軌跡〜ひとりからみんなへ〜   作:チモシー

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七話目です!

前回は胡桃ちゃんとのデートを終えたところで終わりましたが、今回はそれから数日後…休みが明けてまた学校に通う日がやってきたところから始まります!今回もまた、本編で彼との絡みがなかったあの人達が出てきますので、ゆっくりとお楽しみ下さいませm(__)m


前回までのあらすじ『デート(仮)→デート(公認)になりました』


第七話『互いを知るために』(ゆうり)

 

 

 

 

 

 

胡桃とのデートから数日経ち、休みが明けまた学校へと通う日がやってきた。よく晴れた朝、今日も彼は一人通学路を歩いていく…。学校へと近付くにつれ他の生徒もチラホラと見かけるようになっていくが、由紀たちの姿は見かけなかった。彼よりも早く、もしくは少し遅れて登校してくるのだろう。

 

 

 

 

学校にたどり着いた彼は無言のまま教室を目指し、廊下を歩いていく…。

その道中、見知った顔を見かけたので彼は声をかけた。

 

 

 

「おはようです」

 

短い茶髪をしたその少女に背後から声をかけ、反応を待つ。

その少女…直樹美紀はすぐに振り向き、彼にペコッと頭を下げた。

 

 

 

 

美紀「あっ、おはようございます」

 

「いきなり声かけてすみませんね。せっかく見かけたんで…」

 

美紀「いえ、私は構いませ――」

 

 

ドンッ!

 

「うおっ!?」

 

美紀の言葉を聞いていた時、彼がグラッとバランスを崩す…。

何者かが彼の背中に勢い良くぶつかったのだ。

彼が崩れかけた体勢を整えてから前を向くと、見知らぬ女子生徒が美紀の肩に手をあてながら立っていた。

 

 

 

 

???「あっ、ごめんなさい。ちょっと前見てなくて」

 

肩にかかるくらいの茶髪…その後ろ髪を結び上げてハーフアップにし、少しだけ長めの前髪を左右に分けて額を出しているその少女…。今彼にぶつかったのは彼女らしく、ニッコリと微笑みながら謝罪しているが…どこかわざとらしい様子だ。

 

 

 

美紀「ちょっと(けい)…。わざとぶつかったでしょ?」

 

美紀はその少女のことを『圭』と呼び、彼にわざとぶつかったのではと疑う。すると圭は首を横に振り、笑顔で答えた。

 

 

 

圭「そんなわけないじゃん。勘違いだよ」

 

美紀「言っておくけどこの人は先輩で、私の知り合いの人だからね?」

 

そばでたたずむ彼を指差して美紀が告げる。

すると圭は少し焦ったような表情をして、気まずそうに彼の顔を見た。

 

 

 

 

圭「……知り合い?」

 

美紀「うん。ゆき先輩たちの知り合いで、私もこの前紹介されたの」

 

圭「なぁんだ…。私はてっきり、美紀ちゃんが見知らぬ人に言い寄られてるのかと思ったよ」

 

圭がホッとしたように微笑む。どうやら彼女は美紀と仲が良いらしく、先程彼にぶつかったのも美紀を助けようとしての行動だったらしい。

 

 

 

圭「先輩、さっきはごめんなさい。私、ちょっと勘違いしちゃって…」

 

申し訳なさそうに頭を下げる圭…。

わざとぶつかられたといってもそれが美紀の為だったと分かったので、彼も彼女を責める気はなかった。

 

 

 

「いや、美紀さんに悪い虫が寄ったら大変だからね…。そのくらい警戒しておいた方がいい。これからもその調子で彼女を守ってあげて」

 

圭「はい、お任せをっ!」

 

美紀「いやいや……」

 

圭と美紀…二人は彼に軽く頭を下げてその場をあとにし、自分達の教室へと向かう。そうして美紀と並んで廊下を歩くなか、圭は笑顔で言った。

 

 

 

 

圭「あの先輩、良い人だね♪」

 

美紀「それは否定しないけど…なんで二人して私を守る感じに…」

 

圭「美紀ちゃんは私の大切な友達だからね。守りたくもなるよ」

 

美紀「……はいはい」

 

少し過保護に感じる圭のそれに呆れながらも、美紀はにこっと微笑んだ。美紀にとっても、圭は大切な友達だからだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

ガララッ…

 

一方、美紀達と別れた彼も教室にたどり着き、その扉を開ける。

最初の授業までまだ多少の時間があったが、既に半数以上の生徒が集まっていた。その中には由紀・悠里の姿もあり、由紀は彼が自分の席へ座るとそのそばに歩み寄る。

 

 

 

 

由紀「おはようっ!今日も良い天気だね♪」

 

「ですねぇ…」

 

授業の支度を始めながら彼が呟く。

由紀は彼の机に両肘をつけ、その顔を間近で見上げていた。

 

 

 

 

由紀「お休みの日って何してた?」

 

「くる…………ゴロゴロしてました」

 

尋ねられた彼は胡桃と出掛けた事を話してしまいそうになるが、胡桃は嘘をついて悠里との勉強会をサボったのだ…。本当の事を言ったら彼女が悠里に何を言われるか分からないので、彼は咄嗟に出任せを言った。(実際、胡桃と出かけた日以外はゴロゴロしてたのだが)

 

 

 

 

由紀「ゴロゴロねぇ~。わたしもそんなふうにまったりとした休日を過ごしたかったけど…」

 

嫌な事を思い出しているのか、由紀の表情がみるみる曇っていく…。

恐らく悠里との勉強会を思い出しているのだろうが、この表情から察するにかなり苦労したようだ。

 

 

 

「…お疲れ様」

 

由紀「うん…。今度はキミとくるみちゃんも一緒にね…」

 

次回は彼と胡桃の二人も巻き添えにしたいらしく、悪巧みするかのようにして微笑む由紀…。その後方…少し離れたところにある席では悠里がこちらを見つめながらニッコリと微笑みながらこちらに手を振っており、彼は苦笑いした。

 

 

 

「まぁ…考えとくよ…」

 

由紀から逃げるようにして視線を逸らすと、ちょうど胡桃が教室に入ってきていた…。彼女は彼と目があったその瞬間に立ち止まり、落ち着きなく目線を動かす…。だがすぐに彼の目をじっと見つめ返し、笑顔でそばに歩み寄った。

 

 

 

 

胡桃「おっはよ~!」

 

「おはよう」

 

由紀「おはよう、くるみちゃん♪朝から元気だね~!」

 

胡桃「ま、お前ほどじゃねぇけどな」

 

胡桃が言いながら由紀の前に顔を寄せ、その額を指でつつく。

それを受けた由紀は微かに後ろにのけ反るが、楽しそうに笑っていた。

 

 

 

由紀「元気ならくるみちゃんにも負けないもんね~♪」

 

胡桃「ああ、"元気だけは"……な?」

 

由紀「うぅっ、ひっど~い!!」

 

目の前でじゃれ合う由紀と胡桃…。

彼はその光景を見て、ニッコリと微笑んだ。

ただただ平和なだけで、何でもないような光景…。それを見ているのが心地よくて、とても幸せな気持ちになる。

 

 

 

 

 

 

 

…………が。

 

 

 

「人の席のそばでいつまでもイチャつかれるのはちょっとね…。そろそろ授業も始まるし、準備したらどうかな?」

 

長々とじゃれる二人を相手に彼が告げる…。

先に教室へやってきていた由紀はともかく、胡桃はまだ一切の支度をしてなかったようで焦った表情を見せていた。

 

 

 

 

胡桃「やばっ!準備しないとっ!」

 

彼の席から離れ、自らの席へと向かう胡桃…。

それを見た由紀も笑顔で自らの席へ向かうが、彼女の席は彼の隣…。由紀が席に戻ろうと戻らなかろうと、彼との距離はさほど変わらない。

 

その後も彼は由紀と雑談を交わしながら時間を潰し、授業が始まる。

授業中…彼がそっと隣の席に座る由紀を覗くと彼女は『う~ん』と唸りながら苦い表情を見せていた。いくら悠里との勉強会を済ませてきたとはいえ、難しいものは難しいし…苦手なものは苦手なようだ。

 

 

そんな風にして授業の一つ一つに苦戦する由紀を横目に見て楽しみながら時間を過ごしてゆき、午前…そして午後の授業の全てが終わる。全ての時間を終え、あとは家に帰るのみとなった由紀は机に突っ伏して安堵のため息をついていた。

 

 

 

 

 

 

由紀「はぁぁ~っ……疲れたよ~」

 

悠里「お疲れ様。どう?前よりは授業の内容を理解できた?」

 

既にほとんどの生徒が去った教室内…。帰り支度を済ませた悠里が由紀のそばに寄り、笑顔で尋ねる。聞かれた由紀は少しだけ難しそうな表情をしたが、その頭を縦に振った。

 

 

 

由紀「ん~、この前よりは…分かったかなぁ」

 

悠里「そう?ならよかった♪」

 

悠里が優しく由紀の頭を撫で、満足そうに笑う。

彼は横で帰り支度を進めながらそれを見ていたのだが、教室を見回して気づく…。今の教室にいるのは彼と由紀と悠里…その他数名の生徒のみ。胡桃の姿がなかった。

 

 

 

 

「あれ、胡桃ちゃんがいない…。先に帰ったのかな…」

 

由紀「ほんとだ…。なんだ、帰りにどっか寄ろうと思ったのに…」

 

由紀は胡桃と共にどこかに寄り道したかったらしく、残念そうな表情をする…。彼女のそんな顔を見た悠里はその背をそっと叩き、笑顔で告げた。

 

 

 

 

悠里「まだそんなに時間経ってないから、急げば追い付けると思うわよ。今日は少し早めに終わったんだし、せっかくだから遊んできなさい」

 

由紀「…うんっ!りーさんとキミもくる?」

 

悠里と彼の顔を覗きながら由紀が尋ねる。

一緒についていくのも面白そうだと思う彼だったが、残念な事に授業終わりで少しばかり疲れてきていて、これから遊ぶのは厳しかった。

 

 

 

「せっかくだけど…遠慮しておこうかな」

 

悠里「私も大丈夫。二人で遊んでらっしゃい」

 

 

 

由紀「そっか、わかった!じゃあまた明日ね♪」

 

「はい、また明日」

 

悠里「じゃあね」

 

悠里と彼に笑顔で別れを告げると、由紀はカバンを背負って足早に駆けていく。彼女を見送った彼は途中だった帰り支度を終わらせるべく、カバンに荷物を詰めていく。その間、悠里はそばでその様子を見つめていた。

 

 

 

 

「……なにか?」

 

悠里は帰り支度を終えているにも関わらずそばにとどまり、ニコニコと微笑んでいる。その様子はまるで彼を待っているかのようだが…。

 

 

 

悠里「その…次の休みだけど、何か用事があるか聞きたかったの」

 

「用事?いや、特には…」

 

悠里「じゃあ、もしよかったら私の家に遊びにこない?」

 

両手を合わせ、笑顔を見せる悠里…。

単純に彼女の家に遊びに行くだけならば問題は無い。むしろ彼の方からお願いしたいくらいだった。…だが、悠里がただ遊ぶためだけに自分を誘わない事くらい彼にも分かっていた。

 

 

 

 

「まさか……また勉強会じゃ…」

 

悠里「ふふっ、正解♪あなた、あまり授業についていけてないでしょ?」

 

「……まぁ」

 

 

悠里「友達の成績が伸び悩むのを見ているだけっていうのは出来なくて…。お節介かも知れないけど、力になれるならなってあげたいのよ」

 

隠すことなく本音を告げる悠里だが、彼女の目的はそれだけではない。悠里はそれを伝えるべく、少し照れたように笑いながら彼を見つめる。

 

 

 

 

悠里「それと……もっとあなたの事を知りたくて…。勉強もそうだけど、お互いの事を知り合いたいって気持ちの方が大きいかもね。だから勉強が終わったら…いえ、勉強しながらでもいい。一緒にお喋りでもしましょう?」

 

「……はい」

 

そこまで言われたら断る理由もない…。

彼が微笑みながら頷くと、悠里はニッコリと笑った。

 

 

 

 

 

悠里「じゃあ、次の休みの日ね。約束よ?」

 

「ええ、了解です」

 

返事を聞いた悠里は自分のカバンを手に取り、彼に手を振ってから教室をあとにする…。彼は悠里に手を振り返して見送った後でのんびりと帰り支度を済ませ、自らも教室を出た。

 

 

 

すると、少し廊下を歩いた所で二人の人物が何やら話しているのを目撃する。一人は彼もよく知る女性教師…佐倉(さくら)(めぐみ)だ。しかし彼女が話している少女…そちらは見覚えがない。少女は何やら苦い表情をしているので、説教でもされているのだろう…。

 

 

(あの先生が説教するなんて珍しいな…。それだけ問題児なのか?)

 

慈は教員の中では比較的若く、優しい性格もあって生徒からも好かれている。そんな彼女がわざわざ一人の生徒を廊下に呼び出して説教をする光景が珍しかったので、彼は思わず立ち止まる。

 

 

 

 

慈「もう、今月だけで何度目ですか?いい加減、授業中の居眠りはやめて下さいっ!」

 

目の前にいる女生徒に向けて言い放つ慈だが、説教にしては今一つ迫力がない…。それどころか、眉をしかめてムッとする表情がどこか愛らしくすら見えてしまう程だ。相手の女生徒も廊下で説教されているというこの状況はともかく、慈自体に恐怖は感じていないようで…微かにヘラヘラとした表情を浮かべ始める。

 

 

 

 

??「ご、ごめんなさいっ!いや、あの……めぐみ先生の声って心地よくてですねぇ…。聞いてるとついつい寝ちゃうわけですわ…」

 

あくまで悪気はないと言うかのようにして答えるその女生徒は二本のヘアピンで前髪を額の左側にとめており、茶色いポニーテールを揺らしていた…。彼女の言葉を聞いた慈は呆れたようにため息をつき、肩を落とす。

 

 

 

慈「他の先生に聞いたら、あなたが居眠りしてるのなんて見たことないって言われたけど……そう、私の時だけだったのね……」

 

??「申し訳ないっ!めぐみ先生の声を聞くとどーしても眠くなっちゃうの!!わざとじゃないですよっ!?」

 

 

慈「はぁ……じゃあ、あなたに授業を受けさせるにはどうすればいいの?」

 

??「無言のまま、黒板に必要な内容だけを書けばいいと思います!そうすればさすがの私も寝たりしませんっ!」

 

えっへんと言わんばかりに胸を張る女生徒…。

それを見た慈はまた一層に肩を落とし、暗い表情になる。

 

 

 

 

慈「無言のまま授業なんて、できっこないんだけど…」

 

??「あっ、先生……申し訳ないですけど、もう行っても良いですか?友達待たせちゃってて…」

 

慈「………うん、じゃあまた明日ね。もう、居眠りしないでよ?」

 

??「はぁ~いっ♪約束いたしまぁ~す!」

 

女生徒は嬉しそうに両手を広げ、廊下の向こうにトコトコ歩いていく。一人残された慈の背中があまりにも切なかったので、彼は思わず声をかけた。

 

 

 

 

 

 

 

「……先生?」

 

慈「あら、どうかしましたか?」

 

背後から不意に話しかけられた慈は先程までの暗いオーラをすぐに振り払い、彼に向けて笑顔を見せる。直後、彼は先程の女生徒について尋ねた。

 

 

 

 

「…さっきの娘は?」

 

慈「ああ…あの娘ね…。二年の娘なんだけど、いつも授業が始まって10分しない間に寝ちゃうのよ。その回数があまりに多いから注意したら、私の声が原因みたいな事言われちゃったけど……」

 

「ま、佐倉先生の声が心地良いって思う気持ちは分からなくもないです」

 

慈「うぅ…聞いてたのね?」

 

「そんなに落ち込む事でもないでしょう?良い声だって褒められているようなもんですよ?喜んでもいいのに…」

 

慈「聞いているだけで眠くなる声なんて、教師としては致命的です!」

 

慈がムッとした表情を見せる。だが教師というには幼い顔付きをしている事もあってか、やはり今一つ迫力がない…。

 

 

 

 

「んー…でも、佐倉先生の授業で寝るのなんて今のところはさっきの娘だけですよね?」

 

慈「…たまにだけど、丈槍さんも寝てるわ……」

 

「大丈夫。あの人は誰の授業でも寝る時は寝ますから」

 

落ち込みだした慈を慰めるように言うが、彼は気づいていた…。

思えば由紀も、慈の授業くらいでしか居眠りしていない。

だがそれを落ち込んでいる慈本人に言える訳もなく、彼はあたかも他の教師の授業でも由紀が居眠りしているかのように答えた。

 

 

 

慈「はぁ……これからは誰も居眠りしないように、少し声を張り上げていこうかしら?効果があるかは分からないけど…何事も挑戦よね?」

 

「そう…ですね。まぁ、頑張って下さい」

 

慈に向けて手を振ってから歩きだし、彼はその場をあとにする。

少し歩いてから振り向くと、慈が彼に向けて笑顔で手を振っていた。

 

 

 

 

 

 

(先生も色々大変なんだな…)

 

彼女を見つめてそんな事を思いながら、もう一度手を振り返す。

慈は教師にしてはどこか子供っぽいところがあるが、彼女のそんな部分が好きだという生徒は多い…。彼もその内の一人だった。

 

 

 

 

 




という事で次回はいきなり数日飛ばし、りーさんとの勉強会が始まります。
勉強会とは言っていますが、これがりーさんとのイベントになりますので、見ていてニヤニヤ出来る展開を幾つか用意する予定です!


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