全何話になるかはまだ未定ですが、そこまで長くはならないかなぁ~と思っています。時系列としては本編・百二十話以降を舞台としたIFストーリーですので、本編の方のネタバレを含みます!ご了承下さい。
第一話『めざめ』
???『…起きて』
誰かの声が頭に響く。聞き覚えのある、女の子の声…。
"彼"はその呼びかけに応えるべく、重いまぶたを開いた。
「っ……ぐ…ぅ……」
???「…おはよ」
彼はそのベットの上で体を起こし、すぐ横を向く。目線を向けた先にいた黒髪の少女はベットに両肘を乗せながら、起き上がった彼の事を上目づかいで見つめていた。彼女は見慣れない黒のローブのような物に身を包んでおり、まるで真っ黒なてるてる坊主のようだ。
「ええっと、おはよう…真冬」
彼女の名を呼び、それからまだ貸すかに眠気の残る両目を擦る。すると彼が"真冬"と呼んだその少女は深くため息をつき、立ち上がりながら答えた。
真冬「この世界だとボクの名前は真冬じゃなくて、ウィンターなんだけど…」
「ウィンター?……はいはい、分かった分かった」
真冬「……」
朝から何の冗談なのかと思いつつ、彼はベットから降りる。眠気覚ましに少し顔でも洗おう…。そう思って歩き出した時、彼は辺りを見てある事に気がついた。
「…………ねぇ、ここどこ?」
目覚めたその部屋は自分の知っている部屋ではなく、狭い空間にベット…そしてぼろぼろのタンスが置かれているだけの質素な部屋だった。こんな部屋に見覚えのないし、今自分が着ている鉄の胸当てがついた茶色のコートや黒のジーパン…これらにも見覚えがない。何が起きたのかと戸惑う彼は辺りをキョロキョロと見回すが、一方で真冬は落ち着いていた。
真冬「ちゃんとした説明と簡単な説明…どっちがいい?」
「あ~…ちゃんとした説明を頼む」
真冬「うん、わかった…」
参ったように頭をかきながら、彼は真冬に説明を頼む。すると真冬はさっきまで彼が眠っていたベットに腰掛け、一度だけコホンと咳払いをしてから口を開いた。
真冬「ここはボクらのいた世界とは別次元の世界。どういうわけか知らないけどボクらはここへ呼ばれて、ある目的を命じられた。今この世界では遠い昔に封印されたハズの
「待った。やっぱり簡単な説明で頼むよ…」
真冬「うん、わかった…」
真冬が告げた言葉はまるで日本語ではないかのように意味不明で、要点が掴めない。恐らく、彼女は自分をドッキリにでも嵌めようとしているのだろう。彼がそんな事を思っていると、彼女はそれを本当に簡単に説明した。
真冬「ファンタジーな世界に来ました。みんなで魔王を倒そう」
「……そういうドッキリか」
真冬「ボクも最初はそう思った…。きっと由紀、もしくは穂村のイタズラだって。でも二人の姿はないし、様子を撮影しているであろうカメラなんかも見当たらない」
そう言い放つ彼女の顔は真剣そのもので、彼の額に冷や汗が流れる。そもそも真冬はそんなドッキリをするような女ではない。その彼女がこのような真剣な顔で言うなら、ここは本当に……
「外、出てみた?」
真冬「出た。魔物も倒した」
「…魔物?」
あまりにさらっと言った発言が衝撃的で、彼は目を丸くする。しかし、落ち着いてみればこうも思えた。
(まぁ…"かれら"も魔物みたいなもんだしな…少しふざけただけだろう)
魔物というのはきっと、"かれら"の事をファンタジー風に言っただけだ。真冬もたまには面白い事を言うのだな。そんな風に思ったが、どうも違うようだった。
真冬「この世界に"かれら"はいないけど、その代わりに魔物という存在がいる。強さは種類によって異なるみたいだけど、この村のそばには比較的弱いものしかいないみたいだね」
「……本気で言ってる?」
真冬「本気だよ。っていうか、はやく現実を受け入れてくれる?キミがこの話を信じてくれないと話が進まない」
「って言われてもねぇ…」
真冬「…わかった。百聞は一見にしかず」
「へっ?」
そんな事を言ってから真冬は立ち上がり、彼の手を掴む。彼女は彼が戸惑うのもお構いなしに部屋の扉を開けて外へと飛び出し、そこに広がる光景を彼に見せつけた。
「………」
真冬に手を引かれ、外へと連れ出された彼は思わず言葉を失う。晴れた空の下で彼が見たものは井戸から水を汲んだり、畑を耕したりする人や、道ばたで楽しげに会話を交わす人々…。ここはどこかの農村のような場所であり、人々は何事もないかのように生活をしていた。
真冬「…これで信じたよね?」
目の前の光景に驚いていると、真冬が手を離して彼の反応を待つ。辺りにいる人々を見て、確かにここは自分達がいるいつもの世界と違うという事は分かったが、それでもまだ納得できないことがあった…。
「なんでこんなに平和な感じなの?」
真冬「えっ?いや…だから、この世界には"かれら"がいないんだよ」
「ああごめん、そういう事じゃない。この世界には"かれら"はいないけど、代わりに魔物だの魔王だのがいるんでしょ?…そのわりには平和そうだなぁと思って」
辺りを行き交う人達の表情は不安を感じているようなものではなく、どこか違和感がある。本当に魔王だのなんだのがいるのなら、不安で夜も眠れないのではないだろうか…。
真冬「そこはほら、ボク達が現れたから安心してるんだと思う…。まだ言ってなかったけど、ボクとキミ…そしてあと四人の少女がこの世界を救うとかなんとか予言されていたみたいで…」
誰が言った予言なのかは知らないが、真冬は表情一つ変えずにそれを告げていた。彼女の言うあと四人の少女というのも大体察しがつく…。これが夢でないことを実感して彼が深くため息をついていると、辺りにいた村人が真冬…そして彼の方へと寄ってきた。
村の女「ウィンター様、おはようございます!」
真冬「うん…おはよう」
彼はウィンターという呼び名を疑問に思ったが、真冬はその呼びかけに答えていた。真冬の事をウィンターと呼んだその若い女性は彼女の隣に立つ彼を見て、やたらと嬉しそうな笑みを浮かべる。
村の女「もしかして、こちらの方は…」
真冬「…予言にあった救世主の一人。ボクの仲間だよ」
真冬がそう答えると、その女だけでなく辺りにいた村人全員がざわつく。彼のいた巡ヶ丘には生存者があまりいなかったので、こうして大勢の人に囲まれるというのはかなり新鮮な体験だった。
村の男「なっ、名前はなんと言うんですか!?」
「んっ?あぁ、僕の名前は―――」
真冬「ナナシだよ。みんな仲良くしてあげてね…」
かなりガタイの良い男に名前を聞かれ、彼はそれに答えようとするが…真冬がそれを遮って彼の代わりに答えてしまう。しかもその名は明らかな偽名であり、彼は彼女の肩を引いた。
「おい、ナナシって何さ?」
真冬「キミの名前…。せっかく異世界に来たんだもん、それっぽい名前にしたいでしょ?」
「ああ、だから真冬はウィンターと名乗ってる訳ね。…それにしたってだ、ナナシのどこがそれっぽい名前なんだ?もっと良いのがあるだろうに…」
真冬「じゃあ訂正すれば…?この雰囲気の中でそれが出来ればだけど…」
辺りの村人は彼の事を見て『ナナシ様~!』『ナナシさ~ん!』と騒いでおり、その名が間違いだとはとても言い出せない雰囲気だった…。彼は仕方なくその名を受け入れ、どこかへと歩く真冬のあとをついていく事にした。
「…で、僕らはこれから何をするの?」
真冬「えっと、王様たちはボクらに焔の王を倒してほしいって言ってたな…」
「焔の王…?あぁ、魔王みたいな存在のヤツか。ところで、真冬ちゃんはその王様といつ話したの?」
真冬「三週間くらい前…」
「…はい?」
思わず彼女の顔を見つめ、その言葉は間違いではと疑う。何せ彼はさっきここに来たばかりで、昨日までは普通に柳の屋敷にいたのだ。その時あの屋敷には真冬も確かにいたので、彼女だけがここで三週間以上過ごしているなどあり得ない。
真冬「こっちと向こうだと時間の流れが違うのかな?まぁよく分からないけど、とりあえずボクはかなり前からここに来てたよ。それで今日、キミがここに現れる事を魔法で知ったの」
「その魔法ってのは誰が使ったの?どっかの魔法使い?」
真冬「ボクだよ。この世界では"大魔法使いウィンター"って呼ばれてるんで…」
真冬は自慢げにニヤリと笑い、羽織っている真っ黒なローブのフードをかぶる。それは確かに魔法使いっぽい姿であり、彼女の雰囲気と合っていた。彼がそんな真冬の事を見つめていると、彼女は今かぶったばかりのフードをどかして目を見つめてきた。
真冬「あとの四人もキミと同じタイミングでこの世界に召喚されたみたい…。場所は大体わかるから、一緒に迎えにいこ?」
真冬は彼に手のひらを差しだし、にっこりと微笑む。だが彼はそれを握る事なく、彼女の横を通り過ぎた。辺りには村人の姿もあるので、手を繋ぎながら歩くのは照れ臭いのだ。
真冬「…異世界デートだよ?めったに出来ないよ?」
「やけに楽しそうだね」
真冬「そう?…ふふっ、ボクってこういう雰囲気のゲームとか好きだったから、自分が魔法使いになれてはしゃいでるのかも」
そう言って、真冬は彼の隣で鼻唄を歌いながらスキップをしだす。あちらの世界にいる時はクールな印象が強かったので、彼女のこんな無邪気な面を見たのは初めてだった。
「あとの四人ってのは、やっぱりあの娘たちだよな…」
元の世界で共に過ごしてきた彼女達の顔を思い浮かべ、ポツリと呟く。それは真冬に尋ねた訳ではなくただの一人言だったのだが、彼の少し前をご機嫌な様子で進む真冬はその答えを教えてくれた。
真冬「うん、そうだと思うよ」
「因みに…何で分かるのかって聞いてもいい?」
真冬「魔法のおかげ…としか言えないかな。ごめん、一般人に口で説明するのは難しい。なんて言えばいいのか全然分からなくて」
説明するのが難しいのなら仕方ない。彼はこの事をそれ以上尋ねないようにしたが、真冬が何気なく言った"一般人"という言葉に笑いかける。どうやら、大魔法使い様は彼の遥か先の領域に達しているらしい。
真冬「魔法って本当に便利だよ…。何もないところでも火とか出せるし、ぬるい飲み物もキンキンに冷やせるし、明日の天気とかも分かるし…」
(天気が分かる魔法って…凄いんだろうけど微妙だな)
楽しそうに魔法について語る真冬だが、そのあとに彼女の語った魔法は『濡れた服がすぐに乾く魔法』だの『針に餌がなくとも魚が釣れる魔法』だの…凄いには凄いがどこか微妙な魔法ばかり。彼女は人々に『大魔法使い・ウィンター』と呼ばれているらしいが、この世界ではそんな魔法しか使えない人間でも大魔法使いと呼ばれるのだろうか?
真冬「この小屋…」
魔法の話をしている最中、真冬は突然立ち止まって目の前にある小屋を見つめる。木材を簡単に合わせて作ったのであろうその小屋、普段は村人達が畑仕事をするための道具をしまう為に使っているものらしいが…。
「ここが…なに?」
真冬にそう尋ねると、彼女は無言のままその小屋へと近付く。彼女はそのまま小屋の扉へ拳を寄せ、軽くノックをした。
コンコンッ…
直後、小屋の中から誰かがひっそりと喋るような声が聞こえる。それは一人のものではなく、数人の声…。その声、そして気配を感じ取った真冬はニヤリと笑い、一気に扉を開いた。
ガチャッ!!!
由紀「わっ!?」
胡桃「うおっ!!」
悠里「っ!」
美紀「あぶなっ……って、あれ?」
真冬が扉を開いた瞬間、見知った四人の少女が外へ崩れ込むようにして姿を現す。恐らく、狭い小屋の中で扉に寄り掛かるようにして身を寄せていたのだろう。それを真冬が急に開いた事により由紀、胡桃、悠里の三人が倒れる中、美紀だけはどうにか倒れることなく真冬と彼の事を見つめ、そして目を丸くしていた。
美紀「真冬?それに、先輩も…」
真冬「みんな思っていたより近くに出てきたんだね。すぐ合流できてよかった…」
美紀からワンテンポ遅れ、由紀達も彼と真冬の存在に気づく。彼女達は地面から起き上がるなり辺りを見回し、驚いたような表情を浮かべた。彼女達は真冬がその小屋の扉を開けるまでは半分眠っていた状態だったらしく、自分達がこんな場所にいるなんて知らなかったようだ。
由紀「ここどこ?」
悠里「全く見覚えがないけど…」
美紀「人もたくさんいますね…」
胡桃「…おい、どうなってる?」
自分達が出た先は青空の下、たくさんの人々が平和に暮らす村…。あの世界からやってきた彼女達にとってその光景は異様であり、それぞれが自分達の目を疑っていた。
真冬「じゃ、キミ達にも説明するね…」
彼女達に分かるよう、真冬は彼にしたのとほぼ同じ説明をする。話を聞いた彼女達はかなり驚いたようだったが、目の前の光景を見たら信じない訳にいかなかったらしい。
悠里「つまり…ここはあの世界とは別の世界なのね?」
真冬「うん」
胡桃「奴らがいなくて、代わりに魔物がいる世界か…」
由紀「でもすごく平和そうだよ?ほら、子どもが手ふってる♪」
少し先にいた幼い少女がこちらへ手を振ってきたので、由紀はそれに応えるように手を振り返す。どうやら少女は真冬に手を振っていたらしいが、由紀が振り返すと嬉しそうな顔をしていた。
美紀「確かに平和そうですね。それはさておき、私たちのこの格好は…」
美紀はそっと目線を下げ、今自分が着ている服を確認する。この世界に来る前は普通のパジャマを着て眠ったはずなのに、今の美紀が着ているのは白のミニスカート、そして鉄の胸当て…。両の二の腕には緑色の肩当てのような物がついており、そこから延びた袖が肘までを覆い、肘から指先までを黒いグローブが覆っていた。
美紀「なんか、初めて見る格好になってるんですけど…」
見覚えのない格好に戸惑いながら首を捻って背面の方を確認してみるとミニスカートの後方部…腰の辺りに翡翠色マントのような物がついていて、自分が動く度にそれがヒラヒラと揺れる。ガーターベルトに止められ太ももまで上がっているソックスも普段履いている物と微妙に違うようだ。そこはまだ良いとしても、この格好は胸当てからスカートの間に何も無いため、外に晒された腹部がスースーして落ち着かない。
悠里「あら本当。何かしらね、この格好」
辺りの光景や異世界に来たという事実が衝撃的過ぎて気づくのが遅れたが、確かに全員の服装が見たことのないものになっている。それは悠里も例外ではなく、彼女は黒をベースとしたコルセットスカートを着用し、白のローブを羽織っていた。しかしそのコルセットスカートは胸で支えている為に彼女の谷間がかなり強調されており…加えて羽織っているローブも微妙に布面積が少ない。その白のローブは背中、両腕の肘から先こそ覆えているが、彼女の肩…そして胸元は惜しげなく晒されていた。
真冬「たぶん、この世界に来た瞬間それに合わせた格好をさせられるようだね。ボクもほら、魔法使いっぽい格好でしょ?」
真冬はその場で両手を広げながらクルリと回り、自らの姿を悠里たちに見せつける。大きなフードまでついている真っ黒なローブに身を包んだ真冬は確かにおとぎ話に出てくる魔法使いのような姿であり、それを見た悠里と美紀はクスッとおかしそうに笑った。
美紀「ほんと、魔法使いって感じだね」
悠里「ローブの下はどうなってるの?」
真冬「えっと…黒いミニスカートと、同じく真っ黒なシャツ着てる。でもこのシャツ真ん中辺りに下から上への切り込みがあって、おへそ見えちゃうから恥ずかしいんだよね」
真冬はローブを少しだけ捲り、その下に履いていた黒のミニスカートを悠里達に見せる。足元まで覆っていたそのローブが捲られて初めて分かったのだが、彼女も太ももまでを覆う黒のソックスを履いていた。しかし彼女が見せたのはそのスカートのみで、シャツまでは見せてくれなかった。どうやら、それを見せるのがよほど恥ずかしいようだ。
胡桃「いやいやっ!あたしらの方がよっぽどハズいだろっ!?」
シャツを見せないのはへそが見えて恥ずかしいからだと真冬が語る中、それを聞いた胡桃が大声を出す。彼女が着ているのはかなり短めの黒いショートパンツであり、太ももやらヘソやらが大胆に晒されていた。しかも彼女の上半身は胸を黒のチューブトップで覆っているだけで、他にこれといった物をまとっていない。強いて言うなら左手と両足、それぞれに肘当て、膝当てがついているという事と…四つに裂けている腰布をまとっているくらいだ。
胡桃「うぅ…なんだよこの格好…」
悠里「たしかに…かなり大胆というか」
美紀「露出多めですね…」
真冬「あ…腰布に可愛い尻尾がついてる。胡桃、にゃーにゃーみたいで可愛いよ」
顔を真っ赤にしてその格好を恥じる胡桃の背後にしれっと回り込み、真冬は彼女の腰布に尻尾のような物がついている事に気づく。真冬はそれを指先で突っつきながら可愛いと言いニヤニヤしていたが、当の本人はまだ顔を真っ赤にしていた。
胡桃「尻尾はいいから、羽織るものくれ…」
両手で胸元を隠しつつ、胡桃はガクッと肩を落とす。そう言えば、彼女は服装だけでなく髪型も変化したようだ。今の胡桃はいつものツインテールではなく、それを三つ編みにして短く纏め上げたもの。これなら、激しく動いても髪が邪魔になる事はなさそうだ。また、よく見ると彼女の頭には小さな二本の角が生えているが、これも装飾品だろうか?
真冬「…にしても」
由紀「ん?なにかな?」
羽織るものをと呟く胡桃を無視して、真冬は由紀へ目線を向ける。実を言うと、真冬は最初から彼女の格好が気になってしかたなかった。というのも、彼女の着ている真っ白な服は彼女の両腕…そして胸元をギリギリ隠している程度のものであり、明らかに布面積が少ないのだ。
美紀「由紀先輩の格好も凄いですね…」
由紀「えへへ、わりと気に入ったかも~♪」
だぼっとした袖をパタパタと揺らし、由紀は楽しげにクルリと回る。そうして回る彼女を見て気づいたのだが彼女の背には赤白い大きな羽が生えており、彼女の無邪気な笑顔とそれがあいまって天使のように見えた。
真冬(まぁ…天使にしては露出多いけどね)
上はギリギリ胸を隠せる程度の服…そして下はモコモコとした柔らかそうな素材の短パンを履いていたが、これも少しばかり小さいように見える…。上も下も、ギリギリ隠せてるとしか言い様のない服だった。しかしながら本人はわりと気に入っているようなので、特に言うこともないだろう…。真冬が笑顔の由紀を見て思う中、胡桃は未だ自分の格好を恥じらっていた。
胡桃「ま、真冬…これ、着替えちゃダメなのか?」
真冬「着替えると魔力が落ちて弱くなるから、就寝時とか以外は基本的にその格好でいてほしい」
胡桃「うわぁ、そんなルールがあんのかよ…」
自らの経験に基づいた情報を真冬が告げると、胡桃はまたガクッと肩を落とす。胡桃の格好は確かに露出が多いと思うが、ここまで恥ずかしがるとは思わなかった。
真冬「意外と恥ずかしがり?」
胡桃「いや、あたしらだけならこの格好でも構わないけどさ…。今はアイツもいるじゃんか…」
真冬「ああ、そういうことか…」
胡桃は小さく呟き、彼の事を覗き見る。彼にこの格好を見られるのが嫌で、これほどまでに恥ずかしがっていたらしい。
悠里「恥ずかしがる気持ちは分かるけど、どちらかと言うと由紀ちゃんの格好の方が…」
胡桃「…だな」
確かに、しっかり隠すべきところを隠せているだけ自分の格好はマシかもしれない。由紀のあの格好では、ちょっと前屈みになっただけで胸が丸見えになってしまうかもしれないのだから…。
胡桃(そういや、アイツずっと由紀の方を見て動かねぇな…)
由紀本人があの格好を気に入っているとはいえ、あまり凝視されると見られたくないものを見られてしまうかも知れない。そうなると由紀が少しかわいそうなので、胡桃は彼女の事を凝視する彼を注意することにした。
胡桃「おいっ、あんまりジロジロ見んなって」
「…………」
胡桃「…なぁ、聞いてんのか?」
「…………」
正面に立ってから肩を揺さぶり声をかけるが、彼はまるで答えない。それほど由紀の格好に見とれているのかと…そう思った胡桃は次第に腹を立てていく。
胡桃「お前…いい加減に―――」
真冬「胡桃、ちょっと待って…!」
胡桃の声に答えない彼を見た真冬はもしかしてと思い、その場に歩み寄る。真冬は胡桃の隣に立ってから彼の頬をペシペシと叩き、予想していた通りの展開にため息をついた。
真冬「…気絶してるね」
胡桃「はあっ!?立ったままで!?」
真冬「うん。皆の格好がそれだけ刺激的だったみたい」
その場に立ったまま、もっというなら目も開けたまま…彼はピクリとも動かない。ある意味凄いような、それでいて情けないような…そんな彼の姿を前に胡桃達は深くため息をつき、呆れたような顔を見せた。
胡桃「異世界での初顔合わせでこれかよ…」
悠里「立ったまま気絶なんて、器用ねぇ」
美紀「器用だけど、情けないですよ…」
由紀「…ほんとだ。起きないねぇ」
立ったまま一点を見る彼の頬をペシペシ叩き、由紀は苦笑いする。一体、彼は誰の格好を見て気絶したのだろうか…。約二十分後、ハッと目を覚ました彼に真冬はそれを尋ねたのだが、彼は彼女達全員の格好が衝撃的過ぎて、その時に誰を見ていたとかは覚えてないと語った。
という事で、学園生活部+彼+狭山真冬は見知らぬ世界へ舞い降りました。
学園生活部&彼はこの世界に来て間もないので戸惑いがありますが、真冬ちゃんは他のメンバーよりも随分と先にこの世界に来ていたので、彼女さえいればどうにかやってけるかなぁと…(笑)
また、学園生活部一行の格好ですが…『がっこうぐらし!』のメンバーも登場するアプリ『きららファンタジア』での進化後衣装と同じ服になっています!(文字だと伝わってなかったかもですね…(汗))
まぁ…そんな余談はさておき、異世界に飛ばされた六人は元の世界に帰る事が出来るのか?次回もご期待下さいませ!