この外伝の制作当初、狭山真冬ちゃんは男の人…それもおじさんの予定でした(笑)
けど書いている途中でこの外伝が男だらけでむさ苦しくなっている事に気が付き、慌てて性別を変更…、ついでに性格等もおじさん時代から大幅に変更されました。
おじさん時代は外伝メンバーの中でも最年長で、やかましい性格でしたが…
それを大幅変更し、生まれたのはメンバー内最年少の無口なボクっ娘…
女の子に変えた事によっていくつかの面白そうな展開も思いつきましたし、おじさんを狭山真冬という一人の少女に変えて本当によかったと心から思います…。
男だらけの作品を書くのはツラかったのです(/o\)
突然車を停めるようにと圭一に言われた穂村…
彼はそれに従い車を停める。
直後に外へと降りた圭一を追い、狭山と穂村も車を降りた…
そこにあったのは一つの大きなデパート、圭一はそれを見つめていた。
圭一「……」
穂村「圭一さん、急にどうしたの?」
狭山「…あっ、ここか」
穂村「は?狭山はここに来たことあんの?」
目の前の大きなデパートを知ったように呟く狭山を見て、穂村は不思議そうに尋ねる。
狭山「…うん、一週間くらい前に圭一さんと二人で来た」
穂村「二人で?俺をおいて?どうしてまた…」
圭一「お前がいるとうるさいし、邪魔だからおいていこうって狭山が言ったんだよ。」
穂村「マジか…わりとショックだぞ」
狭山「………」
穂村「無視ッスか…。まぁもう慣れたからいいけど…、んで、ここには何しに来たの?」
圭一「以前柳に言われた…、『最近急に医療品が手に入りづらくなった。もしかしたら、この辺り一帯の医療品を独占しようとしている奴がいるかも知れない…』ってな。」
穂村「ほぉ…、そう言えばそうだね。薬局や病院に入っても見つからない事が何度かあったっけ…」
圭一「まぁ仮にそんな生存者がいたとして…、いくらなんでもすぐに辺り一帯の医療品全てを完全に独占するのは不可能、どこか見落としがあるはず…。その見落としがここってわけだ」
目の前のデパートを指さし、圭一は穂村に告げる…
穂村はまだ今一つ話の要点が理解できていなかったが、とりあえず話を合わせた。
穂村「はぁ、つまりここにはまだ医療品があったと?」
圭一「ああ、一週間前はな。」
穂村「せっかく見つけたのに回収しなかったの?」
圭一「とりあえず必要な分だけは回収して、いらない分をほんの少しだけ残しておいた。そいつをおびき寄せる為にな…」
穂村「おびき寄せるって…その独占してる奴を?」
圭一「ああ、万が一そいつがここに来たとき、中を調べやすいようにと思って中をうろついてた感染者もわざわざ一ヶ所にまとめて閉じ込めてやったんだ。」
穂村「ふぅ~ん…。でもさ、この一週間の間にそいつがここに来てたとしても、また医療品だけ取ってどっかに消えたでしょ。…あっ!狭山に発信器か何かを作らせて置いておいた医療品に取り付けたとか?」
狭山「…作ってないよ、そんなの」
穂村「むぅ……じゃあを何したの?」
圭一「そいつが来たら仕留められるように罠を仕掛けておいた。最初は生け捕り用の罠にしようかとも思ったが、生け捕り用だと相手が複数人いた場合協力すれば逃げられるような罠しか用意出来なかったからな…」
圭一「逃げられるくらいなら殺してやろうと思ってそれ用の罠に変更した。"あれ"なら相手が5~6人なら普通に仕留められるハズだ」
穂村「ま…、仕留めさえすればとりあえず邪魔者の処分は出来るもんな」
圭一「そういう事…、とりあえず中に入ろう。罠にかかったか奴がいるかどうか確認しないといけないからな。」
穂村「自信はある?」
圭一「どうかな…。まぁ目当ての奴かどうかはともかく、一週間放置しておけば誰かしらかかっているかもな…」
穂村「かかってた人、目当ての奴じゃなかったら完全にとばっちりじゃん。気の毒だね~」
圭一「その時はその時…そいつらの運がなかったって事で」
三人はそのデパートの入り口の前を塞ぐように乗り捨てられた邪魔な車を飛び越え、入り口の前に並んだ。
穂村「この車すげー邪魔なんだけど、誰だよこんなところに乗り捨てた奴は…」
狭山「…それ、中に感染者が入らないように圭一さんがそばにあったのを押したんだよ」
穂村「マジかよ…完全に人外のなせる技じゃん」
圭一「普通の人間でもある程度力があれば車くらいは押せるだろ。それに、人外なのはお前らも同じ…そうだろ?」
穂村「…だな」
狭山「…否定はしない」
そう言ってから三人は入り口から中へと入る
彼等が入ったデパート、その店名は『トータル』と記されていた…
その店内を歩いてまわる中、穂村は仕掛けた罠の事を圭一に尋ねる。
穂村「んでさ、罠ってのはどんなのを仕掛けたの?」
圭一「…人形だ」
穂村「は?人形…?」
圭一「ああ、医療品売り場から少し離れたところにある倉庫の中に子供のような泣き声を出す人形を置いておいた。それを誰かが手に取るか何かして動かすと繋いでいたワイヤーが引っ張られ、それと連動して倉庫の入り口付近に作っておいた手製の檻が開く。」
圭一「檻の中には大量の感染者を閉じ込めておいたから、開放された瞬間にそいつらが倉庫内の逃げ道を塞ぎ、罠にかかった相手を食い殺すって仕組みだ。」
穂村「うわぁ…えげつな~」
圭一「手製の檻が大きくて少し目立つのと、閉じ込められている間も感染者共が呻き声をあげないかが心配だったが、狭山に言われてその檻に布をかけておいたら解決した。布さえかければただの大きな四角い物体だから段ボールを重ねた物とかに見えるし、暗くしておけば中の感染者共も大人しくなる」
穂村「へぇ、アイツら真っ暗にすると大人しくなるの?」
狭山「…ある程度はね、完全に大人しくはならないけど…罠に使う分にはあれで問題ない。もちろん…布をめくったりして覗いたらいつもどおりうるさくウ~ウ~呻くけど」
狭山「…そう言えば人形だけど、一週間も経ってると途中で電池切れちゃったかもね。」
圭一「そうだな…。そうなっていて誰もかかってなかったら仕方ない、他の手を使う…」
今は誰もいないガランとした雰囲気の店をいくつか越えたところで裏手に入り、三人はスタッフ用の通路を進んでいく。
少し進んだところで一つのドアの前に立ち圭一はそれを開けた。
圭一「…ここだな」
穂村「誰かかかってるかなぁ…」
ガチャッ…
ドアを開いた先…
そこに待つのは地面に転がる人形
そして…感染者達の死体だった。
圭一「…!!?」
穂村「あらら?感染者の皆さんぶっ倒れてますけど…これは成功?」
圭一「チッ、失敗したかもな…!」
そう呟いてから圭一は死体の元に駆け寄り、その数を数え始める
圭一「…14、…15、16。16体…俺が閉じ込めたのと同じ数…。増えている死体は無し…、つまり完全に失敗か」
穂村「この狭い空間で16体も使って失敗したの!?はぇ~、そりゃショックだね~!」
穂村はそう言ってから感染者の死体を足で軽く小突き、狭山に尋ねた。
穂村「この数なら相手が数人いても一人くらいは殺せそうだけどね?」
狭山「…待って、確認する」
穂村「確認?」
狭山はその倉庫の隅に置かれたいくつかの段ボールの内、僅かな穴のあいている一つを開き、中からビデオカメラのような物を取り出す。
穂村「なにそれ?」
狭山「…ビデオカメラ。動作検知機能がついてるから何か動きがあった時だけ録画をしておいてくれる」
穂村「すげぇ、さっそく見てみようぜ!」
狭山「…言われなくても見る」
ビデオカメラのモニター部分を開き、三人は録画されている映像の確認をする。
録画は二回に分けられており、まずは一つ目を再生…
それに映っていたのは、一人の少年だった
狭山「……」
穂村「はぁ!?たった一人かよ!?こいつがこの感染者共を!!?」
圭一「よく見ろ、こいつは違う。ギリギリで罠に気づいて回避した。」
モニターの中…危ないところで人形に繋がるワイヤーと、感染者を閉じ込めた檻に気づいたその少年の映像を見て圭一が呟く。
穂村「あ、ほんとだ。…圭一さんの罠、バレバレじゃん!こんなガキにバレるなんてどうなの?」
圭一「自分でもショックだよ…。勘のいいヤツだな」
狭山「…次、再生するね」
カメラのボタンをいじくり、二つ目の映像を再生する狭山。
次の映像に映っていたのは、一人の少女だった…
その少女は先ほどの少年とは違って人形に付けられたワイヤーに気づかず、それを手に取って罠を作動させてしまう。
少女『きゃあぁ~~っ!!』
穂村「うわぁ…、こんな娘がアイツらに食われるのとか観たくないんだけど…。終わったら教えて…」
狭山「…この娘の死体はなかった。だから多分この娘は死なない」
青い顔をして目を背ける穂村に狭山が冷静に指摘する。
だが穂村は今一つそれを信じきれず、目を背け続けた。
穂村「わかんないじゃん!後で仲間がきてその娘の死体だけ回収していったのかも…、ってかもっと音小さくしろよ!!」
圭一「ん?誰か来たな…」
モニターを見て圭一が呟く…
感染者に囲まれた彼女を助けようとしているのか、更に一人の少女と先ほどの少年が倉庫内に現れた。
狭山「…あ、さっきの人だ」
圭一「この女の仲間だったのか…」
映像に見入る狭山と圭一…
穂村はまだ目を背け続ける…
少しすると、その映像に新たに二人の少女が映り込む。
狭山「…ん、また二人増えた。」
圭一「これも仲間か、女達は全員同じ制服…これってどこの制服だ?」
狭山「…これ、確か『巡ヶ丘学院』の制服…。」
圭一「高校か?」
狭山「…うん、高校だね」
穂村「現役女子高生のスプラッター…、そんなの見たくねぇ……」
狭山「…可愛い娘いるよ?」
穂村「…マジ?」
狭山「…まじ」
狭山の発言を受け、穂村はようやくモニターに目を向けた。
モニター内では感染者達と戦う少女達が映っており、三人ともそれに釘付けになっていた。
狭山「………」
穂村「この男はさっきのガキか…。動きは平均点…いや、それよりもちょい上くらいか」
圭一「最初は数に気圧されていたのか動きが鈍かったが、だんだんとマシになってきたな。そこそこの危機は乗り越えてきたんだろう」
穂村「だな…。でもそれより気になんのはこっちのシャベルっ娘だ、最初はシャベルかよってツッコミたくなったが…、なるほど…かなりのもんだな」
圭一「あとの三人はほとんど戦っていない、つまり普段はこの二人が戦闘を担当しているんだろう。」
狭山「…シャベルの娘、本当にすごい。感染者達をほとんど一撃で仕留めてる…」
穂村「このまま二人だけで全部倒しそうだな…。まさか、この数を相手にノーダメージクリアか?」
そんな予想は的中し、少しするとモニター内の彼女達は全ての感染者を無傷で仕留める事に成功していた。
圭一「まさか本当に倒すとは…」
穂村「すげぇな…。誰か一人くらいは噛まれると思ってたけど、多分全員無傷だよな?」
狭山「…うん、無傷。」
圭一「苦労して作った罠が…まさか高校生に破られるなんて、キツい冗談だな。」
穂村「まぁ中々できる奴等だったししゃあないよ。あのシャベルの娘とか、たぶん俺たちがここ最近で会った生存者よりも強いぜ?」
圭一「確かに…俺たちが戦ってきた生存者のほとんどは力にものを言わせてバットを振るような奴等ばかりだったが、こいつ等は違うな…多少の経験を積んでいる」
穂村「脳筋サバイバーとは違うわけだ…」
圭一「だな、若い分…必死に考えて生きてきたんだろう。」
穂村「ふぅ~ん…」
そんな会話を交わしながら、三人はモニターを見つめる。
ちょうどモニター内の少年が彼女達に自らの名前を教えていて…
自己紹介をしあっているところだった。
美紀『直樹美紀です。』
胡桃『恵飛須沢胡桃』
悠里『若狭悠里です。』
由紀『丈槍由紀だよ~』
『あなた達も物資を?』
圭一「ん…、この男は仲間だったわけじゃないみたいだ。」
穂村「初対面なのに命懸けで人助けしたのか、そりゃ感心だな。」
狭山「…全員倉庫から出ていった、ここで映像は終わり」
モニターを閉じ、三人は再び辺りを見回す。
穂村「これをあんな若い子達だけでねぇ…」
圭一「罠は完全に失敗だ。感染者は皆殺しにされたし、恐らく奴等は本来のターゲットじゃない。」
穂村「だろうね、あんな娘達が薬の独占とか考えてたら引くわ」
狭山「…どうする?また違う罠仕掛ける?」
圭一「……いや、やめだ。ターゲットは直接見つけよう。」
穂村「それがいい。罠とかめんどくさいからね…、やっぱ直接仕留めるのが一番だよ。」
圭一「そうだな…。まぁ今日はとりあえず帰るか。」
倉庫の入り口へ向けて圭一は歩き出し、狭山もそれに続く…
だが穂村だけは一人倉庫のまん中にたたずみ、考え事をしていた。
穂村「んん~……」
圭一「おい、何してる…帰るぞ?」
穂村「あっ…、わりぃわりぃ…」
穂村は少し遅れてから圭一達の元に駆け寄り、そのデパートを後にする…
そして帰り道の車内、穂村は自らの思いつきを後部座席の二人へと話した。
穂村「あのさ……」
圭一「なんだ…?」
穂村「さっきのビデオに映ってた奴ら、面白そうじゃない?」
圭一「はぁ?」
穂村「いやね…俺としてはかなり興味をひかれたんだけど、圭一さんはイマイチ?」
圭一「イマイチも何も…結局はただの学生達だ。大した物資も持ってないだろう、大した奴らだとは思うけどな…」
穂村「でしょ!?ちょっと探してみようよ~!最近目標なくてヒマだったしさ~!」
狭山「…目標ならある。医療品の独占を企む奴を見つけて、それから殺す事」
穂村「そんなん本当にいるかすらわからないじゃん!!そんなのよりあの娘達を追おうぜ~!」
圭一「やけにこだわるな?」
狭山「……どうせ可愛い娘達だったからとかそんな理由」
穂村「あはは、それもあるけどさ…でも、それ以上に――」
穂村はニヤリと不気味な笑みを浮かべ…
バックミラー越しに二人の目を見て言った。
穂村「なんかさ…面白そうって思ったんだよ…。アイツ等なら、良い暇潰しになりそうな…そんな気がしてね」
圭一「もう一度言うが…ただの学生だぞ?そんなのを追うのか?」
穂村「ただの学生だからだよ。今までやたら武装したおっさんとか狂った人間とかは見てきたけど、アイツ等はまるで今も普通の世界にいるみたいな"学生達"だった…。それでいてやる時はちゃんとやれる適応力も備えてる…、俺は興味津々だね。」
圭一「…狭山はどう思う?アイツ等、追ってみたいか?」
狭山「……たしかに、同い年くらいの娘を見たのは初めてだし…少し会ってみたい。」
圭一「…そうか、お前までそういうなら…俺は構わない。」
穂村「マジっすか!?じゃあ探そう探そう!!明日辺りから探そう!!」
許可が出た事に穂村は喜び、車のハンドルをパシパシと叩く。
圭一「探すのは構わないが、俺達が追ってる内に感染者にでも殺られて、勝手に死んでるかもしれないぞ?」
穂村「あ~大丈夫!アイツ等はそんな簡単には死なない…そんな気がする!」
圭一「…そうかい。で、見つけたらどうする?」
狭山「ボクも…それが気になってた…」
二人に尋ねられ、穂村は頭を悩ませる…
彼は少しだけ無言で考えてから、二人の質問に答えた。
穂村「まぁ……、少し相手してみて……」
圭一「………」
狭山「………」
穂村「たぶん……最終的には…」
その台詞の先は言わずとも、圭一と狭山は理解する…
穂村の思考は理解していたから。
圭一「ただの学生達を相手にするのは…さすがに少し気が引けるな…」
穂村「何事も慣れだよ。平気平気!」
狭山「…それは気が進まない」
目線を下に向けて狭山が呟く…
こんな彼女を見たのは圭一・穂村ともに初めてだった。
穂村「珍しいな?なに、同世代の娘は襲いたくない?」
狭山「…違う。ただただめんどくさい…やる気がでない。」
穂村「一瞬だけ…狭山に人間味を感じかけたけど、やっぱ勘違いだったな」
圭一「まぁやる気が出ないのは俺も同じだ、軽い暇潰し感覚で気楽にやろう。」
狭山「………うん」
穂村「名前と顔の分かってる連中を追うのは初めての事だからな…、面白そうだ!」
こうして三人は家に戻り、翌日から新たな目標を胸に外へと向かう…
新しいターゲットは五人。
若狭悠里・恵飛須沢胡桃・直樹美紀・丈槍由紀・そして一人の少年だった…