全てが無事終わったかのように思えますが、まだもう少しだけ続きます。
のんびりお楽しみ下さいm(__)m
彼と真冬、圭一の三人は悠里の部屋の前にいた穂村を捕らえ、そのまま柳の部屋へと向かう。今回、彼が胡桃に襲いかかった事の原因が穂村にあるのか…そして、穂村が今手にしているボトルの中身が例の惚れ薬なのかを確かめるのが目的なのだが、やはり穂村は暴れに暴れた…。
穂村「離せっ!俺は何もしてない!まだ何も出来てないっ!!」
真冬「まだ……ね。はぁ…これ以上面倒な事が起こるよりも先に捕まえられて良かったよ」
バタバタと暴れる穂村を圭一が背後から押さえつけながら連行し、真冬は奴が持っていたボトルをヒョイッと奪って中身を覗く。透明のボトルに半分程入っている液体はただの水にしか見えないが、柳に見せれば全て明らかになるだろう。
三人は穂村を連行して柳の部屋へと戻るなり、すぐにそのボトルを柳へと手渡してこれが例の惚れ薬かどうかをチェックしてもらった。
穂村「た、ただの水だよ!!怪しい物なんかじゃねぇって!」
圭一「あれが中身はともかく、お前自身はかなり怪しいぞ」
穂村は三人に捕まった時から額に汗を溢れさせ、目をキョロキョロと落ち着きなく泳がせている…。どう見ても怪しい。
「で、あのボトルの中身は?」
柳「ああ、やはり惚れ薬だったよ。思っていた通り…だね」
ボトルの中身を調べ終えた柳は苦笑いしながら椅子を引っ張り、床に膝をつけた状態で待機させていた穂村の真正面へと座る。そして穂村が持っていたそのボトルの中身を右手でシャカシャカと振りながら、また苦い表情を浮かべた。
柳「この薬はこんなボトルではなくて茶色の小瓶に入れておいたハズなんだが…わざわざ入れ替えたのかい?」
真冬「たぶん、柳さんに見られても怪しまれないようにと思って入れ替えたんでしょ…。こういう普通のペットボトルなら怪しまれずに持ち歩けるし、目当ての娘に『ただの水だ~』とか言って飲ませる事も出来る…」
穂村「…………」
穂村は何も言わないで黙っていたが、柳と真冬の責めるような視線を受けた途端にまた冷や汗が吹き出ていた。その態度から、真冬の言っている事が図星なのだと一目で分かる。
柳「…やれやれ。あまり感心しないな」
穂村「感心してくれなくても良いんで、とりあえず一旦帰してくれ…。俺にはやる事が…やらなきゃならない事が……」
圭一に背後から見張られていなければ、穂村はすぐにでも立ち上がってそのまま逃げ出そうとしただろう…。それくらいの覇気がヒシヒシと伝わってきた。
真冬「コイツ……っ………まぁいい。まずは色々と話をしよう。ボクは胡桃を呼んでくるから、みんなはこのバカを見張っておいて。ええっと……美紀も呼んだ方が良いかな?」
柳「んん、そうだね。彼女も少し誤解している点があると思うから、早い内にそれを解いておいた方が良いだろう」
彼が胡桃を襲っている際にその現場を目撃した美紀は今回の事情を知らない為、ただ彼と胡桃がそういう関係にあったのだと誤解しているに違いない。真冬はその誤解を解く為に美紀と胡桃を呼び、再び柳達の前へと戻ると、すぐに細かな事情を美紀へと説明した。
真冬「…と言うわけで、今回の事は全部穂村のせい。美紀は何か誤解をしちゃってるようだけど、それもこれも全ては穂村のせいなの。
穂村「俺は…そんなの渡してねぇよ…」
真冬「またそんな嘘を…」
胡桃「いや、確かに渡されてないぜ」
…なら、胡桃が彼に飲ませてしまった惚れ薬はどこからやって来たのだろう。真実を明らかにするべく話を辿っていく内、一同はある事を知る。どうやら、胡桃が彼に飲ませた水(惚れ薬)は悠里から貰った物らしい。
柳「…なるほど、大体分かったよ。たぶん、穂村君は若狭君に飲んでもらおうと思って惚れ薬を渡したんだ。『ただの水だ』…とか言ってね。しかし若狭君はそれを一口も飲まぬまま恵飛須沢君に渡してしまい、恵飛須沢君はというとそのまま彼の看病に………結果、彼が惚れ薬を飲んでしまったんだ」
あくまでも憶測でしか無かったが、柳はそれが正解なのだとすぐに確信した。目の前にいる穂村がまた、大量の冷や汗をかきながら目を泳がせたからだ。
美紀「当たり…みたいですね。じゃあ私が見た時の先輩は穂村さんが隠し持っていた惚れ薬を誤って飲んでしまっていて、それで胡桃先輩のことを……」
「ん、んん…そういうこと…」
胡桃「えっと、誤解だって分かってくれたか?」
美紀「ええ、なんか…ホッとしました。二人のあんなところを見ちゃった時、かなり焦ったので…。明日からどんな顔をして接すれば良いんだろうとか、色々考えちゃってましたよ」
もしも二人が本当に付き合っていたとして…あんな関係にあったとして…それを自分だけが知ってしまったというのはかなり気まずい。美紀はつい先程までかなり頭を悩ませていたようだが、全てを知って気持ちが楽になったようだ。
穂村「あんなところ…ねぇ…。美紀は何を見たんだ?そいつと胡桃がイチャイチャしちゃってるところでも見ちゃったのか?」
美紀の発言を聞いた穂村はニヤニヤと微笑み、彼と胡桃を交互に見つめる。その瞬間、彼は青白く染まった顔を気まずそうに俯け、胡桃は真っ赤な顔でギリッと穂村を睨みつけた。
胡桃「イチャ…!?イチャイチャなんてしてないっ!!!」
穂村「あらら、顔真っ赤にしちゃって………こりゃ結構な事をやっちまったみたいだな」
胡桃の顔はみるみる赤く染まり、もう耳の先まで真っ赤だ…。穂村はそれを見てまた楽しげに笑ったが、真冬がその横に立って冷たい視線を浴びせていく。
真冬「穂村、これ以上おかしな事を言うと本当に……」
穂村「けどよ、胡桃だって楽しんでたんじゃないのか?薬でおかしくなってたとはいえ、そいつに迫られて大声の一つもあげなかったんだろ?」
胡桃「それは…その……」
確かに大声は出さなかったし、抵抗も長くは続けなかった…。
彼の事を本気で拒むつもりなら最後まで抵抗を続けたり、大声を発して誰かを呼ぶことも出来たが、あの時の胡桃はそうしなかった…。
胡桃「あ、あんたには関係ないだろっ!!真冬っ!もうそいつをどこかに…外にでも放り投げておいてくれっ!!」
真冬「いえっさー」
真っ赤な顔をした胡桃が激怒して指示を出すと真冬は穂村の腕を掴み、立ち上がらせようとする。しかし穂村はすぐに立ち上がらず、膝立ちのまま身を捻って抵抗した。
穂村「ちょっ!?な、なんだよ!?痛いとこ突かれて怒ったのか!?どうせ
胡桃「なっ!!?ちょ…チョロミだとっ…!?ふざけんなっ!あたしはチョロイ女なんかじゃねぇっ!!」
このまま外に放り出されては堪らない…。
穂村は真冬の手を振り払って抵抗しつつ、胡桃への口撃を放つ。
穂村の言葉を聞いた胡桃は元々赤かった顔を更に赤く染めて激怒し、美紀と真冬は慌て、柳と圭一は呆れたようにため息をつき、彼はひたすら気まずそうに頭を抱えていた…。
胡桃「真冬っ!もういいっ!あたしがやる!!」
穂村「や、やる…?何をだよっ!?まさか……殺すっていう意味じゃないだろうな!!?」
美紀「胡桃先輩っ!お、落ち着いてっ!!」
真冬「穂村はボクと圭一さんが外に放り出しておくから安心して…」
穂村「はなっ…離せっ!!離せぇっ!!」
激怒した胡桃を美紀が押さえている間に真冬、圭一が穂村を外へと連行していく…。穂村が喚く声は少しの間聞こえ続けたが、距離が遠くなるにつれてそれは段々と小さくなっていった。
柳「…さて、とりあえずは一段落かな?」
美紀「そ、そうですね…」
胡桃もようやく落ち着いてきたようだし、今日のところはもう休みたい…。そう考えていた美紀の気持ちを察したのか、柳はすぐに部屋の扉を開けた。
柳「もう夜も遅いし、君達は部屋に戻って休むといい」
胡桃「………そうする」
美紀「では、お休みなさい」
「じゃあ…また…」
柳「ああ、また明日」
胡桃、美紀、彼の三人を見送った後、柳は部屋の奥へと戻って椅子に座りため息を放つ…。すると少しして、真冬と圭一がそこへと戻ってきた。穂村の姿は無い…。
柳「…ええっと…その……まさかとは思うけど、本当に外へ?」
真冬「それも考えたけど、今回は庭に放り出すだけで勘弁してあげる事にした…。感染者が入ってくる事は無いからその辺は大丈夫だと思うけど、今日一日は寒空の下で眠ってもらう…」
柳「なら良かった。狭山君の事だから、本気で外へ放り投げたかと思ったよ」
この屋敷は大きな塀や門に守られているので、庭に出されただけなら感染者に襲われる事も無いだろう。柳はホッと一安心したが、真冬と圭一の表情は何やら雲っている。
柳「どうかしたのかい?」
圭一「その…あの馬鹿、何か気になる事を呟いていてな。『あと少しで効果が出てたのに、コイツらに捕まったせいで側にいれなかった』…とか何とか」
柳「…何の事だ?」
圭一「俺達も最初は訳が分からなかったが、穂村のヤツを外に放り出した後で気付いた…。さっきあの野郎から取り上げたボトル、中途半端に中身が減っていただろ?」
柳は穂村から取り上げたあのボトルをすぐに確認し、そして静かに頷く…。中身の惚れ薬はボトルに半分くらいしか入っておらず、まるで"誰かが一度口を付けた後"のようにも思えた。
圭一「まぁ、ただの勘違いなら良い…。元々それくらいしか惚れ薬を注がなかったのかも知れないからな」
真冬「けど、そうじゃなかったら…?ボクらに捕まったあの時、穂村は既にそれを悠里に飲ませていたとしたら?」
柳「………」
三人の間に沈黙が訪れ、柳は思考を巡らせていく…。
聞いた話だと穂村は悠里の部屋の前で捕まったそうだが、その際、穂村は何かを待っているかのようにソワソワとしていたらしい…。もしかすると穂村はその直前、悠里に惚れ薬を飲ませる事自体には成功したものの、そのまま部屋に入られてしまったのではないだろうか…。そして、効果が現れる頃合いを部屋の前で待っている時、真冬達に捕まってしまったのではないか…。
柳「何だろう…嫌な予感がするね」
真冬「うん…。あと、これはさっき美紀から聞いたんだけど、今日は由紀が悠里の部屋に遊びに行ってるらしい…」
圭一「………」
柳「………」
三人の間に再び沈黙が訪れ、柳の額に嫌な汗が浮かんでいく…。
穂村から惚れ薬を飲まされた後、悠里は部屋に戻った…。その時、部屋の中に誰もいなかったのならそれが一番良い。それなら数分の時が経って惚れ薬の効果が出てきても悠里は少し違和感を覚えるだけで、誰かを襲ったりはしないのだから…。しかし、もしもそこに由紀がいたら……。
圭一「一応聞いておきたいんだが、あの薬というのは同性相手にも効果はあるのか?」
柳「…ある……と思う。いやぁ、参ったね…」
真冬「参ったね…じゃないよ。ほら、早く確認に行こう」
かなり長いこと穂村に説教していたので、もしも悠里が惚れ薬を飲んでおり、そこに由紀がいたとすれば多分手遅れだ…。それでも一応…という事で、三人は悠里の部屋へと向かう。そうして柳の部屋のある三階から悠里達の部屋のある二階へと下りた時、廊下の奥から声が聞こえた…。由紀と悠里の声だ。
悠里「本当に…ごめんね…。私、あんな事するつもりじゃなかったの…。何故か突然、由紀ちゃんの事がすごくすごく大切に思えて…それで………」
由紀「あ、あはは……ううんっ!別に平気だよ!ほ、ほらっ!どっかの国だと挨拶代わりにチューしたりするって聞いた事あるしっ!」
悠里「でも……私はもっと酷いことを……」
由紀「…えーと…その……友情チェック…みたいな…?わたしとりーさんの強いキズナを再確認っ!!みたいな…そんな感じで………え…えへへ……」
二人は悠里の部屋の前で話していたが、どうにも様子がおかしい…。
悠里はひたすら顔を俯けたまま由紀に謝り続けているし、由紀もどこか気まずそうに苦笑いしている。しかも、二人の着ている寝間着や髪の毛がどこか乱れているようにも見えるのだが……
柳「………」
廊下の片隅からその様子を覗き見て、柳は苦い笑みを浮かべる…。
悪い予感は的中した…。穂村は最後の最後で悠里にあの惚れ薬を飲ませており、そしてその効果はたまたま遊びに来ていた由紀へと向けられたのだ。
悠里「本当にごめんね……私、どうすれば……」
由紀「だ、大丈夫だよ…?わたしも…りーさんの事大好きだから…。あっ!そうだっ!!これはもうっ、りーさんのお嫁さんになるしかないね!!…いや、りーさんがわたしのお嫁さんになるのかな…?そ、その辺はよく分からないけど……」
由紀は悠里との間に流れる重苦しい空気をどうにかしようと明るく振る舞っているようだが、それがかえって痛々しい…。ここで悠里も冗談に乗ってくれれば多少はマシになるのだろうが、彼女はずっと顔を俯けている…。
悠里「私、もうお嫁さんになんかなれない……」
由紀「そんな事ないよっ!!りーさんは凄く綺麗で優しいから、みんなにモテモテだよっ!それに万が一の時はわたしがお嫁さんにもらってあげるっ!!だから元気出して、ね?」
悠里「………うん、ありがとうね…」
悠里は少しだけ明るさを取り戻したようにニコッと微笑んだ後にノソノソと部屋へ戻り、由紀はそんな彼女を見送ってから自分の部屋へと戻っていく…。そして廊下の上に誰もいなくなった時、圭一が一つ提案をした。
圭一「…見なかった事にしよう」
それが一番良い……と思う。
二人の間に何があったのかは知らない(まぁ、大体の察しは付く)が、由紀はそこまで気にしていないようだし、悠里も最後は笑っていた。だからここで本当の事を…惚れ薬の事を二人に明かすより、もう見てみぬフリをした方が良いと思った。……というか、そうするのが一番楽だった…。
柳「そう…だね…。うん、そうしよう…」
真冬「ボ、ボク…穂村の部屋を探ってくる…。他にも惚れ薬が隠してあったら大変だし…」
柳「ああ、頼んだよ…」
三人はその場で解散し、今日という日を終えていく…。
ここ数日の間で最も忙しく、大変な一日になったような気がした…。
みんなが彼と胡桃ちゃんの件や、黒幕である穂村を相手に説教していた時、りーさんと由紀ちゃんの間には凄い事が起きていたようですね…。りーさんが由紀ちゃんに何をしたのかは言えませんが……たぶんR-18な事をしたのでしょうな(^-^;)
りーさんに色々されても笑顔で接してくれる由紀ちゃんはやはり天使です。
二人がいつまでも仲良しでいられますように…。