし、"かれら"が溢れる今の世界ではサンタクロースも大変なため、今年は来ないかも知れない…由紀はそんな考えに至り、一人落ち込んでいるのだ。

 

 

 

 

 

胡桃「どうにか元気付けてやりたい気もするけど、どうしたもんかな…」

 

悠里「胡桃、今日の夜サンタの格好して由紀ちゃんの部屋に忍び込めない?」

 

胡桃「無茶言うなよ。サンタ服なんて持ってないし、そもそもプレゼントを用意してない。それに、部屋に忍び込むのだって簡単じゃないだろ」

 

悠里「まぁ……それもそうね」

 

普段あれだけ元気な由紀が落ち込んでいるのを見ると、こちらまで気分が沈む。どうにかして彼女を元気付けてあげたいと思う三人だったが、その方法が見付からない。

 

 

 

悠里「とりあえず、明日は少しだけ夕食を豪華にしたり、部屋を少しだけ飾ったりして、簡易的でも良いからクリスマスパーティーをしましょう…。みんなで明るくしてれば、由紀ちゃんも元気になるかも…」

 

美紀「そうですね…やっぱり、先輩には笑っていてほしいです」

 

胡桃「…だな」

 

雰囲気だけでもクリスマス感を出していけば、サンタクロースを諦めた由紀の悲しみも少しくらいは癒えるかも知れない。明日のパーティーは可能なだけ豪華に、明るくいこう…。三人がそう決めた時、広間の戸が開いて真冬が入ってきた。

 

 

 

バタンッ

 

 

真冬「みんな揃ってるね…」

 

胡桃「まぁ、まだアイツがいないけどな」

 

悠里「そう言えば、今日は彼が静かね?何してるのかしら?」

 

真冬「彼なら、さっき穂村や圭一さんと外に出掛けていったよ」

 

悠里「ほんと?何しに行ったのかしら…」

 

胡桃「物資集めか?あたしにも声をかけてくれれば良かったのに」

 

彼が出掛けた事を皆に知らせた直後、真冬は気が付く…。由紀が窓の外を眺めたまま、ピクリとも動かない事に。

 

 

 

真冬「…由紀はどうしたの?」

 

美紀「ちょっと…ね」

 

広間に入って来た真冬は三人のそばに寄り、由紀を見つめる。いつもなら皆の輪の中にいる由紀が一人だけ窓際に立ち、ため息をついているその光景は真冬にとっても珍しいものだった。

 

 

 

 

悠里「今年はサンタさんが来ないかもって、落ち込んでるのよ」

 

真冬「サンタさん…?ああ、なるほど…。そういえば、明日はクリスマスだったね」

 

胡桃「……まさかとは思うけど、真冬もサンタを信じてたりしないよな?」

 

真冬「絶対にいない…とは言い切れないよ」

 

そばにあった椅子へ座り、真冬はニッコリと微笑む。彼女はどちらかといえば現在主義なタイプだと思っていたため、胡桃は目を丸くして驚いた。

 

 

 

 

胡桃「お、おう……」

 

真冬「…でも、ボクだってそこまで子供じゃないから、世にいうサンタクロースの正体…的なものには気付いてる。ただ、もしかしたらこの世のどこかには本物のサンタクロースもいるのかも知れないって…そういう話だよ」

 

胡桃「じゃあ、由紀みたく完全に信じきってるってわけじゃないのか?」

 

真冬「うん、そうだね…」

 

答える真冬を前にして、胡桃は安堵したようにため息をつく。由紀はさておき、真冬までそんな事を言い出したら、サンタの真実を知っている自分が汚れた心の持ち主のように錯覚してしまうところだ。

 

 

 

悠里「にしても『どこかに本物がいるかも』なんて…真冬さんって意外とロマンチックな娘なのね♪」

 

真冬「まぁ、いたとしてもボクの所には来ないと思うけど…」

 

美紀「ん?どうして?」

 

真冬「ボクは良い子じゃないからね…。サンタさんっていうのは、良い子の所にしか来ないんでしょ?」

 

美紀の目を見つめたまま、真冬は『ふふっ』と微笑む。冗談で言っているのか、本気で言っているのか、その表情からは今一つ読み取れない。

 

 

 

 

美紀「確かに、前は色々あったかも知れないけど…それでも、私達と出会ってからの真冬は頑張ってると思う。サンタだって、真冬の頑張りはしっかり見てくれてるよ」

 

真冬「…そうかな」

 

悠里「ええ、真冬さんに美紀さん…それに由紀ちゃんと胡桃…そして彼、みんなとっても良い子だもの♪」

 

真冬「悠里は…みんなのママみたいだね」

 

悠里「ふふっ、よく言われるわ」

 

優しい笑みを浮かべ、悠里は真冬の頭を撫でる。彼女のこういうところが母親っぽく、とても温かい。

 

 

 

 

由紀「あっ、真冬ちゃんも来てたんだ。みんな、楽しそうだね?」

 

彼女らが楽しげに話している声が耳に入り、これまで窓際にいた由紀もそこへ歩み寄る。明日はクリスマス…だが、今年ばかりはサンタクロースも休みかも知れない。それに、パーティーだって決して豪華なものにはならないだろう。しかし、それでもいい。皆と一緒に笑って過ごせるなら、どんなクリスマスだって…。

 

 

 

 

と、あれだけクリスマスを…サンタクロースを楽しみにしていた由紀ですら気持ちを切り替え、高望みし過ぎないようにとその日を…クリスマスを迎えたわけなのだが……

 

~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

バタンッ!!

 

由紀「みんなっ!見て見てっ!!プレゼントが来てたよ!!」

 

翌朝、由紀は寝癖も直さぬまま広間へと駆け、既に集まっていた悠里らにそれを見せる。由紀の手にあったのは、リボン等で綺麗にラッピングされたピンク色のカバン…。由紀好みの可愛らしいデザインをしたそのカバンには飾りとして付けられていたリボンの他、『由紀へ』と書かれたカードが付いていた。

 

 

 

美紀「やっぱり、由紀先輩も来てましたか…」

 

由紀「あれっ?みんなの分も来てたんだ~♪」

 

そばに駆け寄り、皆のプレゼントを確認する。見たところ美紀は新しい音楽プレイヤーを、悠里はデジタルカメラを、真冬は真っ赤なマフラーを、そして胡桃は犬のぬいぐるみを貰ったようだ。しかし、嬉しそうな表情を浮かべているのは由紀だけ…他の皆は険しい表情を浮かべている。

 

 

 

由紀「みんな嬉しくないの?サンタさんが来てくれたんだよ?」

 

悠里「えっ…?も、もちろん嬉しいわよ♪」

 

由紀「えへへ~、そうだよね~♪嬉しいよね~♪」

 

由紀の夢を壊さぬよう喜ぶフリをした悠里だが、本当はそんな気分ではない…。それぞれの部屋にプレゼントがあったということは、誰かが忍び込んできたということだからだ。

 

 

 

 

悠里(外から不審者が来た…なんて事はないわよね?だとすれば、考えられるのは彼が皆を喜ばせる為にやってくれたって事かしら?けど、昨日も部屋には鍵をかけて眠ったから、忍び込むなんて無理なはずだし……)

 

 

美紀「…胡桃先輩はどう思います?」

 

胡桃「う~ん……そうだなぁ…。ところでさ、この字、見たことないか?」

 

自分宛に贈られた犬のぬいぐるみ…それに付いていた『胡桃へ』と書かれたカードを手に取り、美紀へ見せる。しかし、美紀は首を傾げるだけだった。

 

 

 

美紀「…どうでしょう。私には普通の字…としか」

 

胡桃「ああ、そっか…ならいい。あたしの勘違いだ」

 

恐らくは、ボールペンか何かで書いたのであろう文字…。胡桃はその筆跡に心当たりがあったのだが、深く考えるのは止めにした。

 

 

 

真冬「ボクにまでくれるなんて、サンタさんって心が広い…」

 

美紀「嬉しそうだね?」

 

真冬「由紀ほどリアクション出来ないけど……うん、嬉しい」

 

真っ赤なマフラーと、それに付けられていた『真冬へ』と書かれたカード…それらを交互に見つめ、真冬は微笑む。仮に本物のサンタがいたとして、自分の所には絶対に来ないと思っていたからだ。サンタの正体が分からぬ以上、悠里と美紀は未だに何ともいえぬ表情だが、由紀は貰ったカバンを背負ってニコニコと笑っている。

 

 

 

 

胡桃(ま、本物のサンタが来た…って事にしておくか)

 

貰ったぬいぐるみを腕に抱きつつ、カードに書かれた文字を見つめる。その筆跡が手掛かりとなり、胡桃はサンタの正体に気付いたようだが、あえて皆には言わない事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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