軌跡〜ひとりからみんなへ〜   作:チモシー

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今回も前回の投稿から時間が経っているので一応おさらいついでのキャラクター紹介を…


神崎圭一(かんざきけいいち)…この外伝の主人公。超人的な力を持ってますが、銃で頭を撃たれたら普通に死んでしまうのでやはり銃は反則です。


狭山真冬(さやままふゆ)…圭一の仲間、そしてボクっ娘。


穂村竜也(ほむらたつや)…同じく、圭一の仲間。見た目ヤンキーな人で、圭一達以外にはすぐに怒ります。



柳恭介(やなぎきょうすけ)…自身が改造したワクチンで圭一達三人を超人さんに変えた張本人。
今回は少しだけ出番あり。



三話『慣れ始めた世界で』

 

 

初仕事を特に何もせずに終えた神崎圭一…

彼は走る車の中、無言のままでいた。

 

そして、奪った車を穂村が走らせて十数分ほど経った頃、ようやく柳の屋敷が見えてくる。

 

 

 

圭一(改めて外から見ると…随分と大きい、まさに豪邸だな。なにしたらここまで稼げるんだか…)

 

穂村「ええっと、ゲートの鍵は……あったあった。ポチっとな」ピッ

 

門の前で車を停め、ポケットから取り出したスイッチを穂村が押し

門が十分に開いたのを見計らってから車を動かして中に入る。

車が屋敷の庭に入ってから穂村は振り返り、再びスイッチを押してその門を閉めた。

 

そして、車を屋敷のすぐ隣に隣接されたガレージに停め、全員で外に降りる。

 

 

 

バタン!

 

圭一「ガレージまであるんだな…」

 

穂村「車はまだ今日奪ったのを含めても3台しかないけどね。前に俺が拾ったのが1台、それと柳さんが最初から持ってたのが1台だね。…もう1台くらいは停められるスペースがあるけど、車ばかりそんなにいらねぇよな?」

 

ガレージに停められていた車は3台。

 

1台は先程まで彼らが乗っていたミニバン…

もう1台は所々へこみ傷のある汚いワゴン…

そしてもう1台…新品同様にピカピカのどうみても高級であろう外車…

圭一はその外車を指さして穂村に言った。

 

 

 

圭一「柳の車って…これだろ?」

 

穂村「せーかい!よく分かったね?」

 

圭一(そりゃ…分かるだろ…)

 

狭山「……荷物、運ぶの手伝って」

 

乗ってきた車に積んであった段ボールを運び出しながら狭山が二人に言った。

圭一はすぐに残った段ボールを持ち、狭山の後に続いて歩く。

 

穂村はというと…残った段ボールを圭一が取った事でもうやることは無く、上着のポケットに両手を入れ、スタスタと小走りして一番早く家の中に入っていった。

 

 

穂村「お先~♪」

 

狭山「………」

 

圭一「いつもあんな感じか?」

 

狭山「……うん。もう慣れた…」

 

圭一「アイツ…戦い以外でなんか出来るか?」

 

狭山「…なんにも」

 

圭一「あぁ…そう」

 

狭山は苦労していたんだろうな…

圭一はふと、そんな事を思う。

そのまま圭一は狭山と共に家の中に入り、その荷物の置き場を彼女に尋ねた。

 

 

圭一「これ、どこに運ぶんだ?」

 

狭山「…後でボクと柳さんとで仕分けするから、もう置いといていいよ。」

 

狭山はそう言って自ら荷物を壁に寄せて置く…

圭一もその場所の横に荷物を置くと、スタスタと歩き出す狭山の後に続いた。

 

 

 

圭一「これから何をする?」

 

狭山「…柳さんに報告をする。」

 

圭一「報告?」

 

狭山「…うん、出会った生存者の数…その武装…最終的にボクらが殺した人数と奪った物資の大まかな内容…それを報告する」

 

圭一「面倒だな…」

 

狭山「…そうでもないよ。細かくじゃなくて、簡単にで良いし…。なんなら特に特別な事がなく、気がのらない時はしなくてもいいって言ってた…」

 

狭山「…でも今日は圭一さんが仲間になって最初の仕事だったし、しておいた方が良いと思って」

 

圭一「へぇ、その報告ってのがどんなものか、少し気になるな…。ついていっても構わないか?」

 

狭山「…うん。」

 

狭山は圭一を連れて階段を上がっていき、2階の奥にある部屋の扉を開ける。

その中は広めの洋風の部屋で…その隅では柳が椅子に座り、パソコンに向けて何かを打ち込んでいたところだった。

 

 

 

狭山「…もどった」

 

柳「あぁ…お帰り。」

 

席から離れ、柳は部屋の中央にあるテーブルを挟むように置かれた二つのソファーに二人を招く。

そのソファーは大きく横長で、一つのソファーに四人は座れそうだった。

 

 

柳「とりあえずは座ってくれ。」

 

二人はそれに従い同じソファーに座る。

柳は二人の正面のソファーに座り、圭一を見て口を開いた。

 

 

 

柳「どうだった?久しぶりの外は…」

 

圭一「そうだな…ゾンビがいて、生存者はバールを振り回してた。ずいぶんと危ない世界だな…」

 

 

柳「はははっ!そうかそうか…」

 

圭一「あのパソコンで何を?」

 

柳が先ほどまで使っていたコンピュータを指さし、圭一は尋ねる。

 

 

 

柳「あれか?ちょっとしたデータをまとめていたんだ。君に使った薬とかな…」

 

圭一「薬の…」

 

柳「あぁ、今日は君が起きた記念すべき日だし…色々とまとめておきたいんだよ。」

 

柳「それで…どうだった?力は実感出来たかな?」

 

圭一「まぁ、狭山達を見て凄い物だとは分かったけど…俺は今回何もしてないから、まだ自分の力はよく分からない。」

 

柳「なるほど…今回は狭山君と穂村君だけで終わらせたのか?」

 

狭山「…うん。ほとんど穂村がやった…」

 

柳「そうか……まぁ、とりあえず報告を頼めるかい?」

 

 

 

柳がそう呟くと、狭山は今回の仕事をまとめて報告した。

 

狭山「…向かったのはここから約6kmの地点にある工場…道中、圭一さんに力の特性を教える為に感染者を一体だけ処分…」

 

狭山「その後は極力感染者を避けて目的地に向かったから…戦闘は無し。工場に侵入して早々に穂村が一人の生存者を処分…」

 

狭山「その工場にいた生存者はその時点では穂村が仕留めた人だけだったようで、ボクらが物資を漁った後に残りの二人が車に乗って戻って来た…」

 

狭山「穂村がその二人を挑発して戦闘に…、相手二人の武装はナイフとバール」

 

狭山「なんだかんだでボクと穂村でその二人を倒して、車ごと物資を持って帰った。」

 

狭山「…おしまい、ハッピーエンド」

 

圭一(おいおい…最後だけやたらあいまいになったが、これで良いのか?)

 

 

 

柳「…了解。お疲れさま」

 

圭一(あぁ…あれで問題ないのか…)

 

 

柳「まぁ…ようするにいつも通りだったと。」

 

狭山「…そういう事」

 

柳「あぁ、そういえば回収した物資は何かな?」

 

狭山「…食料がほとんど…要するに、いつも通り。」

 

柳「そうか…だろうな」

 

少しだけ残念そうな表情をした柳を見た圭一は不思議に思い、彼に尋ねた。

 

 

 

 

圭一「食料じゃ不満か?なんだ…医療品とか、他の生活用品が欲しいのか?」

 

柳「んん…確かに医療品はほんの少しだけ不足してるな、出来ればある程度確保しておきたい。だが私が何より欲しいのは、君にも話した…あのワクチンだな。」

 

圭一「ワクチン…お前が改造したやつか?」

 

柳「そう、君達に使った薬の元になる物だ。より確実な物にしようにも手持ちが無くてね…君に使ったのが最後のだったんだ」

 

圭一「それはそれは…そのワクチンってのは、そもそもどこにあるんだ?」

 

柳「前のは外に放置されていた車両の中にあるのを狭山君が偶然見つけ出した。」

 

狭山「…既に何本か抜き取られてたから、少ししかなかったけどね」

 

柳「自分の身を守る為の兵士も君達三人で足りるとは思うが…何かあった時の為にいくつかあのワクチンを持っておきたい。それが中々難しいんだけどね…」

 

 

 

圭一「まぁ…、俺は自分が生き延びられればそれで良い。」

 

狭山「…でも、ボクたちの手伝いはしてよ?」

 

圭一「あぁ、分かってる。次はもう少しちゃんとやるよ…」

 

狭山「…今回は仕方ない。穂村が一人で終わらせたのが悪いから」

 

柳「なに…次のターゲットくらいすぐに見つかるさ。そこで活躍してくれれば良い。」

 

圭一「実際、この街にはどのくらいの生存者がいるんだ?というか…この事件はどの規模で発生している?」

 

柳「生存者は決して多くない…だが、悲観する程少なくもない。この街だけでも何人かの生存者を狭山君は見かけているし、その生存者達による集団もいくつか確認している」

 

柳「そしてこの事件の規模だが…日本中なのは間違いないだろうな。問題は世界レベルなのかどうかだが…まぁ十中八九そうだろうね」

 

圭一「そうか…まぁ、辺りに生存者がそれなりにいるってだけマシか。」

 

狭山「…殺せるから?」

 

圭一「人を殺人狂みたくいうな。」

 

狭山「…でも、圭一さんは殺人の罪を犯した指名手配犯…」

 

圭一「それはそうだけど、だからと言って人殺しが大好きな訳じゃない」

 

 

狭山「…そうなの?」

 

圭一「ムカつく奴を殺すのが好きなだけだ。だから、さすがに赤ん坊とかは殺せない」

 

狭山「…女の人は?」

 

圭一「相手によるが、理由があれば殺れる」

 

 

 

狭山「…子供は?」

 

圭一「その子供の態度次第だな。生意気な奴なら殺れる」

 

 

狭山「…圭一さん、わりとクレイジー」

 

圭一「お前達もだろ…」

 

 

狭山「……」

 

柳「ともかく今日は休むといい。…明日からは好きに外出してかまわないから、新しい世界に体を慣らしながらじっくり楽しむと良い。」

 

二人の掛け合いを見た後で柳は圭一にそう告げる。

圭一はそれに頷くと席を立ち、廊下に出てから自分用に与えられた部屋に行ってそこで休んだ。

 

大きなベッドに横たわり、天井を見つめて彼は考える。

 

 

圭一(かなり怪しい奴らだが、しばらくはアイツらと行動した方が良いだろうな。この屋敷も普通に居心地が良さそうだし…おまけに普通じゃない力も与えられた。ある意味、ラッキーだったのかもな。普通の生存者達は…かなりキツい毎日を送っているハズ…)

 

圭一(そいつらと比べたら、安全快適な住み家…それとゾンビに噛まれても感染の心配の無い体ってのはかなり助かる。まぁ…のんびりと暮らすか)

 

 

 

 

 

次の日から圭一は狭山や穂村と…、そして時には一人で屋敷の外にくり出し、自分の力を体に慣らしながら外の世界の現状を知っていった。

こうして変わり果てた世界で感染者達を相手に戦い…、圭一は自身の力の真価を実感していく。

 

そして、数週間の時が経ち…

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ…ふざけやがって!たかだか三人相手にどうしてここまで手こずってるんだよっ!!」

 

とある場所にあるホームセンターの店内…空っぽの商品棚の陰に身を潜めているその男は、そばで自分と同じように息を潜めている三人の仲間達に言った。

リーダー格と思われる彼のその言葉をきっかけに、仲間達は次々と震えた声を漏らす。

 

「おかしい…!アイツら、絶対に人間じゃないだろ!!」

 

「ただでさえ死人が歩きまわるような異常な世界になったってのに…また別の化け物かよ!?」

 

「でも見た目は普通の人間だし、言葉も話してたぞ…ただの人間じゃないのか!?」

 

「バカ言え!!ただの人間が…たった三人で、それも大した武器も使わずに…どうやって俺達をここまで追いつめるんだよ!?」

 

彼等の内の一人が商品棚の陰からそっと顔を出し、辺りを見回す。

そばでは仲間の死体が転がり、少し遠くからは他の仲間の悲鳴と大きな物音が鳴り響いていた。

彼等はそれなりに大きな生存者の集団で、メンバー数は十四人…しかもほぼ全員が常にナイフやバットなどの様々な武器で武装、そして警戒していたにも関わらず、既に半数以上がその"三人"に殺されていた。

 

 

 

「仕方ない…奴らに気づかれる前に外へ逃げるぞ!」

 

リーダーの男は一時この拠点を捨て、あの"三人"から逃げる為に外へと出る決意をする。

だが、外は外で感染者がうろついている…その事実が仲間達の決断を遅らせた。

 

 

 

「外って…それだと今度はゾンビ共に襲われるじゃないか…」

 

「アイツらは動きも遅いしその気になれば殺す事も出来る!だけどあの三人は違うっ!俺達じゃ相手にも…」

 

圭一「ああ…、相手にもならない。」

 

男が言いきるのを待たずに、誰かが彼等に向かって声をかけてきた…

全員がそれに驚き一斉に振り向くと、そこに立っていたのは彼等が恐れている三人の内の一人…神崎圭一だった

 

 

 

「くっ!?」 

 

圭一「…」

 

彼等の背後…3mほど先にたたずむ圭一は武器を構える彼等を気にもせず、ゆっくりとその場にいた全員の顔を見回した。

 

 

圭一「…四人だけか、最初は十人以上いたのにずいぶんと減ったな。」

 

 

「お前らのせいでな…。せっかく化け物相手に立てこもれる良い場所を見つけたのに、全部台無しだ…!」

 

圭一「オイ、ふざけるなよ。元はといえばお前達が悪いんだ…俺達はただ探し物をしていただけなのに、『持ち物をよこせ』とか言うから…」

 

圭一「たかが三人の生存者…大した物なんて持っていないと分かっていただろうに欲を出したな。おかげで穂村が大激怒してる」

 

男達は愚痴をこぼす圭一を無視し、武器を構えて四人で囲いこむ。

すっかり囲まれた圭一はため息をつき、呆れたような表情をして呟いた

 

 

圭一「まったく…どいつもこいつも、人の話を聞きやしない」

 

「いくらなんでも一人じゃ四人を相手には出来ないだろう…。こうなったら逃げるのは無しだ。お前を殺して、そしてその後で残ってる二人も殺す。真っ向から戦えばほぼ確実にこっちが殺されるだろうが…、物陰に隠れて隙をうかがい、背後から頭を突き刺せばさすがにどうしようも出来ないはずだ」

 

圭一「あの二人にそんな手は通用しないと思うがな。物陰に隠れただけじゃ穂村はともかく、狭山には確実にバレるだろうし…」

 

 

呟く圭一の背後に立つ二人の男、その二人はそれぞれがナイフを手に圭一の元へと駆け寄り、その首を背後から切り裂こうとした。

 

圭一はすかさず振り返ると迫る二人のナイフを持ったその手だけを掴み、以前穂村がやったように力任せに手を捻り、二人の手を折る…

「ぐっ!?」という呻き声とともに男達は持っていたナイフを離し、二本のナイフが宙を舞う…

圭一はすぐに男達の手から自分の手を離すと宙を舞うその二本のナイフそれぞれを両手に収め、それぞれの持ち主の脳天へと突き刺した。

 

 

圭一「残念…、背後から襲われて簡単に殺されるような人間じゃないんだよ。」

 

そう言って圭一がナイフから手を離すと、二人の男は頭にナイフを刺したままドサドサッと音をたてて倒れ、二度と起き上がらなくなった。

四人の内の二人が瞬く間に殺され、残ったのはリーダーと彼の仲間が一人だけ…

 

 

 

圭一「四人同時にかかれば少しはマシだったのに…、これであと二人だな」

 

「…くっ!?」

 

ニヤリと笑って呟く圭一…そして彼の足元に転がる仲間の姿を見て、残った二人はただ恐怖する事しか出来なかった。

 

 

 

それから数分が経った頃…

 

 

 

 

 

 

狭山と穂村がその場に現れ、辺りを見回す。

そこにいたのはいくつもの死体に囲まれながらあくびをする圭一と、床にうずくまりながら呻き声をあげている一人の男だった。

 

 

穂村「おお…圭一さんも中々暴れましたなぁ。もう死んでるのが二、三、四…。四人と、…それは誰?」

 

圭一「この集団の"リーダーだった"男だ。まぁ生き残っているのはもうコイツだけだろうから、リーダーもなにもないが…」

 

圭一「さっき足を折っておいたから自由には動けない。質問があるなら今のうちにしとけ」

 

圭一がそう告げると狭山はその男の前にしゃがみこみ、一つだけ質問をした。

 

 

狭山「…君達はたくさん物資を集めてたみたいだけど、ワクチンとか見つけた事はある?」

 

「ワクチン…?な、なんだそれは…?聞いた事もないぞ…」

 

狭山「外にうろつく感染者達…奴らに噛まれた時にそのウイルスによる症状を軽くする特別な薬みたいなヤツなんだけど、ここに無いかな?」

 

「…以前仲間の何人かを奴らにやられて失ってる、そんなのがあれば使っていた!」

 

狭山「…ようするに、持っていないんだね」

 

男からそれだけを聞いた狭山は立ち上がり、背後に立つ穂村と圭一に振り向いてから言った。

 

 

狭山「…やっぱりここもハズレ。適当に必要な物だけもらって帰ろう」

 

穂村「ま、最初からこんなところには無いって思ってたからいいけどな」

 

圭一「柳も別に無理してまで見つける必要はないと言っていた。物資を漁るついでに見つけられたらラッキーくらいの気持ちでかまわないだろ」

 

穂村「そういう事だね…。さて、この人はどうする?」

 

圭一「足を折られてちゃ何も出来ないし、ここまでされれば戦意も無いだろ。放っておけ…」

 

「ぐっ…うぅ…」

 

痛みに呻く男をその場に放置して三人はホームセンターの隅にまとめて置かれていた物資を漁り、それぞれが持っていたカバンへと詰めた。

 

 

穂村「食糧がほとんど…あとは気持ち程度の医療品か」

 

圭一「ワクチンは本当に持っていなかったみたいだな。さて、あとはここから…」

 

ガシャ…ガシャガシャンッ!!!

突如、ホームセンターの入り口の方から何かが倒れるような音が鳴り響く…

圭一はそっと穂村の顔を覗きこみ、舌打ちをしてから呟いた。

 

 

圭一「ちっ…、だからあんなバリケードくらい飛び越えればいいと言ったんだ。それをどっかのバカがわざわざ壊したから、そこから感染者共が侵入してきたと…」

 

穂村「わ、わりぃ…」

 

狭山「…とりあえず、侵入してきた数が少ないうちにここから出よう。あんまり大勢に侵入されてからだと逃げるのが大変になる」

 

圭一「…だな」

 

入ってきた感染者が少ないうちに駆け出し、急いで入り口を目指す。

すぐに入り口付近にたどり着くと既に十数体の感染者が侵入し、入り口を塞いでいた

三人は感染者達から少しだけ離れた所にたちつくし、それから圭一が穂村の背中を叩く。

 

 

圭一「結構な数だな。ほら、責任を持って処理してこい。」

 

穂村「あはは…、またまた冗談キツいなぁ。まぁ、やってきてもいいけど…少しだけ時間かかるよ、それでもいいの?」

 

圭一「はぁ……それは勘弁だな。狭山、あれ貸してくれ。」

 

狭山「…うん」

 

狭山は圭一に返事を返すと自分のカバンに手を入れ、一本の紐に赤く細い筒の束が繋がっている物を圭一に手渡した。

 

 

圭一「どうも」

 

穂村「おっ、それ爆竹?良いもの持ってるじゃん!」

 

圭一「その貴重で良い物をお前の失態のせいで一つ失うんだがな…」

 

穂村に一つ嫌みを言ってから圭一はライターをポケットから取りだし、その爆竹に火をつける…

火がつけられたその紐が火薬の詰められた筒へと到達する前に、圭一はそれを入り口の向こう…外の方へと勢いよく放り投げた。

投げられたそれが感染者達の頭上を通過してからほんの数秒後、外から『パンパンッ!』という音が継続的に鳴り響き、感染者達はその音を目掛けて歩き出す。

 

 

圭一「…よし、入り口が空いた。急いで出るぞ」

 

穂村「りょーかいっ!」

 

狭山「………」

 

 

 

 

三人は爆竹に夢中になる感染者達を尻目に入り口を抜けてそのホームセンターから脱出し、近くに停めていた車(以前穂村が生存者達から奪った物)へと乗り込んだ。

 

 

穂村「無事生還っ!お疲れ様でした~っ!」

 

運転席へと座った穂村がにやにやしながら後部座席の二人へと言い放つ…

圭一はそれに舌打ちを返し、狭山にいたっては完全な無視をした。

 

 

穂村「二人ともあんまり怒んなよ。確かに俺のせいで奴らが侵入してきた訳だけどさ…あのくらいの数じゃそこまで危なくもないでしょ?」

 

圭一「いいから…とっとと車をだせ」

 

穂村「…へいへい」

 

不機嫌な圭一の態度に穂村は渋々車のエンジンをかけ、ゆっくりと発進する

移動中も無言の三人によって作られた険悪なムードの車内…穂村は運転しながらボソッと心の声を呟いた。

 

 

 

穂村「前は不機嫌になるのが狭山だけだったからまだ良かったけど、たった一人でもそれが増えたとなるとさすがに少し気まずいな…」

 

穂村(かといって…圭一さん相手じゃ争うのも面倒だしなぁ。あれからたったの数週間で力を完璧に使いこなしてるし…元から何かスポーツでもやってたのか知らないがまず基本的に動きが良い。)

 

穂村(使った薬も俺や狭山とはまた違う改良型とかって柳さんが言ってたし、もしかして俺よりケンカ強いんじゃないか?)

 

穂村(また今度少しだけ勝負してもらおうかな。どのくらい強いのか気になるし…)

 

 

圭一「…おい、車停めろ」

 

穂村「へっ?あ、ああ…了解。」

 

考え事をする穂村に突然圭一は車を停めるように要求し、穂村はそれに従う

停車後すぐに圭一はドアを開けて外に出たので、穂村達もそれに続いた。

 

圭一に言われて車を停めた先…そこにあったのは一つの大きなデパートだった…

 

 

 




今回の物語の後半は圭一さんが目を覚まして数週間の時が流れていますが…これは本編の時期としては学園生活部のみんなと彼が出会って数日が経った頃となっています。


三話目にしてすっかり月一投稿になっていたこの外伝ですが、今日中にもう一本投稿する予定です!
その話…四話目でこの外伝は一つの区切りをむかえますが、終わる訳ではありません…( ・∇・)

のんびりとやっていきます(ノ´∀`*)
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