軌跡〜ひとりからみんなへ〜   作:チモシー

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短編-それぞれの休息『胡桃の場合』

胡桃「ん~…暇だなぁ。」

 

 

由紀「なんかする?」

 

 

胡桃「…お前と?」

 

 

由紀「それ以外誰がいるの?__くんは今車で漫画読んでるし、りーさんとみーくんは洗濯中だし。」

 

 

胡桃「そうだよな…何する?」

 

 

由紀「__くんは山へ漫画を読みに。りーさんとみーくんは川へ洗濯に。」

 

 

胡桃「なんで童話風に言い直すんだよ。まあ、りーさんと美紀は本当に川へ洗濯に行ってるから良いとして…。なんで__はわざわざ漫画読みに山へ行ってるんだ…山にしか漫画は無い設定か?」

 

 

由紀「漫画好きな親戚が山に住んでるのかも。」

 

 

胡桃「で…あいつはその親戚の漫画だけが目当てで山へ行ったのか?」

 

 

由紀「そ!漫画だけ読んだら帰るの。」

 

 

胡桃「クズじゃねーか。」

 

 

由紀「__くんはクズじゃないよ!」

 

 

胡桃「お前のその童話(?)の中の話だよ!」

 

 

由紀「ああ、ごみん。」

 

 

胡桃「……で?何する?」

 

 

由紀「ん~…。キャッチボールでもしよ?たしかボールあったよね?」

 

 

胡桃「ああ、それなら野球でもしようぜ。バットもあるし。」

 

 

由紀「いいよ!沢山打った方の勝ちね!」

 

 

胡桃「よし!じゃあちょっと取ってくる。」スタスタ…

 

 

バタン。

 

 

胡桃(…あいつ漫画に夢中であたしに気付いてねぇ。)

 

 

胡桃(ま、さすがにバットとボール見付ける前に気付くだろ)スタスタ…ゴソゴソ

 

 

胡桃(ええっと……あ!あったあった。両方ともセットでしまってあったけど…ここにしまったの誰だ?…野球する気満々だな。)

 

 

胡桃(良し…由紀のとこに戻るか…。)スタスタ…

 

 

バタン

 

 

胡桃(マジか……あいつ、結局あたしに気付かなかった。どんだけ漫画に夢中なんだよ、そりゃ山にも行くわな。)スタスタ

 

 

由紀「お帰り~!早かったね?」

 

 

胡桃「両方ともセットでしまってあったからすぐに見付かった。…あたし達の中に野球する気満々なヤツがいるみたいだ。」

 

 

由紀「あ!それ私。」

 

 

胡桃「お前かよ!」

 

 

由紀「えへへ、ボールとバットはセットでしまった方が良いかな~って思って。」

 

 

胡桃「まあ良いけどさ……。んじゃあ三球交代の…えっと……十セットで良いか。…どっちから投げる?」

 

 

由紀「私から投げる!」

 

 

胡桃「りょーかい。じゃあほれ…ボール。…んでバットはそのままあたしが持つと。」

 

 

由紀「シャベルじゃなくて良いの?」

 

 

胡桃「野球の時までシャベルは使わねーよ!」

 

 

由紀「へぇ~。…じゃあ投げるよ~!」

 

 

胡桃「良し!来い!!」

 

 

 

___

 

_____

 

 

 

 

十五分後。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

胡桃「そりゃ!!」カキンッ!!

 

 

由紀「わわ!!また打たれた!!!」

 

 

胡桃「止まって見えるぜ!!」

 

 

由紀「もう16点目だよ!」

 

 

胡桃「今ちょうど7ゲーム終えて…あたしが16点、由紀が4点。」

 

 

由紀「もう勝つの無理じゃん!!それに21球中16球も打たれると嫌になるよ!」

 

 

胡桃「まあヒット性の当たりは点になるルールにしたからな、そんくらいいくだろ。」

 

 

由紀「もうボール拾い行くの疲れた!!」

 

 

胡桃「打たれるお前が悪いんだから、取ってこい!!」

 

 

由紀「もうやめようよ~!」

 

 

胡桃「ったく…。分かった、次あたしが投げる3球の内1球でも打てたらそのままお前の勝ちにしてやるよ。…だから探して来い!」

 

 

由紀「ほんとに?じゃあ探してくる!」スタスタ

 

 

胡桃「あ!あたしちょっとトイレだけ行ってくるな?」

 

 

由紀「うん分かった!」

 

 

胡桃(今のところ奴らもいないし、見通しも良いから少しの間なら由紀一人でも大丈夫だろ。)スタスタ…

 

バタン

 

 

胡桃(…まだ漫画読んでる。)スタスタ

 

 

 

 

バタン

 

 

 

……ジャーッ

 

 

バタン

 

 

胡桃(…トイレに入ったのも気付いてねぇ。)

 

 

 

「…………えへへっ。」

 

 

胡桃(笑ってる…。)

 

 

「…………。」ペラッ

 

 

「……へへへっ。」

 

 

 

 

胡桃「気持ちわりーよ!!」

 

 

 

「うわっ!胡桃ちゃん!?いつの間に戻ったの?」

 

 

 

胡桃「2分くらい前からな、…てかさっきも一回来たぞ?気付けよ。」

 

 

 

「いや~。少し夢中になりすぎたね。」

 

 

胡桃(なりすぎだろ!)

 

胡桃「…それ、この間寄った本屋で見付けた漫画?」

 

 

 

「うん、由紀ちゃんにオススメを選んでもらったんだけど…中々面白いね。」

 

 

胡桃「ふーん……ギャグ漫画?」

 

 

「そう。胡桃ちゃんも見る?」

 

 

胡桃「あ~…今は由紀と遊んでる途中だから、また後で見せてよ。」

 

 

 

「うん。…因みに何して遊んでるの?」

 

 

胡桃「野球。」

 

 

「二人で?」

 

 

胡桃「って言ってもお互いバッターとピッチャーを交代でやっていって多く打てた方の勝ちってやつだけどな。」

 

 

「はぁ、なるほど。…胡桃ちゃんはなんで途中で車に戻ったの?」

 

 

 

胡桃「~~!トイレだよ!!」

 

 

「ああ…これは失礼。」

 

 

胡桃「マジで……だいぶ失礼だぞ。」

 

 

「悪かったって…で、野球はどっちが勝ってるの?」

 

 

胡桃「どっちだと思う?」

 

 

「…胡桃ちゃんでしょ?」

 

 

胡桃(ま!当然そう思うよな!)

 

 

胡桃「ふふん♪内緒だ!じゃああたしは由紀の所に戻るな。」スタスタ

 

 

バタン!

 

 

スタスタ…

 

 

由紀「遅いよ!胡桃ちゃん!!」

 

 

胡桃「わりーわりー!ボールあった?」

 

 

由紀「ありましたとも!!さあ、三球投げて!一回でも打てたら私の勝ちだからね!?」

 

 

胡桃「分かった分かった。……いくぞ?」

 

 

由紀「うん!」

 

 

 

 

 

 

胡桃「ほっ!」シュッ!

 

 

由紀「そりゃ!」スカッ!

 

 

 

胡桃「まず一球~!」

 

 

由紀「く~!次で打つから!!ほらボール!」ポイッ!

 

 

胡桃「ん。」パシッ!

 

 

胡桃「じゃ、二球目いくぞ~。」

 

 

由紀「来い!」

 

 

 

 

胡桃「ほっ!!」シュッ!!

 

 

 

 

由紀「えいっ!」カキンッ!!

 

 

胡桃「…あ!!」

 

 

由紀「お!…今の…打てた内に入るよね!?」

 

 

胡桃「ああ、ホームランとまでは言わないけど、十分なヒットだよ。」

 

 

由紀「やった~~!」

 

 

由紀「じゃあ、私の勝ちだよね!?」

 

 

胡桃「そーだな。由紀の勝ちだ。」

 

 

由紀「うぅ~……勝った~!胡桃ちゃんに勝った~!」

 

 

胡桃(お情けルールで勝ってよくここまではしゃげるな…。)

 

 

由紀「…とりあえずここからだね。」

 

 

胡桃「…?…何が?」

 

 

由紀「今は野球で勝っただけだけど、その内もっと運動神経とかも良くして強くなって……胡桃ちゃん達に守られてばかりの私じゃなくて、…少しでも胡桃ちゃん達を守れる私になるの!」

 

 

胡桃「え?……。」

 

 

由紀「皆にはいつも迷惑かけてるから……私、もっと皆の役にたちたいの。」

 

 

胡桃「由紀…。」

 

 

由紀「この間もそう…皆があの人から私を助けてくれた。」

 

 

胡桃(あの人……空彦か。)

 

 

由紀「だから私も皆を!!」

 

 

胡桃「…。」スタスタ…ギュッ!

 

 

由紀「うわっ!胡桃ちゃん?ど、どうしたの?いきなり抱き付いて…。」

 

 

胡桃「由紀…。」ギュゥ…

 

 

胡桃「………。」

 

 

胡桃(お前は十分あたし達の支えになってるんだから…無理しなくて良いのに…。)

 

 

胡桃(なのにお前は…それでもあたし達の事を…。)

 

 

由紀「……胡桃ちゃん?」

 

 

胡桃「…由紀」

 

 

胡桃「お前は十分強くなってるよ、この間も空彦の隙をみて噛み付いたじゃん!凄かったぞ、あれ。」

 

 

由紀「ほんとに?…えへへ、あの時は私のファーストチッスが懸かってたので…。」

 

 

胡桃「チッスって何だよ。…てかファーストなのな?」

 

 

由紀「…胡桃ちゃんは?」

 

 

胡桃「……どうかな~?」

 

 

由紀「お、お父さんととかは無しだよ!!」

 

 

胡桃(そういうのはむしろお前が言うかと思ったんだけど……変な所で大人だなコイツ。)

 

 

由紀「んで!?んで!?」

 

 

胡桃(うわ!グイグイくるな!)

 

 

胡桃「…無いよ。」

 

 

由紀「ほっ……良かった~、胡桃ちゃんが私の知らぬ間に大人の階段を上ってしまったかと…。」

 

 

胡桃「今となっては本当に相手がいないからな。」

 

胡桃(生存者的な意味で。)

 

 

由紀「__くんがいるじゃん。」

 

 

胡桃「あいつ!?…あいつか…、ん~!」

 

 

由紀「おぉ…まさかの満更でもない反応!」

 

 

胡桃「いや…!ちげーよ!!大体まだアイツとは知り合ってばっかだろ!」

 

 

由紀「おぉ…ゆっくりと愛を育むスタイル?」

 

 

胡桃「ちげーよ!!」

 

 

由紀「でももう__くんと会って三週間は経ってるよ?十分じゃない?毎日一緒に寝泊まりしてるんだし。」

 

 

胡桃「じゃあ由紀付き合えば?」

 

 

由紀「私!?…私が__くんと……。」

 

 

胡桃(…あれ?こいつもしかして…。)

 

 

由紀「うん!」

 

 

胡桃(マジか!?)

 

 

由紀「まだ早いね!胡桃ちゃんの言う通りだ!」

 

 

胡桃「あ、ああ。そうだろ?…もう少しお互いの事知らないとな?」

 

胡桃(ビックリした~!告白しに行くのかと思った!)

 

 

由紀「でも__くん良い人だよね!私は好きだよ?…胡桃ちゃんは?」

 

 

胡桃「え?」

 

胡桃(友達的な意味でだよな?…なら…。)

 

 

胡桃「そうだな、あたしも好きだよ。」

 

 

悠里「…何の話をしているの?」

 

 

胡桃「なっ!りーさん!?いつから?!」

 

 

悠里「今来たところだけど……何?三角関係なの?…しかも由紀ちゃんまで加えて。」

 

 

胡桃「違うって!__の事友達として良いヤツだって話をしてたんだよ!!」

 

 

悠里「あらそう?…そうよね…良かった、三角関係のまま同じ車で一緒に寝泊まりするのは少し気まずいと思ってたから。」

 

 

胡桃「昼ドラかよ。」

 

 

由紀「多分そんな昼ドラ無いよ?」

 

 

胡桃「例えだよ。」

 

 

由紀「りーさんも__くんの事好きだよね?」

 

 

悠里「え?友達としてよね?…ええ。好きよ?」

 

 

由紀「だよね!良し!後でみーくんにも聞こ~。」

 

 

胡桃「聞くのか?」

 

 

由紀「うん!しかも__くんの前で!」

 

 

胡桃「やめてやれ。」

 

 

由紀「しょうがない…一応いない所で聞こう。」

 

 

悠里「けど…多分美紀さんも好きって言うと思うわよ?」

 

 

由紀「本当に?」

 

 

胡桃「じゃなきゃ一緒に暮らせないだろ。今更嫌いとか言われたらなんかあたし達が気まずくなるわ。」

 

 

由紀「うっ!それもそうだね。…じゃあ多分みーくんも__くんの事好きなんだ。」

 

 

胡桃「友達として…な?」

 

 

悠里「ふふっ、じゃあそろそろお昼だし、そんな__君の待つ車に戻りましょうか?美紀さんも先に戻ってるハズだし。」

 

 

由紀「うん!」

 

 

 

 

胡桃(始めて会った時はこの女だらけの中に男を入れるのはどうかと思ったけど。…今となっては余計な心配だったな。)

 

 

胡桃(皆と良く馴染めてる。もちろんあたしとも…。)

 

 

胡桃(それにアイツ戦うの得意だから、元は一人きりの戦闘要員だったあたしは本当に助かってる。…他の皆はあまり戦うの得意じゃないから。)

 

 

胡桃(あとアイツ、わりとあたし達が嫌がる事を代わりに背負ってくれるからな……。)

 

 

胡桃(もしこれからこの前のようにアイツが悩む事があれば…あたしが……。あたし達が支えてあげれば良い。)

 

 

 

 

 

 

胡桃(__。お前はもうあたし達の大切な仲間なんだよ。)

 

 

 

 

由紀「胡桃ちゃん?戻ろ?」

 

 

 

 

胡桃「……うん!」

 

 




短編と言いつつ、本編とあまり変わらない文字数。
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