前回は由紀ちゃん達が外伝メンバーと共に体育祭をする事を決めたところで終わりました!今回はそれから少し後…メンバーを交えて準備を進めている所から始まります!
30分後……
柳「ずいぶんと賑やかだから何かと思えば…、まさか他の生存者と体育祭をする事になっていたとは…」
悠里「あっ…無理して参加しなくても、応援だけでも結構ですよ?」
グラウンドの中央で色々と準備を進める由紀や真冬達…
柳はその場所から少し離れたところに広げられたカラフルなレジャーシートに腰を下ろし、悠里・美紀と共に彼女達を見つめていた。
柳「…そうだな。参加は遠慮するが…応援、というか…見物くらいはしていこう」
悠里「はい、ゆっくりしていって下さい」
柳「……ところで、君達は何を?」
柳の背後、レジャーシートの中央で悠里と美紀の二人はノートを広げ、何かを書き記していた。
美紀「体育祭の種目、それと順番を決めてるんです。」
柳「そのノート…少し見てもかまわないかな?」
美紀「これですか?はい、かまいませんよ」
美紀からそのノートを受け取り、柳はそれに目を通す。
そこには様々な種目の内容、そしてそれを開始する順番などが事細かに記されていた。
柳「………」
悠里「なにか、おかしなところとかありますか?」
柳「この…パン食い競走のところに引かれた線は何かな?」
美紀「ああ、それはやむを得ず断念した種目ですね。そのパン食い競走は由紀先輩が強くリクエストした種目なんですが…あいにくパンが無くて。それで断念したんです」
柳「パン…か」
ノートの中、二本の線が上から引かれた『パン食い競走』の文字を見て柳は立ち上がり、脱いでいた靴を履き直す。
そうして立ち上がってどこかへ向かおうとする柳に、悠里が声をかけた。
悠里「どうかしました?」
柳「車に少しだけ忘れ物をした。すぐに戻る…」
それだけを言い残し、柳は一人駐車場へと向かう。
約束どおり、五分程で戻ってきた彼の右手には大きめのバスケットかごが握られていた。
彼はそのかごをレジャーシートの上に置き、自らも腰をおろす。
柳「…待たせたね」
美紀「えっと、忘れ物ってこれですか?」
柳「ああ、これの中身だよ」
悠里「…何が入っているんですか?」
尋ねる悠里の顔を見て柳はニヤリと笑い、そのかごの蓋を開ける…
中に入っていたそれを見た悠里と美紀はそのあまりのタイミングの良さに驚き、思わず声をあげた。
美紀「これ、パンじゃないですか!」
悠里「凄くたくさん…これ、どうしたんです?」
柳「あぁ…、作った」
悠里「つくっ…?や、柳さんがですか?」
柳「ああ。趣味の一環でね。おかしいかな?」
悠里「いえ…お店のみたいで驚いちゃって。本当にすごい…」
改めてバスケットに詰められたたくさんのパンを悠里は見つめる。
様々な形のパンはどれも綺麗に焼けており、市販の物と比べても全く問題の無い…いや、それ以上かも知れない物ばかりだった。
柳「中にはオーソドックスなあんパンなどもある。もし良ければだが…これでパン食い競走をやったらどうかな?」
美紀「…いいんですか?」
柳「ああ、かまわないよ…」
悠里「嬉しいですけど…、それだと少し悪い気がします。」
柳「ふむ…。じゃあこうしよう。これは本来私達四人で食べようと思って私が作った物だ。パン食い競走に使ったりすると私達の食事が少なくなる。」
柳「だから良ければ、昼食を一緒にとろう。その時に君達からも私達へ、何か食料を分けてくれればそれで良い、どうかな?」
悠里「そのくらいなら、私達は別にかまいませんけど…」
柳「じゃあ決まりだ、これでパン食い競走が出来るな。あの由紀とかいう子にも教えてやってくれ、喜ぶだろう」
美紀「…ありがとうございます!私、ちょっと先輩に教えてきますね?」
悠里「うん、お願いするわ」
シートのそばに脱いでおいた靴を履き直し、由紀の元へと駆け足で向かう…。楽しみにしていた種目が出来る事を彼女に伝えられると思うと、思わず頬が緩んでしまう美紀だった。
柳「…やけに嬉しそうだったね」
悠里「美紀さんは…いえ、私達はみんな由紀ちゃんが大好きですから、彼女の笑顔を見れると思うと、自然と嬉しく思ってしまうのかもしれません」
悠里「あの子の笑顔は少し…特別ですから…」
柳「……特別?」
首をかしげる柳の元へと、一人の少女が駆け寄ってくる…嬉しそうにニコニコと笑うその少女は、今ちょうど話題にしていた由紀だった。由紀は柳の前に立ち、ペコッと頭を下げてから両手を胸の前で合わせ、にっこりと嬉しそうに笑った。
由紀「柳さんっ!パンありがとうございます♪わたし、ほんとにパン食い競走がやりたかったから、すごくうれしいです!!」
柳「そうか、喜んでもらえたようでなにより…。圭一君達は私のパンでは喜んでくれないからな、とても新鮮な気分だよ」
由紀「ちょ…ちょっと見てもいいですか?……うわぁ♪すっごくおいしそ~♡」
バスケットの中を覗きこみ、ぎっしりと詰まった様々なパンを見た由紀…。こんがりと焼けたパン達は顔を寄せると香ばしい香りがして、思わずよだれを垂らしそうになる。
由紀「一個だけ…先に食べてもいいですかっ!?」
悠里「由紀ちゃん!我慢しなさ――」
柳「かまわないよ。ほら、どれか一つ…好きなのを取るといい」
悠里「そ…そうですか?すいません、ほんとに…」
由紀「ありがとうございますっ♪じゃ…これっ!」
由紀はバスケットの中へと手を伸ばし、やけに黒みの強いパンを手に取った。
彼女はそれを即座に口の中へと突っ込み程よい大きさに噛みちぎると、もぐもぐと口を動かしながら幸せそうな表情をした。
由紀「んっ…!?美味しいですっ!!」
柳「それはそれは…口にあったようでよかったよ」
悠里「ほんと、美味しそうね…」
由紀「りーさん、はい!はんぶんこだよ♪」
手にしていたパンを半分にちぎり、悠里に手渡す。
しかし手では上手くちぎれず、僅かに大きさの差が出ていたが…悠里には大きい方を手渡したのは、由紀の優しさだろう。
悠里は礼を言ってからそれを受け取り、口に頬張る。
悠里「っ…す、すごく美味しいです。柳さん、これ本当にただの趣味ですか?パン屋さんやっているとかではなくて?」
柳「ああ、完全にただの趣味だよ。しかしこんなに褒められるとは、嬉しいね…。世界が元に戻ったらパン屋を開こうかと思わず悩んでしまうよ」
由紀「開いた方がいいと思う!そしたらわたし、常連さんになりますっ!!」
悠里「ふふっ、じゃあ…私も」
柳「んん……パン屋か。考えておこう…」
二人の客を獲得した柳はわりと本気で考えた…。もし世界が元に戻る事があるのなら、そんな店を開くのもありかも知れないと。
一方、準備を進めていた穂村達はその手を一時的に休め…、楽しそうな雰囲気のレジャーシート組を見つめていた。
穂村「柳さん…若い娘達に囲まれて嬉しそうにしてねぇか?あの人も所詮はオスだな…」
圭一「そこまで言うほどじゃないだろ…。確かにいつもよりは楽しそうだが、あくまでも娘を見ているような感覚なんじゃないか?」
穂村「柳さんに娘さんとかいんの?」
圭一「さぁ…。そこまでは知らないが…」
狭山「…少なくとも、あの人は女の子を見て鼻の下を伸ばすような人じゃない。穂村とは違う…」
穂村「はぁ!?誰とは違うって――」
ドンッ!
美紀「あっ!すいません!ちょっとよそ見してて…」
穂村「いや、平気だ。だけどちょっと疲れてきたから…あそこの木陰で休憩でもしない?一緒にさ…」
美紀「へっ?あの…ちょっと!!?」
穂村は美紀の手首を掴み、半ば強引に遠くの木陰へと連れ込もうとする。
その手を振りほどこうともがくが、逃れる事が出来ずに美紀が焦り始めると、彼と胡桃がその場に駆け付け…穂村の前へと立ち塞がった。
「ちょっと…何してんですか?」
胡桃「離してもらえる?嫌がってるしさ…」
穂村「二人して…怖い目だなぁ。俺の事はキライか?」
「あなたからは、何か嫌な雰囲気を感じるんで…」
胡桃「同じく…」
シャベルを構える胡桃と、ナイフに手を伸ばそうとする彼…。自らをギリッと睨みつける二人を目前にして、穂村は高らかに笑う…。まるで、RPGゲームの魔王かなんかのように…。
穂村「ふ…ふはははははっ!!!バカな奴らめ…!ただの人間ごときが…この俺に勝てると思っているのか!?」
美紀「何ですかそのキャラは…」
胡桃「あんただって、ただの人間だろ…」
狭山「違う…穂村は…」
穂村「おい、言うつもりか?やめとけって、どうせ信じない」
意味深な穂村の発言を狭山は聞き流し…彼と胡桃の目を真っ直ぐに見つめると、一呼吸おいてから二人にそれを告げた。
狭山「穂村はただの人間じゃなく…凄まじい変態。だから注意した方がいい」
「…なるほど」
胡桃「確かに…かなり危なそうな人だもんな」
美紀「ちょっと!?はやく手を離してくださいよっ!!私に何をする気ですか!?」
穂村「い、いや?ほんの冗談で――」
狭山「あんなことやこんなことを、穂村の気がすむまでたっぷりとやられる。全てが終わったあと…美紀はたぶん人格を壊してしまう」
美紀「いっ!?…いやあぁっ!!!」
狭山の発言を聞いた美紀は顔を真っ青にして、より一層強く抵抗した。
思いの外本気で抵抗する彼女焦った穂村は必死に『冗談だって!落ちつけっ!!』などと言っていたが、これから襲われると思って慌てている美紀の耳にその言葉は届かなかった。
圭一「バカが…、まず手を離せ」
穂村「あっ!そうか!!」
圭一に言われてからようやく美紀を解放する穂村…。美紀は手を離された瞬間に猛スピードで彼と胡桃の後ろに隠れ、顔を青くしながら震えていた。
穂村「ご、ごめんな…?」
美紀「……っ」ガタガタ
胡桃「大丈夫か?変なところ触られたりとかしてないか?」
美紀「と、とりあえずは…大丈夫です…」
狭山「女の子にトラウマを植えつけるなんて…ほんとに穂村ってヤツは…」
穂村「お前が話をややこしくしたんだろ…」
狭山「…でも、穂村が美紀の手を無理やりに引いていたのは事実…。あのまま誰も止めなかったら、何する気でいたの?」
穂村「まぁ、ちょいと木陰でお話でもして~。あわよくばキスくらいは…」
狭山「…どこに?」
穂村「どこにって、おかしな事をおっしゃる。口以外のどこにするってんだよ?…いや、確かに口以外にもしてみたい箇所はあるけど…まずは口だよな」
美紀「う…うぅ…」ガタガタ
胡桃「最低な男だな…」
「外道だ…」
狭山「…もっと言ってあげて。穂村は自分がクズな事を自覚できない病気だから」
穂村(ひでぇ言われようだが…、状況が状況だから反論できねぇ…)
そのあと…穂村は胡桃達の約5分に渡る罵倒を受け続け、二度と軽い気持ちで女の子の手を引かないと誓った。胡桃達は改心した(?)穂村と協力して体育祭に必要な道具をかき集め…瞬く間にその準備を終える事ができた。
悠里「さて…必要な物は揃ったし、だいたいの準備は終わったわね」
胡桃「じゃ、はじめる?」
悠里「ええ、はじめましょうか♪」
穂村「その前に聞きたいんだけどさ、これってチームって概念とか、優勝って概念はあんの?」
悠里「私達だけでやろうとしていた時は特に決めてませんでしたが、あなた達が参加する事になって人数が増えたので、チーム分けとかは必要だろうなって思っていましたけど…」
圭一「じゃあ、こっちのチームとお前達のチームとで競う感じか?」
胡桃「おっ!それおもしろそうだな。そうしようぜ!!」
「僕も賛成です。でも、人数が合わないか…」
圭一達を見回してから彼はそっと呟く…。
由紀達一行の人数は五人…一方、圭一達は四人。しかも、柳は見学するだけとの事なので、参加メンバーは実質三人だった。
狭山「…このままじゃ、5対3になっちゃうか…」
柳「…若狭くん、すまない。もう一度、さっきのノートを見せてもらえるかい?」
悠里「あっ、はい」
柳は今回の種目が書かれているノートを悠里から受けとると、それにじっくりと目を通す…。1分近くそのノートを見つめていた柳は頭の中で何かを確認していたらしく、それを終えてから悠里へとノートを返した。
柳「ありがとう。恐らく、これらの種目ならば彼らは3人だけで十分だ。ハンデだと思って、遠慮なく競うといい」
悠里「えっ?」
胡桃「いくらなんでも、二人足りないのは少しキツくないか?」
由紀「そうだよ!リレーの時、そっちのチームは誰かが二人分余計に走らなきゃいけなくなるし…綱引きだって…」
穂村「ま、大丈夫大丈夫!俺たちめちゃめちゃ鍛えてるから!なっ?」
狭山「……まぁ、うん」
「鍛えてるのはこちらも同じですよ。僕だって、この世界をただのんびりと生きてきた訳じゃないですからね…。それに胡桃ちゃんだって…」
胡桃「えっ!?あっ、そうだな。うん…、こっちも負けじと鍛えてるぞ!」
穂村の放った鍛えてるという発言に対抗心を燃やす彼と胡桃。実際はもっと根本的な違いがあるので穂村達は強気だったのだが、胡桃達はそれを知る
柳「とりあえず、今回はこちらのハンデを受けてくれないか?じゃないといつまでたっても始められなさそうだからね」
胡桃「ん~、仕方ないか…」
「…そうだね。負けても人数のせいにしないでくださいよ?」
穂村「もちろん。…あっさりとねじ伏せてやるよ!本当は俺一人でも楽勝なんだが、それだとお前らのプライドをズタズタにしちまうからなぁ!!」
圭一(穂村のやつ、やたらと楽しそうだな…。まさか、本気でやるつもり…じゃあないよな?)
いくら穂村が負けず嫌いとはいえ、本気でやったりはしないだろうと思っていた圭一だが、さっきから見ているとどうも…本気でやりそうな予感しかしない。そんな圭一の心配をよそに、体育祭の始まりは近付く…。
始まるまでに二話も使ってしまいました(汗)
本編メンバーと外伝メンバーとの会話シーンを多めに書きたくなってしまって、ついつい(>_<)
今回は穂村君が変態キャラという事が明らかになりましたけど、そこは本編の主人公である彼も負けてません!(笑)
次回こそは体育祭が始まる予定ですので、ご期待下さいませ(^-^)ゝ
目玉種目は柳さんのおかげで可能になったパン食い競走です!(*´∀`)